報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「夜のさいたまを往く」

2018-04-26 14:08:30 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日20:14.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の電車は、20時14分発、各駅停車、大宮行きです〕

 稲生とマリアはホームで電車を待っていた。
 夕食は稲生の家で取り、それから出発という形である。
 これから中東から来日するイリーナを迎えに、羽田空港まで行くところだ。
 中東のドバイに何とか逃げ込んだイリーナは、そこから羽田行きのカタール航空に乗ることができたらしい。

〔まもなく2番線に、各駅停車、大宮行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 時々強い風が吹く中、電車がやってくる。
 JRの車両ではなく、りんかい線の車両だった。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕

 1番後ろの車両に乗り込んだ。
 日曜日の夜の電車ということもあって、車内はとても空いている。
 JRのは緑色のモケットだが、りんかい線のはブルー。
 そこに座った。
 シートはJRのものよりも硬め。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 発車メロディもそこそこに、電車は2点チャイムを3回鳴らしてドアを閉めた。
 駆け込み乗車による再開閉は無かった。

 『発車します。ご注意ください』

 電車が走り出す。

〔「次は終点、大宮、大宮です。東北、上越、山形、秋田、北陸新幹線、宇都宮線、高崎線、京浜東北線、川越線、東武アーバンパークラインと埼玉新都市交通ニューシャトルはお乗り換えです」〕

 稲生:「有紗は……何もしてきませんでしたね」
 マリア:「……そうだな。でも、どこかで見張ってる」
 稲生:「分かりますか?」

 稲生は恐る恐る周囲の窓ガラスを見た。
 外が暗いだけに、ガラスはまるで鏡のように車内を映し出している。
 マリアは普段のブレザーの上からローブを羽織り、魔法の杖を手にしていた。
 いつでも臨戦態勢のつもりだが、窓ガラスには有紗の姿は映っていない。

 マリア:「分かる。私にも霊感はあるから」
 稲生:「……ですよね」

 そもそも、そうでないと魔道師にはなれない。

[同日20:18.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→大宮駅西口バス乗り場]

〔「まもなく終点、大宮、大宮です。地下ホーム19番線到着、お出口は左側に変わります。大宮より先、日進、西大宮、指扇、南古屋、川越方面ご利用のお客様、今度の川越行きは、21番線から20時28分の発車です。ホーム進入の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、お近くの吊り革、手すりにお掴まりください。今日もJR埼京線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 電車の窓から見えたさいたまスーパーアリーナの人だかりを見ると、顕正会の大会を思い出す。
 稲生が河合有紗と知り合ったのは、そこであった。
 京浜東北線が人身事故でストップし、帰りの足を奪われた顕正会員達でごったがえしていた中、稲生は地元の知識を駆使して、有紗と共にバスで脱出したのだった。

 マリア:「……勇太?勇太!」
 稲生:「あっ、はい!」
 マリア:「もうすぐ着くよ?」
 稲生:「そ、そうですね。お、降りましょう」

 稲生はバネ仕掛けの人形のようにいきなり立ち上がった。
 と、同時に電車がポイント通過で大きく揺れる。

 稲生:「わったたっ!!」

 稲生はバランスを崩し、ドアの前に立っていたマリアに壁ドンならぬ、ドアドン。

 マリア:「だ、大丈夫……?」
 稲生:「す、すいません……」

 互いに顔を赤めていると……。

 稲生:「わっ!?」

 マリアの背後のドアの窓。
 そこに、恨めしそうな顔をした有紗の顔が浮かび上がった。
 稲生が慌てて離れる。
 と、電車がホームに停車してドアが開いた。

〔おおみや、大宮。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 マリア:「またいたの?」
 稲生:「……はい」
 マリア:「ちっ!嫉妬深いヤツめ!」

 そこ!マリアがブーメラン投げたとか言わない!

