報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「墓泥棒」

2018-04-20 19:16:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日12:20.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 青葉園]

 首都高速の与野出入口から国道17号線(新大宮バイパス)に降り、そこから北進して青葉園を目指す。
 だが……。

 藤谷:「あり?」

 稲生達は青葉園に入ることができなかった。
 何故なら、そこに警察官が立っており、規制線が張られていたからだ。

 藤谷:「何かあったんかい?俺達、墓参りに来たんだけど?」

 すると若い警察官が説明した。

 警察官:「すいませんが、遺骨の盗難事件がありまして、その捜査中ですので、墓地は立ち入り禁止にさせて頂いております」
 藤谷:「遺骨の盗難事件!?いくら暖かくなってきたからって、随分とまた変なことしやがる泥棒が現れたもんだな?ええ、おい」

 だが、稲生はそれで嫌な予感がした。

 稲生:「あの……その盗まれた遺骨って、誰のなんですか?」
 警察官:「そういうことは捜査上の機密ですので……」
 稲生:「河合有紗さんの遺骨じゃありませんか?」

 すると警察官は稲生の言葉にピクッと反応した。

 警察官:「ちょっと待ってください」

 警察官は手持ちの無線機で何かを話し始めた。

 藤谷:「おい、どうやらビンゴみたいだぜ?」
 稲生:「有紗さんの遺骨が……盗まれた!?」
 藤谷:「いつ盗まれたのか分からんが、今こうしてサツが動き回っているということは、昨日今日の話っぽいな。てことは……」
 鈴木:「稲生先輩の枕元に現れた時間帯とピタリ一致するってことですね」

 その後、刑事がやってきて、稲生達は事情を聞かれた。
 もちろん稲生達は正直に話した。
 但し、枕元に幽霊が現れた話だけは端折ったが。
 もちろんそれで稲生達が疑われることはなく、しかも刑事は事の経緯を話してくれた。
 今朝方、河合家の墓だけが荒らされていた為、それを発見した管理事務所の職員が警察に通報したらしい。
 調べてみたら、墓石の下に埋められていた骨壺がそっくり無くなっていたとのことである。

 刑事:「一応、関係者の洗い出しをしている所です」
 稲生:「犯人の目星は付いているんですか?」
 刑事:「いえ、今のところは……。逆に稲生さんの方でも、何か心当たりは無いんですか?」
 稲生:「全く無いですよ」

 稲生は即答した。

 藤谷:「なんぼ何でも、顕正会員が墓暴きするとも思えんしな」
 稲生:「ええ」
 鈴木:「同感です」
 刑事:「とにかく、何か分かりましたら、どんな些細な事でも構いませんので、こちらに連絡を」
 稲生:「はい」

 稲生は刑事から名刺をもらった。
 そして、車に戻ったのだった。

 藤谷:「とんでも無ェことになりやがったな」
 稲生:「何でこんなことを……!ひどい……!ひどい……!」
 鈴木:「稲生先輩」
 藤谷:「しかしこりゃあ、アレだ。河合さんそのものに、ピンポイントに用があったヤツのしわざだぜ。マジで稲生君、何か心当たりは無いのか?」
 稲生:「だから無いですって!」
 鈴木:「それでその……御塔婆どうします?」
 藤谷:「しゃあねぇ。事情を話して、寺で預かってもらうさ。どうせあんな規制線、そんな何日も張っておけんだろ。規制線が解かれたら、改めて持って行けばいい」

 藤谷は車のエンジンを掛けた。
 質実剛健なベンツらしく、エンジンが轟音を立てる。

 藤谷:「取りあえず、寺に戻ろうぜ。……まあ、途中で昼飯食ってからでもいいがな」

 藤谷は青葉園の出口に向かってハンドルを切った。

 ……正証寺に戻るまでの間、稲生は昨夜のことを思い出した。
 鈴木の言う通り、誰かが河合有紗の遺骨を盗んだことがきっかけで、眠りに就いていた有紗の霊を起こし、それで稲生の枕元に向かったのだろう。
 イリーナから以前教えてもらったのだが、実は幽霊は1人ではないのだそうだ。
 意識体といって、幽霊が更に分身することがあるらしい。
 日蓮正宗の教義通り、本物の有紗の魂は今、地獄界に行ってしまっているのだろう。
 顕正会で罪障を積んだばっかりに……。
 稲生による塔婆供養や追善回向がどれだけ功を奏しているのかは分からないが、そんな急に罪障が消滅されるとは思えない。
 その為、稲生の枕元に現れたのはその分身である意識体と思われる。
 本物の魂が救われれば意識体も消えるというから、河合有紗の魂はまだ地獄界にいることが濃厚となった。
 では、何故?
 何故、犯人は河合有紗の遺骨を盗んだのか?

 藤谷:「なあ、稲生君。こういう時こそ、イリーナ先生の出番だと思わないか?イリーナ先生に占ってもらえば、立ちどころに犯人が分かるんだろう?」
 稲生:「そ、そうですね!」
 藤谷:「早いとこ、イリーナ先生に連絡を取ってみたらどうだ?」
 稲生:「先生は今夜、中東から来日することになっています」
 藤谷:「そうか。じゃあ、その時に相談することだな」
 稲生:「そうします」
 藤谷:「よし。そうと決まったら、飯でも食いに行こう。……おっ、そうだ。マリアさんの具合はどうなんだ?もし良くなっていたら、一緒に食べるか?」
 稲生:「そうですね!」

 稲生は水晶球を取り出した。

 鈴木:「おおっ!?稲生先輩も魔法が使えるんですか!?」
 稲生:「あー、そうか。キミには内緒だったな……」
 鈴木:「いや、大丈夫っスよ。もうエレーナの魔法は見てますから」
 稲生:「そう言う問題か。まあ、いいや。水晶球くらい、他の占い師も使ってるしね」

 稲生は水晶球に呼び掛けた。
 すると返って来たのは……。

 マリア:「悪い、勇太。もうエレーナとランチしてる」
 エレーナ:「稲生氏、遅いよ!こういうのはもっと早め誘ってもらわないと!」

 という答えだった。

 稲生:「ていうか、何で僕がエレーナに怒られなきゃいけないんだ?」

 鈴木が必死に笑いを堪えている。

 藤谷:「しゃあねぇ。魔女さん達も、たまには女子会したいだろうよ。俺達は俺達で男子会……ていうか、例の遺骨についての作戦会議と行こうぜ」

 藤谷は国道沿いにあるファミレスの駐車場にハンドルを切った。
 駐車場に車を止め、そこから降りる。
 その時、車内には何も異常は無かったはずだ。
 藤谷が車のドアをロックしたことも確認した。
 しかし……。

[同日14:00.天候:晴 埼玉県さいたま市 国道17号線(新大宮バイパス)沿線にある某ファミレス]

 藤谷:「あー、食った食った」
 稲生:「ご馳走様でした」
 鈴木:「ゴチです、班長!」

 3人は車に戻った。
 車の外観は何とも無かった。
 藤谷がロックを外し、3人はまた車に乗り込んだ。
 だが、そこで鈴木が異変に気付いた。

 鈴木:「ああーっ!!」

 そこには何と、河合有紗の為に用意した塔婆が見るも無残に真っ二つにへし折られていた。

 稲生:「そ、そんな……!」
 藤谷:「ちょっと待て!車を降りる時、大丈夫だったよな!?」
 鈴木:「もちろん。俺、見てましたし。……あっ!先輩、裏!」

 その時、鈴木がまた何かを発見した。
 折られた塔婆を稲生が持っていたのだが、その裏側に何かが見えたのだ。
 それは赤い……まるで血文字のようなもので書かれていた。

 ゆるさない……!こんなことで、私は救われない……!おまえを呪ってやる……!!

 稲生:「わああああっ!」
 鈴木:「塔婆供養が効いていない!?」
 藤谷:「マジかよ!?」

 

 稲生の脳裏に、恨めしそうな顔をして佇む河合有紗の姿が、まざまざと蘇って来た……。
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“大魔道師の弟子” 「当該レベルに到達していない者が高レベルの魔法を使うと……」

2018-04-20 10:15:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日08:45.天候:晴 東京都豊島区内某所 日蓮正宗(東京第3布教区)大化山・正証寺]

 住職:「……本日、願い出のございました塔婆供養につきまして、ただいま追善回向を懇ろに行いました」
 稲生勇太:「ありがとうございました」
 所化僧:「それでは15分の休憩を挟んだ後、9時より御講を始めます。皆様、お時間までに本堂にお集まりください」

 信徒達が一旦席を立つ。

 藤谷:「稲生君!」

 そこへ藤谷が声を掛けて来た。

 稲生:「あ、班長」
 藤谷:「どうしたんだい?塔婆供養をお願いするなんて、久しぶりじゃないか」
 稲生:「はあ……それが……」

 稲生は昨夜あったことを話した。
 藤谷は喫煙者である為、喫煙所に移動しながら話した。

 藤谷:「稲生君は本当、物の怪に縁があるよなぁ……」

 藤谷は喫煙所で煙草に火を点けながら頷いた。
 と、そこへ。

 鈴木:「稲生先輩!そこ、詳しくお願いできますか!?」
 藤谷:「す、鈴木君!?キミは幽霊までナンパする気かい!?」

 鈴木がメモ帳を片手に飛んできた。

 鈴木:「今度の夏コミに出すゲームなんですが、あえて新作を2つ出してみようかと思うんです!」
 藤谷:「8月の夏期講習会は強制不参加かよ……」
 鈴木:「他の月に行きます!」
 藤谷:「それならいいけどよ……」
 鈴木:「夏に因んで、ホラーシューティングを作ろうかと!」
 稲生:「何だそりゃ……」
 鈴木:「御題目を武器に、物の怪をバッタバッタ倒していくゲームです!」
 稲生:「ああ、エレーナから聞いたけど、キミも何か倒したみたいだねぇ……」
 鈴木:「愛の力ですよ」
 稲生:(まあ、マリアさんのことは諦めてくれたみたいだから、どうでもいいけど……)
 藤谷:「でもよ、稲生君。その……君の初恋の人の塔婆供養は昔やったんだろう?それでもダメだったというのか?」
 稲生:「そこなんですよねぇ……。僕がここに御受誡してから1度お願いしたんですよ。もっとも、それっきりだったもので、御住職様から注意されましたが……」
 藤谷:「まあ、故人に対する供養ってのは、先祖供養と同じだからな。塔婆供養1回だけじゃ、そりゃ寂しいだろうよ。よし、分かった。その初恋の人の墓はどこだ?まさか、どこかの邪宗の寺じゃないだろうな?」
 稲生:「さいたま市の青葉園です。公益財団法人がやってる、共同墓地ですよ」
 藤谷:「よし、それなら問題無い。後で車を出してやろう」
 稲生:「え?いいんですか?」
 藤谷:「ああ。俺も気になることがある。確かに塔婆供養1回こっきりで、後は放置プレイされた故人が終いにゃキレたというのは分かるが、どうして今頃になって……というのはある」
 稲生:「勤行の時にも回向していたんですよ?」
 藤谷:「それを最近サボるようになったか?」
 稲生:「いえ、そんなことは無いです!」
 鈴木:「でも、今は生きている好きな人が別にいるのに、ちょっとアレですよねぇ……」
 稲生:「う……」

 稲生はマリアの顔を思い浮かべた。
 今はマリアの方も自分のことを好きになってくれている感はある。
 にも関わらず、いくら追善回向の為とはいえ、いつまでも前カノを思って……というのもどうかという気持ちもまたあった。

 藤谷:「鈴木君!」
 鈴木:「あっ、サーセン!」
 藤谷:「とにかく、だ。御講が終わったら、すぐに行ってみるぞ」
 稲生:「はい」
 鈴木:「あの……俺も一緒に行っていいですか?」
 藤谷:「稲生君がいいと言うならいいぞ」
 稲生:「まあ、別にいいけど……」
 鈴木:「あざーっす!」
 藤谷:(こいつ、幽霊までゲーム作りのネタにする気か。ある意味、稲生君より強いかもな)
 稲生:(何だろう。僕は有紗さんに殺されかけたけど、鈴木君は大丈夫のような気がする……)

[同日11:15.天候:晴 正証寺→藤谷のベンツGクラス]

 藤谷は寺院の駐車場に止めていたベンツのGクラスを持って来た。

 稲生:「あれ?Eクラスじゃないんですか?」
 藤谷:「功徳で新車にやっと買い換えることができたよ。この車なら、冬の大石寺でも安心だ」
 稲生:「なるほど」

 それまで型落ちの中古Eクラスだったのだが、藤谷が回して来たのはピッカピカの新車だった。
 藤谷はいつも黒スーツを着ているので、つい車も黒塗りというイメージを持ってしまうのだが、前のEクラスにしろ、今のGクラスにしろシルバーである。
 これは藤谷組のダンプカーもまたシルバー塗装だからというのもある。

 鈴木:「うちのVクラスもそろそろ買い替えかなぁ……。走行距離がそろそろ……」

 鈴木はリアシートに乗り込みながらそんなことを呟いた。
 もっとも、Vクラスは家族の車であり、鈴木個人の車ではない。

 藤谷:「心配するな。これから真面目に信心していけば、個人で車が買えるくらいの功徳が出るぞ。俺みたいにな」
 鈴木:「それはありがたいですね。でも、俺は最近思うんですよ。そんなに大きな車も要らないなぁ……って」
 稲生:「どんなのがいいんだい?」
 鈴木:「Aクラスくらいでいいですよ」
 稲生:「でも、ベンツなんだねw」

 Eクラスは左ハンドルだったが、このGクラスも同様であった。
 左ハンドルに慣れ切ったからであろうか。
 藤谷はピッピッとナビをセットした。

 藤谷:「よし。それじゃ、行くぞ」
 稲生:「お願いします」
 鈴木:「オール・アボード!」
 藤谷:「欧米か!」

 取りあえず藤谷は、最寄りの首都高の入口にハンドルを切った。

 鈴木:「稲生先輩は車買わないんですか?」
 稲生:「いや、僕はあまり必要じゃないな……」
 鈴木:「マリアさんとドライブデートってのも……あれ?そう言えばマリアさんは?」
 稲生:「ああ、マリアさんね……」

[同日同時刻 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1F客間]

 マリア:「う……」

 マリアはやっと目が覚めた。
 だが、体が重い。
 まるで、もう生理が来たみたいだ。

 マリア:(つい勢いでウィ・オ・ナ・ズゥム使っちゃったけど……。やっぱり、まだ本来のレベルじゃなかった……)

 で、そこへやって来るエレーナ。
 ホウキで舞い降りて来る。

 エレーナ:「おい、マリアンナ!いい薬持って来てやったぞ!飲んだら立ちどころにその重い体が軽くなるエリクサーだ!」
 マリア:「うう……悪いな……エレーナ……。やっぱり……持つべき者は仲間……」
 エレーナ:「そうだろそうだろ。今なら相互扶助の精神で、特別価格の1万円でいいぞ!くれくれ、日本円!」
 マリア:「誰がやるか……!」

 エレーナの契約悪魔はキリスト教における七つの大罪の悪魔、金銭欲や物欲を司るマモンである。
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