報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「痴漢の心配をする鈴木」

2018-04-02 21:10:48 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月1日19:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 ジョナサン菊川店]

 エレーナ:「あー、美味しかった。ごちそうさま!」
 鈴木:「いい飲みっぷり、食べっぷり。奢り甲斐のある魔女さんだ」
 エレーナ:「どうもどうも。……それより、早く話始めてよ。私に話があったんでしょ?」
 鈴木:「そうだった。ややもすれば、これは怖い話なんだ。怖い話を聞いても大丈夫な方?」
 エレーナ:「もちろん。むしろ場合によっちゃ、人間に怖い話を提供する側だからw」
 鈴木:「はあ?……まあ、いいや」

 鈴木はコホンと咳払いをした。

 鈴木:「今まで……食事をしながらキミ達の怖い話を聞かせてもらった。だけど、俺にとっては怖いといより、不思議な話だったな」
 エレーナ:「あら、そう?うちのホテルでレストランやってるキャシー先輩の『飴玉婆さん』は怖くなかった?」
 鈴木:「それよりもっと恐ろしい話を俺は知ってる。キミの話した内容は、つまり如何にド素人が魔女に関わったら危険かというものだった。キャシーさんとやらの話はちょっと違ったけどね。これから俺が話すのは、向こうからやってくる災いのことさ。そしてそれは、魔女であっても降り掛かる恐れが多分にある」
 エレーナ:「ほお。そりゃまたどうして?」
 鈴木:「それは……その災いとやらは、女の子のみに降り掛かるものだからだ。例え魔女であっても、例外ではないはずだよ」
 エレーナ:「と、言うと?」
 鈴木:「まあ、聞いてくれ。今まで俺が直接会ったことのある魔女はマリアンナさん、キャシーさん、そしてエレーナ、キミだ」
 エレーナ:「私だけ呼び捨てかい!……まあ、いいけどさ」
 鈴木:「俺が今まで会った魔女はこの3人なんだけど、明日には2人になってるかもしれないよって話」
 エレーナ:「そりゃ確かに怖いな」
 鈴木:「もちろん、そんなことは絶対に無いようにしなきゃいけないよな」
 エレーナ:「まあね。……あ、もしかして、これが稲生氏の言ってた日蓮正宗の折伏?」
 鈴木:「酒が入ったからな、例え今折伏しても、今からお寺に行こうとは言えないね。でも、僕が今日話したいのは仏法の話じゃない。本当に怖い話だから、もし怖かったら、俺の傍に来てもいいよ?」
 エレーナ:「おあいにくさま、今の所は怖くないね。いいから、さっさと続きを話して」
 鈴木:「あ、そう。遠慮しなくていいのに……ブツブツ……」
 エレーナ:「あのな!」
 鈴木:「まあ、いいや。話を始めるよ。突然だけど、エレーナは痴漢に遭ったことはあるかな?」
 エレーナ:「日本では無いね。ウクライナじゃ、痴漢どころか、レイプ魔がウヨウヨいたよ。まあ、この体は処女だけどさ」
 鈴木:「……日本は平和だ!……とはいえ、さすがに強姦罪……あ、いや。今は強制性交罪って言うのか。まあとにかく、そういう意味でのレイプはともかく、強制わいせつ罪としての痴漢だったら、日本でも頻発している。ネットで検索すれば、よくそんな話は出て来るよ。新聞でも教師の女子生徒に対するわいせつ罪なんか毎日のように見るけど、これも広義の痴漢だよな。でさ、この東京にはそんな新聞やニュースに出てくるような痴漢ではなく、本当に正体不明のヤバい痴漢なんかもいるんだよ」
 エレーナ:「ほお……。どんな風に?レイプじゃないんでしょ?」
 鈴木:「違う。……被害に遭った女性は皆殺されてしまうんだって」
 エレーナ:「何故に?えーと……強制わいせつ殺人罪?強姦致死罪じゃなくて?」
 鈴木:「強制わいせつ致死罪……かな?或いは殺人がメインで、わいせつ行為はほんのオマケ程度にしか思っていないのかも。……かも、というのは犯人の正体が分かっていないからだね。つまり、まだ捕まっていないってことさ。でさ、エレーナの住んでいる江東区で若い女性の連続殺人事件が起きたって話は聞いてる?」
 エレーナ:「んー……何か、ニュースでやってたかな?」
 鈴木:「そうだね。で、犯人はまだ捕まっていない。俺の読みでは、江東区に住んでいるキミも危険に晒されているんだよ。何故なら……最初の殺人が起きてから、最近起きた殺人事件の中で、被害者というのは金髪の白人だけだって言うんだから」
 エレーナ:「新たな人種差別かしら?」
 鈴木:「キミが無関心でいるということは、その殺された白人女性達はキミの仲間ってわけではないようだね」
 エレーナ:「当然。もしそうだとしたら、ここで暢気にディナーなんてできないよ」
 鈴木:「そうだね。で、実は俺、この前キミのホテルに泊まったその帰り、その犯人らしき男を見たんだよ。ニュースで報道していた犯人の特徴に、よく似たヤツをね。森下駅の近くで。異様に目付きが悪くて、青白い顔をしていたな。俺が帰った時は真っ昼間だったのに、まるでそこだけ夜みたいな感じになっちゃっててさ。じいっと、行き交う人々の姿を見つめていたんだよ。獲物を探すかのようにさ。何だか幽霊のような感じだった」

