[7月5日20:45.長野県長野市 JR北陸新幹線573E列車11号車内→JR長野駅 視点:稲生勇太]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、長野です。篠ノ井線、飯山線、しなの鉄道線、長野電鉄線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。長野の次は、飯山に止まります〕
稲生:「先生、申し訳ありません。申し訳ありません」
何故か稲生が半泣き状態でイリーナに謝っている。
だがそんなイリーナは稲生に叱責をするわけでも、説教をするわけでもなく、むしろばつの悪そうな顔で言った。
イリーナ:「いいのよ。私も油断したわ」
マリア:「はぁ~。私が占えば良かった!」
マリアだけが不機嫌そうな顔をしている。
一体、何が起きたのか?
鉄ヲタの読者は冒頭の時系列を見て、何かに気づくだろう。
列車番号573Eとは、“はくたか”573号のことだが、その列車がそんな時間にどうして長野駅へ?と。
〔「大変長らくお待たせ致しました。まもなく長野、長野です。到着ホーム11番線、お出口は右側です。本日は北陸新幹線内におきまして、落雷による停電の影響を受けました関係で、およそ1時間遅れでの到着でございます。お急ぎのところ、大変ご迷惑をお掛け致しました。深くお詫び申し上げます。当駅で、後から参ります“かがやき”515号の待ち合わせを行います。……」〕
マリア:「バスはもう無いんだよね?」
稲生:「はい。せめて、もう一本早い“あさま”にしとけば良かったーっ!」
イリーナ:「まあ、過ぎたことを喚き立ててもしょうがないわよ。仕方がないから、この町で一泊しましょう。勇太君、ホテルは取ってくれたんだよね?」
稲生:「あ、はい。それはもう……」
稲生はスマホ片手に、そこは抜かりなくやっていた。
列車は制限速度ギリギリの速度で下り副線ホームに滑り込んだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。長野、長野です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。……」〕
稲生達は列車から降りた。
降りると、湿っぽい空気が包み込んで来た。
列車の車体は雨で濡れている。
稲生:「『駅から一番近いホテルで』ということで、ホテルメトロポリタンですが、いいですか?」
イリーナ:「ええ、大丈夫よ」
マリア:「絶対、高いホテルだ」
イリーナ:「スイートはダメよ。スイートはダンテ先生がお泊りになる部屋で、私が泊まるなんて恐れ多い……」
稲生:「分かってますよ。(『スイートは御法主上人猊下様がお泊りになる部屋だから、恐れ多い』みたい)」
マリア:「なに笑ってんの、勇太?」
稲生:「あ、いえ、何でも!スタンダードシングルとツインにしておきましたので、ご安心ください」
稲生はスマホの画面を見せた。
マリア:「それでもワンスターホテルの『デラックスルーム』よりも、更に高級だ」
稲生:「そりゃ、シティホテルとビジネスホテルを比べるのはねぇ……」
新幹線改札口を出る。
稲生:「先生、少し買い物して行っていいですか?」
稲生は駅構内にあるNEWDAYSを指さした。
イリーナ:「いいよ。さすがに私物は自費でお願い」
稲生:「もちろんです」
マリア:「私も何か買おうかな……」
マリアは衛生用品のコーナーで生理用品を見ていたが、そこで稲生がサッとコンドームを手にしたのが分かった。
マリア:(予備のショーツも一応、買っておこう)
こうして2人は買い物を済ませ、宿泊先のホテルに向かった。
[同日21:00.ホテルメトロポリタン長野 視点:稲生勇太]
稲生:「明日のバスは9時50分発と11時ちょうど発があります。前者だと八方バスターミナルに着くのが11時5分、後者だと12時15分です。どちらにしますか?」
イリーナ:「9時50分の便にしましょう。そしてランチを食べた後、午後はお休み」
