報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの回復」

2023-03-06 11:44:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月22日14時44分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1421T電車先頭車]

 私達はリサの着替えや、自分達1泊分の泊まりの準備をして菊川駅に向かった。
 土曜日昼下がりの駅に用務客の姿は少なく、家族連れや学生達の姿の方が目立った。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 本八幡方向から、都営の車両がやってくる。
 週末ということもあり、車内は空いていた。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達は電車に乗り込んだ。
 空いている座席に座るが、座席の硬いタイプであった。
 すぐに、短い発車メロディが流れる。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 JRの通勤電車と同じタイプのドアチャイムが鳴り、ホームドアが閉まる。
 駆け込み乗車は無かったのか、再開閉することはなかった。
 そして、運転室から発車オーライのブザーが鳴ると、ガチャッとハンドルを操作する音が聞こえてくる。
 車両のドアさえ閉まり切ればすぐに発車するJRの通勤電車に乗り慣れていると、少しまだるっこしく感じるが、都電からの名残とあらば致し方ない。
 電車は暗闇のトンネルの中に入る。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 ところで、私が持っている荷物は、リサの着替えや自分達の泊まりセットだけではない。
 私が仮眠中に見た夢の内容をまとめた書類も入っている。
 たかが夢の話と一蹴されるかもしれないが、あまりにも具体的過ぎる内容だったので、話しておきたいと思ったのだ。
 それで一蹴されてしまうようなら、仕方が無い。

 高橋「リサ、どんな感じなんスかね?」
 愛原「俺は期待しているよ」
 高橋「期待されてますか」
 愛原「もしも手遅れなら、俺達を呼ぼうとは思わんだろう」
 高橋「死体の処理を手伝わせるとか?」
 愛原「無い無い。これまでBSAAに倒されたBOWの末路、資料映像とかで観ただろ?殆どが死体すら残さずに消えている。日本版リサ・トレヴァー達もそうだっただろ?その辺はリサも同じだろう」
 高橋「なるほど……」
 愛原「それに、もし仮にリサが手遅れになるほどの化け物になったとして、BSAAが出動したら、とっくにこの地下鉄は運転見合わせになっているだろう」
 高橋「あっ!」
 愛原「診療所のあるビル、浜町駅に程近いからね。ビルを巻き込んでの大騒動になった場合、BSAAなら街を巻き込んでの大騒動にするだろう。当然、地下鉄が走れるわけがないということさ」
 高橋「そういうことでしたか」

 もっとも、ニューヨークの地下鉄とかは、事件現場の最寄り駅は閉鎖し、電車は全てその駅を通過させて、運転自体は続けるそうだがな。

[同日14時47分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 都営地下鉄浜町駅→某診療所]

 電車はものの数分程度で、浜町駅に到着する。

〔……各駅停車、新宿行きです。はまちょう、浜町。明治座前〕

 私達は電車を降り、エスカレーターで改札階に向かった。
 浜町駅構内は、静かなものである。
 明治座で大きな公演がある場合は、賑わうようだが。
 また、日本橋街区ということもあり、オフィスビルも多い為、平日の朝夕ラッシュも賑わう。

 愛原「ほら、駅は静かだぞ」
 高橋「そうっスね」

 改札口を出て、今度は地上に向かう。
 地上に出ても、静かなものだった。
 そして、診療所の入っているビルも、閉鎖されているということはない。
 もちろん週末なので、ビルの正面入口は閉められている。
 私達は防災センターに立ち寄って、用件を伝えた。
 それから奥に進んで、エレベーターホールに出る。

 愛原「やっぱり何も無いな」
 高橋「俺の考え過ぎでした。サーセン」
 愛原「まあ、いいよ」

 エレベーターに乗って、診療所のあるフロアに向かう。
 土曜日は午前中しか診療していない為、診療所の正面入口は閉鎖されていたが、通用口から入れた。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」

 いつもながら、善場主任はポーカーフェイスなので、なかなか感情が読み取れない。

 愛原「戻りました。リサの着替えと、私達の泊まりの準備です」
 善場「ありがとうございます。この近くのホテルを取りましたので、愛原所長と高橋助手はそちらに泊まってください」
 愛原「あ、ありがとうございます。それで……リサは?」
 善場「お会いになりますか?もっとも、彼女の方もそれを望んでいますが……」
 愛原「いいんですか!?」

 ということは……ということは……!
 私達は機械室に偽装された『特別処置室』の中に案内された。
 機械室の入口のようなドアから中に入り、通路を10mくらい進むと、また似たような鉄扉がある。
 最初のドアは普通の鍵で開けるタイプだが、今度はカードキーと暗証番号で開けるタイプだった。
 そして、最初のドアよりも厚みのある鉄扉を開けると、そこは……見た目は普通の病室。
 やや広めの個室といったところだ。

 リサ「先生……!」

 ベッドにはリサが寝かされており、彼女はエンジ色の検査着を着ていた。
 見た目は普通の人間の姿である。
 だが、肌の色は土気色になっており、明らかにやつれている。
 死にそうな病人みたいだ。

 愛原「おまっ……!?それ、大丈夫なのか!?」
 善場「薬の副作用です。何とか、ここまでの姿に戻りました。しかし、かつての姿までに戻るには、もう少し時間が掛かりそうです」
 愛原「時間が掛かるとは、どれくらいですか?」
 善場「医官の見解では、3日ないし1週間とのことです」
 愛原「3日から1週間……」
 善場「あくまでも、見解では、です。薬の副作用で、Gウィルスまでもが今は弱体化している状態ですので……。しかしながら、Gウィルスは再び活性化するでしょう。その時、リサは元気になるはずです」
 愛原「そうですか……」
 善場「リサ、取りあえず下着を着なさい」
 リサ「はい……」

 リサは起き上がるのもやっとという感じだった。
 左手には点滴を着けているが、看護師によって、一時的にチューブだけは外され、針を付けたままで着替えを始めた。
 もちろん、私はその間、カーテンの外側に出る。
 こういう時は、ハーフトップブラの方がいいな。
 リサの下着着用が終わり、再び検査着と点滴の管が装着されると……。

 愛原「善場主任、ちょっとこれを……」

 私は善場主任に、書類を渡した。
 あの夢のことについて、まとめたものだ。

 愛原「一蹴されるかもしれませんが……」
 善場「いえ、もしかしたら、特異菌の作用かもしれません。早速、確認させて頂きます。その間、所長はリサと話していてください」
 愛原「分かりました」

 私はやつれた顔のリサと対面した。
 医官の話によると、特異菌を完全に排除することはできなかったという。
 特異菌がTウィルスをエサにしていた可能性があり、それならばと、今度はTウィルスの徹底排除に乗り出した。
 それは成功し、餌が無くなって弱体化した特異菌を、今度はGウィルスが食べ始めたが、やはり合わなかったらしく、弱ってしまった。
 それが、今のリサの状態なのだという。
 特異菌とGウィルスが仲良く、リサの体内で共同生活してもらえれば良いとのこと。
 今はどちらも弱体化している状態の為、リサも弱っている状態ということだ。

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