報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村での調査終了」

2023-03-19 21:12:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日14時30分 天候:曇 福島県南会津郡桧枝岐村下見通]

 私とリサは、林道の脇道に入って行った。

 愛原「リサ、見覚えはあるか?」
 リサ「……ダメ。全然思い出せない」

 リサはパーカーのフードを取った。
 変異後である為、角が2本になっている。
 髪は切ったので、髪型は変異前のおかっぱと変わらない。

 愛原「人間だった頃の記憶が、また薄れている?」
 リサ「そうかも。多分、特異菌が弱くなったせい」
 愛原「そうか……」

 Tウィルスも殆ど死滅してしまい、今は最初の頃のGウィルスがリサの体を支配している。
 特異菌はオマケのようなもの。
 この特異菌が放電現象と関係あるのではないかと言われているが、何しろ他に例が無いので、全く分からないのである。

 愛原「! 行き止まりか……」

 10月も末であり、桧枝岐村では道路が冬季通行止めを迎えようとしている。
 つまり、冬支度が始まろうとしている時期である。
 私達が来た林道も、舗装こそしっかりされているものの、やはり冬季通行止めの措置は免れない道路である。
 滅多に他の車が来ないのも、こういう時期的な理由もあるのだと思われる。
 草は枯れている為、藪の中であっても、虫の姿は殆どない。
 そこは季節に恵まれた。
 これが夏だったら、色々な虫に私達は襲われただろう。
 最悪、スズメバチとかいるかもしれない。
 春のスズメバチは駆除しない方が良いらしい。
 まだ繁殖前であり、女王蜂しかいない状態なので凶暴性は無く、しかも繁殖に備えて様々な虫を食べる、つまり毛虫などの害虫もバクバク食べてくれるので、毛虫や蛾の繁殖を抑えたい場合は、むしろスズメバチに食わせる方が良いらしい。
 まあ、幸いスズメバチの気配は無かったが。

 愛原「とはいえ……」

 開けている場所ではある。
 ここに家が建っていた、と言われればそんな気もするが、何だかよく分からない。
 何しろ、形跡が全くと言って良いほど無いのだ。
 だが、これほどに何も無さ過ぎるのも、不自然と言えば不自然だ。
 アンブレラの、それも非合法部隊UBCSなら、痕跡ごと隠蔽することは可能だろう。
 家は焼却するものの、すぐに消火して、、焼け落ちた家はきれいさっぱり片付ける。
 死体だって、どこかに埋めてしまえば……。

 リサ「……動物の臭いがする」
 愛原「まあ、そりゃあ、動物の臭いはするだろうな」

 何しろこんな山奥だ。
 私は虫のことを気にしていたが、そんな虫を食べる動物とかも普通にこの山の中にはいるだろう。

 愛原「! まさか、熊がこの近くにいるとか……?」
 リサ「うん。こっちだよ!」

 鬼のリサは、熊など全く恐れていない様子。
 まあ、この辺にいるのはツキノワグマだろう。
 北海道のヒグマほど凶暴ではないとはいえ、冬眠前のクマに近づくのは危険なのではと思う。

 愛原「お、おいおい!危ないだろ!」

 しかし、リサは更に奥の獣道に向かう。
 そこにいたのは……。

 ツキノワグマ「アウ?」
 愛原「ツキノワグマだ!」

 本当に熊がいた!
 何やら、穴を掘っていた様子。
 食べ物を探していたのだろうか?

 リサ「熊の肉、美味しそう!」

 リサ、右手からバチバチと火花を散らした。

 愛原「熊を食べちゃいけませーん!」

 バリバリバリバリバリバリバリ!

 ツキノワグマ「ピィーッ!」

 哀れツキノワグマ、リサの電撃を受け、仰向けに倒れてしまった。

 リサ「先生!今日の夕食!」
 愛原「食えるか、アホ!」

 リサの血鬼術……もとい、攻撃方法に爪と噛み付き以外に、遠方からの攻撃として電撃も加わったのは強いのだが……。

 愛原「ってか、これ……!」

 ツキノワグマが掘っていた穴を私は見た。
 そこにあったのは、何と骨だった!
 最初は動物の骨だと思った。
 この熊に食われた鹿とかかなと思ったのだが、どうも白骨化してから相当な時間が経っているように見える。
 私は荷物の中から、折り畳み式のスコップを取り出して、もう少し穴を掘ってみることにした。

 愛原「人間だ……!人間の骨だ……!」

 出てきた頭蓋骨の形と、一対の肋骨の形からして、私はこの白骨死体が人間のものだと思った。

 愛原「高橋、高橋、大変だ!」

 私とリサは一旦、車に戻ることにした。
 高橋は車の外に出て、タバコを吸っていた。

 高橋「何スか?ゾンビでも出ましたか?」
 愛原「出たのは熊だよ!」
 高橋「マジっスか!?」
 愛原「それはリサが電撃で倒してくれた」
 リサ「むふー!」
 愛原「そうじゃなくて、白骨死体が出てきたんだ!それも2つ!」
 高橋「マジっスか!?」

 私は試しに周りも掘ってみた。
 すると、もう1つ頭蓋骨が出てきたことから、死体は2つ以上あるのだと分かった。

 高橋「じゃあ、すぐにサツに……」
 愛原「いや、その前に善場主任に連絡して指示を仰ごう」

 昔のガラケーなら圏外になっていそうな場所だが、さすがに令和の今はスマホで通話ができる。

 愛原「……というわけです。どうしますか?普通に警察に電話していいですか?」
 善場「いえ、それには及びません。むしろ、BSAAの調査部隊に調査してもらいます。ありがとうございました。取りあえず、愛原所長方の業務としては、そこまでで結構です。BSAAと合流次第、宿舎に向かってください」
 愛原「分かりました」

 業務委託の民間探偵業者としては、ここまでが仕事である。
 死体の調査については、公務員さん達の仕事になる。

 愛原「BSAAが来るまで、ここで待機だそうだ」
 高橋「うわ、絶対時間掛かるじゃないスか」
 愛原「しょうがないだろ」

 その通り、BSAAはヘリで来たのだが、1時間掛かった。
 ただ、私からすれば、1時間でも早い方だと思う。

 愛原「ここだ!ここだ!」

 私は荷物の中から発煙筒を出すと、それを点けてヘリコプターに合図した。
 ヘリコプターは着陸することなく、私達の上空にて旋回し、そこからロープが下ろされ、BSAAの隊員達が降下してくる。

 BSAA隊員「BSAA極東支部日本地区本部隊です!」
 愛原「お疲れ様です!場所を案内します!」

 高橋とリサには車で待っててもらい、私がBSAA隊員達を案内する。
 また熊がいたらどうしようかと思ったが、彼らの装備する銃火器を見て、その心配は無いと分かった。
 そして現場に着くと、もう熊はいなかった。

 愛原「これです!この骨です!」

 私が指さすと、すぐにBSAAの隊員達は調査を開始した。
 そして、隊長から発見した時の状況を聞かれたので、しっかり回答した。
 その後はBSAAが引き継ぐと言われ、私達は御役御免となったのである。

 愛原「お待たせ。それじゃ、俺達は離脱しよう」

 私達は車に乗り込むと、来た道を引き返し、国道の方へと向かった。
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