報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼狩りからの依頼」

2023-06-23 14:05:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月29日09時6分 天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス業10系統車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから、栗原家に向かう所である。
 幸い、菊川からなら都営バス1本で行ける。
 しかも、本数も多い。
 私と同行するのは、助手の高橋だけ。
 リサは留守番させ、来年初めに行われる引っ越しの準備をさせている。
 彼女を連れて行くと、鬼狩りを生業としてきた栗原家の面々に斬られてしまう恐れがある為。
 事情を知っている蓮華だけが庇ってくれるのだが、彼女曰く、『血の気の多い従兄達は、私でも止められない』とのこと。

 高橋「先生、バスが来ました」
 愛原「おーう」

 ごく普通のノンステップバスがやってくる。

〔本所吾妻橋経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます〕

 グライドスライドドア式の前扉が開いて、私達はバスに乗り込んだ。
 本数が多いということは利用客も多いということであるからして、席は空いておらず、私と高橋は吊り革に掴まった。
 観光地である東京スカイツリーの真ん前まで行くばすだからか、観光客の姿も多い。
 何しろ、東京の中でも賑わう所を走るバスだからだろう。

〔発車致します。お掴まりください〕

 私達を乗せたバスが走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは本所吾妻橋経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は立川、立川でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗本行寺と常泉寺へおいでの方は、終点、とうきょうスカイツリー駅前でお降りになると便利です。次は、立川でございます〕

 愛原「バスに乗ったことを、蓮華に伝えて……と」
 高橋「クライアントにはマメな連絡っスね。さすがっス」

 高橋は揺れるバスの中、器用にメモを取った。

 愛原「そういうことだよ、高橋君。この仕事は、クライアントとの信頼・信用で成り立っているんだからね」
 高橋「はい!……それにしても、リサを連れて来なくて良かったんスか?」
 愛原「まあ、リサは嫌がるだろうし、蓮華も嫌がるだろう。クライアントの嫌がることをするのはNGだね」
 高橋「りょ、了解っス!」

[同日09時15分 天候:晴 同区吾妻橋 栗原家]

 私達は1つ手前の本所吾妻橋で、バスを降りた。
 都営地下鉄浅草線も通っている。
 裏道が狭いところは、菊川と似ている気がする。

 愛原「えーと……ここだな」

 近所だからか、栗原家は3代前から鬼狩りの力を神道から法華経へと鞍替えしている。
 その為、剣道場にはよくある神棚が、栗原家には無い。
 代わりにあるのが御仏壇。

 栗原蓮華「ようこそ、お越しくださいました!愛原先生!……と、高橋さん」
 高橋「俺はついでかよw」
 愛原「新たな鬼のことについて、話があるんだ」
 蓮華「はい、聞いてます。どうぞ中へ」

 家の中では義足は付けないようだ。
 代わりに、家中そこかしこに手すりが着けられている。
 残った右足で移動する分、杖やそんな手すりに掴まりながら移動するらしい。

 蓮華「愛原先生の御到着でーす!」

 蓮華は奥の間に向かって言った。
 尚、彼女は珍しく私服姿である。
 いつも制服か剣道着姿くらいしか見ないのに……。

 愛原「さすがに年末年始は剣道場は休みか?」
 蓮華「そうでもないんですけど、冬休みの子供達が稽古に来るくらいです。大人は……まあ、休みですね。門下生達が忘年会で、ドンチャン騒ぎしに来るくらいで」
 高橋「コロナはガン無視か」
 蓮華「少しは自粛しろと私から言ってるんですが……」
 愛原「なるほど」

 床の間みたいな和室に通されるかと思いきや、ちゃんとソファのある洋室の応接間に通された。

 祖父「これはこれは……ようこそ、お越しくださいました。どうぞ、こちらにお掛けください」

 奥からは羽織袴姿の70代くらいの老翁が現れた。
 どこかで見た覚えがあると思ったら、確か会津で会っているはずだ。

 愛原「失礼します」
 祖父「蓮華、お茶をお出ししなさい」
 蓮華「はい!」

 蓮華は片足だけで器用に移動した。

 祖父「改めまして……私は栗原重蔵と申します。蓮華の父方の祖父です」
 愛原「愛原学と申します」

 私は名刺を差し出した。

 愛原「こちらは、助手の高橋でして……」
 高橋「名探偵、愛原先学先生の不肖の弟子、高橋正義っス!」
 栗原重蔵「これはこれは……。なかなか元気で若者で……」
 愛原「失礼ですが、蓮華さんの祖父母の方は霧生市でお亡くなりになったと伺っていますが……」
 重蔵「あれは母方の祖父母ですな。あの地獄のような町からの、数少ない生還者だと聞き及んでおります」
 愛原「いやあ、無我夢中で逃げるのに精一杯で……」

 しかし、重蔵氏の目が鋭く光る。

 重蔵「そうでしょうか?その割には、鬼の娘を連れ出すほどの余裕があったとお見受けしますが?」
 愛原「あれは変化でそうなったのです。最初から鬼の姿をしていたわけではありません」
 重蔵「科学的な話は色々とあるでしょうが、当家では、例え元が普通の人間であったとしても、鬼と化した者は容赦せず、必ず斬り伏せることになっております」
 愛原「しかし、うちのリサはまだ1人も人間を食い殺していません。そりゃ、そういう衝動に駆られる時は何度もありますが……」
 重蔵「犠牲者が出てからでは遅いのですよ」
 愛原「それは分かっています。それに、リサに関しては政府からの庇護を受けています。私はその政府機関からの委託を受けて、彼女の監視をしているのです。即ち、皆様がリサを斬ろうものなら、政府機関より警察が派遣されることになるでしょう。その意味、分かりますね?」
 重蔵「十分、分かりますよ。ですので、その鬼については、愛原さん方にお任せします。もっとも、犠牲者が出ようものなら、私共は動させてもらいますが」
 愛原「結構です。しかし、国家権力としては……」
 重蔵「そうですね……。こちらとしては、区議会や都議会に名前を連ねている親族はいるのですが、まだ国会議員としては名前を出していないので、さすがに国家権力には負けてしまいますな」
 愛原「栗原家の方に、区議会議員や都議会議員がいらっしゃるのですか」
 重蔵「はい」
 愛原「それは凄いですね」
 重蔵「まあ、泡沫議員ですよ。何せ、無所属ですから」

 それでも、親族一同は元より、剣道場における人脈、そして日蓮正宗における人脈を使った組織票を形成したものかもしれない。

 蓮華「お茶でございます」
 重蔵「ああ、そこに置いてくれ。そして、蓮華もそこに座りなさい」

 蓮華はお盆ではなく、小さなワゴンに乗せてお茶やお茶菓子を持って来た。
 恐らくお盆だと片足だけで移動する為、バランスが悪くて危険だからだろう。

 蓮華「はい!」

 蓮華は祖父の隣に座った。

 愛原「それでは、本題に入らせて頂きます」

 私は埼玉であった出来事を、資料を交えながら話した。

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