報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「次なる道の駅」

2023-03-23 21:33:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月30日11時25分 天候:曇 福島県南会津郡南会津町 道の駅きらら289]

 桧枝岐の道の駅を出た私達は再び、国道352号線を北上した。
 その途中に林道へ入る交差点があるのだが、入口は警察官によって塞がれていた。
 『緊急につき、全面通行止め』という看板も立っていた。
 どうやら、未だにBSAAが捜査を続けているらしい。
 地元警察との合同だろうか?
 しかし、民間委託の私達の仕事はもう終わりだ。
 その交差点を通り過ぎる。
 途中で今度は国道の番号が401に変わり、それを少し進んで国道289号線との交差点を右に曲がる。
 曲がるとすぐにトンネルがあるのは、こちらはバイパスだからだ。
 旧道はもう少し先にあって、そちらはそちらで地元住民の生活道路として残されているが、廃業したガソリンスタンドがあったりと、旧道化の影響が出ているという。
 そのバイパスと旧道が合流する辺りに、次の道の駅はある。

 高橋「着きました」
 愛原「はい、ありがとう」

 高橋は駐車場に車を止めた。
 トンネルを抜けた所にあるくらいだから、この道の駅も山に囲まれている。

 愛原「早速、温泉に入ろう」
 高橋「またお背中、お流し致します!」
 愛原「ありがとう」

 私達は車を降りた。
 そして、建物の中へと入る。

 リサ「先生。温泉入った後は、お昼だよね?」
 愛原「まあ、そのくらいの時間にはなるな」
 リサ「それなら、ここで食べる?」
 愛原「ここで食べるのが無難だろうな」
 リサ「やった!」

 リサは何かお目当ての物でも見つけたのだろうか?

 愛原「それじゃ、風呂から出たら、またここでな」
 リサ「分かった」
 愛原「ここも露天風呂があるようだが、女湯から大声で声を掛けないように」
 リサ「う、うん。分かった……」

 私と高橋は男湯に、リサは女湯に移動した。

 高橋「はっ!この不肖の弟子!高橋正義が!愛原学大先生の御背中を!恐れ多くも、流させて頂きたく存じます!イヨーッ!」

 ポン!(洗面器の底を叩く音)

 愛原「恥ずかしいから、そういうのも禁止!」
 高橋「えーっ!」
 愛原「『えーっ』じゃねぇ!」

 それでも私は、一応高橋に背中を流してもらうことにした。
 そんな茶番という名の通過儀礼が終わって、ようやく温泉に入れた。

 愛原「ふーっ!」
 高橋「結構、いい旅っスね」
 愛原「そうだな」

 露天風呂にも移動する。
 幸いもう雨は止んでいるので、雨に当たることはなかった。

 愛原「しかし、さっきの隊長の話、まだ分からないところがあるな」
 高橋「何スか?」
 愛原「上野って医者が医療ミス起こして、東京から桧枝岐まで逃げてきたというのは、まあまだ分かる」
 高橋「はい」
 愛原「リサは、その上野って医者の娘ってことになるのかな」
 高橋「そうかもしれませんね」

 リサがもしも人間のままであるのなら、50歳くらいである。
 上野という医者が桧枝岐村に流れ着いたのが50年前で、そこの未亡人と再婚したのなら、確かに年齢の辻褄は合う。
 私の夢では他にも娘達が何人かいて、全員が白井に捕まったのだろう。
 白骨死体は上野医師や、その妻と見て間違いない。
 どうして、白井が上野達を襲ったのかということと……。

 愛原「栃木の上野利恵達との関係だな」

 上野医師の娘達の中に、利恵はいなかっただろう。
 そうなると、別の兄弟のコか。
 上野医師に兄弟がいたとして、そこから生まれた娘なのだとすれば、確かにリサとは従姉妹同士ということになる。

 愛原「段々分かってきたな。あとは、白井がどうして上野医師を襲ったのかだ」

 こればっかりは、本人を捕まえないと分からないか?
 その白井が今、どこにいるのかが不明だからな……。

[同日12時30分 天候:曇 同道の駅]

 風呂から出た後は、休憩コーナーで少し休む。
 マッサージチェアがあったので、これを利用してみる。

 リサ「うぅ……!触手の出入口がグリグリ……」
 愛原「おい、触手なんてまだ出せるのか?」
 リサ「出してみる?」
 愛原「いや、ここでは出すな!」

 マッサージチェアで体をほぐした後は、食事処へ。
 食券方式であった。
 だいたいの道の駅の食事処は、食券制度であることが多いか。

 愛原「何がいい?」
 リサ「わらじソースカツ丼」
 愛原「了解。高橋は?」
 高橋「じゃあ、俺もそれを」
 愛原「分かった。俺は天ざるそばにしよう」

 私は食券を買うと、カウンターに出した。
 あとは、空いているテーブル席に座る。

 愛原「リサ、フード被ってるけど、角が隠せないのか?」
 リサ「ああ、大丈夫。癖で被ってるね」

 リサがパーカーのフードを取ると、確かに2本に増えた角が隠れていた。
 但し、牙は隠せないようだが、このくらいなら、まだ誤魔化しが効くだろう。
 しばらくして、注文した物が運ばれてきた。

 リサ「『今日のお兄ちゃんの昼食はカツ丼。刑事ドラマ風に演出してあげた』」

 リサはミニチュアサイズの電気スタンドを取り出すと、それを高橋の前に置いた。

 リサ「美味いか?」
 高橋「何なんだよ?」
 愛原「高橋、警察の取り調べ中にカツ丼食べたことは?」
 高橋「いや、無いっスよ」

 これが現状。

 愛原「カツ丼といえば、卵とじというイメージがあるが、ソースカツも悪くなさそうだな?」
 高橋「ええ、そうっスね」

 尚、リサはソースカツ丼にも七味唐辛子を掛けて食べていた。
 鬼は辛党だというが、どうやら本当のようである。
 それでも、デザートにソフトクリームを食べたがる辺りは、完全に鬼ではないとも言えるし……。
 まあ、綱渡り状態ではあることに間違いないようだ。

 高橋「先生、この後は?」
 愛原「会津田島に向かうぞ。車返さないといけないしな」
 高橋「確かにそうですね」

 当然ながら、返却の前にガソリンを満タンにしなくてはならない。
 幸い街中ということもあり、そこにガソリンスタンドは何軒かあるようだ。
コメント
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