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。19番線に停車中の電車は……〕

 マリア:「とにかく降りよう」
 稲生:「……はい」

 すぐ近くの階段には階段しか無い。
 そこをトントンと上がって行くのだが……。

 マリア:「このっ!」

 普通の人間には、マリアが階段を足でドンドン踏み鳴らしたようにしか見えなかっただろう。
 だが、稲生には見えていた。
 階段から青白い手が伸びてきて、マリアの足を掴もうとしたことを。
 そして、その手が誰のものなのかも……。

 稲生:「マリアさん……」

 最後には魔法の杖で、ドンと叩いた。

 マリア:「私の足を引っ張って、階段から落とそうとしたんだろうけど、そうはいかないから」
 稲生:「さすがですね。(きっと普通の人間だった頃のマリアさんも、似たようなことをしたんだろうなぁ……)」

 途中からはエスカレーターに乗ったということもあって、青白い手に引っ張られるということはなかった。

 稲生:「羽田空港行きのバスは西口から出ます。行きましょう」
 マリア:「そうだな。階段を下りる時も気をつけて。突き落とされる恐れがある」
 稲生:「は、はい」

 とはいえ、大宮駅は人が多い。
 さすがの幽霊も、そういう所では悪さはしにくいようだ。
 何とか2人は、羽田空港行きのバス乗り場に行くことができた。

 稲生:「これがバスの乗車券です」
 マリア:「ありがとう」

 いつの間にかコンビニで購入していた稲生。
 そこは抜かりない。

 稲生:「まさか、バスが襲われるなんてことは……?」
 マリア:「その心配は無い」
 稲生:「何か秘策でも?」
 マリア:「大したことはしないけど、そもそも師匠が何も言ってこない所を見ると、多分大丈夫なんだと思う。それに……」
 稲生:「?」
 マリア:「あいつらも乗るみたいだから、大丈夫だろう」

 羽田空港行きのバスを待つ乗客達は列を作っている。
 稲生達もその列に並んでいるのだが、その後ろに並んだ者達がいた。
 マリアの契約悪魔ベルフェゴールと、稲生と契約することがほぼ内定している悪魔アスモデウスである。
 キリスト教の七つの大罪の大悪魔が2柱も乗り込んでくれば、さすがに幽霊と言えども何もできないだろう。
 尚、ベルフェゴールにあっては相変わらずの英国紳士スタイルだし、アスモデウスにあってはAVにおけるJKモノの女優みたいな感じになっていた。明らかに稲生との契約を重視した姿である。

 稲生:「最強ですね……」
 マリア:「……勇太の方が最強じゃないかな」
 稲生:「は?」

 強大な悪魔が、契約相手の好みに合わせて自分から姿を変えるのは珍しいとのこと。
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“大魔道師の弟子” 「稲生勇太に迫る恐怖」

2018-04-22 20:09:00 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日14:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 藤谷の運転するベンツGクラスが稲生家の前に到着する。
 庭を覗くと、稲生悟郎が借りたレンタカーは無くなっていた。
 どうやら、本当に今は都内をドライブしているようである。

 稲生勇太:「班長、送って頂いてありがとうございました」
 藤谷春人:「いや、いいんだよ。こうなったら、マリアさんやイリーナ先生に対応策を考えてもらうしかないよ」
 稲生:「そうします」
 鈴木弘明:「先輩、マリアンナさんは中にいるんですよね?」
 稲生:「そうだよ」
 藤谷:「鈴木君、2人の邪魔をしてはイカン」
 鈴木:「分かってますよ」

 玄関のドアを開けると、両親はいなくてマリアの靴だけがあった。

 稲生:「ただいま帰りました」
 マリア:「ああ、お帰り。……う、鈴木……」
 鈴木:「こんにちはー」
 藤谷:「マリアさん、お久しぶりです」
 マリア:「ああ、藤谷さん……。どうも……」
 稲生:「具合どうですか?」
 マリア:「エレーナに無理やり押し売りされたエリクサーのおかげで、少しは良くなった」
 鈴木:「えっ、エレーナが来てたんですか!?しかもエリクサーって、まるでファンタジーですね」
 藤谷:「じゃ、鈴木君。俺達はお寺に戻るぞ」
 稲生:「班長、良かったらマリアさんに今までの出来事を説明してあげるというのは……」
 マリア:「何かあったのか?」
 稲生:「ええ、まあ……。良かったら班長、鈴木君、上がってお茶でも……」
 藤谷:「あ、ああ。すまない」
 鈴木:「お邪魔しまーす!」

 稲生達は玄関から中に入ると、応接間へと移動した。

 稲生:「ちょっと待っててください。今、紅茶を入れます」
 藤谷:「ああ、どうも、お構いなく」

 藤谷は煙草を取り出すと、それに火を点けた。
 因みにマリアは今、白いブラウスに紺色のベスト、赤いリボンに緑色のスカートをはいていた。
 藤谷はフーッと煙草をくゆらすと口を開いた。

 藤谷:「マリアさんね、出たよ。……あなたの恋敵が」
 マリア:「……!」

 藤谷の言葉だけで、マリアの顔色がサッと変わった。

 藤谷:「これを見てもらえますか?」

 藤谷は折られた塔婆と、そこに書かれた血文字を見せた。

 マリア:「これは……!」
 藤谷:「どうやらこの稲生君の初恋の人、ガチみたいだぜ。稲生君がせっかく追善供養してあげようとしても、納得しないみたいだ。分かりますか?」
 マリア:「勇太の命を狙っている……!?」
 藤谷:「ええ。地獄界のどこに堕ちたか知りませんが、どうやら寂しいらしいです。こちら側の追善供養を無視して、稲生君を連れ去ろうとしている」
 マリア:「そうか……」
 鈴木:「それにしても、先輩のタイプなんですかね」
 藤谷:「何が?」
 鈴木:「河合有紗さんの特徴を教えてもらいましたけど、マリアさんに似てるんですよね」
 藤谷:「あー、なるほど」

 恋敵と似ていると言われ、マリアはムッとした。

 藤谷:「ああ、悪い。別に、マリアさんをバカにしたつもりは無いんだ。ただ、やっぱり稲生君のタイプはブレなかったということさ。本来の性格も、マリアさんのように冷静な感じだったらしいですよ」
 マリア:「……これは、宣戦布告ですね。勇太に対してではなく、私にも」
 藤谷:「ええ。そこでマリアさんとイリーナ先生の出番なんですよ。きっと、いいアイディアを出してくれると思いまして」
 マリア:「霊気を感じる。恐らく、どこかで機会を伺っているのだろう」
 藤谷:「やはりそうですか」
 マリア:「他に何かありましたか?」
 藤谷:「ええ。で、この塔婆を手に墓参りに行ってみたんですがね、そこで……」

 稲生:「わああああっ!」

 その時、キッチンから稲生の叫び声が聞こえて来た。

 藤谷:「稲生君!?」
 マリア:「!!!」

 マリア達は急いでキッチンに向かった。
 そこには、腰を抜かしてへたり込む稲生の姿があった。

 マリア:「キサマ!!」

 藤谷や鈴木は気が付かなかったが、マリアには見えていた。
 ほんの一瞬だけだが、冷蔵庫に掛けられた鏡の中に映った河合有紗の姿を……。

 藤谷:「どうしたんだ、稲生君!?」
 稲生:「そ、その鏡に……あ、有紗の姿が……」
 マリア:「ちっ……!」

 マリアは魔法の杖を持ったまま、その鏡を睨みつけた。
 そこには険しい顔をしたマリアの顔しか映っていなかった。

 稲生:「鏡から手が伸びてきて、僕を掴もうとしたんです!」
 藤谷:「くそっ!こりゃ、暢気に鏡を見ることもできないぞ!」

 その後、落ち着いた稲生はそれまでの出来事をマリアに話した。

 マリア:「……ネクロマンサーが反魂の魔法でも使おうとしているのか……」
 鈴木:「えっ、何ですかそれ?」
 マリア:「でもなぁ……」

 マリアは鈴木の質問を華麗にスルーした。

 鈴木:「反魂の術というのは、使者を蘇らせる魔法ですよね。ザオラルやザオリクみたいな……」
 稲生:「ええっ?骨だけになっても生き返らせられるのかい?」
 鈴木:「先輩。よく考えてもみてくださいよ?RPGにある、そういった蘇生魔法。遺体は敵にやられて見るも無残な状態のはずなんですよ、本来なら。遺体がどういう状態までならOKか?なんてことは、どのゲームでも定義されていないんです。もしかしたら、現実には骨だけになっても生き返らせることができるのかもしれません。……ですよね?マリアさん」
 マリア:「もちろん……それは、魔法使いの技量による」

 マリアは苦しそうに答えた。
 実は稲生、1度死んでいる。
 そこでマリアはザオラルを使おうとした。
 ところがこの魔法、蘇生率は50%という、正に運試しの魔法であった。
 で、稲生はそれで生き返ることはできなかった。
 大魔王バァルが自ら退位を決意した際、餞別として稲生を簡単に生き返らせてしまったということがある。

