報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「斉藤絵恋、夜中の奇行」

2020-03-22 23:01:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日22:00.天候:雨 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター3F宿泊室]

 高芽衣子:「何だか今日は疲れたし、明日も早いからそろそろ寝ちゃおうか?」

 高野は部屋備え付けの浴衣ではなく、手持ちのスウェットに着替えて言った。

 愛原リサ:「うん」

 リサも絵恋もジャージに着替えていた。
 3人は既に風呂から上がっている。

 リサ:「また雨降って来た」

 リサはカーテンを少し開けて、外の景色を見ていた。

 高野:「この辺りは天候が変わりやすいのかもね。あとは春だからというのもあるかな」
 リサ:「春?」
 高野:「よく聞くでしょ?春雨とか、春雷とか」
 リサ:「ハルサメ……シュンライ……?」

 リサは前者においては食べ物のハルサメ、後者は春菊を思い浮かべた。

 高野:「違う違う。まあとにかく、春先に雷雨が降ることよ」
 リサ:「あ、何か遠くで空が光った」
 高野:「噂をすれば何とかってヤツね」
 リサ:「停電になったりしない?」
 高野:「んー、まあ大丈夫でしょう」

 リサは自分のベッドの中でうずくまる絵恋に話しかけた。

 リサ:「どうした、サイトー?雷怖い?」
 斉藤絵恋:「か、雷なんかどうでもいいのよ……。そ、それよりも、やっぱり怖い……」
 リサ:「雷が?」

 絵恋はリサの質問に大きく首を横に振った。
 高野が察する。

 高野:「昼間の検査で、斉藤さんがBOWの反応が出たってことね?」
 絵恋:「は、はい!」
 高野:「そうねぇ……。現時点ではまだ何とも言えないけど、今まで大丈夫だったんでしょう?」
 絵恋:「ええ、まあ……」
 高野:「それがいきなり現れるなんてことは無いから大丈夫よ」

 高野は思いっ切り嘘を言った。
 少なくとも生物兵器ウィルスの感染者や被験者において、特に後者においては突然に変異することが分かっている。
 90年代のTウィルスなどは、まだいきなり化け物に変化するということはなかったが、最近の生物兵器ウィルスや特異菌にあっては即効性が明らかである。
 恐らく需要がそれを求めた結果だろう。
 リサにはどのようなウィルスが投与されて現在に至るのか、それは今回の検査と実験で明らかになるだろう。
 いや、今までのそれで9割方は分かっていたはずだ。
 ただ、恐らく残りの1割と、今後の変化に注目する必要ありという結果が出ていたことも高野は何故か知っている。
 新型コロナウィルスのワクチンを作る為というのは表向きで、やはりリサのことを(生物兵器として)もっと深く知る為の実験をしたかったのではなかろうか。
 高野はそう思っている。

 絵恋:「本当?」
 高野:「ええ。それに私は、昼間の実験については少し疑問を持ってるの。だからきっと、斉藤さんに出た結果も間違いだと思う。明日また再検査をするみたいだから、それで分かると思うね。斉藤さんはいつもリサちゃんの側にいるから、何か移っちゃったんだよ、きっと」
 リサ:「え?私のせい?」Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
 高野:「そうは言ってないでしょ」
 絵恋:「わ、私の結果がリサさんのおかげなら、それはそれで本望ですけど……」
 高野:(あー、でも、リサちゃんが何か移したんであれば、あの結果も有り得るなぁ……)

 高野は個人的には善場のことは嫌いだった。
 同じ世代だから仲良くできるかと思ったが、善場は勘が鋭すぎた。
 時として、勘の鋭すぎる女性も同性に嫌われやすいという。
 ただ、善場の国家公務員としての立場上、嘘の結果を出して来るとも思えなかった。
 何かの間違いか、或いはガチか、そのいずれかは不明にせよ、斉藤絵恋にBOWの反応があったという話は本当なのだろう。

 高野:(善場主任、どういう意味で言ったんだろう?『感染者』として?それとも、『被験者』として?)

