報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「富士宮での一夜」

2020-07-04 22:55:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月2日19:00.静岡県富士宮市 某飲食店 視点:稲生勇太]

 稲生はイリーナと共に藤谷春人と合流し、市街地にある飲食店に向かった。
 そこは和食の店で、イリーナは岩手県で味わったのと同様に、ここでも日本酒を注文した。
 どうやらロシア人の口に、日本酒は合うらしい。
 マリアには合わないようだが。

 稲生:「先生、マリアさんじゃないですけど、あまり飲み過ぎになりませんように……」
 イリーナ:「分かってるわよ」
 藤谷:「大丈夫ですよ。いざという時には、北海道の時みたいに、先生を背負ってお送りします!」
 イリーナ:「まあ、さすが藤谷さん。頼もしい……」

 イリーナはまだ酔ってもいないだろうに、そんな素振りを見せて藤谷に妖艶な顔を見せた。

 藤谷:「また、北海道の時みたいに、悪魔達に襲われたんですかい?」
 稲生:「いや、まだあの時の戦いの方が楽でしたねぇ……」
 イリーナ:「そうね。私達、戦争に巻き込まれて来たんだから」
 藤谷:「中東のガザ地区からの御帰りですかい?それとも、ソマリア?」
 稲生:「魔界ですよ。魔界にも国がいくつかあって、僕達が贔屓にしている国が、隣国に攻め入られたんですよ」
 藤谷:「それはまた大変なことで。……こっちに影響は無いんですよね、先生?」
 イリーナ:「そのはずよ。ミッドガードの奴ら、人間界と……あ、してるわよね」
 稲生:「でも、中国やロシアと取引をしているだけでしょう?直接日本に来ますかね?」
 イリーナ:「私達が頑張らないとね」
 稲生:「はあ……」
 藤谷:「俺も微力ながら、できる限りのことはしますぜ」
 イリーナ:「ありがとう。もしかしたら、ヘリコプターを借りることになるかもね」
 藤谷:「おお!お任せ下せぇ!コロナ禍に入る直前、俺も操縦免許取ったんですよ。親父にばっかり操縦させるわけにはいきませんからねぇ!」
 稲生:「確かに北海道の時は、登山部長の操縦するヘリに助けられたんでしたっけ」
 イリーナ:「あのヘリって、マシンガンとか付いてたっけ?」
 藤谷:「あ、いや、攻撃ヘリじゃなく、空から測量する為のヘリなんで……。航空写真撮ったりですとか……」
 稲生:「すいません、班長。先生、今日は酔いが早いみたいです」
 藤谷:「気にすんなって。それより、聞いたか?今月から大石寺の添書登山が再開されるぞ!」
 稲生:「そうなんですか?」
 藤谷:「ああ。具体的には11日からだ。但し、コロナ対策で、人数制限はするみたいだぜ。だから、事前予約制だ」
 稲生:「なるほど……。初日は大勢来ますかね?」
 藤谷:「どうだろうなぁ……。取りあえず作者は向かうみたいだから、向こうでガチ勢と鉢合わせしてケンカにならないかが不安だ」
 稲生:「いいんですか、そんな情報漏らして?」
 藤谷:「酒の席だからしょうがねーよ。ねぇ、先生?」
 イリーナ:「お察しくださいw」
 稲生:「話は変わりますけど、リシーツァは大丈夫ですかね?」
 イリーナ:「何とか逃げ切れたみたいよ。取りあえず、アルカディア王国から離れるようには言っておいた」
 稲生:「威吹は……無事だそうです。幸い、南端村には暴風が来た程度で済んだようです」
 イリーナ:「おお、良かったわね。でも、まだよ。ということは、アルカディアシティは壊滅していない。大統領の首を持って行かれて、残された軍隊が黙っていないと思う。問題は、ベタン爆弾があと何発残ってるかってところね」
 稲生:「その前にアルカディア軍が制圧してくれるといいんですが……」
 藤谷:「横レス失礼。その大統領がどれだけの権限を持っているかにもよるぜ?軍隊全てを掌握しているんだったら、大統領が死んで、すぐに後継者を決めないと混乱する。北朝鮮なんかがそうだろ?金正日が死んで、すぐに金正恩がトップになったけどよ。それでも軍高官が処刑されたりと、だいぶ混乱したのは記憶に新しい。その、ミッド……何とかって国は独裁政権なんですか?」
 イリーナ:「そうね。北朝鮮ほどではないけど、中国並みってところかしら。一党独裁制であることは間違い無いわね。一党独裁の大統領制よ」
 藤谷:「それじゃ、きっと大混乱ですぜ。その敵国に乗り込んで、あとは首都をズッタズタに攻撃してやりゃ、国取り合戦は大勝利です!」
 イリーナ:「言われなくても、きっとやってる……いや、どうでしょうね。あの安倍春明総理に、そんなことができるかしら」
 稲生:「いずれにせよ、僕達の出る幕は無いですか?」
 イリーナ:「今のところはね。とにかく明日、エレーナと合流して情報を聞き出しましょう」
 稲生:「分かりました」