 藤谷:「既に遺骨の状態で骨壺に入ってるというのに、生き返らせることができるのか?」
 マリア:「大魔王バァルができたくらいだから、大師匠様なら或いは……。だけど、大師匠様が墓暴きなどされるはずがない」
 稲生:「そもそも動機がありませんもんね」
 藤谷:「ふむ……。てことは、遺骨が盗まれた原因は他にあるってことか?魔法使いとして、他に何が考えられます?」
 マリア:「色々と……。人間の骨は、色々な魔法具の材料にもできるから……。だから、考え出せばキリが無い」
 鈴木:「しかし、となってくると、やっぱり犯人は魔女の誰かってことが濃厚ですかね?」
 藤谷:「待て待て。まだ結論を出すのは早い。イリーナ先生なら、ピンポイントでそこを水晶球に映し出させることができるんでしょう?」
 マリア:「そのはずだ」
 藤谷:「やっぱり、確実なことはイリーナ先生に相談した方がいいと思うよ、稲生君」
 稲生:「はあ……そうですね」

 話が終わってしばらくしてから、藤谷と鈴木は退出した。
 そして両親が帰ってくるまでの間、稲生とマリアはリビングに移動し、そこで映画を観ていた。
 その間、マリアはずっと稲生に寄り添っていたそうである。
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小説の途中ですが、ここで本日の雑感をお送りします。 20170421

2018-04-21 19:53:55 | 日記
 日蓮正宗の塔婆供養が、実際に化けて出て来ている幽霊には効かなかった、というショッキング(?)な流れになった。
 これは偏に、作者たる私が塔婆供養について疑問を呈していることへの表れである。
 もちろん、ちゃんと大聖人の御金言にあることは知っている。
 “となりの沖田くん”第2巻ACT.10「塔婆供養の大事」で描かれている。

「丈六のそとばをたてゝ、其の面に南無妙法蓮華経の七字を顕はしてをはしませば、北風吹けば南海のいろくづ、其の風にあたりて大海の苦をはなれ、東風きたれば西山の鳥鹿、其の風を身にふれて畜生道をまぬかれて都率の内院に生まれん」
「過去の父母も彼のそとばの功徳によりて、天の日月の如く浄土をてらし、孝養の人並びに妻子は現世には寿を百二十年持ちて」

 というものが引用されており、沖田君達はありがたがっているのだが、どうしても私にはこじつけのような気がしてならないのだ。
 もちろん、信心欠落による離檀をした身。
 今更御金言で感動するはずもない。
 で、思ったのだ。
 多分これ、顕正会員がバリバリの信心のまま死んだ時、日蓮正宗側で塔婆を立ててあげても、ありがた迷惑なだけではないかと。
 そういうひねくれたアイディアでもって、今の物語は動いている。
 河合有紗は顕正会の信心を熱心にやっている最中、交通事故に遭って死んだという設定だ。
 今もそうだろうが、私が信心していた頃の顕正会がモデルなものだから、当然宗門は「堕落した所」と思っているはずだ。
 そんな所から塔婆供養してあげても、多分喜ばないだろうと思ったわけだ。

 そんなことない?例えバリバリの謗法状態で死に、地獄界に堕ちたとしても、塔婆供養で救われるのだと思う?
 救われている所を見たことがあり、それを証拠として呈示できるというのならいいんだけどね。
 遺体の状態が云々という、顕正会員と何ら変わらない証言をされても困るんだよね。
 だって、赤の他人が法華講員の遺体を堂々と見ることなんてできないだろう?
 それとも、誰か画像か動画で残しておられるのかね?

 というわけで、当作品での設定では申し訳ないけど、塔婆供養など所詮現世にいる人間のエゴイズムであり、当の幽霊さんには効かなかったよというものにさせてもらっている。
 因みに信仰中であっても、塔婆供養は1度もしなかった。

「過去の父母も彼のそとばの功徳によりて、天の日月の如く浄土をてらし、孝養の人並びに妻子は現世には寿を百二十年持ちて」

 が、とても信じられなかったからである。
 不信謗法だって?だって、しょうがないじゃないか。
 信じられなかったんだから。
 何故なら、天の日月の如く浄土を照らす所なんて見られないんだから。