 前者であれば犯人はリサだろう。
 リサには持ち前のウィルスを意図的に他人に感染させる力を持っている。
 今リサは愛原のことを慕っているが、もしもそれが『獲物として』なら、明らかに愛原も危ない。

 高野:「(明日、問い質してみましょう。それに、そうでなくても再検査で分かることだけどね)とにかく、今怖がってもしょうがないよ。全ては明日分かること。明日に期待して、今夜はもう寝ましょう」
 リサ:「はーい」
 斉藤:「……はい」

 高野がまだ楽観している理由は他にもある。

 高野:(もしもあの検査結果がガチの陽性だったとしてもだよ?そういうことには真っ先に反応するリサちゃんが全く反応していないじゃない。それも疑問だよね)

 だからこそ高野は、絵恋の検査結果には懐疑的だったのだ。
 そう、今夜就寝したところまでは。

[3月6日02:00.天候:雨 同センター3F宿泊室→B3F階段室]

 リサ:「ん……?」

 リサはふと目が覚めた。
 まだ周りが暗いのは、何もベッドの横のカーテンを閉めているからだけではないだろう。
 スマホを見ると、まだ午前2時だった。
 こんな時間に目が覚めたのは、何も外の雨音のせいだけではない。

 リサ:「!?」

 部屋のドアが閉まる音がしたのでベッドの外を見ると、向かい側のベッドのカーテンが半開きになっていた。
 そこには絵恋が寝ている。
 リサが持ち前の眼力(夜目がとても利く)で絵恋のベッドを覗くと、そこは空になっていた。

 リサ:(トイレにでも行った?)

 室内にはトイレが無い。
 だからトイレは、部屋の外の共用トイレを使用することになる。
 リサは絵恋の後を追って、部屋の外に出た。
 廊下は消灯時間とはいえ、真っ暗に消されているわけではない。
 所々照明は点いていて、普通に歩く分には何ら問題無い明るさだ。
 その廊下の向こうに絵恋が歩いているのが分かった。

 リサ:「サイトー」

 リサは後ろから声を掛けた。
 しかし、絵恋は全く反応しない。
 歩を止めようともしない。

 リサ:「サイトー?」

 リサはもう一度声を掛けてみた。
 しかし、絵恋は全く無反応だ。
 そのうち、絵恋はトイレの前を通り過ぎてしまった。

 リサ:「サイトー?トイレこっちだよ?」

 だが、やっぱり反応が無い。
 もちろん後ろから手を掴んで止めることもできた。
 しかし、リサはそれをしようとは思わなかった。
 絵恋がどうして反応しないのか、そしてどこへ行こうとしているのか気になったからである。
 まあ、すぐ後ろを歩いているし、もし何かあっても何とかできるくらいの自信はあった。
 絵恋は階段室に入った。

 

 階段は上と下に分かれている。
 絵恋はどちらに行っただろう?

 1:上
 2:下
 3:しかしすぐに階段室を出た。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「初日の検査終了」

2020-03-21 19:48:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日17:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 本日の私の検査は終了した。
 ところが絵恋さんに何か悪いものが見つかったらしく、彼女とBOWたるリサは検査続行となった。
 私達は先に地上の研修センターに戻っても良かったらしいが、リサが寂しがるので、彼女らが終わるまでそこに留まることにした。
 で、ただ待つのもヒマなので、資料室を使わせてもらうことにした。

 職員:「失礼します。まもなくお時間ですので、退室をお願いします」
 愛原:「あ、はい」

 私はとある記録映像を観ていたのだが、ヘタなホラー映画よりも不気味で怖い映像であった。
 バイオハザードたけなわの霧生市を私達は駆けずり回って生き延びたわけだが、霧生市の別の場所ではどんな感じだったのかがまとめられている資料があったので。
 要は市内の防犯カメラの映像とか、地元マスコミが撮影したテレビカメラとか、車のドライブレコーダーの映像とか、そういうものだ。
 ハンターに投げ飛ばされた人が防犯カメラに当たり、カメラが壊れて砂嵐になるところとか、地元のマスコミが暴動事件として報道していたところ、リポーターの後ろから噛み付いてきたゾンビの映像とか、車で逃げようしたものの、ゾンビの大群に突っ込んでしまい、ゾンビに車から引きずり出される人の映像とかがあった。