 エレーナは鈴木の話を黙って聞いていた。
 鈴木はあまりにも気になったので、アーカイブで調べたらしい。

 鈴木:「……で、気になる記事を見つけたんだ。やっぱり、痴漢の事件なんだけどね。その犯人は女性の抵抗に遭って、もみあっているうちに地面に頭を打ちつけた……って、もう分かるだろ?」
 エレーナ:「打ち所が悪くて、あの世へ行ったか」
 鈴木:「その通り。その犯人は顔写真が出ていてね、その写真の特徴が、さっき言った森下駅前で見つけたヤツと何だかよく似ていたような気がしたんだよ」
 エレーナ:「なるほど。死んだ犯人が幽霊になって、今でも女を襲っているってか。よくある話だ」
 鈴木:「警察はそんな風には考えないだろう。同じ地域で同じような事件が起こったって言っても、片方の犯人が死んでしまっていたら、もう片方の事件とは関係無いと考えるだろうな」
 エレーナ:「ま、普通はそうだろうね」
 鈴木:「……というわけで、俺の話はこれで終わり。実はキミを遅くまで残らせたくはないんだ。犯人は今日だって駅の近くの……もしかしたら、キミのホテルの近くまで来てるかもしれないからね。俺の話が信じられるかどうか分かんないけど、やっぱり知らせないわけにはいかないと思ってさ」
 エレーナ:「何だか突拍子も無い話だな」
 鈴木:「急にこんな話をして、信じてもらえるとは思えない。だけど、話した内容は事実さ。キミのホテルまで送るよ。食事に誘ったのは俺なんだし。俺が責任を持って送るよ」
 エレーナ:「なるほど。人間の痴漢だったら、私の魔法で簡単に撃退できる。だけど、相手は幽霊か」
 鈴木:「“クロックタワー3”みたいに、凶悪犯の亡霊が魔女を襲うことだってある。キミがどれだけ強いか分からないけど……」
 エレーナ:「ま、少なくとも秋葉原で私の実力は証明したはずだけど?」
 鈴木:「ガスボンベを爆発させる魔法?人間には効いても、幽霊には効くかな?」
 エレーナ:「ただ単にガスボンベを爆発させるだけでは効かないかもね。大丈夫。私の魔法はそれだけじゃないから」

 エレーナはそう言ってウインクした。

 鈴木:「こう見えても、俺は日蓮正宗の信徒だ。朝晩の五座三座の勤行だって欠かさずやってる。御開眼済みの御数珠だって、いつでも携帯してるんだ。これも、それなりに効果があるような気がするんだよ」
 エレーナ:「稲生氏だったら、効果てきめんだったかもね。ま、大丈夫大丈夫。私1人が帰れるから」
 鈴木:「でも……」
 エレーナ:「あ、お会計だけよろしくね」

 尚も自分が送ると言い張る鈴木。
 どうしようか?

 1:鈴木に送ってもらう。
 2:1人で帰る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする