[2月27日 11:00.財団仙台支部事務所 敷島孝夫&アリス・フォレスト]
敷島は事務室の椅子に座って、動画の編集作業をしていた。
「だーかーらっ!あの話はナシって言ったでしょ!知らないもんは知らないんだってば!文句あんなら、そっちから日本に来なさいよ!……ったく!」
日本語訳するとこんな感じだろうか。アリスが苛立った感じで、ケータイ片手に事務室に入ってきた。
「うるさいな。ここは事務室なんだから静かにしろよ」
敷島は部屋の奥の自分の席から、アリスに注意した。
「イリノイ州のサツがうるさいのよ。だいたい、じー様の隠しアジトなんて全部知らないっての」
アリスはあからさまに不機嫌ってな感じで、空いている椅子にドカッと座った。
「お前、ウィリーから財産全部受けたんじゃないのか?」
「じー様から受け取ったのは金と研究成果だけ。あと、じー様の研究理念とか……。ハコモノについてだったら、アタシよりプロフェッサー十条の方が詳しいわよ」
「十条理事ねぇ……。確か、前にウィリーの隠し財産発掘に行ってくるとか言ってたけど……。ん?イリノイ州?」
「そうよ。何かね、アメリカの中西部に、じー様のラボがあったらしくて」
「お前は知らないのか?」
「だって、アタシを引き取る前の話だし」
「あ、そうか。イリノイ州というと、シカゴがある州か」
「そうね。アタシは行ったこと無いけど」
「ふーん……」
まあ、大都市ではあるが、首都ではないからなぁ……。敷島がそう思ってると、
「生まれのテキサス州しか知らないし」
「まあ、テキサス州だけでも日本の何倍以上の広さがあるしな。独立国家だった歴史もあるし」
「そうそう。テキサス共和国ね」
「大日本電機もなあ、ニューヨークに支社だか営業所だか作ろうなんて話あったのになぁ……」
敷島はしみじみと言った。
「ちょっと。なにジジ臭いこと言ってんのよ。作るんだったら、アタシの生まれのダラスにしたら?ニューヨークより土地代安いよ」
「ははははは!ダラスがどこにあるか知ってる社員が、あの中にいたかどうか……」
「いいのよ。アメリカ人の8割はニューヨークがどこにあるかも知らないよ」
「嘘ぉ!?」
「ところで、何か面白そうな動画ね。それ何?」
「ああ。俺がボカロ・プロデューサーやってた頃の記録映像だよ。せっかくだから、ちゃんと編集して取っておこうと思ってね」
ちょうど今、鏡音リン・レンがモニタに映っていた。
「コンピュータ・ウィルスの一種で、“インフルエンザ”って知ってる?」
「ええ。確か、じー様の試作ウィルスだったかな。ヒト・インフルエンザみたいに空気感染していくみたいな、パンデミックを引き起こす画期的なウィルスだって、年甲斐も無くはしゃいでたなぁ……」
「それに纏わる話だよ、これは」
「えっ?」
[5年前の1月30日 南里研究所 鏡音リン・レン]
「レンのバカ!もう知らないからっ!!」
「リンこそ、いい加減にしろよ!」
「2人とも、ケンカはやめようよー」
取っ組み合いとまでは行かないまでも、口論する双子の姉弟。池波由紀奈が見かねて止めに入ろうとするが、
「ゆきぴょんは黙ってて!」
姉弟に同時に文句を言われてしまった。
「おい、どうした?2人とも」
そこへ敷島が事務室から出てきた。
「どうもこうも、“ベタな双子キャラの法則”通りよ」
MEIKOが肩を竦めた。
「なに?」
「必ず1話分は取っ組み合いのケンカをして、最後には仲直りするっていうね」
呆れと苦笑を混ぜた顔でそう言った。
「MEIKO!ボクはリンと徹底抗戦するからね!余計な口出ししないで!」
「ゆきぴょんもだよ!」
「ま、まあ、とにかく、リン。仕事の時間だから、早く出発の準備しろ」
赤月もやってくる。
「レンもよ。ほら、早く支度して」