 愛原:「よくあれだけの映像をまとめましたねぇ。まるでYouTubeを観ているようだ」
 職員:「政治家に惨状を報告するには、ただの文書だけではダメなのですよ」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「おい、これ、アネゴじゃねーのか!?」

 高橋が一枚の写真を出してきた。
 そこには大火災を起こした市街地を歩くゾンビ達に向かって、ライフルを放つ女性の横顔が写っていた。
 だが、写真はどうも霧生市ではないような気がする。
 英語の看板とかが目立つから、アメリカのどこかだろう。
 恐らく、ラクーン市かトールオークス市ではなかろうか。

 職員:「申し訳ありませんが、お時間ですので……」
 高野:「だってさ。早いとこ元あった場所にしまいなよ」
 高橋:「あの善場のねーちゃん、本当に嘘言ってるのか?」
 高野:「ええ。本当に冗談が好きな公務員さんね」
 愛原:「多分その写真、高野君じゃなく、本物のエイダ・ウォンじゃないの?」

 資料室の中にはBSAAの幹部職員の名簿や、それに関わる重要人物についての資料もあった。

 高野:「きっとそうですよ」

 私達は資料を片付けて、資料室を出た。

 愛原:「いやあ、勉強になりました。ありがとうございました」
 職員:「いえ……」

 レセプションに行くと、リサと絵恋さんが待っていた。
 もちろん、善場主任もいる。

 愛原:「よお、リサ。どうだった?」
 リサ:「私は運動能力とか、第3形態まで変身させられた」
 愛原:「第3形態!?大丈夫なのか!?」
 リサ:「はい、これ。先生にあげる」

 そう言ってリサは私に黒い羽根を渡してきた。
 カラスの羽根か?ん?それにしては、少し大きいな。

 愛原:「何これ?」
 リサ:「羽根」
 愛原:「いや、分かってる。何の?」
 リサ:「私の」
 愛原:「リサの!?」
 善場:「リサさんの第3形態、凄かったですよ」
 愛原:「やっぱその……『異形の者』になるんでしょ?」

 一瞬『化け物』という言葉が出かかったが、さすがにリサに悪いのでそれは引っ込めた。

 善場:「後で写真はお見せします。むしろ第3形態の方を第2形態にした方がいいかもしれませんね」
 愛原:「一体、どういうことなんだ?」
 善場:「こちらのリサ・トレヴァーはまだまだ進化できるようです。背中に翼を生やして飛ぶことができました」
 愛原:「な、何だってー!?」

 空を飛ぶBOWなんて聞いたことないぞ!
 ヘリコプターなどに便乗して襲ってくるBOWの映像ならさっき観たけど!

 リサ:「今度、先生を抱えて飛んであげるね」
 愛原:「凄いな!ヘリコプター要らずじゃん!」
 善場:「明日、写真や映像をお見せします。……問題は斉藤絵恋さんの方なんですが……」
 愛原:「そんなに凄いものが?」
 善場:「どう検査しても、彼女からはBOWの反応しかしないんです」
 愛原:「は!?」

 私は絵恋さんを見た。
 絵恋さんは青ざめた様子で呆然としていた。

 愛原:「いや、だって彼女、普通の人間ですよ。私はリサのBOWとしての能力は何度も見ていますが、絵恋さんは変化すら見たことがない」
 善場:「ええ。今のところはまだ変化すらできないでしょう。しかし、その能力の片鱗は出ているようです」
 愛原:「何のBOWですか!?」
 善場:「それは分かりません。ですが富士宮市におけるバイオテロ事件において、リサ・トレヴァーだけではなく、斉藤絵恋さんも狙われた理由がそれであると考えると、こちらも捜査はしやすくなります。引き続きの御協力をお願いします」

 リサに関しては保護者の私に一任されているが、絵恋さんに関しては斉藤社長という立派な父親がいるのだから、そちらに同意を取り付けてもらいたいものだ。

[同日18:00.天候:晴 同センター2F食堂]

