報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夜の帰京」

2023-01-23 12:16:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月23日21時45分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅新幹線乗り場→東北新幹線74B列車8号車内]

 高橋が喫煙所から戻り、リサもトイレから出てきた。

 高橋「先生、どうします?ホームに行きますか?」

 列車を待ちますか?
 ①はい
 ②いいえ

 愛原「①だ!」
 高橋「え?」
 愛原「……あ、いや、何でもない。ホームに行こう」
 高橋「はい」

 私達はエスカレーターで、ホームに上がった。

〔13番線に、“やまびこ”74号、東京行きが、10両編成で、参ります。この、電車は、福島、郡山、宇都宮、大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕
〔「13番線、ご注意ください。“やまびこ”74号、東京行きが参ります。本日、東京行きの最終列車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 ホームで列車を待っていると、盛岡方向から真っ白なヘッドランプの光を灯らせて、最終列車が入線してきた。
 厳密にはこの後にも1本あるのだが、それは郡山止まりである。

〔仙台、仙台。仙台、仙台。ご乗車、ありがとうございました。……〕

 JR仙台駅には、ホームドアが無い。
 なので、列車が停車すると、すぐにドアが開く。
 盛岡始発なので、既に先客が乗っていたが、この駅で降りる乗客も散見される。
 そして、私達は前に並んでいる乗客に続いて、8号車に乗り込んだ。

 

〔「21時48分発、“やまびこ”74号、東京行きです。本日、東京行きの最終列車です。次は、福島に止まります。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 愛原「ここだな」
 高橋「先生、荷物上げます」
 愛原「ああ」

 リサが窓側席に行き、私は真ん中、高橋は通路側というのがセオリー。
 大きな荷物は、高橋に棚の上に載せてもらう。
 リサはテーブルを出して、NewDaysで買ったお菓子やジュースを置いた。
 しばらくして、ホームから発車メロディの音色が聞こえてくる。
 さとう宗幸氏の“青葉城恋唄”を地元の仙台フィルハーモニー管弦楽団が演奏したものである。

〔「13番線、ドアが閉まります。ご注意ください。ドアが閉まります」〕

 終電あるあるで駆け込み客を待つことがあり、それで発車が遅れることがある。
 客扱い遅れは乗務員の責任ではないので、会社側からのペナルティが課せられることはないそうだ。
 先述した通り、ホームドアが無いので、車両側のドアが閉まれば、すぐに発車する。
 スーッと加速して行き、夜の市街地に入る。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“やまびこ”号、東京行きです。次は、福島に止まります。……〕

 高橋「それにしても先生、何とか無事に帰れそうですね?」
 愛原「油断するなよ。遠足や修学旅行と同じで、帰るまで仕事なんだからな」
 高橋「メモっておきます!」
 愛原「今更かよ……」

 そもそも帰りの新幹線代から、東京駅からマンションまでのタクシー代やら、デイライトさんに請求できるのだから、やはり帰るまでが仕事なのは間違いないだろう。
 例の資料は全てデイライトさんに送ったが、ちゃんと届くまでは、こちらに責任がある。

 愛原「今頃は、あの宅急便も、夜の高速を走っているだろう」
 高橋「なるほど」
 愛原「いや、もしかしたら、貨物列車かな」
 高橋「貨物列車ですか」
 愛原「大宮駅で、ヤマト運輸のコンテナを積んだ貨物列車を見たことがある。あれかもしれない」

 いずれにせよ、明日の午前中に着けば構わない。
 一方、リサはポッキーをポリポリ食べていた。

 リサ「先生、ポッキーゲームやる?」
 愛原「え?」
 高橋「バカ野郎、俺が先生とポッキーゲームやるんだよ!」
 愛原「オマエら、アホか!」

 こいつらといると、退屈しないなァ……。

[同日23時44分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 愛原「ニュースを見てるけど、さすがにまだ例の地下施設はニュースになっていないようだ」
 高橋「報道規制ですかね?」
 愛原「どうだろうな……」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 もう終電なので、乗り換え案内はされない。
 もっとも、まだ通勤電車は運転されている。

〔「23番線到着、お出口は右側です。各在来線にお乗り換えのお客様は、最終列車にご注意ください。……」〕

 愛原「駆け足の仕事だったな」
 高橋「まさか、終電で帰ることになるとは思いませんでしたね」

 リサは私に寄り掛かるようにして寝ている。

 愛原「リサ、起きろ。そろそろ降りるぞ」
 リサ「うーん……」

 列車は地下トンネルを出て、秋葉原駅、神田駅と通過していく。
 平日なら並走する通勤電車も、もっと混んでいるだろうが、祝日の今日は客が少ない。
 そして、列車は東京駅の新幹線ホームに滑り込んだ。
 この車両はこのままこのホームで夜明かしをし、明日の始発列車として運転される。
 隣の東海道新幹線ホーム14番線にも、似たような運用がされると思われるN700系が停車していた。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京、終点、東京です。お忘れ物、落とし物をなさいませんよう、ご注意ください。23番線の列車は、回送です。ご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 私達は荷物を手に、ホームに降りた。

 愛原「それじゃ、タクシーにでも乗るか」
 高橋「へい」

 エスカレーターでコンコースに下り、八重洲中央口の改札を出る。
 それから八重洲側のタクシー乗り場へ。
 荷物はトランクを開けてもらい、そこに載せた。
 後ろに3人で乗る。
 セダンタイプのタクシーに3人で乗ると狭いが、リサと高橋は、私と密着できる御褒美らしい。

 愛原「菊川1丁目【中略】までお願いします」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 タクシーは深夜の東京駅を出発した。

 愛原「ちょ……狭い!寄り掛んな!」
 高橋「気のせいっスよ~」
 リサ「気のせいっスよ~」
 愛原「……お前ら、後で説教な」

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