「ベーッ!」
「イーッ!」
最後に2人の姉弟は睨み合った。
[同日 車の中 敷島孝夫&鏡音リン]
〔「……最近、インフルエンザが流行しています。リスナーの皆様も、うがい手洗いをこまめに行って……」〕
ラジオからはパーソナリティを務めるKAITOの声が聞こえてくる。
「一体、ケンカの原因は何なんだ?」
「兄ちゃんには関係無いでしょ!リン達、今徹底抗戦中なんだから!」
「あー、ハイハイ。ま、それはともかく、アイドルは笑顔が大事なんだからな。撮影までに、そのふくれっ面何とかしてくれよ」
するとリンはニコッと笑った。
「もちろん。久しぶりの歌の仕事ですからー」
「最初はグラビアの撮影からだぞ」
「やっぱり、ボーカロイドは歌を歌うのが使命だからねー」
「何だ、急に?」
[市内のスタジオ 敷島孝夫&鏡音リン]
「……どうしたの?リンちゃん、何か怒ってる?」
ふくれっ面を何とかすると言ったリンだが、そう簡単には行かないようで、表情の豊かさが求められるグラビア撮影はつまずいた。
「別に怒ってないよ」
「どうも表情が硬いな。すいません、ちょっと調整しますので、時間頂けませんか?」
敷島はリンを控え室に連れて行った。
「冬でもグラビアの撮影は水着なんだな。屋内の撮影とはいえ、人間だとちょっと寒いかな」
「……そうだね」
「なあ、リン。仕事までにレンとのケンカのことは忘れるって言っただろ?」
「……兄ちゃん、レンとのケンカの原因聞きたい?」
「じゃあ、教えてくれ」
「午前中、雑誌の取材があったんだ」
「ああ、知ってる。確か、赤月先生が一緒だったな」
「うん」
[同日午前中 南里研究所の応接室 鏡音リン・レン]
「ここ最近、姉弟別々に仕事をすることが多くなったようですが、それについてどう思いますか?」
雑誌記者がインタビューし、それにリンとレンが答える形式である。
レンが答えた。
「正直確かに少し寂しいです。でも、いくら仕事が別々になろうとも、ボク達は2人で1つなのに変わりはありませんから」
「なるほど。先月のファン投票によると、意外にもリンちゃんとレン君で、少し差が開いた気がします。リンちゃんは、レン君よりやや順位を落としてしまいましたが、それについては?」
何故かそこでピリッとリンの体に過電流が一瞬流れた感触があった。
「えー……」
リンが答えに詰まったと見るや、レンが代わりに答えた。
「それはたまたまです。確かに先月はボク、リンより仕事が多かったのは事実で、それが原因だと思うんです。だからけしてリンが人気が無いとか、そういうことじゃなくて、さっきも言ったように、ボク達は作られた時から絆というか、そういうので結ばれているので……」
「……リン、悔しいよ」
リンはポツリと言った。
「リン?」
「レンに負けて……弟に負けて、悔しいよ……」
「な、なに言って……!?」
取材が終わってから……。
「リン、さっきは何であんなこと言ったのさ!変な誤解されたらどうするんだ!!」
レンが双子の姉に食って掛かる。
「リンは正直に答えただけだよ」
「いや、だから、相手は芸能雑誌の記者さんなんだ。それに何だよ、正直って?リンはボクのこと、そんな風に考えてたのか!」
[同日午後 再び車の中 敷島孝夫&鏡音リン]
「ふーん……。そんなことがあったのか」
「うん……。何でリン、あんなこと言っちゃったんだろう」
リンは後悔という2文字がぴったり合う、そんな顔をしていた。
「お前達はどんどん成長していってる。ボーカロイドには、そういった“成長ブログラム”が組み込まれてるからな。仕事の方向性が2人で変わってきたことで、意見が衝突するかもしれんって所長が言ってたけど、どうも本当だったみたいだな」
「博士が?」
「ああ」