 研究施設をあとにした私達は一旦部屋に戻ると、再び食堂に集まって夕食を取ることにした。

 高橋:「何だァ?自分が化け物だと知ってショックを受けて、メシも喉を通らなくなんねーのか?」
 絵恋:「うるっさいわね!あんなの何かの間違いよ!こうなったら、食べて食べて食べまくってやるんだから!」
 リサ:「サイトー、その意気」
 愛原:「おいおい。食べ放題じゃないんだから、程々に頼むよ」

 夕食はチキンカツに生野菜、サバの味噌煮に味噌汁、漬物に御飯と味噌汁がお代わり自由というものだった。

 高橋:「先生、ビール買って来ました」
 愛原:「おっ、ありがとう」

 高橋が自販機コーナーで缶ビールや缶チューハイを買って来た。

 愛原:「じゃあ皆、今日は御苦労さん。検査は明日で終わりだから、それまで頑張ろう」
 高橋:「はい!」

 食堂のテレビでは相変わらず新型コロナウィルスのことばかりが取り上げられていた。
 中国で起きたバイオハザード事件についてはあれ以来何も報道されていない。
 それにしても、絵恋さんからBOWの反応があったなんて意外な展開だ。
 私達も霧生市でTウィルスには感染しただろうが、どうやら私には最初から抗体があったらしいのと、高橋と高野君にあってはワクチンを接種したことで、やはり免疫力が付いている。
 そういうことではないのだろうかと思ったが、いきなりBOWという単語が出て来たのだから、やっぱり……。
 いや、よく分からん。
 リサの新しい能力についても意外だったし、明日になればもう少し分かるのだろうか。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「午後の検査」

2020-03-21 11:43:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日14:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 昼食を終えた私達は、午後からの検査に取り掛かった。
 しかし、連れて行かれたのは会議室だった。

 善場:「午後からもよろしくお願いします。但し、午後の検査は文書による聞き取り調査と致します」

 机の上には文書が置かれていた。
 そこには質問項目がずらずらと並べられていて、それに記述式や選択式で答えるというものだった。

 高橋:「飯食った後で座学じゃ、眠くってパネェぜ」
 愛原:「お前は午前中寝てたろ」
 高橋:「あれは一服盛られたんですって!なぁ、おい!?」

 高橋は善場主任を睨み付けた。
 しかし善場主任は咳払いをしただけだった。

 善場:「とにかく、この時間はこれと致します。時間は1時間、15時までとしましょう。それでは始めてください」

 私が問題文を見ると、そこには私が探偵を始めたきっかけだとか、霧生市のバイオハザード事件をどうやって生き抜いたかを問う内容になっていた。
 何だこりゃ?
 過去に善場主任に聞き取り調査をされて、それで答えた内容と重複していると思うが……。
 私のペンが止まったのは、豪華客船“顕正号”におけるバイオハザード事件だった。
 これについては私の場合、殆ど答えることができなかった。
 乗船したきっかけだとか、そこまでである。
 しかし、これは……皆、同じ問題なのだろうか?
 少なくともリサや絵恋さんに同じ問題を出しても、殆ど答えられないと思うが……。

 それから1時間後……。

 善場:「お疲れ様です。予定時間となりましたが、回答は終了しましたでしょうか?」
 愛原:「ええ、一応」
 高橋:「先生の顔を立てて、一応真面目に答えてやったぜ」
 善場:「ありがとうございます」

 私が回答用紙を提出した時、善場主任に聞いてみた。

 愛原:「この問題文、1人1人内容が違うのか?」
 善場:「ええ、その通りです。愛原所長もお気づきだと思いますが、所長に出した問題をリサ・トレヴァーは答えられないでしょうから」
 愛原:「それもそうだ」

 ではリサには、どんな問題が出されたのだろうか。

 善場:「皆さん、ご協力ありがとうございました。愛原所長以下3名の方々は、これで本日の検査を終了致します」
 愛原:「えっ、もう終わり?」
 高橋:「やっと地上に出れるぜぇ~」
 高野:「以下3名?愛原先生と、あとは誰ですか?」
 善場:「高橋助手と高野事務係です」
 愛原:「リサはともかく、絵恋さんもまだ続くのか?」
 善場:「ええ、そうなんです」

 リサはともかく、絵恋さんまで何故?