 信じられるのは、契約をきっちり守ってくれる悪魔だけだよ。
 もちろん、見返りは相当なものを要求してくるけどね。
 だけど、忖度ばかりが先行し、見返り(功徳)が先に来るのか後に来るのか、どの程度来るのかさっぱり分からない状態で信仰はできないよ。
 あ、だからといって、別に私はこの作品の魔道師達みたいに悪魔と契約しているわけじゃないよ。
 ただ、上級な悪魔になればなるほど契約をきっちり守って偉いなぁと思っただけ。
 上行菩薩は忖度ばっかりで大変だなっと。

 悪魔なら、
「天の日月の如く浄土を照らす所を見せてくれ」
 と頼んだら、見せてくれるだろう。
 但し、私が悪魔なら、契約者にこう言う。

「見たければ直接見に行かせてあげよう。その代わり、現世に残った魂は契約料としてもらうよ」

 ってね。
 恐らく、当たらずも遠からずだと思う。
 いくら仏様よりきっちりしているとはいえ、きっちりし過ぎているのでお勧めはしない。

 尚、私が用意しているホラー画像は他にもある。
 威吹が登場した際に使おうと思っているのだが、人の口のアップ。
 口は大きく開いていて、牙が覗いているという画像だ。
 威吹は妖狐であり、この妖怪には牙が生えているからと思ったのだが、どうせ稲生達、これから魔界に行くのだから、ルーシー女王の画像にも使えるかなとも思う。
 ルーシー女王は吸血鬼の出自であるという設定の為。
 RPGの世界でも、魔王は男ばっかりだからね。
 うちの作品では、女王様にしておいたよ。
 幸い、吸血鬼なら男女平等で存在するからね。
 で、首相は人間、それも日本人の男。
 その首相が党首を務める政党の理事が【お察しください】。

 明日は日曜日だが、私はまた仕事。
 新しい顕正新聞は刷り上がったかな?
 だとすれば、また首都圏各地で配布会が行われるであろう。
 また、私の職場の近くでも配布するのかね。
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“大魔道師の弟子” 「墓泥棒」

2018-04-20 19:16:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日12:20.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 青葉園]

 首都高速の与野出入口から国道17号線(新大宮バイパス)に降り、そこから北進して青葉園を目指す。
 だが……。

 藤谷:「あり?」

 稲生達は青葉園に入ることができなかった。
 何故なら、そこに警察官が立っており、規制線が張られていたからだ。

 藤谷:「何かあったんかい?俺達、墓参りに来たんだけど?」

 すると若い警察官が説明した。

 警察官:「すいませんが、遺骨の盗難事件がありまして、その捜査中ですので、墓地は立ち入り禁止にさせて頂いております」
 藤谷:「遺骨の盗難事件!?いくら暖かくなってきたからって、随分とまた変なことしやがる泥棒が現れたもんだな?ええ、おい」

 だが、稲生はそれで嫌な予感がした。

 稲生:「あの……その盗まれた遺骨って、誰のなんですか?」
 警察官:「そういうことは捜査上の機密ですので……」
 稲生:「河合有紗さんの遺骨じゃありませんか?」

 すると警察官は稲生の言葉にピクッと反応した。

 警察官:「ちょっと待ってください」

 警察官は手持ちの無線機で何かを話し始めた。

 藤谷:「おい、どうやらビンゴみたいだぜ?」
 稲生:「有紗さんの遺骨が……盗まれた!?」
 藤谷:「いつ盗まれたのか分からんが、今こうしてサツが動き回っているということは、昨日今日の話っぽいな。てことは……」
 鈴木:「稲生先輩の枕元に現れた時間帯とピタリ一致するってことですね」

 その後、刑事がやってきて、稲生達は事情を聞かれた。
 もちろん稲生達は正直に話した。
 但し、枕元に幽霊が現れた話だけは端折ったが。
 もちろんそれで稲生達が疑われることはなく、しかも刑事は事の経緯を話してくれた。
 今朝方、河合家の墓だけが荒らされていた為、それを発見した管理事務所の職員が警察に通報したらしい。
 調べてみたら、墓石の下に埋められていた骨壺がそっくり無くなっていたとのことである。

 刑事:「一応、関係者の洗い出しをしている所です」
 稲生:「犯人の目星は付いているんですか?」
 刑事:「いえ、今のところは……。逆に稲生さんの方でも、何か心当たりは無いんですか?」
 稲生:「全く無いですよ」

