報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの状態変化」

2023-03-06 21:34:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月23日07時00分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 ホテル東横イン日本橋浜町明治座前・客室]

 枕的に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばして、それを止めた。

 愛原「ううーん……」

 今回は変な夢を見ることはなかった。
 枕が変わったからだろうか。
 ホテルはツインルームに泊まっており、隣のベッドには高橋が寝ている。

 愛原「おい、高橋、起きろ。朝だぞ」
 高橋「うーん……」

 私はベッドから起き上がると、高橋を起こし、バスルームへ向かった。
 高橋のことだ。
 家事が無ければ、ゆっくり寝てるタイプなので、私が朝の支度をしている間、2度寝するだろう。
 もう分かっている。
 私は顔を洗ったり、髭を剃ったり、歯を磨いたりした。

 愛原「おい、バスルーム空けたぞ。お前も着替えろ」
 高橋「うーっス……」

 ようやく高橋は起き出した。

 高橋「おはざーっス……」
 愛原「おはよう。早く準備しろ。朝飯食いに行くぞ」
 高橋「うっス」

 高橋もまたバスルームへと入っていった。

[同日08時00分 天候:晴 同ホテル1階ロビー]

 東横インはロビーが朝食会場となる。
 このホテルでは、通常通り、バイキング形式となっていた。

 愛原「こうしてみると、リサのバイキング山盛りが懐かしいな」
 高橋「あいつ、今頃ショボい病院食ですぜ?」
 愛原「なー。早いとこ退院してもらって、焼肉でも食いに連れて行ってやるか」
 高橋「おっ、いいっスねぇ!」
 愛原「宴会プランじゃなくて、食べ放題プランの方がいいだろう」
 高橋「それなら牛角とか、安楽亭辺りっスね」
 愛原「そういうことになるな」
 高橋「それで、この後はどうするんスか?」
 愛原「善場主任の指示通り、桧枝岐村までの足を確保するしかないだろう。東武浅草駅のトップツアーズに行くぞ」
 高橋「了解っス」

[同日09時52分 天候:晴 東京都中央区東日本橋 都営地下鉄東日本橋駅→都営浅草線883H電車最後尾車内]

 ホテルをチェックアウトした私達は、東日本橋駅に向かった。
 ちょうどホテルは浜町駅と東日本橋駅の間にあり、ホテルからでも徒歩アクセスが可能だった(ホテルの公式サイトにも、その旨記載されている)。

〔まもなく2番線に、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きが到着します。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 トンネルから風を轟音と強風を伴って、8両編成の電車が入線してくる。
 都営浅草線も、様々な鉄道会社からの乗り入れ車両があり、やってきたのは京急電車だった。

〔2番線の電車は、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きです。ひがしにほんばし~、東日本橋~。都営新宿線、JR総武快速線はお乗り換えです〕

 私達は最後尾に乗った。
 日曜日でもそこそこ乗客が乗っているのは、観光地たる浅草や、スカイツリー(押上)に行く電車だからだろうか。
 実際、観光客らしき外国人達の姿が目立つ。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 電車のドアが閉まる。
 都営新宿線と違い、ホームドアはまだ無いので、電車のドアが閉まり切ると、車掌が発車オーライのブザーを鳴らす。
 それで、やっと電車が走り出すのである。
 都営三田線や大江戸線はワンマン運転だが、新宿線や浅草線はツーマンである。
 車掌はすぐには乗務員室の扉を閉めず、ホーム中ほどくらいまで来て、ようやく乗務員室のドアを閉める。
 このやり方は、ワンマン化される前の札幌市地下鉄でも見受けられた。

〔「この電車は、各駅停車の青砥行きです。次は浅草橋、浅草橋です。JR総武線各駅停車は、お乗り換えです」〕

 京急電車だからか、それともその車両では古いタイプで自動放送装置が無いからなのか、車掌が肉声放送を行っている。

 愛原「リサが寂しがってる」

 私はスマホを見て言った。

 高橋「既読スルーっスか?」
 愛原「それで暴走したら、俺の責任になるからダメだ」

 善場主任が説明してくれたと思うのだが、それでも納得できなかったか。

 愛原「出張の準備が終わったら、そっちに行くよ」

 という返信を、まずはしておいた。
 今日、必ず行くということをハッキリ伝えることが、まず肝心である。
 だが、なかなかリサから返信が無かった。

[同日09時56分 天候:晴 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅]