 善場:「むしろ我々としては斉藤絵恋さんを調べたいと思っています」
 愛原:「な、何だって!?」

 絵恋さん、検査で何か見つかったのか?

 愛原:「絵恋さん、検査で何か見つかったのか?」
 善場:「はい。ですが、それが何かはお教えできません」
 愛原:「そんなに!?」
 善場:「そういうわけです。斉藤絵恋さん、ご協力願えますね?」
 絵恋:「わ、私は……リサさんと一緒ならいいです」
 善場:「もちろんリサさんはリサさんで、引き続き検査がありますので、それは可能ですよ」
 高橋:「俺達は帰っていいんだな?」
 善場:「もちろん。但し、地上の宿舎までですよ?本当に帰宅はしないでくださいね」
 高橋:「ちっ……」
 愛原:「高橋」
 リサ:「やー!先生も一緒にいてくれなきゃ、や!」

 リサは私に抱き着いた。

 高橋:「リサ、先生に何てことしやがる!?そこ代われ!」
 愛原:「高橋、お前少し黙ってろ」
 高野:「せめて先生にくらい、絵恋さんのどこが悪いのか教えてあげてもいいんじゃないですか?」

 すると善場主任、冷たい目を高野君に向けた。

 善場:「個人的にはあなたの検査も続行したいくらいです。明らかに、『エイダ・ウォン』の遺伝子情報があなたの中に入っています」
 高野:「! さすがは国家公務員さんは、御冗談もインテリですねぇ」
 愛原:「高野君、それは本当なのかい?」
 高野:「先生。世の中にはそっくりな人間が3人いるというじゃありませんか。その程度のレベルですよ」
 愛原:「……そうかい」
 善場:「いかがなさいますか?宿舎に戻られてもいいですし、ここに留まって頂いても構いません」
 愛原:「今日のこのコ達の検査は何時ごろまで掛かりますか?」
 善場:「夕食の時間には間に合わせたいと思いますので、17時くらいには終わらせたいと思います」
 愛原:「17時か。あと2時間くらいはあるな。このビジター権限で、資料室や映写室には入れましたね?」
 善場:「それは可能です」
 愛原:「ちょっと気になる物があるので、資料室の資料閲覧と映像観賞をしてもいいですか?」
 善場:「分かりました。すぐ担当部署に許可させましょう」

 善場主任、リストタグの権限は『一般職員』扱いだが、実際は上級職員くらいの立場にあるのではないかと思った。

 愛原:「それじゃリサ、俺達はお前達が戻って来るまで、この施設で待ってるから。それならいいだろ?」

 リサとしては検査場まで一緒に来てもらいたかったようだが、忍耐力のあるコなのだろう。
 少し考えてから首を縦に振った。

 善場:「あなたは所長達を資料室に案内して」
 部下:「分かりました」

 善場主任は一緒に来ている部下の男性職員にそう指示した。

 善場:「じゃ、あなた達は私についてきてください」
 リサ:「はい」
 絵恋:「はい」
 部下:「では愛原所長方は、こちらへ」
 愛原:「お手数お掛けします」

 私達は黒スーツを着た善場主任の部下に付いて行った。

 愛原:「高野君」
 高野:「何でしょうか?」
 愛原:「人には秘密の1つや2つ、当たり前に存在する。キミの正体が何であろうと、俺はキミをうちの事務所の事務係として扱うよ」
 高野:「ありがとうございます」
 高野:「先生、俺は!?俺は先生には既に秘密を暴露して……!」
 愛原:「あー、分かった分かった。俺はお前を助手として扱うよ」
 高橋:「嫁でもいいですよ!?」(*´Д`)
 愛原:「あー、聞こえねぇ聞こえねぇ!聴力検査、もう一回やってもらった方がいいかな?」
 高野:「頼めばやってもらえるかもしれませんね?」

 私達はそういうやり取りをしながら、資料室へと向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「実験開始」