 稲生は即答した。

 藤谷:「なんぼ何でも、顕正会員が墓暴きするとも思えんしな」
 稲生:「ええ」
 鈴木:「同感です」
 刑事:「とにかく、何か分かりましたら、どんな些細な事でも構いませんので、こちらに連絡を」
 稲生:「はい」

 稲生は刑事から名刺をもらった。
 そして、車に戻ったのだった。

 藤谷:「とんでも無ェことになりやがったな」
 稲生:「何でこんなことを……!ひどい……!ひどい……!」
 鈴木:「稲生先輩」
 藤谷:「しかしこりゃあ、アレだ。河合さんそのものに、ピンポイントに用があったヤツのしわざだぜ。マジで稲生君、何か心当たりは無いのか?」
 稲生:「だから無いですって!」
 鈴木:「それでその……御塔婆どうします?」
 藤谷:「しゃあねぇ。事情を話して、寺で預かってもらうさ。どうせあんな規制線、そんな何日も張っておけんだろ。規制線が解かれたら、改めて持って行けばいい」

 藤谷は車のエンジンを掛けた。
 質実剛健なベンツらしく、エンジンが轟音を立てる。

 藤谷:「取りあえず、寺に戻ろうぜ。……まあ、途中で昼飯食ってからでもいいがな」

 藤谷は青葉園の出口に向かってハンドルを切った。

 ……正証寺に戻るまでの間、稲生は昨夜のことを思い出した。
 鈴木の言う通り、誰かが河合有紗の遺骨を盗んだことがきっかけで、眠りに就いていた有紗の霊を起こし、それで稲生の枕元に向かったのだろう。
 イリーナから以前教えてもらったのだが、実は幽霊は1人ではないのだそうだ。
 意識体といって、幽霊が更に分身することがあるらしい。
 日蓮正宗の教義通り、本物の有紗の魂は今、地獄界に行ってしまっているのだろう。
 顕正会で罪障を積んだばっかりに……。
 稲生による塔婆供養や追善回向がどれだけ功を奏しているのかは分からないが、そんな急に罪障が消滅されるとは思えない。
 その為、稲生の枕元に現れたのはその分身である意識体と思われる。
 本物の魂が救われれば意識体も消えるというから、河合有紗の魂はまだ地獄界にいることが濃厚となった。
 では、何故?
 何故、犯人は河合有紗の遺骨を盗んだのか?

 藤谷:「なあ、稲生君。こういう時こそ、イリーナ先生の出番だと思わないか?イリーナ先生に占ってもらえば、立ちどころに犯人が分かるんだろう?」
 稲生:「そ、そうですね!」
 藤谷:「早いとこ、イリーナ先生に連絡を取ってみたらどうだ?」
 稲生:「先生は今夜、中東から来日することになっています」
 藤谷:「そうか。じゃあ、その時に相談することだな」
 稲生:「そうします」
 藤谷:「よし。そうと決まったら、飯でも食いに行こう。……おっ、そうだ。マリアさんの具合はどうなんだ?もし良くなっていたら、一緒に食べるか?」
 稲生:「そうですね!」

 稲生は水晶球を取り出した。

 鈴木:「おおっ!?稲生先輩も魔法が使えるんですか!?」
 稲生:「あー、そうか。キミには内緒だったな……」
 鈴木:「いや、大丈夫っスよ。もうエレーナの魔法は見てますから」
 稲生:「そう言う問題か。まあ、いいや。水晶球くらい、他の占い師も使ってるしね」

 稲生は水晶球に呼び掛けた。
 すると返って来たのは……。

 マリア:「悪い、勇太。もうエレーナとランチしてる」
 エレーナ:「稲生氏、遅いよ!こういうのはもっと早め誘ってもらわないと!」

 という答えだった。

 稲生:「ていうか、何で僕がエレーナに怒られなきゃいけないんだ?」

 鈴木が必死に笑いを堪えている。

 藤谷:「しゃあねぇ。魔女さん達も、たまには女子会したいだろうよ。俺達は俺達で男子会……ていうか、例の遺骨についての作戦会議と行こうぜ」

 藤谷は国道沿いにあるファミレスの駐車場にハンドルを切った。
 駐車場に車を止め、そこから降りる。
 その時、車内には何も異常は無かったはずだ。
 藤谷が車のドアをロックしたことも確認した。
 しかし……。

[同日14:00.天候:晴 埼玉県さいたま市 国道17号線(新大宮バイパス)沿線にある某ファミレス]

 藤谷:「あー、食った食った」
 稲生:「ご馳走様でした」
 鈴木:「ゴチです、班長!」

 3人は車に戻った。
 車の外観は何とも無かった。
 藤谷がロックを外し、3人はまた車に乗り込んだ。
 だが、そこで鈴木が異変に気付いた。

 鈴木:「ああーっ!!」

 そこには何と、河合有紗の為に用意した塔婆が見るも無残に真っ二つにへし折られていた。

 稲生:「そ、そんな……!」
 藤谷:「ちょっと待て!車を降りる時、大丈夫だったよな!?」
 鈴木:「もちろん。俺、見てましたし。……あっ!先輩、裏!」

 その時、鈴木がまた何かを発見した。
 折られた塔婆を稲生が持っていたのだが、その裏側に何かが見えたのだ。
 それは赤い……まるで血文字のようなもので書かれていた。

 ゆるさない……!こんなことで、私は救われない……!おまえを呪ってやる……!!

 稲生:「わああああっ!」
 鈴木:「塔婆供養が効いていない!?」
 藤谷:「マジかよ!?」

 

 稲生の脳裏に、恨めしそうな顔をして佇む河合有紗の姿が、まざまざと蘇って来た……。
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“大魔道師の弟子” 「当該レベルに到達していない者が高レベルの魔法を使うと……」

2018-04-20 10:15:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日08:45.天候:晴 東京都豊島区内某所 日蓮正宗(東京第3布教区)大化山・正証寺]

 住職:「……本日、願い出のございました塔婆供養につきまして、ただいま追善回向を懇ろに行いました」
 稲生勇太:「ありがとうございました」
 所化僧:「それでは15分の休憩を挟んだ後、9時より御講を始めます。皆様、お時間までに本堂にお集まりください」

 信徒達が一旦席を立つ。

 藤谷:「稲生君!」

 そこへ藤谷が声を掛けて来た。

 稲生:「あ、班長」
 藤谷:「どうしたんだい?塔婆供養をお願いするなんて、久しぶりじゃないか」
 稲生:「はあ……それが……」

 稲生は昨夜あったことを話した。
 藤谷は喫煙者である為、喫煙所に移動しながら話した。

 藤谷:「稲生君は本当、物の怪に縁があるよなぁ……」

 藤谷は喫煙所で煙草に火を点けながら頷いた。
 と、そこへ。

 鈴木:「稲生先輩!そこ、詳しくお願いできますか!?」
 藤谷:「す、鈴木君!?キミは幽霊までナンパする気かい!?」

 鈴木がメモ帳を片手に飛んできた。

 鈴木:「今度の夏コミに出すゲームなんですが、あえて新作を2つ出してみようかと思うんです!」
 藤谷:「8月の夏期講習会は強制不参加かよ……」
 鈴木:「他の月に行きます!」
 藤谷:「それならいいけどよ……」
 鈴木:「夏に因んで、ホラーシューティングを作ろうかと!」
 稲生:「何だそりゃ……」
 鈴木:「御題目を武器に、物の怪をバッタバッタ倒していくゲームです!」
 稲生:「ああ、エレーナから聞いたけど、キミも何か倒したみたいだねぇ……」
 鈴木:「愛の力ですよ」
 稲生:(まあ、マリアさんのことは諦めてくれたみたいだから、どうでもいいけど……)
 藤谷:「でもよ、稲生君。その……君の初恋の人の塔婆供養は昔やったんだろう?それでもダメだったというのか?」
 稲生:「そこなんですよねぇ……。僕がここに御受誡してから1度お願いしたんですよ。もっとも、それっきりだったもので、御住職様から注意されましたが……」
 藤谷:「まあ、故人に対する供養ってのは、先祖供養と同じだからな。塔婆供養1回だけじゃ、そりゃ寂しいだろうよ。よし、分かった。その初恋の人の墓はどこだ?まさか、どこかの邪宗の寺じゃないだろうな?」
 稲生:「さいたま市の青葉園です。公益財団法人がやってる、共同墓地ですよ」
 藤谷:「よし、それなら問題無い。後で車を出してやろう」
 稲生:「え?いいんですか?」
 藤谷:「ああ。俺も気になることがある。確かに塔婆供養1回こっきりで、後は放置プレイされた故人が終いにゃキレたというのは分かるが、どうして今頃になって……というのはある」
 稲生:「勤行の時にも回向していたんですよ?」
 藤谷:「それを最近サボるようになったか?」
 稲生:「いえ、そんなことは無いです!」
 鈴木:「でも、今は生きている好きな人が別にいるのに、ちょっとアレですよねぇ……」
 稲生:「う……」

 稲生はマリアの顔を思い浮かべた。
 今はマリアの方も自分のことを好きになってくれている感はある。
 にも関わらず、いくら追善回向の為とはいえ、いつまでも前カノを思って……というのもどうかという気持ちもまたあった。

 藤谷:「鈴木君!」
 鈴木:「あっ、サーセン!」
 藤谷:「とにかく、だ。御講が終わったら、すぐに行ってみるぞ」
 稲生:「はい」
 鈴木:「あの……俺も一緒に行っていいですか?」
 藤谷:「稲生君がいいと言うならいいぞ」
 稲生:「まあ、別にいいけど……」
 鈴木:「あざーっす!」
 藤谷:(こいつ、幽霊までゲーム作りのネタにする気か。ある意味、稲生君より強いかもな)
 稲生:(何だろう。僕は有紗さんに殺されかけたけど、鈴木君は大丈夫のような気がする……)

[同日11:15.天候:晴 正証寺→藤谷のベンツGクラス]

 藤谷は寺院の駐車場に止めていたベンツのGクラスを持って来た。

 稲生:「あれ?Eクラスじゃないんですか?」
 藤谷:「功徳で新車にやっと買い換えることができたよ。この車なら、冬の大石寺でも安心だ」
 稲生:「なるほど」

 それまで型落ちの中古Eクラスだったのだが、藤谷が回して来たのはピッカピカの新車だった。
 藤谷はいつも黒スーツを着ているので、つい車も黒塗りというイメージを持ってしまうのだが、前のEクラスにしろ、今のGクラスにしろシルバーである。
 これは藤谷組のダンプカーもまたシルバー塗装だからというのもある。

 鈴木:「うちのVクラスもそろそろ買い替えかなぁ……。走行距離がそろそろ……」

 鈴木はリアシートに乗り込みながらそんなことを呟いた。
 もっとも、Vクラスは家族の車であり、鈴木個人の車ではない。

 藤谷:「心配するな。これから真面目に信心していけば、個人で車が買えるくらいの功徳が出るぞ。俺みたいにな」
 鈴木:「それはありがたいですね。でも、俺は最近思うんですよ。そんなに大きな車も要らないなぁ……って」
 稲生:「どんなのがいいんだい?」
 鈴木:「Aクラスくらいでいいですよ」
 稲生:「でも、ベンツなんだねw」

 Eクラスは左ハンドルだったが、このGクラスも同様であった。
 左ハンドルに慣れ切ったからであろうか。
 藤谷はピッピッとナビをセットした。

 藤谷:「よし。それじゃ、行くぞ」
 稲生:「お願いします」
 鈴木:「オール・アボード!」
 藤谷:「欧米か!」

 取りあえず藤谷は、最寄りの首都高の入口にハンドルを切った。

 鈴木:「稲生先輩は車買わないんですか?」
 稲生:「いや、僕はあまり必要じゃないな……」
 鈴木:「マリアさんとドライブデートってのも……あれ?そう言えばマリアさんは?」
 稲生:「ああ、マリアさんね……」

[同日同時刻 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1F客間]

 マリア:「う……」

 マリアはやっと目が覚めた。
 だが、体が重い。
 まるで、もう生理が来たみたいだ。

 マリア:(つい勢いでウィ・オ・ナ・ズゥム使っちゃったけど……。やっぱり、まだ本来のレベルじゃなかった……)

 で、そこへやって来るエレーナ。
 ホウキで舞い降りて来る。

 エレーナ:「おい、マリアンナ!いい薬持って来てやったぞ!飲んだら立ちどころにその重い体が軽くなるエリクサーだ!」
 マリア:「うう……悪いな……エレーナ……。やっぱり……持つべき者は仲間……」
 エレーナ:「そうだろそうだろ。今なら相互扶助の精神で、特別価格の1万円でいいぞ!くれくれ、日本円!」
 マリア:「誰がやるか……!」

 エレーナの契約悪魔はキリスト教における七つの大罪の悪魔、金銭欲や物欲を司るマモンである。
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