〔「まもなく浅草、浅草です。お出口は、左側です。東京メトロ銀座線、東武鉄道線はお乗り換えです」〕

 愛原「おかしいな。リサからの返信がない」
 高橋「既読は付いてます?」
 愛原「うん、付いてる」
 高橋「あいつが先生のLINEを既読スルーとは、いい度胸っスね」
 愛原「検査か何か入ったのかもしれない。さすがに検査中は、スマホできないだろうから」
 高橋「そうっスかね」

〔……電車は、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きです。あさくさ~、浅草~。銀座線、東武鉄道線はお乗り換えです〕

 私達は電車を降りた。
 同じ浅草駅でも、都営の方は東武浅草駅からやや離れている。
 それでも、つくばエクスプレスの浅草駅に比べれば全然近いが。
 リサの返信が無いまま、私達は東武浅草駅に移動した。

[同日10時30分 天候:曇 東京都台東区花川戸 東武浅草駅]

 旅行会社での予約が終わった。

 愛原「鉄道が東武鉄道のキップだけで良かったよ」

 実質的には野岩鉄道とか会津鉄道も絡むのだが、土休日は東武鉄道とJR券以外のキップは発券できないとのこと。
 東武鉄道と無関係の鉄道線のキップが、という意味だ。

 愛原「あとは向こうでのレンタカーと、あとは宿か……」
 高橋「この費用、全部ねーちゃん達が持ってくれるんスよね?」
 愛原「そりゃそうだろ。領収証は、ちゃんと取っておかないと……」
 高橋「俺の免停、本当に何とかしてくれるんでしょうか?」
 愛原「するだろうな。善場主任も、有言実行派だから」

 そして、不言実行派でもある。
 と、そこへ私のスマホにメールの着信があった。
 その場合は、善場主任だ。

 愛原「……マジか」

 どうやらリサに異変が発生したらしい。
 LINEができなかったのは、そのせいのようだ。
 急いで戻るようにとのことだったので、帰りは地下鉄ではなく、東武浅草駅前のタクシー乗り場からタクシーに飛び乗ったのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「夢の話」

2023-03-06 15:29:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月22日17時00分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]

 リサとしばらく話していた私達だったが、善場主任に呼ばれた。
 そして、診療所内にあるカンファレンスルームに行き、そこで主任と話をした。

 善場「愛原所長が見た夢の話ですが、どうやらリサも見たようです」
 愛原「えっ、そうなんですか!?」
 善場「はい。所長はあくまでも第三者としての視点ですが、リサは本人の一人称視点での夢です」
 愛原「それはつまり……」
 善場「特異菌の影響で、封印されていた人間だった頃の記憶が蘇りつつあるのでしょう」
 愛原「白井はアンブレラ時代、とんでもない事件を起こしてるんです。さすがに、隠蔽できませんよね?」

 非合法の私兵軍を動員し、一家全滅を図ったのだから……。

 善場「全国の都道府県警に問い合わせておりますが、今のところはヒットしておりません」
 愛原「は?」
 善場「それと、『火災』でも全国の消防署に照会中です」
 愛原「火災で!?」
 善場「山地の一軒家が火災に遭い、その中の住人が死亡または行方不明になり、未だに発見されていないという内容で照会しています」
 愛原「まだ、分からないんですか?」
 善場「何ぶん、土日を挟んでいるので……」
 愛原「あー、そうか……。そうですよね。でも、主任は私の夢を信じてくれるんですね?」
 善場「特異菌の症状の1つなので。所長は改めて、治療薬を投与した方が宜しいかもしれません」
 愛原「あ、はい。そうします」

 と、そこへ、善場主任のスマホに着信が入った。

 善場「はい、善場です。……分かりましたか?……なるほど。それは可能性があるかもしれませんね」

 そして、主任が電話を切る。

 善場「所長の夢の内容がヒットした場所がありました」
 愛原「どこですか?」
 善場「福島県南会津郡です」
 愛原「あれ?そこって……」

 霧生市に向かう過程で立ち寄った南会津町があったり、リサの代替修学旅行でスキーに行った場所じゃないか?