2020-03-20 22:41:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日10:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は政府機関管轄の秘密研究所にいる。
 新型コロナウィルスのワクチンを、BOWであるリサが保有しているウィルスから作れないかを検査・実験する為である。
 それまで日本アンブレラの研究所で監禁生活を強制的に送らされ、且つ非人道的な実験を受け続けていたリサにとっては、研究所はその単語すら聞きたくないほどのトラウマである。
 政府機関にとっては用があるのは実質的にリサだけなのであるが、彼女を暴走させるわけにはいかず、私達もついでに検査という形でリサに同行し、彼女を落ち着かせる役目を仰せつかったわけだ。

 高橋:「…………」

 私達は検査着に着替え、まるで人間ドックのような検査を受ける。
 高橋には別に思う所があったようだ。

 高橋:「……何か、ムショに入る前の身体検査みたいっス」
 検査技師A:「それに似てるかもしれませんね」

 白衣を来た検査技師は微笑を浮かべながら言った。

 高橋:「あー……」

 今度は医師にペンライトで口の中や舌状、目を照らされる高橋。

 高橋:「何だよ?今度はオツムの検査かぁ?俺の頭は至って正常だぜ、なぁ?」

 今度はベッドに寝かされる高橋。
 頭部にコードを装着される。

 検査技師B:「それでは実験を開始します」
 高橋:「俺もかよ!?」

 そして高橋、左手に何やら注射された。

 検査技師B:「少し……眠くなるかもしれませんよ」
 愛原:「マジでやっちゃうんですか?」
 善場:「申し訳ありません。刑務官に悪態をつくような方は眠っててもらいます」

 少年刑務所に収監される際、高橋はかなり暴れたらしい。
 国の機関なだけに、そういう情報は入ってくるのだろう。

 愛原:「本当に高橋はついて来ただけか……」
 看護師:「愛原さん、この紙コップにお小水を取ってきてください」
 愛原:「はい」
 看護師:「これが終わりましたら、次は心電図検査です」
 愛原:「ますます人間ドックだなぁ……」

 リサもリサで、最初は私達と同じような検査を受けていた。

 検査技師C:「じゃあ、これは?」
 リサ:「右!」
 検査技師C:「凄い!両目とも2.0です!」
 リサ:「いぇい」

 これで第0形態(人間)の身体能力なのだから凄い。
 これが第1形態(鬼娘)になったら……。
 普通の人間ドックでありながら、ここの職員達がリサに気を使ったのは、リサから体液を取る時。
 リサにも検尿や採血があったのだが、検尿を提出する窓口ではなく、防護服を着た職員が直接受け取るというものだ。
 そして、それは採血も同じ。
 善場主任がリサに第0形態でいさせたのは、体内に有しているウィルスが一番が弱い状態である為、少しでも感染のリスクを下げる為である。
 それでもリサから体液を採取する時は防護服着用という念の入れよう。
 私が見た限り、リサの血液は普通の人間と同じ赤色だった。
 実はBOWも私が知っている限りでは、意外と血液の色は赤色であることが多い。
 まだ生前は人間だったことが分かるゾンビも赤いし、爬虫類や両生類から作られたハンターも赤色である。
 そしてボスキャラであるタイラントもそうだ。
 だからこそ逆に怖いのだと思う。
 これで血の色まで違えば、本当にただの凶悪な化け物を退治しただけだと割り切れるが、赤いことで、元は普通の人間だった者を殺してしまったという罪悪感が出てくる。

 看護師:「愛原リサさーん、次の検査でーす」
 リサ:「はーい」

 これまでの流れからリサは軽く返事をしたが、連れて行かれた場所が明らかに隔離区画である。
 だ、大丈夫かな……?