[7月3日01:30. 静岡県富士宮市 富士宮富士急ホテル 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 マリア:「……!?」

 マリアは訳の分からぬ夢を見て目が覚めた。
 攻撃ヘリや戦車に追い回される夢だ。
 応戦しようにも何故か魔法が使えず、ただ逃げるしかないという悪夢であった。

 マリア:(ここは……?)

 おぼろげな記憶の糸をたぐり寄せ、ホテルの部屋にいるところまでは思い出せた。
 隣のベッドではイリーナが鼾をかいて寝ている。
 ベッドの時計を見ると、夜半過ぎであった。

 マリア:(夕方くらいに寝て、今まで眠りこけてたのか……)

 マリアは欠伸をしてベッドから起き上がった。
 トイレに行きたいのと、変な夢を見たせいで変な汗をかいた為、シャワーを浴びようと思ったのだ。
 すると、室内の椅子に座っていたミク人形が動き出して人間形態になる。
 どうやら脱いだ服や下着を洗濯してくれるようだ。
 このホテルにはコインランドリーがあって、24時間稼働しているとのことである。
 替えの下着と、部屋備え付けの寝巻を手にバスルームに向かう。
 既に使われた形跡があるが、イリーナが使ったのだろう。
 そこで頭から全身洗い、ようやくさっぱりした。
 替えの下着は黒いスポブラと黒いスポーティーなビキニショーツ。
 いつもはもっと可愛いデザインの下着なのだが、魔界に行く時は大体こんな感じ。
 魔界に行くと大抵何らかの敵とエンカウントして戦闘になるので、変な汗をかきやすい。
 洗濯しやすいのと、動きやすいからである。
 取りあえず下着だけ着けて、バスルームから出た。

 マリア:「わっ?!」

 びっくりしたのは、ドアを開けるとイリーナが立っていたからだった。

 イリーナ:「マリアぁ~?オシッコしたいんだけど、いいかしら?」
 マリア:「ど、どうぞどうぞ……」

 マリアは急いでバスルームから出た。

 マリア:(全く。心臓に悪いトイレ待ちをするBBAだ)

 マリアは心の中で悪態をつくと、寝巻を羽織ってドライヤーを使った。
 イリーナがトイレに入り浸っているうちに髪を乾かそうと思ったのだ。

 イリーナ:「マリア、疲れは取れた?」
 マリア:「あ、はい。もう大丈夫です」

 バスルームから出て来たイリーナが、そう話し掛けて来た。
 今度はもうびっくりしない。

 イリーナ:「あなたのお人形さんが1人いないみたいだけど?」
 マリア:「ああ、私の服を洗濯しに行きました。このホテル、コインランドリーがあるみたいなので」

 ブラウスはノーアイロンタイプなので、乾燥機で乾かして、ハンガーに吊るしておけばシワは取れる。
 下着に関しては、先ほども述べた通りスポーツタイプなので、それまた乾燥機で乾かせばそれで良い。

 イリーナ:「ドライヤー使い終わったら、私はまた寝るわよ」
 マリア:「あ、はい。因みに何時に起きるか、とかは?」
 イリーナ:「チェックアウトは9時半って聞いたけどね。マリアを心配して、勇太君がゆっくり目にしてくれたのよ」
 マリア:「そうでしたか」
 イリーナ:「まあ、朝食は取るだろうから、勇太君は7時くらいに起きるかもね。……いや、勤行の時間も入れると、もっと早く起きるかな」
 マリア:「分かりました」

 ドライヤーを使っていても、イリーナはベッドに潜り込んだ。
 その後、マリアは歯を磨いたり、再び寝る準備を始めた。
 だいぶ寝たので、また寝られるかどうか心配だったが、意外なほどに早く寝落ちすることができた。
 そして今度は、変な夢を見ることはなかった。
コメント
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