 善場「桧枝岐村という小さな村があります。福島県の南西部にある、県境の村です」

 主任はノートPCに日本地図を開いた。
 そこから福島県を出して、更に拡大する。

 愛原「夢の中の私は、こんな山奥にいたんですか!」
 善場「そして、それはリサも同じです」
 高橋「てか先生、この村って……」

 高橋は画面を左上に動かした。
 県境の村ということもあり、隣は群馬県とか新潟県にも接しているが……。

 高橋「ここ、霧生市ですよ?」
 愛原「ありゃ!?案外近い!」
 善場「所長の夢の中の白井は、リサの両親と思しき男女を銃殺した後、リサを含む女の子達を拉致したそうですね?」
 愛原「は、はい。リサにそっくりな女の子が、真っ先にUBCSのトラックに乗せられて……」

 霧生市と桧枝岐村を直接結ぶ道路は無いのだが、直線距離にすればそんなに遠くないのだから、車で運べばすぐなのではないかと思う。

 愛原「今、その現場はどうなっているのでしょう?」
 善場「それを愛原所長方に、調査をお願いしたいと思います」
 愛原「マジですか。明らかに鉄道が通っていない村ですよ」

 それは霧生市も同じだった。
 但し、市内完結の鉄道はあったが。
 日本アンブレラが市内に広大な製造工場や研究所を作らなかったら、霧生市も山奥にあるただの山村であったとされる。

 高橋「車なら俺に任せてください!」
 愛原「オマエ、免停中だろうが」
 高橋「あ……!」
 愛原「あ、じゃねぇ!」

 善場主任は小さく溜め息をついた。

 善場「高橋助手の免停に関しては、何とかしましょう」
 愛原「すぐにでも、出発の準備をします」
 善場「それは少しお待ちください」
 愛原「えっ?」
 善場「できれば、リサを連れて行った方が良いでしょう」
 愛原「いいんですか?もし、変なトラウマでも……」
 善場「こんなこと言っては何ですが、逆にトラウマが出るということは、正にそこだという確証になります」
 愛原「まかり間違って、暴走でもしたら……」
 善場「それは無いと思います。今までのBOWの中で、トラウマが原因で暴走した例は1つもありません」

 リサが第1号になったら、どうするんだよ……。
 とはいうものの、それらしい場所を探索するだけでは、ちょっと心配な所があるからな……。

 善場主任の話が終わる頃には、夕食の時間になっていた。
 もう1度リサの病室を覗くと、ちょうど夕食がリサに渡されるところであった。
 見た目は、病院食である。
 今は病人そのもののリサにとってはそれでいいと思うが、普段のリサだったら、『こんなの足りない!』とキレてただろうな。

 愛原「リサ、俺達は引き上げるよ」
 リサ「えー……。もう……?」
 愛原「また明日来るから」
 リサ「1人で食べる御飯……やだな……」

 日本アンブレラの研究所にいた頃を思い出すのだろう。
 研究所では、BOW同士が結束するのを警戒する為、部屋は完全に個室、食事も別々に取らせていたという。
 その中において、何故かこのリサだけは、他のBOW(タイラントやハンター)から平伏される存在だった。

 愛原「ここにいる間だけさ。早く治して退院したら、退院祝いに美味い物でも食べよう」
 リサ「うん……」
 愛原「とにかく、また明日来るからさ。頑張って治すんだぞ」
 リサ「分かった……」

 一応、病室にはテレビはあるし、スマホは持ってきてあげたし、充電器も使えるようだし、Wi-Fiも飛んでいるようだしで、まるで個室形式の病室のようである。
 ただ、大部屋から他のベッドを取り払っただけの殺風景な部屋であるように見える。
 まあ、確かに長いこと入院したくはないかな。