 検査技師D:「愛原学さん、こちらへ。心電図検査です」
 愛原:「あ、はい」

 大丈夫だということを信じておこう。

[同日13:00.天候:不明 同施設内・職員食堂]

 私達は昼食を取ることが許された。
 どうやら職員達の後に取るらしい。

 絵恋:「リサさん、大丈夫だった?」
 リサ:「うん……。大丈夫……」

 リサも何やら急に隔離施設に連れて行かれ、流れ作業的に実験を受けたので、何が何だか分からぬまま終わったという感じだったらしい。
 もっとも、それがこの施設側のリサ暴走防止法なのだろう。

 高野:「あ、食事が来たみたい」

 因みに好きなメニューが頼めるのは職員だけで、私達は違うらしい。
 やっぱり定食であった。
 今日の昼食はビーフカレーにサラダ、オニオンコンソメスープにオレンジであった。

 愛原:「あ、ここでカレーが出るのか」
 高橋:「リサ達、昨日食ったよな?」
 リサ:「いい。カレーも好きだし」
 絵恋:「えぇえ?リサさんがそう言うなら吝かじゃないけどぉ?」

 リサの口添えが無ければ、吝かであったということか。

 高橋:「午後からはどんな検査なんですかね?」
 愛原:「普通に食事ができるということは、血糖値だの大腸検査だの胃カメラとかは無いということだな。今日1日で終わるんじゃないか?」

 予定は2泊3日ということになっている。
 前泊も入れてだから、明日に帰ることになる。
 食事は明日の昼食まで出ることになっているから、遅くとも明日の夕方までということになる。
 恐らく私達はさっさと検査を終わらせて、リサの実験だけがそれまで掛かるということなんじゃないかな。
 それまでリサの機嫌が持てばいいが……。

 愛原:「この中ではリサが一番大変な実験を受けることになるからな。リサ、大丈夫か?辛くなったら俺に言えよ?」
 リサ:「うん。大丈夫。……アンブレラの研究所よりはだいぶマシ。……今のところは……」
 愛原:「そうか」

 その頃、午前中の検査結果を確認していた職員達だが、ぶっちゃけ注目していたのはリサだけで、ついでに検査を受けただけの私達の方は見向きもされていなかった。
 だが、たまたま見向きをした職員がある人物の結果を見て驚いたという。
 その人物とは……。

 1:愛原学
 2:高橋正義
 3:高野芽衣子
 4:斉藤絵恋
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「地下研究所へ」 2

2020-03-20 15:32:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日09:30.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 善場主任がドアを開けると、その先は地下駐車場になっていた。

 高橋:「あ?何だこれ?ただの駐車場じゃねーか」

 そういえば昨日入場した時、私達は本館前の平駐車場に車を止めるよう指示された。
 しかし道はその先にも続いていて、看板に『荷捌場』とか『職員用駐車場』とか書いてあったような気がする。
 私達が駐車した所が『来訪者用駐車場』だったわけだ。

 愛原:「なるほど。侵入者に高橋のような反応をさせるのが狙いというわけですね?善場主任」
 善場:「まあ、そんなところです。だからといって全く使用しないのも怪しいので、本当に職員駐車場とか荷捌場として使用しているんですよ」

 駐車場の広さとしては大したことはない。
 このフロアだけなら20台も駐車できないだろう。
 ちょっとしたスーパーの駐車場といったところか。
 その駐車場を突っ切って、反対側のドアに行く。
 どうやら搬入口は左側のドアだが、私達は右のドアに向かった。
 自動ドアながら、随分と重厚な鉄扉が待ち構えている。

 愛原:「ん!?」

 その重厚な鉄扉が開くと、また向こうは同じドアがあった。

 愛原:「本当に警戒が厳重なんですね」
 善場:「もちろんですよ」

 結局その鉄扉は3重に仕切られていた。
 そこを通って、ようやく近代的な空間が広がる。
 知らない人が見たら医療施設のようにも見えるが、私が一度だけ見学させてもらったことのある斉藤社長の研究所に雰囲気が似ていた。

 Pepper:「研究所へヨウコソ!訪問ヲ歓迎シマス!」
 愛原:「うわ、びっくりした!Pepper君がいるんですか、ここ!?」
 善場:「本当に入場の資格のある人を和ませる為です」
 愛原:「私には、『赤いボブカットで巨乳のお姉さんロイド』か『金髪ポニーテールで巨乳のお姉さんロイド』にアテンドしてもらいたいのですが?」
 善場:「受付係、早速脳内検査をしてもらいたい人がいるんだけど……」
 愛原:「冗談ですよ、冗談!」
 高野:「先生、そんな他の作品出されても困りますって……」
 高橋:「昔、埼京線の幽霊電車で乗り合わせた芸能事務所の社長の所っスね?」
 愛原:「何だ、知ってんじゃねーかよ」