マリア:「でしょうね。だったら、11時の便でもいいくらいですけど……」
イリーナ:「このホテルだと、チェックアウトの時間は何時?」
稲生:「12時だそうです」
イリーナ:「あら、エレーナのホテルよりゆっくりなのね。だったらいいわ。11時の便にしましょう」
マリア:「屋敷の人形達にも伝えておきます」
マリアは水晶玉を取り出した。
フロントマン:「それでは、こちらのシートに御記入をお願いします」
稲生:「あ、はい」
稲生がフロントの前に立ち、ボールペンを走らせる。
フロントマン:「ありがとうございます。お支払いは如何なさいますか?」
稲生:「あ、カードでお願いします」
稲生はイリーナから預かったプラチナカードを渡した。
フロントマン:「かしこまりました」
カードでの支払いが終わると、フロントマンが鍵を渡してくる。
レストランにおける朝食の案内もあった。
1Fのレストランが朝食会場なのだという。
コロナ禍前はバイキングスタイルだったろうが、フロントマンの話しぶりからして、コロナ対策で変わっているらしい。
因みに夕食は、既に駅弁で済ませていた。
フロントマン:「ごゆっくりお過ごしくださいませ」
3人はエレベーターに乗り込み、客室フロアへ向かった。
イリーナ:「明日はゆっくり出るんだから、ゆっくり過ごしていいからね?私も疲れたし……」
稲生:「あ、はい。ありがとうございます」
マリア:「勇太は部屋で待ってて」
稲生:「うん」
先にそれぞれの部屋に向かう。
稲生はシングルルームだが、ベッドは明らかにダブルサイズはある。
部屋に入ると、荷物を置いた。
稲生:「……うん。先にお風呂入っておこう」
マリアも入浴してから来るだろうからと、稲生はそうすることにした。
稲生:(屋敷に帰るはずが思わぬアクシデントか……。魔界で何かあったのかな?)
稲生は広い浴槽にお湯を溜めながらそう思った。
今日中に屋敷に帰れないのは残念だったが、それでもマリアと一晩過ごせるという事実は変わらない。
稲生:「さて、その前に夕勤行だ」
そのことも忘れないところが、稲生の真面目なところである。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、長野です。篠ノ井線、飯山線、しなの鉄道線、長野電鉄線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。長野の次は、飯山に止まります〕
稲生:「先生、申し訳ありません。申し訳ありません」
何故か稲生が半泣き状態でイリーナに謝っている。
だがそんなイリーナは稲生に叱責をするわけでも、説教をするわけでもなく、むしろばつの悪そうな顔で言った。
イリーナ:「いいのよ。私も油断したわ」
マリア:「はぁ~。私が占えば良かった!」
マリアだけが不機嫌そうな顔をしている。
一体、何が起きたのか?
鉄ヲタの読者は冒頭の時系列を見て、何かに気づくだろう。
列車番号573Eとは、“はくたか”573号のことだが、その列車がそんな時間にどうして長野駅へ?と。
〔「大変長らくお待たせ致しました。まもなく長野、長野です。到着ホーム11番線、お出口は右側です。本日は北陸新幹線内におきまして、落雷による停電の影響を受けました関係で、およそ1時間遅れでの到着でございます。お急ぎのところ、大変ご迷惑をお掛け致しました。深くお詫び申し上げます。当駅で、後から参ります“かがやき”515号の待ち合わせを行います。……」〕
マリア:「バスはもう無いんだよね?」
稲生:「はい。せめて、もう一本早い“あさま”にしとけば良かったーっ!」
イリーナ:「まあ、過ぎたことを喚き立ててもしょうがないわよ。仕方がないから、この町で一泊しましょう。勇太君、ホテルは取ってくれたんだよね?」
稲生:「あ、はい。それはもう……」
稲生はスマホ片手に、そこは抜かりなくやっていた。
列車は制限速度ギリギリの速度で下り副線ホームに滑り込んだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。長野、長野です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。……」〕