「レンとは方向性が違うって……じゃあ、兄ちゃんはリンをどんなアイドルにしてくれるの?」
「人間のアイドルとは違うからな、それと同じじゃダメだというのは分かってるんだけど……。正直、まだ俺自身がどうするかってな……ハハハ……(乾)」
「えーっ?」
「最初、KAITOがヒントを言ってくれてはいたんだけどな」
「KAITOっとが?」
「確か、『ボク達には色々な個性・特色があります。それを大いに活用してください』みたいな?」
「ああ。兄ちゃんがダブルブッキングやらかして、危うくクビになりかけた時?」
「悪かったな……。まあ、とにかく、その答えはもう少し待っててくれ。リンは何も歌うだけでなく、ダンスや演技も1番上手いと思う」
「ほんとに!?」
「ああ。何の身体改造も無くして、あのミュージカルの主役を成功させたのは大きかったよ」
「あれだって結局、準主役のレンに人気を持ってかれちゃってさ……」
「まあ、レンは悲劇の主人公みたいな役だったからな」
その時、敷島のタブレットからアラームが鳴った。
「何だ?誰か異常か?」
特殊なアプリを作って、インストールしてある。ボーカロイド達の体などに異変が起きた時に鳴る音だった。
「あ、兄ちゃんは運転中だから、リンが見るね」
「ああ」
リンは急いでタブレットを取ると、すぐにアラームを止めた。
「誰だ?」
「う、うん……。ルカ姉ちゃんみたい」
「ルカが?ルカに何があったんだ?」
「ちょっと発声機能に負荷があったみたいだね」
「ルカは確か……。ああ、赤月先生と合流して、PVの撮影だったか」
「そうそう。みくみくとも一緒だったね」
「そうだそうだ」
リンはニコリと笑って、タブレットをリア・シートに隠した。そのモニタには、こう表示されていた。
『注意報:鏡音リン 種別:機器異常 内容:冷却系 ……』
と……。
敷島は事務室の椅子に座って、動画の編集作業をしていた。
「だーかーらっ!あの話はナシって言ったでしょ!知らないもんは知らないんだってば!文句あんなら、そっちから日本に来なさいよ!……ったく!」
日本語訳するとこんな感じだろうか。アリスが苛立った感じで、ケータイ片手に事務室に入ってきた。
「うるさいな。ここは事務室なんだから静かにしろよ」
敷島は部屋の奥の自分の席から、アリスに注意した。
「イリノイ州のサツがうるさいのよ。だいたい、じー様の隠しアジトなんて全部知らないっての」
アリスはあからさまに不機嫌ってな感じで、空いている椅子にドカッと座った。
「お前、ウィリーから財産全部受けたんじゃないのか?」
「じー様から受け取ったのは金と研究成果だけ。あと、じー様の研究理念とか……。ハコモノについてだったら、アタシよりプロフェッサー十条の方が詳しいわよ」
「十条理事ねぇ……。確か、前にウィリーの隠し財産発掘に行ってくるとか言ってたけど……。ん?イリノイ州?」
「そうよ。何かね、アメリカの中西部に、じー様のラボがあったらしくて」
「お前は知らないのか?」
「だって、アタシを引き取る前の話だし」
「あ、そうか。イリノイ州というと、シカゴがある州か」
「そうね。アタシは行ったこと無いけど」
「ふーん……」
まあ、大都市ではあるが、首都ではないからなぁ……。敷島がそう思ってると、
「生まれのテキサス州しか知らないし」
「まあ、テキサス州だけでも日本の何倍以上の広さがあるしな。独立国家だった歴史もあるし」
「そうそう。テキサス共和国ね」
「大日本電機もなあ、ニューヨークに支社だか営業所だか作ろうなんて話あったのになぁ……」
敷島はしみじみと言った。
「ちょっと。なにジジ臭いこと言ってんのよ。作るんだったら、アタシの生まれのダラスにしたら?ニューヨークより土地代安いよ」
「ははははは!ダラスがどこにあるか知ってる社員が、あの中にいたかどうか……」
「いいのよ。アメリカ人の8割はニューヨークがどこにあるかも知らないよ」
「嘘ぉ!?」
「ところで、何か面白そうな動画ね。それ何?」
「ああ。俺がボカロ・プロデューサーやってた頃の記録映像だよ。せっかくだから、ちゃんと編集して取っておこうと思ってね」
ちょうど今、鏡音リン・レンがモニタに映っていた。
「コンピュータ・ウィルスの一種で、“インフルエンザ”って知ってる?」
「ええ。確か、じー様の試作ウィルスだったかな。ヒト・インフルエンザみたいに空気感染していくみたいな、パンデミックを引き起こす画期的なウィルスだって、年甲斐も無くはしゃいでたなぁ……」
「それに纏わる話だよ、これは」
「えっ?」
[5年前の1月30日 南里研究所 鏡音リン・レン]
「レンのバカ!もう知らないからっ!!」
「リンこそ、いい加減にしろよ!」
「2人とも、ケンカはやめようよー」
取っ組み合いとまでは行かないまでも、口論する双子の姉弟。池波由紀奈が見かねて止めに入ろうとするが、
「ゆきぴょんは黙ってて!」
姉弟に同時に文句を言われてしまった。
「おい、どうした?2人とも」
そこへ敷島が事務室から出てきた。
「どうもこうも、“ベタな双子キャラの法則”通りよ」
MEIKOが肩を竦めた。
「なに?」
「必ず1話分は取っ組み合いのケンカをして、最後には仲直りするっていうね」
呆れと苦笑を混ぜた顔でそう言った。
「MEIKO!ボクはリンと徹底抗戦するからね!余計な口出ししないで!」
「ゆきぴょんもだよ!」
「ま、まあ、とにかく、リン。仕事の時間だから、早く出発の準備しろ」
赤月もやってくる。
「レンもよ。ほら、早く支度して」
「ベーッ!」
「イーッ!」
最後に2人の姉弟は睨み合った。
[同日 車の中 敷島孝夫&鏡音リン]
〔「……最近、インフルエンザが流行しています。リスナーの皆様も、うがい手洗いをこまめに行って……」〕
ラジオからはパーソナリティを務めるKAITOの声が聞こえてくる。
「一体、ケンカの原因は何なんだ?」
「兄ちゃんには関係無いでしょ!リン達、今徹底抗戦中なんだから!」
「あー、ハイハイ。ま、それはともかく、アイドルは笑顔が大事なんだからな。撮影までに、そのふくれっ面何とかしてくれよ」
するとリンはニコッと笑った。
「もちろん。久しぶりの歌の仕事ですからー」
「最初はグラビアの撮影からだぞ」
「やっぱり、ボーカロイドは歌を歌うのが使命だからねー」
「何だ、急に?」
[市内のスタジオ 敷島孝夫&鏡音リン]
「……どうしたの?リンちゃん、何か怒ってる?」
ふくれっ面を何とかすると言ったリンだが、そう簡単には行かないようで、表情の豊かさが求められるグラビア撮影はつまずいた。
「別に怒ってないよ」
「どうも表情が硬いな。すいません、ちょっと調整しますので、時間頂けませんか?」
敷島はリンを控え室に連れて行った。
「冬でもグラビアの撮影は水着なんだな。屋内の撮影とはいえ、人間だとちょっと寒いかな」
「……そうだね」
「なあ、リン。仕事までにレンとのケンカのことは忘れるって言っただろ?」
「……兄ちゃん、レンとのケンカの原因聞きたい?」
「じゃあ、教えてくれ」
「午前中、雑誌の取材があったんだ」
「ああ、知ってる。確か、赤月先生が一緒だったな」
「うん」
[同日午前中 南里研究所の応接室 鏡音リン・レン]
「ここ最近、姉弟別々に仕事をすることが多くなったようですが、それについてどう思いますか?」
雑誌記者がインタビューし、それにリンとレンが答える形式である。
レンが答えた。
「正直確かに少し寂しいです。でも、いくら仕事が別々になろうとも、ボク達は2人で1つなのに変わりはありませんから」
「なるほど。先月のファン投票によると、意外にもリンちゃんとレン君で、少し差が開いた気がします。リンちゃんは、レン君よりやや順位を落としてしまいましたが、それについては?」
何故かそこでピリッとリンの体に過電流が一瞬流れた感触があった。
「えー……」
リンが答えに詰まったと見るや、レンが代わりに答えた。
「それはたまたまです。確かに先月はボク、リンより仕事が多かったのは事実で、それが原因だと思うんです。だからけしてリンが人気が無いとか、そういうことじゃなくて、さっきも言ったように、ボク達は作られた時から絆というか、そういうので結ばれているので……」
「……リン、悔しいよ」
リンはポツリと言った。
「リン?」
「レンに負けて……弟に負けて、悔しいよ……」
「な、なに言って……!?」
取材が終わってから……。
「リン、さっきは何であんなこと言ったのさ!変な誤解されたらどうするんだ!!」
レンが双子の姉に食って掛かる。
「リンは正直に答えただけだよ」
「いや、だから、相手は芸能雑誌の記者さんなんだ。それに何だよ、正直って?リンはボクのこと、そんな風に考えてたのか!」
[同日午後 再び車の中 敷島孝夫&鏡音リン]
「ふーん……。そんなことがあったのか」
「うん……。何でリン、あんなこと言っちゃったんだろう」
リンは後悔という2文字がぴったり合う、そんな顔をしていた。
「お前達はどんどん成長していってる。ボーカロイドには、そういった“成長ブログラム”が組み込まれてるからな。仕事の方向性が2人で変わってきたことで、意見が衝突するかもしれんって所長が言ってたけど、どうも本当だったみたいだな」
「博士が?」
「ああ」
「レンとは方向性が違うって……じゃあ、兄ちゃんはリンをどんなアイドルにしてくれるの?」
「人間のアイドルとは違うからな、それと同じじゃダメだというのは分かってるんだけど……。正直、まだ俺自身がどうするかってな……ハハハ……(乾)」
「えーっ?」
「最初、KAITOがヒントを言ってくれてはいたんだけどな」
「KAITOっとが?」
「確か、『ボク達には色々な個性・特色があります。それを大いに活用してください』みたいな?」
「ああ。兄ちゃんがダブルブッキングやらかして、危うくクビになりかけた時?」
「悪かったな……。まあ、とにかく、その答えはもう少し待っててくれ。リンは何も歌うだけでなく、ダンスや演技も1番上手いと思う」
「ほんとに!?」
「ああ。何の身体改造も無くして、あのミュージカルの主役を成功させたのは大きかったよ」
「あれだって結局、準主役のレンに人気を持ってかれちゃってさ……」
「まあ、レンは悲劇の主人公みたいな役だったからな」
その時、敷島のタブレットからアラームが鳴った。
「何だ?誰か異常か?」
特殊なアプリを作って、インストールしてある。ボーカロイド達の体などに異変が起きた時に鳴る音だった。
「あ、兄ちゃんは運転中だから、リンが見るね」
「ああ」
リンは急いでタブレットを取ると、すぐにアラームを止めた。
「誰だ?」
「う、うん……。ルカ姉ちゃんみたい」
「ルカが?ルカに何があったんだ?」
「ちょっと発声機能に負荷があったみたいだね」
「ルカは確か……。ああ、赤月先生と合流して、PVの撮影だったか」
「そうそう。みくみくとも一緒だったね」
「そうだそうだ」
リンはニコリと笑って、タブレットをリア・シートに隠した。そのモニタには、こう表示されていた。
『注意報:鏡音リン 種別:機器異常 内容:冷却系 ……』
と……。
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