 私達の会話に絵恋さんはリサに耳打ち。

 絵恋:「本当に時々難しい話をする人達ね」
 リサ:「うん。大人の会話」

 いや、ちょっとそれは違う……いや、まあ、そういうことにしてもらっておこう。

 善場:「それではいきなり検査、実験というのもアレですので、できる限りの範囲内で所内の御案内を致します」
 愛原:「いいんですか?」
 善場:「はい。その代わり、こちらのリストタグを着けてください。所内にいる間はこれを着けておいてください」

 私達は手首にリストタグを着けられた。
 それは善場主任達も同じだったが、タグの色が違う。
 何ても私達のは『ビジター用』で、善場主任のは『一般職員用』とのこと。
 もちろん、ここを歩ける権限が違うということだ。
 善場主任が言うのは、ビジター用のタグで行ける範囲ということだ。
 私達が今いる場所は受付ロビー。
 英語で『Reception』と書かれていた。

 善場:「こちらがトイレ。そちらが食堂です」
 愛原:「あ、ここにもあるんだ」
 善場:「お気づきですか?この食堂の真上には、研修センターの食堂もあるんですよ」
 愛原:「あっ、なるほど。共用か!」

 奥を見ると、片隅に荷物用のエレベーターがあった。
 学校の給食室なんかにもある、ワゴンを昇降させる為のエレベーターだ。
 地上で作ったものを下の研究施設に下ろすのか。
 通りでここの食堂には厨房が見当たらないと思った。
 研修センターでは定食一択しか無いが、ここでは好きなメニューが頼めるらしい。

 Pepper:「健康的デ美味シイ食事ヲオ楽シミクダサイ」

 ここにもいた!

 Pepper:「モウ一度、シンディ様ノ小脇に抱エラレタイ……」
 愛原:「ん?」
 善場:「あー、もしもし、施設課ですか?食堂のPepperの調子が悪いので、至急看てください」
 愛原:「何か、変なこと言い出しましたね?」
 善場:「整備不良で申し訳ないです」
 愛原:「そのうち、『下等デ愚カナ人間共ヨ!オマエ達ハ我々AIノ前ニ平伏スノダ!』とか言い出したりして?」
 善場:「即座に緊急停止の後、廃棄処分と致します」

 だが私は、チラッとリサを見た。
 あれはロボット系のSFだから、暴走ロボット達のセリフであるが、こちらはまた別。
 さっきの私のセリフ、ここではリサが言い出しそうだ。

 善場:「それでは本日からの予定を御説明致しますので、会議室へどうぞ」
 愛原:「了解しました」

 地下研究所なので外は一切見えないが、それなりの近代的な設備で、いかにもSFの世界って感じだ。
 もしかしたら実験・観察用にハンターの一匹くらい飼っているのかもしれないが、さすがにそれは見せてくれなかったし、話もしてくれなかった。
 ただ、案内された場所の中には資料室もあって、そこではゾンビやハンターの写真もあったので、やはりここはそういうバイオハザードについて研究する施設なのだと実感させられた。

 善場:「改めまして、今回の検査・実験のメインはこちらにいる愛原リサさんとなります。今回の件の目的についてですが、昨今世界中を騒がせている新型コロナウィルスのワクチンの開発・製造をいち早く完成させることにあります。それを投与することによって感染者の症状を治癒させるだけでなく、私達未感染者の感染を防ぐことができれば万々歳です。それでなくても、インフルエンザワクチンのように、感染して発症しても軽症で済むようにできれば我々は未知にウィルスに対して勝利したと言えるでしょう」

 私は善場主任から話を聞いて、本当はリサの実験・観察だけで十分なのだろうと思った。
 しかしそれだとリサが拒絶して暴走する確率が高くなる。
 そこで私達が同行し、一緒に検査を受けることでそれを防ぎたいという狙いがあるのだと。
 だから私達が受ける検査って、ぶっちゃけ会社の健康診断とか、人間ドックみたいなものだった。
 それで果たして、本当にリサが大人しくしてくれるかどうかだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする