[3月30日21:45.天候:晴 JR大宮駅西口〜大宮駅構内 稲生勇太&マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]
最後の送迎バスが大宮駅西口に到着する。
バスを降りると、すぐにぺデストリアンデッキを上がって、駅の中へ向かった。
「こんな時間でも、意外と暖かいな」
「三寒四温とはよく言ったものです。もう春ですね」
とはいえマリアの場合、ブラウスの上にベストを着用して、ブレザーを着込み、更にその上からローブを羽織っているのだが。
稲生はSuicaであるが、マリアは相変わらずキップを買って乗る方式である。
1人前になったことで、門内からある程度の決裁権を与えられるはずで、それがクレカだったりする。
イリーナほどの大魔道師クラスになると、ゴールドカードどころか、プラチナカードやその更に上を行くブラックカードなんかも持っていたりする。
政財界と繋がったりすると、そこから多大な支援を受けられるということだ。
「お待たせ」
「いえっ」
マリアの言葉に手を振る稲生。
キップを買って来たマリアとSuica持ちの稲生で、自動改札機を通る。
(マリアさんの場合、Suicaビューカードなんてどうだろう?あれもクレジット機能付きだし、国内を鉄道で移動するにはいいかも……)
あれにはゴールドカードもあるから、もし今後、マリアが独自の稼ぎルートを確保したらいいのではないかとも。
因みにイリーナの場合は、国外の物が多い。
日本ではアメリカンエクスプレスをよく使っている。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、21時53分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
地下の埼京線ホームに降りると、緑色の帯を巻いたE233系電車が停車していた。
いつもは先頭車に乗り込む稲生だが、今回は最後尾に乗り込んだ。
〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
緑色の座席に腰掛けると、稲生が言った。
「これから乗る夜行バスは西口から出るので、後ろの方がいいんです」
と。
[同日21:53.天候:晴 JR埼京線2158K電車・1号車 稲生&マリア]
地下ホームに発車メロディが鳴り響く。
外国では珍しいことらしい。
外国ではベルどころか、何も鳴らさないで見切り発車して行くことが多いという。
〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ドアが閉まって、電車が走り出した。
22番線は下り副線ホームである為、上り本線に出る為にポイントを渡らなければならない。
大きく電車が揺れる。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です。……〕
稲生が家から持って来たアルカディア・タイムス日本語版。
タブロイド判であるが、日刊紙ではなく、朝刊・夕刊とある。
試しに夕刊をネット購入してみたらちゃんと届いて(誰が届けているのかは定かではない)、そこにはちゃんと号外では書かれなかった詳しい内容が書かれていた。
号外が届かなかった者の為に、改めて処分内容が記載されている。
新聞を使って、門内全ての者に通達するという手法はダンテ一門ならではか。
マリアはもちろん第一の被害者であるため、賞罰は無しである。
通達とは別に、アルカディア・タイムスの記者が書いた記事も当然ある。
『性被害者がその被害と向き合い、前向きに生きて行くことを選んだのは大変素晴らしいことである。しかるに、その足を引っ張るのもまた性被害者であるというのは、皮肉を通り越して、もはや笑えないジョークであろう』
と、痛烈な内容になっている。
『ダンテ一門の入門者について、その新弟子審査の在り方も問われるのではないか』
とも。
「アルカディア・タイムスは産経新聞くらいの保守思想だと聞きましたが、そこから見ても、ちょっとダンテ一門の信用が墜ちた感が出てますね」
と、稲生。
マリアは英語版を見ていたが、英語版の方がもっとキツい表現で書かれているのだろうか。
「うん……」
マリアは複雑な顔で新聞を見ていた。
マリア自身、最初はクリスティーナ達と仲が良かったのだから、彼女らの豹変ぶりには驚いたに違いない。
ただ、稲生から見ると、もしかして変わったのはマリアの方なのではないかと思った。
クリス達の顔を見ると、どことなく最初に出会った時のマリアに似ていたからだ。
マリアは少しだけ前に進んだような気がしていたようなことを言っていたが、他の魔女達から見れば、豹変してしまったほどの大きな前進をしたのかもしれない。
昔は目に隈があるほどの怖い目つきをしていたが、今ではそれがほとんど無くなったほどだ。
[同日22:32.天候:晴 JR新宿駅→新宿高速バスターミナル 稲生&マリア]
夜の東京都心を走る埼京線。
最後尾は混雑する傾向がある。
それは先頭よりも、他の路線に乗り換えがしやすいからだろう。
新南口とかサザンテラスに行くのなら先頭車でいいが、西口とか他の出口に行く時も、後ろの車両の方が良いからだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿に到着です。1番線に入ります。お出口は同じく、右側です。……」〕
電車が新宿駅のホームに入る。
到着してドアが開くと、1番混んでいる最後尾から乗客が吐き出された。
「じゃあ、行きましょう」
稲生達は後から降りた。
(※日付に注目。この時点ではまだバスタ新宿は開業していない)
深夜帯になっても、人波の絶えない新宿駅構内を歩く稲生達。
マリア的には、どこをどう歩いたのか覚えられないほどだった。
気がつくと、バスターミナルの文字が見えて来た。
「少し、まだ時間がありますね。トイレとかは下ですから」
「そう」
今は夜行便の発車する時間帯。
昼間の便もそうではあるのだが、夜行便の乗客の方が荷物が大きい感じがする。
稲生はターミナル内のトイレや自販機を利用した。
[同日23:00.天候:晴 アルピコ交通“中央高速バス”白馬線車内 稲生&マリア]
やってきたバスは最近流行りの独立3列シートではなく、通常の4列シート車。
とはいえ、既に窓にはカーテンが閉じられている。
運転手が2人乗っていて、1人はドアの前に立って、改札をしていた。
「はい、稲生さま。9Bですね」
「はーい」
バスに乗り込んで、指定された席は後ろの方。
マリアを窓側に座らせる。
「この後ろにあるのは?」
「トイレですよ」
「そうか」
稲生は荷棚にバッグとか乗せていた。
ローブのポケットに結構入る感じなので、稲生達は夜行便の乗客にしては荷物は少ないという……。
バスはほぼ満席らしく、稲生達の周囲の席も埋まった。
バスは2〜3分遅れで新宿高速バスターミナルを発車。
この夜行バスがヨドバシカメラ前のターミナルを発車するのは、これが最後になるだろう。
もし今度乗る機会があったら、新しく開業するバスタ新宿から乗ることになるはずだ。
「師匠は先に屋敷に着いているらしい」
「そうなんですか」
「まあ、今回色々なことがあったから、もう重大な話が色々あって、何から話したらいいか分からないくらいらしい」
「先生のことですから、ちゃんと筋道立てて話してくれますよ」
「師匠のことだから、この分だと話が終わるのに1日は掛かると思う」
「マジですか。そんなに重要な話……」
「それだけ今回は、大変なことになったということだよ」
「まあ、そうですね」
稲生は座席を倒した。
後ろはトイレになっているので、何も言わずとも良い。
「着いてから、先生が何と言ってくるのか楽しみですよ」
「……だな」
バスは眠らない町、新宿の町をあとにして、信州へ向かう。
最後の送迎バスが大宮駅西口に到着する。
バスを降りると、すぐにぺデストリアンデッキを上がって、駅の中へ向かった。
「こんな時間でも、意外と暖かいな」
「三寒四温とはよく言ったものです。もう春ですね」
とはいえマリアの場合、ブラウスの上にベストを着用して、ブレザーを着込み、更にその上からローブを羽織っているのだが。
稲生はSuicaであるが、マリアは相変わらずキップを買って乗る方式である。
1人前になったことで、門内からある程度の決裁権を与えられるはずで、それがクレカだったりする。
イリーナほどの大魔道師クラスになると、ゴールドカードどころか、プラチナカードやその更に上を行くブラックカードなんかも持っていたりする。
政財界と繋がったりすると、そこから多大な支援を受けられるということだ。
「お待たせ」
「いえっ」
マリアの言葉に手を振る稲生。
キップを買って来たマリアとSuica持ちの稲生で、自動改札機を通る。
(マリアさんの場合、Suicaビューカードなんてどうだろう?あれもクレジット機能付きだし、国内を鉄道で移動するにはいいかも……)
あれにはゴールドカードもあるから、もし今後、マリアが独自の稼ぎルートを確保したらいいのではないかとも。
因みにイリーナの場合は、国外の物が多い。
日本ではアメリカンエクスプレスをよく使っている。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、21時53分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
地下の埼京線ホームに降りると、緑色の帯を巻いたE233系電車が停車していた。
いつもは先頭車に乗り込む稲生だが、今回は最後尾に乗り込んだ。
〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
緑色の座席に腰掛けると、稲生が言った。
「これから乗る夜行バスは西口から出るので、後ろの方がいいんです」
と。
[同日21:53.天候:晴 JR埼京線2158K電車・1号車 稲生&マリア]
地下ホームに発車メロディが鳴り響く。
外国では珍しいことらしい。
外国ではベルどころか、何も鳴らさないで見切り発車して行くことが多いという。
〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ドアが閉まって、電車が走り出した。
22番線は下り副線ホームである為、上り本線に出る為にポイントを渡らなければならない。
大きく電車が揺れる。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です。……〕
稲生が家から持って来たアルカディア・タイムス日本語版。
タブロイド判であるが、日刊紙ではなく、朝刊・夕刊とある。
試しに夕刊をネット購入してみたらちゃんと届いて(誰が届けているのかは定かではない)、そこにはちゃんと号外では書かれなかった詳しい内容が書かれていた。
号外が届かなかった者の為に、改めて処分内容が記載されている。
新聞を使って、門内全ての者に通達するという手法はダンテ一門ならではか。
マリアはもちろん第一の被害者であるため、賞罰は無しである。
通達とは別に、アルカディア・タイムスの記者が書いた記事も当然ある。
『性被害者がその被害と向き合い、前向きに生きて行くことを選んだのは大変素晴らしいことである。しかるに、その足を引っ張るのもまた性被害者であるというのは、皮肉を通り越して、もはや笑えないジョークであろう』
と、痛烈な内容になっている。
『ダンテ一門の入門者について、その新弟子審査の在り方も問われるのではないか』
とも。
「アルカディア・タイムスは産経新聞くらいの保守思想だと聞きましたが、そこから見ても、ちょっとダンテ一門の信用が墜ちた感が出てますね」
と、稲生。
マリアは英語版を見ていたが、英語版の方がもっとキツい表現で書かれているのだろうか。
「うん……」
マリアは複雑な顔で新聞を見ていた。
マリア自身、最初はクリスティーナ達と仲が良かったのだから、彼女らの豹変ぶりには驚いたに違いない。
ただ、稲生から見ると、もしかして変わったのはマリアの方なのではないかと思った。
クリス達の顔を見ると、どことなく最初に出会った時のマリアに似ていたからだ。
マリアは少しだけ前に進んだような気がしていたようなことを言っていたが、他の魔女達から見れば、豹変してしまったほどの大きな前進をしたのかもしれない。
昔は目に隈があるほどの怖い目つきをしていたが、今ではそれがほとんど無くなったほどだ。
[同日22:32.天候:晴 JR新宿駅→新宿高速バスターミナル 稲生&マリア]
夜の東京都心を走る埼京線。
最後尾は混雑する傾向がある。
それは先頭よりも、他の路線に乗り換えがしやすいからだろう。
新南口とかサザンテラスに行くのなら先頭車でいいが、西口とか他の出口に行く時も、後ろの車両の方が良いからだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿に到着です。1番線に入ります。お出口は同じく、右側です。……」〕
電車が新宿駅のホームに入る。
到着してドアが開くと、1番混んでいる最後尾から乗客が吐き出された。
「じゃあ、行きましょう」
稲生達は後から降りた。
(※日付に注目。この時点ではまだバスタ新宿は開業していない)
深夜帯になっても、人波の絶えない新宿駅構内を歩く稲生達。
マリア的には、どこをどう歩いたのか覚えられないほどだった。
気がつくと、バスターミナルの文字が見えて来た。
「少し、まだ時間がありますね。トイレとかは下ですから」
「そう」
今は夜行便の発車する時間帯。
昼間の便もそうではあるのだが、夜行便の乗客の方が荷物が大きい感じがする。
稲生はターミナル内のトイレや自販機を利用した。
[同日23:00.天候:晴 アルピコ交通“中央高速バス”白馬線車内 稲生&マリア]
やってきたバスは最近流行りの独立3列シートではなく、通常の4列シート車。
とはいえ、既に窓にはカーテンが閉じられている。
運転手が2人乗っていて、1人はドアの前に立って、改札をしていた。
「はい、稲生さま。9Bですね」
「はーい」
バスに乗り込んで、指定された席は後ろの方。
マリアを窓側に座らせる。
「この後ろにあるのは?」
「トイレですよ」
「そうか」
稲生は荷棚にバッグとか乗せていた。
ローブのポケットに結構入る感じなので、稲生達は夜行便の乗客にしては荷物は少ないという……。
バスはほぼ満席らしく、稲生達の周囲の席も埋まった。
バスは2〜3分遅れで新宿高速バスターミナルを発車。
この夜行バスがヨドバシカメラ前のターミナルを発車するのは、これが最後になるだろう。
もし今度乗る機会があったら、新しく開業するバスタ新宿から乗ることになるはずだ。
「師匠は先に屋敷に着いているらしい」
「そうなんですか」
「まあ、今回色々なことがあったから、もう重大な話が色々あって、何から話したらいいか分からないくらいらしい」
「先生のことですから、ちゃんと筋道立てて話してくれますよ」
「師匠のことだから、この分だと話が終わるのに1日は掛かると思う」
「マジですか。そんなに重要な話……」
「それだけ今回は、大変なことになったということだよ」
「まあ、そうですね」
稲生は座席を倒した。
後ろはトイレになっているので、何も言わずとも良い。
「着いてから、先生が何と言ってくるのか楽しみですよ」
「……だな」
バスは眠らない町、新宿の町をあとにして、信州へ向かう。
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