報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「稲生の怖い話」 3

2018-04-15 20:22:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[200×年7月31日19:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 大宮公園]
(何度も書きますが、稲生勇太の一人称です)

 僕は威吹の後を追いました。
 しかし、彼は妖怪です。
 茶寮を出た後、僕もすぐに出たのに、彼の姿は煙のように消えてしまっていたのです。
 僕は後悔に苛まれながら、彼の姿を必死に追いました。
 威吹は怒って、僕との盟約を切ってしまうだろうか?
 もしそうなったら、どうなるのだろう?
 それとも、盟約違反(殴っても良いとは言ってないし、書いてもいない)と呵責して、僕にどんな仕返しをするのか考えているのだろうか。
 30分以上も捜したでしょうか?
 僕はようやく大宮公園の中で、威吹の姿を見つけました。
 彼は公園内のベンチに座っていましたよ。
 僕は急いで彼の傍に駆け寄りました。
 幸い、僕に殴られた後、顔はそんなに腫れていなかったようです。
 それも、妖怪ならではなのでしょうね。
 僕は彼の隣に座りました。
 彼は僕を一瞥すると、大きな溜め息を吐きました。
 それは僕に対して憤っているようにも、呆れているような溜め息にも思えました。

 稲生:「ご、ごめん……。その……殴っちゃって……」

 僕が何とかそれだけ絞り出しました。
 すると威吹は今度は小さく溜め息を吐いて言いました。

 威吹:「鬼だな」
 勇太:「ごめん……」
 威吹:「いや、違うな。ユタ、修羅の形相をしてた」
 勇太:「修羅……」

 そう言われても、仕方の無いことです。
 そうそう、余談ですが、どういうわけだか、威吹は僕のことを『ユタ』と呼ぶんです。
 威吹に限らず、蓬莱山鬼之助やそのお姉さんの美鬼さんもそう呼ぶんですよ。
 妖怪にとって、何か意味のある呼び方なんでしょうね。
 結局、僕はその意味について知ることはできませんでしたが。

 威吹:「だが、ユタの拳で覚悟はできたよ。分かった。オレ……ボクも地獄まで付き合おう」

 威吹は僕の前では大人しい妖怪であるようにする為、一人称は『ボク』ですが、感情が昂ったり、自分と同等や下等と見なした者には『オレ』に変わります。
 目上の人の前で緊張している場合は『某(それがし)』となり、侍言葉になりますが。

 勇太:「地獄じゃないよ。成仏だよ」
 威吹:「成仏?あの修羅の形相がか?敢えて言うなら、不動明王といったところか」

 威吹はせせら笑うように言ってきました。
 でも、仕方がありません。

 勇太:「まだ修行が足りないみたいだ。もっともっと折伏しなきゃ……」
 威吹:「どうする?この辺の人間どもに、根こそぎ妖術を掛けるか?それとも駅の方がいいか?」
 勇太:「えーと……」

 と、その時でした。
 仏罰は突然現れたのです。

 女子部員:「あっ、ここにいたの!?」

 30代の女性が、僕達の所に走ってきました。
 確かこの人は……有紗さんの……上長さん?

 勇太:「えっと……確か、有紗の上長の……」
 女子部員:「支区長の加藤です!芙蓉茶寮に行ったら、大宮公園に向かったって聞いて……」
 勇太:「ええ。まあ、ちょっと……。で、何の御用ですか?」
 加藤:「大変なの!河合さんがここに来る途中、暴走車とトラックに跳ねられて……!」
 勇太:「ええーっ!?」

[2018年4月7日23:30.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
(三人称に戻ります)

 勇太:「顕正会の害毒には、色々なパターンがあります。ジワジワと来るパターン。突然来るパターン。顕正会在籍時に来るパターン。辞めてから来るパターン。様々なパターンがありますが、往々にして害毒がやってきた時には既に遅しということも散見されます。正法に背きし異流儀団体。そこに身を置くことの、何たる罪障か。ましてや更に、仏法に名を借りた妖術による不正入信勧誘は、いずれ己自身だけでなく、大事な人をも巻き込み、その身を亡ぼすのだと、どうして早く気づけなかったのか……」

 勇太はそう言うと、ボロボロと涙をこぼした。
 あの時の悲しさを思い出してしまったのだろう。
 従兄の稲生悟郎が勇太の肩を叩いた。

 稲生悟郎:「うんうん、辛かったな。かわいそうにな……うんうん」
 マリア:「その話は私もチラッと聞いたことがある。だけど……」
 ナディア:「いくらBuddhaの罰とはいえ、何かタイムリー過ぎるわね」
 勇太:「えっ……?」

 稲生にとってはとても悲しく、辛い思い出であるが、第三者の魔女達は冷静に考えられたようだ。

 ナディア:「あのさ、あなた自身が引き起こしたことなんでしょう?それなのに、どうして赤の他人が代わりに死ぬの?」
 勇太:「有紗さんは……その……僕の初恋の人でしたし、彼女が死んで絶望のどん底に叩き落されたので、僕にとっては大罰そのものだったんです」
 マリア:「違うよ。多分、罰なんかじゃないよ」
 勇太:「ええっ?有紗さんも顕正会の班長でした。彼女もそれなりに罪障を大きく積んでいたはずです」
 マリア:「お寺で何か吹き込まれたか?勇太自身が命の危機に瀕しないと、辻褄が合わないんだよ。勇太、私に仏法の話をしてくれたじゃないか」
 勇太:「えっ……と……」
 マリア:「勇太の宗教の機関紙なんかも見せてくれただろう?大白法とか妙教とかいう……」
 勇太:「え、ええ……」
 マリア:「あれの体験発表を読んだけど、大抵は自分自身に罰が下った、或いはいいことがあったとかいう話しか書いてないよ」
 勇太:「……あ!」

 勇太はようやく気づいたようだ。

 マリア:「つまり勇太の言う仏法の法則に照らし合わせると、勇太がやったことが仏の教えに反するのであれば、勇太自身に罰が下らないとおかしいってことになる。その……河合氏とやらは、直接勇太の不正勧誘に関わっていたわけじゃないんだろう?」
 勇太:「そうです!威吹の妖術を悪用するというアイディアも、それを全部実行に移させたのも僕1人です」
 ナディア:「あなたの1番最初の彼女さんは、あなたの不正について知ってた?」
 勇太:「知らないと思います。男子部と女子部は、基本的に活動は別ですから」
 ナディア:「じゃ、やっぱりおかしいね」
 勇太:「ど、どういうことです?」
 マリア:「河合氏は、誰かに殺されたんだよ」
 勇太:「えっ!?」
 悟郎:「勇太、その彼女さんはどういう事故で死んだんだ?」
 勇太:「車の事故です。横断歩道を渡っていたら信号無視の乗用車に跳ねられて対向車線に飛ばされ、そこへやってきたトラックにも轢かれて……」
 悟郎:「最初に跳ねた車のドライバーは?」
 勇太:「もちろん逮捕されました。でも、何だか『よく覚えていない』とか言って……」
 悟郎:「居眠り運転か?」
 勇太:「多分……」
 ナディア:「別の意味で怖い話になってしまったね。私やマリアは、もっと怖い話を知ってるよ。どう?聞きたい?」

 1:聞きたい
 2:聞きたくない
 3:どちらでもない

 ※バッドエンドはありませんが、どれを選択してもそれぞれストーリーが分岐します。
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