[4月8日22:15.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港国際線ターミナル]
稲生がトイレに行っている間、マリアは1人、ロビーで待っていた。
座れる所が少し離れた所である。
マリア:(霊気が相変わらず強い。地縛霊でも浮遊霊でもない。これはきっと……)
その時、マリアの背後から声を掛ける者がいた。
警備員:「失礼します!」
それは男性警備員だった。
稲生が向かったトイレの方からやってきたようで、ひどく慌てている。
マリア:「Huh?」
警備員:「稲生勇太様のお連れのマリア様でいらっしゃいますか!?」
マリア:「Oh,yes.Do you have any...(あ、はい。あの、何か……)」
警備員:「稲生様がトイレに閉じ込められて、今救助中なんです!すぐに来てください!」
マリア:(トイレに閉じ込められた!?)
マリアは立ち上がって、警備員の後に付いて行った。
相変わらず強い霊気がロビー内を漂っており、警備員の言っていることが本当なら、稲生をそんな目に遭わせたのは……。
マリア:「Wait!Wait few minutes!I can not...(待って!ちょっと待って!私は……)」
トイレの近くまで来た時、マリアは警備員を呼び止めた。
そして、いつの間にか自動通訳魔法具の効果が切れていたことに気づいた。
再びそれをONにする。
マリア:「私は男子トイレに入れません!」
警備員:「大丈夫です!今、他のお客様は立ち入り禁止にしていますから!お連れ様が……稲生様がマリア様をお呼びなんです!早く行ってあげてください!」
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
マリアは魔法の杖を構えて、ダンテ一門の呪文(というか掛け声に近い)を唱え出した。
ところが……。
警備員:「何をなさってるんですか!早く入ってください!」
何故か警備員はマリアの背中を押した。
まるで、押し込もうとしているかのようだ。
マリア:「勇太以外の男が私に触るな!……ヌィ・フ・ラゥム!」
マリアが魔法の杖を高く掲げると、その杖の頭から眩い光が発生した。
警備員:「!!!!!」
その光はまず警備員を包み込んだ。
警備員は何故か人間とは思えない声で叫ぶと、ドロドロに溶けて行き、ついには消えてしまった。
河合有紗:「ちっ、くそっ……!」
そのドロドロになって消えてしまった警備員の中から河合有紗が出て来ると、マリアを睨みつけて再び消えた。
マリア:「やはりか!」
河合有紗の消えた方に向かって数歩進むと、バァンとトイレの個室が思いっきり開く音が聞こえた。
稲生:「わあっ!」
そして、稲生が男子トイレから飛び出して来た。
マリア:「勇太!無事だったか!?」
勇太:「マリアさん……助かりました……ニフラムを唱えてくれたんですね」
マリア:「一応ね。何があった?」
勇太がトイレの中に入ると、元々ターミナルの中は空いているということもあって、トイレも誰もいなかったという。
そう、人間は。
個室の中から手だけが何本も伸びていて、勇太を捕まえようとしたという。
その手は霊気を帯びていたから、これもまた幽霊の一種と思われる。
そしてその手に捕まり、個室の中に引き込まれて閉じ込められた。
それでも手持ちの魔法の杖や日蓮正宗の開眼済み数珠のおかげで、トイレの便器に開いた異空間への引きずり込まれは何とか免れたらしい。
そうこうしているうちにマリアがやってきて、『邪悪な魂を一瞬にして堕獄させる』魔法を使用したことで、何とか助かった。
そのうち、一本の手は稲生が落としたペンを拾い、壁にこう書いたという。
『助けて……天国に行きたい……』
勇太:「日蓮正宗の教義では十界論として天界はあっても、死後の世界としての天国はありませんから。その言葉に捕らわれているうちは、成仏はできないでしょう」
マリア:「そうだな。それに、ヌィ・フ・ラゥムは亡霊を強制的にこの世から退場させる魔法だ。この世に留まっている幽霊は、天国に行けないのだろう?」
勇太:「もし罪障消滅できた後の臨終でしたら、ちゃんと成仏できるはずですからね、化けて出ること自体があり得ないですよ」
マリア:「でも、効かなかった。あいつには……」
勇太:「あいつって?」
マリア:「河合有紗。セキュリティガード(※)に化けて、私も一緒に連れ込もうとしたんだ」
※警備員の正式な英訳。『ガードマン』は和製英語。
勇太:「何ですって!?」
マリア:「多分、セキュリティのゴーストか何かを連れて来て、そこに憑依したんだろうな」
勇太:「幽霊が幽霊に憑依する!?そんなことができるんですか!?」
マリア:「分からないけど、そうとしか考えられない。で、そいつを盾にしてまんまと逃げたというわけ」
勇太:「有紗が……そんな……」
マリア:「実は私もいざとなったら、ヌィ・フ・ラゥムを使おうとは思っていたんだ。だけど、向こうは向こうで、ちゃんと対策を立てていたみたいだな」
勇太:「そんな……」
マリア:「ま、手の内を1つ暴いてやったんだから、しばらくは出てこないだろう。……私もトイレに行ってくる」
勇太:「あ……はい」
マリアも先ほどのトイレに向かった。
もちろん、女子トイレだ。
マリアの魔法が有紗以外には効いたのか、女子トイレに霊気は殆ど感じられなかった。
だが……。
マリア:「あんまり私をナメるなよ?私だって、人間を辞めているんだからな……!?」
洗面台の鏡にはマリアしか映っていなかったはずだ。
だが、マリアがその鏡を睨みつけると……。
鏡には河合有紗の姿が映し出され、マリアの気迫に気圧されるような反応を取るとスーッと消えていった。
そして、再び鏡にはマリアだけが映るようになった。
マリア:(亡霊なんかに勇太は殺させない。私が守るもの……)
稲生がトイレに行っている間、マリアは1人、ロビーで待っていた。
座れる所が少し離れた所である。
マリア:(霊気が相変わらず強い。地縛霊でも浮遊霊でもない。これはきっと……)
その時、マリアの背後から声を掛ける者がいた。
警備員:「失礼します!」
それは男性警備員だった。
稲生が向かったトイレの方からやってきたようで、ひどく慌てている。
マリア:「Huh?」
警備員:「稲生勇太様のお連れのマリア様でいらっしゃいますか!?」
マリア:「Oh,yes.Do you have any...(あ、はい。あの、何か……)」
警備員:「稲生様がトイレに閉じ込められて、今救助中なんです!すぐに来てください!」
マリア:(トイレに閉じ込められた!?)
マリアは立ち上がって、警備員の後に付いて行った。
相変わらず強い霊気がロビー内を漂っており、警備員の言っていることが本当なら、稲生をそんな目に遭わせたのは……。
マリア:「Wait!Wait few minutes!I can not...(待って!ちょっと待って!私は……)」
トイレの近くまで来た時、マリアは警備員を呼び止めた。
そして、いつの間にか自動通訳魔法具の効果が切れていたことに気づいた。
再びそれをONにする。
マリア:「私は男子トイレに入れません!」
警備員:「大丈夫です!今、他のお客様は立ち入り禁止にしていますから!お連れ様が……稲生様がマリア様をお呼びなんです!早く行ってあげてください!」
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
マリアは魔法の杖を構えて、ダンテ一門の呪文(というか掛け声に近い)を唱え出した。
ところが……。
警備員:「何をなさってるんですか!早く入ってください!」
何故か警備員はマリアの背中を押した。
まるで、押し込もうとしているかのようだ。
マリア:「勇太以外の男が私に触るな!……ヌィ・フ・ラゥム!」
マリアが魔法の杖を高く掲げると、その杖の頭から眩い光が発生した。
警備員:「!!!!!」
その光はまず警備員を包み込んだ。
警備員は何故か人間とは思えない声で叫ぶと、ドロドロに溶けて行き、ついには消えてしまった。
河合有紗:「ちっ、くそっ……!」
そのドロドロになって消えてしまった警備員の中から河合有紗が出て来ると、マリアを睨みつけて再び消えた。
マリア:「やはりか!」
河合有紗の消えた方に向かって数歩進むと、バァンとトイレの個室が思いっきり開く音が聞こえた。
稲生:「わあっ!」
そして、稲生が男子トイレから飛び出して来た。
マリア:「勇太!無事だったか!?」
勇太:「マリアさん……助かりました……ニフラムを唱えてくれたんですね」
マリア:「一応ね。何があった?」
勇太がトイレの中に入ると、元々ターミナルの中は空いているということもあって、トイレも誰もいなかったという。
そう、人間は。
個室の中から手だけが何本も伸びていて、勇太を捕まえようとしたという。
その手は霊気を帯びていたから、これもまた幽霊の一種と思われる。
そしてその手に捕まり、個室の中に引き込まれて閉じ込められた。
それでも手持ちの魔法の杖や日蓮正宗の開眼済み数珠のおかげで、トイレの便器に開いた異空間への引きずり込まれは何とか免れたらしい。
そうこうしているうちにマリアがやってきて、『邪悪な魂を一瞬にして堕獄させる』魔法を使用したことで、何とか助かった。
そのうち、一本の手は稲生が落としたペンを拾い、壁にこう書いたという。
『助けて……天国に行きたい……』
勇太:「日蓮正宗の教義では十界論として天界はあっても、死後の世界としての天国はありませんから。その言葉に捕らわれているうちは、成仏はできないでしょう」
マリア:「そうだな。それに、ヌィ・フ・ラゥムは亡霊を強制的にこの世から退場させる魔法だ。この世に留まっている幽霊は、天国に行けないのだろう?」
勇太:「もし罪障消滅できた後の臨終でしたら、ちゃんと成仏できるはずですからね、化けて出ること自体があり得ないですよ」
マリア:「でも、効かなかった。あいつには……」
勇太:「あいつって?」
マリア:「河合有紗。セキュリティガード(※)に化けて、私も一緒に連れ込もうとしたんだ」
※警備員の正式な英訳。『ガードマン』は和製英語。
勇太:「何ですって!?」
マリア:「多分、セキュリティのゴーストか何かを連れて来て、そこに憑依したんだろうな」
勇太:「幽霊が幽霊に憑依する!?そんなことができるんですか!?」
マリア:「分からないけど、そうとしか考えられない。で、そいつを盾にしてまんまと逃げたというわけ」
勇太:「有紗が……そんな……」
マリア:「実は私もいざとなったら、ヌィ・フ・ラゥムを使おうとは思っていたんだ。だけど、向こうは向こうで、ちゃんと対策を立てていたみたいだな」
勇太:「そんな……」
マリア:「ま、手の内を1つ暴いてやったんだから、しばらくは出てこないだろう。……私もトイレに行ってくる」
勇太:「あ……はい」
マリアも先ほどのトイレに向かった。
もちろん、女子トイレだ。
マリアの魔法が有紗以外には効いたのか、女子トイレに霊気は殆ど感じられなかった。
だが……。
マリア:「あんまり私をナメるなよ?私だって、人間を辞めているんだからな……!?」
洗面台の鏡にはマリアしか映っていなかったはずだ。
だが、マリアがその鏡を睨みつけると……。
鏡には河合有紗の姿が映し出され、マリアの気迫に気圧されるような反応を取るとスーッと消えていった。
そして、再び鏡にはマリアだけが映るようになった。
マリア:(亡霊なんかに勇太は殺させない。私が守るもの……)
……あ、書き忘れましたけど、実はあの選択肢、1つだけバッドエンドになるヤツがありまして……。
因みに、2にするとトイレに向かった稲生視点の話になります。
4という投げやりな回答をされると、作者も投げやりになって、飛行機の中で爆睡するイリーナの描写が延々と続きます。
ということは……3がバッドエンドですね。
稲生視点の話になりますが、本当にトイレ内では何も無かったです。
でもトイレから出るとマリアと有紗が格闘していて、マジギレのマリアの放ったイオナズンに巻き込まれて【お察しください】。
お疲れ様です。
ってか・・本当に凄いですよねぇ。
イメージの湧き方っていうか、どうすれば
ストーリーが次から次へと湧いてくるのか・・。
思わず舌を巻いてしまします。
百三さんは、子供の頃から小説に親しんで
らっしゃったんですか?
私は異世界の中の映画監督になったつもりで書いているんですよ。
私が本格的に小説を読むようになったのは、中学生の頃でした。
赤川次郎先生の作品ですね。
赤川先生の作品は難しい表現を使っていないので、とても親しみやすかったと思います。
それから書くようになりましたね。
最初の作品が“アンドロイドマスター”シリーズの初期の初期ですよ。
公式に発表したのが高校の時に書いた“私立探偵愛原学”です。
何だかマンネリ化しつつありますが、今後ともよろしくお願い致します。
お疲れ様です。
才能もさることながら、「環境」も重要な要素の
一つなんでしょうねぇ。
Wiki見ましたけど、なんか・・百三さんと
重なる部分があるな~って感じました。
もちろんアマチュアの私がプロフェッショナルの人達に叶うとは思っておりません。
未発表の作品を見るに、現在の敷島孝夫の原形やマリアンナの原形、エミリーの原形がいたりと、とても懐かしいネタがあります。
もっとも、今の私の目から見ても、とても公表できる内容ではない稚拙なものとなっておりますがね。
高校の時は西村京太郎先生の鉄道ミステリーがマイブームになったことがありましたが、さすがにあれは真似できませんね。
今や夜行列車の殆どが廃止になって、西村先生のネタを素人ながら心配しているところです。
誰かがきっと、「高速バスミステリー」でも書いてくれるだろうと期待していますよ。
意外とネタは豊富なんではないかと思っているのですが。