 愛原「入院期間は3日から1週間の間ってところらしい」
 リサ「3日で治す……!」
 愛原「うん、頑張るんだぞ」

 私は最後にリサの手を握ってから、病室を出た。
 すべすべだったリサの手は、今はカサカサになってしまっている。
 本当に回復するのか、一瞬不安になってしまった。
 それでも、化け物にまで変化していたのが、今はちゃんと人間の姿になるまで回復しているのだから、それは物凄いことなのである。

 善場「所長、明日のことですが……」
 愛原「はい?」

 エレベーターホールで私達は善場主任に呼び止められ、明日のことについて指示を受けた。

 愛原「分かりました」
 善場「リサには、私から言っておきます」
 愛原「了解です」
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“私立探偵 愛原学” 「リサの回復」

2023-03-06 11:44:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月22日14時44分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1421T電車先頭車]

 私達はリサの着替えや、自分達1泊分の泊まりの準備をして菊川駅に向かった。
 土曜日昼下がりの駅に用務客の姿は少なく、家族連れや学生達の姿の方が目立った。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 本八幡方向から、都営の車両がやってくる。
 週末ということもあり、車内は空いていた。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達は電車に乗り込んだ。
 空いている座席に座るが、座席の硬いタイプであった。
 すぐに、短い発車メロディが流れる。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 JRの通勤電車と同じタイプのドアチャイムが鳴り、ホームドアが閉まる。
 駆け込み乗車は無かったのか、再開閉することはなかった。
 そして、運転室から発車オーライのブザーが鳴ると、ガチャッとハンドルを操作する音が聞こえてくる。
 車両のドアさえ閉まり切ればすぐに発車するJRの通勤電車に乗り慣れていると、少しまだるっこしく感じるが、都電からの名残とあらば致し方ない。
 電車は暗闇のトンネルの中に入る。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 ところで、私が持っている荷物は、リサの着替えや自分達の泊まりセットだけではない。
 私が仮眠中に見た夢の内容をまとめた書類も入っている。
 たかが夢の話と一蹴されるかもしれないが、あまりにも具体的過ぎる内容だったので、話しておきたいと思ったのだ。
 それで一蹴されてしまうようなら、仕方が無い。

 高橋「リサ、どんな感じなんスかね?」
 愛原「俺は期待しているよ」
 高橋「期待されてますか」
 愛原「もしも手遅れなら、俺達を呼ぼうとは思わんだろう」
 高橋「死体の処理を手伝わせるとか?」
 愛原「無い無い。これまでBSAAに倒されたBOWの末路、資料映像とかで観ただろ?殆どが死体すら残さずに消えている。日本版リサ・トレヴァー達もそうだっただろ?その辺はリサも同じだろう」
 高橋「なるほど……」
 愛原「それに、もし仮にリサが手遅れになるほどの化け物になったとして、BSAAが出動したら、とっくにこの地下鉄は運転見合わせになっているだろう」
 高橋「あっ!」
 愛原「診療所のあるビル、浜町駅に程近いからね。ビルを巻き込んでの大騒動になった場合、BSAAなら街を巻き込んでの大騒動にするだろう。当然、地下鉄が走れるわけがないということさ」
 高橋「そういうことでしたか」

 もっとも、ニューヨークの地下鉄とかは、事件現場の最寄り駅は閉鎖し、電車は全てその駅を通過させて、運転自体は続けるそうだがな。

[同日14時47分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 都営地下鉄浜町駅→某診療所]

 電車はものの数分程度で、浜町駅に到着する。

〔……各駅停車、新宿行きです。はまちょう、浜町。明治座前〕

 私達は電車を降り、エスカレーターで改札階に向かった。
 浜町駅構内は、静かなものである。
 明治座で大きな公演がある場合は、賑わうようだが。
 また、日本橋街区ということもあり、オフィスビルも多い為、平日の朝夕ラッシュも賑わう。

 愛原「ほら、駅は静かだぞ」
 高橋「そうっスね」

 改札口を出て、今度は地上に向かう。
 地上に出ても、静かなものだった。
 そして、診療所の入っているビルも、閉鎖されているということはない。
 もちろん週末なので、ビルの正面入口は閉められている。
 私達は防災センターに立ち寄って、用件を伝えた。
 それから奥に進んで、エレベーターホールに出る。

 愛原「やっぱり何も無いな」
 高橋「俺の考え過ぎでした。サーセン」
 愛原「まあ、いいよ」

 エレベーターに乗って、診療所のあるフロアに向かう。
 土曜日は午前中しか診療していない為、診療所の正面入口は閉鎖されていたが、通用口から入れた。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」

 いつもながら、善場主任はポーカーフェイスなので、なかなか感情が読み取れない。

 愛原「戻りました。リサの着替えと、私達の泊まりの準備です」
 善場「ありがとうございます。この近くのホテルを取りましたので、愛原所長と高橋助手はそちらに泊まってください」
 愛原「あ、ありがとうございます。それで……リサは?」
 善場「お会いになりますか?もっとも、彼女の方もそれを望んでいますが……」
 愛原「いいんですか!?」

 ということは……ということは……!
 私達は機械室に偽装された『特別処置室』の中に案内された。
 機械室の入口のようなドアから中に入り、通路を10mくらい進むと、また似たような鉄扉がある。
 最初のドアは普通の鍵で開けるタイプだが、今度はカードキーと暗証番号で開けるタイプだった。
 そして、最初のドアよりも厚みのある鉄扉を開けると、そこは……見た目は普通の病室。
 やや広めの個室といったところだ。

 リサ「先生……!」

 ベッドにはリサが寝かされており、彼女はエンジ色の検査着を着ていた。
 見た目は普通の人間の姿である。
 だが、肌の色は土気色になっており、明らかにやつれている。
 死にそうな病人みたいだ。

 愛原「おまっ……!?それ、大丈夫なのか!?」
 善場「薬の副作用です。何とか、ここまでの姿に戻りました。しかし、かつての姿までに戻るには、もう少し時間が掛かりそうです」
 愛原「時間が掛かるとは、どれくらいですか?」
 善場「医官の見解では、3日ないし1週間とのことです」
 愛原「3日から1週間……」
 善場「あくまでも、見解では、です。薬の副作用で、Gウィルスまでもが今は弱体化している状態ですので……。しかしながら、Gウィルスは再び活性化するでしょう。その時、リサは元気になるはずです」
 愛原「そうですか……」
 善場「リサ、取りあえず下着を着なさい」
 リサ「はい……」

 リサは起き上がるのもやっとという感じだった。
 左手には点滴を着けているが、看護師によって、一時的にチューブだけは外され、針を付けたままで着替えを始めた。
 もちろん、私はその間、カーテンの外側に出る。
 こういう時は、ハーフトップブラの方がいいな。
 リサの下着着用が終わり、再び検査着と点滴の管が装着されると……。

 愛原「善場主任、ちょっとこれを……」

 私は善場主任に、書類を渡した。
 あの夢のことについて、まとめたものだ。

 愛原「一蹴されるかもしれませんが……」
 善場「いえ、もしかしたら、特異菌の作用かもしれません。早速、確認させて頂きます。その間、所長はリサと話していてください」
 愛原「分かりました」

 私はやつれた顔のリサと対面した。
 医官の話によると、特異菌を完全に排除することはできなかったという。
 特異菌がTウィルスをエサにしていた可能性があり、それならばと、今度はTウィルスの徹底排除に乗り出した。
 それは成功し、餌が無くなって弱体化した特異菌を、今度はGウィルスが食べ始めたが、やはり合わなかったらしく、弱ってしまった。
 それが、今のリサの状態なのだという。
 特異菌とGウィルスが仲良く、リサの体内で共同生活してもらえれば良いとのこと。
 今はどちらも弱体化している状態の為、リサも弱っている状態ということだ。
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