稲生達は列車から降りた。
降りると、湿っぽい空気が包み込んで来た。
列車の車体は雨で濡れている。
稲生:「『駅から一番近いホテルで』ということで、ホテルメトロポリタンですが、いいですか?」
イリーナ:「ええ、大丈夫よ」
マリア:「絶対、高いホテルだ」
イリーナ:「スイートはダメよ。スイートはダンテ先生がお泊りになる部屋で、私が泊まるなんて恐れ多い……」
稲生:「分かってますよ。(『スイートは御法主上人猊下様がお泊りになる部屋だから、恐れ多い』みたい)」
マリア:「なに笑ってんの、勇太?」
稲生:「あ、いえ、何でも!スタンダードシングルとツインにしておきましたので、ご安心ください」
稲生はスマホの画面を見せた。
マリア:「それでもワンスターホテルの『デラックスルーム』よりも、更に高級だ」
稲生:「そりゃ、シティホテルとビジネスホテルを比べるのはねぇ……」
新幹線改札口を出る。
稲生:「先生、少し買い物して行っていいですか?」
稲生は駅構内にあるNEWDAYSを指さした。
イリーナ:「いいよ。さすがに私物は自費でお願い」
稲生:「もちろんです」
マリア:「私も何か買おうかな……」
マリアは衛生用品のコーナーで生理用品を見ていたが、そこで稲生がサッとコンドームを手にしたのが分かった。
マリア:(予備のショーツも一応、買っておこう)
こうして2人は買い物を済ませ、宿泊先のホテルに向かった。
[同日21:00.ホテルメトロポリタン長野 視点:稲生勇太]
稲生:「明日のバスは9時50分発と11時ちょうど発があります。前者だと八方バスターミナルに着くのが11時5分、後者だと12時15分です。どちらにしますか?」
イリーナ:「9時50分の便にしましょう。そしてランチを食べた後、午後はお休み」
マリア:「でしょうね。だったら、11時の便でもいいくらいですけど……」
イリーナ:「このホテルだと、チェックアウトの時間は何時?」
稲生:「12時だそうです」
イリーナ:「あら、エレーナのホテルよりゆっくりなのね。だったらいいわ。11時の便にしましょう」
マリア:「屋敷の人形達にも伝えておきます」
マリアは水晶玉を取り出した。
フロントマン:「それでは、こちらのシートに御記入をお願いします」
稲生:「あ、はい」
稲生がフロントの前に立ち、ボールペンを走らせる。
フロントマン:「ありがとうございます。お支払いは如何なさいますか?」
稲生:「あ、カードでお願いします」
稲生はイリーナから預かったプラチナカードを渡した。
フロントマン:「かしこまりました」
カードでの支払いが終わると、フロントマンが鍵を渡してくる。
レストランにおける朝食の案内もあった。
1Fのレストランが朝食会場なのだという。
コロナ禍前はバイキングスタイルだったろうが、フロントマンの話しぶりからして、コロナ対策で変わっているらしい。
因みに夕食は、既に駅弁で済ませていた。
フロントマン:「ごゆっくりお過ごしくださいませ」
3人はエレベーターに乗り込み、客室フロアへ向かった。
イリーナ:「明日はゆっくり出るんだから、ゆっくり過ごしていいからね?私も疲れたし……」
稲生:「あ、はい。ありがとうございます」
マリア:「勇太は部屋で待ってて」
稲生:「うん」
先にそれぞれの部屋に向かう。
稲生はシングルルームだが、ベッドは明らかにダブルサイズはある。
部屋に入ると、荷物を置いた。
稲生:「……うん。先にお風呂入っておこう」
マリアも入浴してから来るだろうからと、稲生はそうすることにした。
稲生:(屋敷に帰るはずが思わぬアクシデントか……。魔界で何かあったのかな?)
稲生は広い浴槽にお湯を溜めながらそう思った。
今日中に屋敷に帰れないのは残念だったが、それでもマリアと一晩過ごせるという事実は変わらない。
稲生:「さて、その前に夕勤行だ」
そのことも忘れないところが、稲生の真面目なところである。