報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義を追え」

2020-07-29 14:44:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月22日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 事務所から徒歩圏内のマンションに帰宅する。
 学校から事務所に立ち寄ったリサに今夜出発の話をすると、とても喜んでいた。
 で、準備の為に早くに帰宅していった。

 愛原:「ただいまァ」

 私が事務所から帰ると、カレーのいい匂いがした。
 どうやらリサがカレーを温めてくれているらしい。

 リサ:「お帰りなさい」

 リサは私服に着替えていた。

 リサ:「夕食、もうすぐできる」
 愛原:「おっ、すまないな」

 高橋が用意してくれている食事は今日の夕食まで。

 愛原:「出発の準備はできたのか?」
 リサ:「うん。宿題一気に終わらせた」
 愛原:「……早いな」

 一瞬、一緒に行く斉藤絵恋さんは大丈夫なのだろうかと不安がよぎってしまった。
 こういうのもまた引率者の私の責任なのかもしれないと思ったからだ。
 すると電子レンジから、チンというベルが聞こえて来た。

 リサ:「先生の分、できたー」

 冷蔵庫に保管されているものをレンジでチンするだけだから、手間は殆ど掛からない。

 愛原:「よし。早速食べようか」
 リサ:「お兄ちゃんいないと寂しいね」
 愛原:「まあ、静かなもんだな」

 昔は私1人だったのだが。
 いつの間にか賑やかになってしまった。

 愛原:「どれ……」

 私はリモコンでテレビを点けた。
 これから外洋に出るのだから、天気予報とか気にしておいた方が良い。
 幸いここは晴れているが、地方に行けば豪雨の被害が出ている有り様なのだ。

 愛原:「んー、テレビで見る限りでは大丈夫っぽそうだな」

 まあ、後で船会社のサイトで運航状況でも確認しよう。
 何しろ離島への船舶には、比較的高い確率で欠航がつきまとう。

 リサ:「食べ終わったら、荷物用意するね」
 愛原:「分かった。片付けは俺がやっておくから、リサはゆっくり準備してろ」
 リサ:「はーい」
 愛原:「足りないものとか、買い足さなくて大丈夫か?」

 まあ、途中で調達してもいいだろう。

 リサ:「うん。帰る時、コンビニで買って来た」
 愛原:「そうか」

 食べ終わると、リサは自分の部屋に行き、私は夕食の後片づけを始めた。
 私の場合は着替えとかで十分だが、リサみたいな女の子だと準備が大変そうだ。

 リサ:「……うん。今、準備してる。サイトーは……」

 リサの部屋から話し声が聞こえる。
 どうやら斉藤さんと電話しているようだ。

 リサ:「……うん。修学旅行、中止になっちゃったからね……」

 そ、そうだった!
 このコロナ禍で、都内の学校は殆どが修学旅行中止になったんだった。
 公立はそうだが私立はどうかなと思っていたが、さしもの学校法人東京中央学園も中止を決定したか。
 リサ達、かわいそうに。
 ……っと、私も準備をしなくては。
 八丈島行きの船の出発は22時30分。
 到着は翌朝だから、本当の夜行便だな。
 但し、バスと違って横になれるし、シャワーも付いているから、今から風呂に入る必要は無いだろう。
 それにしても高橋のヤツ、八丈島を経由して、また更に別の島に行くって、本当に何かから逃げるのが目的なんだろうか?
 よく分からない。

 リサ:「先生、ちょっといい」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「荷物、こんな感じでいいかな?」

 リサがボストンバッグを持ってきた。

 愛原:「ああ、うん。いいんじゃない」

 やはり多いのは着替えだった。
 女の子だと、着替えには気を使うのだろうと思いきや……。

 リサ:「変化したら汚れたり、破れたりするから多めに持って行く」
 愛原:「第1形態までなら、その心配は無いだろう?」

 因みに今のリサは第0形態。
 完全に人間の姿をしている状態。
 第1形態だと鬼の姿になる。
 ここまでなら、まだ許容範囲。
 第2形態から、そろそろ化け物の様相を呈して来る。

 リサ:「でも、万が一ってこともある」
 愛原:「うん。その万が一が無いことを祈るよ」

 私が想定しているのは船の欠航くらいだが、高橋を追うモノの正体によっては、リサの力を借りることになるかもしれないな。

 リサ:「サイトーは新しい服、用意して行くって言ってた。私は何を着ていけばいいと思う?」
 愛原:「あー……リサの場合は、動き易い服の方がいいな」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「高橋が何に追われているのかは知らないけど、それによってはリサの力を借りることになるかもしれない」
 リサ:「ハンターくらい私が倒すし、タイラント君やネメシスなら私がおとなしくさせるよ?」
 愛原:「だったら何も、離島に逃げる必要無いだろう?」

 “バイオハザード”シリーズ、プレイしている人なら分かると思うけど、見た目JCのリサの発言はとんでもないことであるとお気づきになるだろう。
 さすがはかつて大ボスを張ったことのあるリサ・トレヴァー、それの日本モデル改良版だ。

[同日20:26.天候:曇 同区内 都営バス菊川駅前バス停→都営バス業10系統車内]

 出発の時間になり、私とリサは菊川駅前で霧崎さんと斉藤さんと合流した。
 リサはノースリーブTシャツにプリーツの付いたミニスカートを穿いている。
 Tシャツの上には、半袖のグレーのフード付きパーカーを羽織っていた。
 私はいつものワイシャツにスラックス。

 愛原:「霧崎さんはメイド服、目立ちますなぁ……」

 そう、霧崎さんはメイド服で来た。

 霧崎:「御嬢様のお世話係として同行させて頂きますので」

 それは表向きだ。
 高橋を捕まえてボコボコにする目的だろう。
 ボコボコにするだけならまだしも、スカートの中に隠したアーミーナイフを振り回すのは勘弁してほしい。

 斉藤:「リサさんはシンプルな恰好で来たのね」
 リサ:「先生が、『いざという時の為に、動き易い服装で』って言うから」

 リサは空手の構えをしてみせた。
 別に空手に造詣があるわけではなく、実際に段持ちの斉藤さんの真似をしただけである。

 斉藤:「リサさんなら怖いモノ無しだもんね」

 斉藤さんは御嬢様らしく、フリル付きのスカートで来た。
 これから都営バスに乗るが、ロールスロイスが目の前に止まっても違和感の無い服装だ。

 リサ:「バス来たー」
 愛原:「ああ、あれだ、あれ」

 新橋行きのバスがやってくる。
 とはいえ、私達はそこまでは行かない。

 愛原:「大人2人」
 運転手:「はい、どうぞ」

 私はリサの分と一緒に払い、

 霧崎:「大人2人で」
 運転手:「は、はい」(←霧崎のメイド服に驚いている)

 空いている後ろの席に向かう。

 斉藤:「リサさん、ここにしましょ」
 リサ:「ん」

 リサと斉藤さんは2人席に座った。
 私は1人席に座る。
 なるべく、霧崎さんと離れて。
 いや、霧崎さんの前の席が空いていたのだが、そこはやめた。
 後ろから襲われそうな気がして……。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスが発車した。
 コロナ禍のせいで1番前の席は封鎖されている。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。この都営バスは木場駅前、豊洲駅前、勝どき橋南詰経由、新橋行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目。……〕

 私はスマホを取り出し、Wi-Fiに接続した。
 都営バスにはWi-Fiのサービスがあるからだ。
 今のところ、船会社から欠航のお知らせは出ていない。
 恐らく大丈夫だろう。
 そして、高橋からは相変わらず着信は無いし、こちらからの送信も着信拒否のままだ。
 しかし、電源は切れていない。
 一体、高橋の身に何が起きているのか。
 そして、高橋の真意は何なのか。
 今のところ、まだ謎のままである。

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