報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「思い出辿る旅」

2023-03-17 21:00:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日05時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線511T電車最後尾車内]

 出発の日になり、私達は早朝の菊川駅にいた。
 土曜日の早朝ということもあり、駅構内には人は疎らである。
 リサも高橋も、眠そうな顔で電車を待っている。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 トンネルの向こうから、電車の轟音と強い風が吹いてくる。
 最後尾の車両が止まる位置で電車を待っている為、風をもろに受ける形となるだろう。
 リサはグレーのパーカーを着ていて、フードを被っている。
 今は人間に化けれているようだが、変異後の状態にまだ慣れていないので、間違って変化しても隠す為である。

 愛原「おい、電車が来るぞ。下がってろ」
 高橋「うっス……」

 都営の車両が入線してきた。
 平日の同じ時間と比べると、確かに客は少ない。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 最後尾の車両に乗り込む。
 すぐに、短い発車メロディが流れた。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車のドアと、ホームドアが閉まる。
 それから、乗務員室から発車合図のブザーが聞こえてくると、電車が動き出した。
 関東ではブザー一択だが、名鉄や関西の私鉄ではチンベルを鳴らすようだ。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 私達が最後尾に乗っているのは、何もリサが同行しているからだけではない。
 途中の馬喰横山駅で都営浅草線に乗り換えるのだが、向こうの東日本橋駅とは尻合わせの状態になっている為、上り電車からの乗り換えの場合、連絡通路が後ろ側にあるからだ。

 リサ「ふわ……!」

 リサは大きな欠伸をした。
 白いマスクをしているからバレてないが、さすがに牙までは隠せないもよう。
 昔は、牙も隠せていたこと考えると、人間から遠ざかっているような気がしてならない。
 角も1本増えてしまったし。

[同日06時03分 天候:晴 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅]

〔2番線の電車は、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きです。あさくさ~、浅草~。地下鉄銀座線、東武鉄道線はお乗り換えです〕

 京急電車が浅草駅に到着する。
 都営浅草線内では京急電車に縁があるが、たまたま京急線内から乗り入れてきたのだろう。
 様々な会社の電車が来るからか、浅草駅にはホームドアが無い。
 東京メトロの浅草駅よりも東武浅草駅からは離れているので、少し歩かないといけない。
 何しろ、住所が違う点でお察しだ。

 リサ「前乗りとか、できなかったの?」
 愛原「まさかオマエが変化するとは思わなかったんだ。学校を休むわけにはいかなかったし、それで土日の1泊だよ」

 さすがに日帰りできるとは思っていなかった。
 なので、現地で宿は取っている。

 リサ「ふーん……」

 都営地下鉄浅草駅から、東武浅草駅に移動する。
 その際に一旦地上に出る。
 真冬ならまだ暗い時間だが、秋の今はもう日が出ている。
 今日は天気が良く、地上に出た瞬間、朝日がアサヒビール本社ビルの方から差し込んできた。

 リサ「眩しい……」

 リサは日光を手で遮った。
 この際、目の色がまた変わる。
 白目が黒くなり、瞳がグレー……。
 瞳が赤くなる時より、更に不気味さを増している。

 愛原「この目の色の変化は、何とかならんのか?」
 リサ「えっ?変わってるの?」

 自覚が無いのか……。
 そう思っていると、また元の色に変わる。
 光の加減で変わるのか???

 高橋「先生、朝飯は駅弁スか?」
 愛原「そうしたいんだけどねぇ、朝早すぎて、駅弁売ってないんだよ」
 リサ「ええっ?それじゃ……」
 愛原「途中の下今市駅辺りでワンチャン狙うしかない」
 リサ「車内販売は?」
 愛原「もう東武特急では無くなった」
 高橋「……コンビニ買いですかね」
 愛原「そういうことだな。まあ、昼飯や夕食は何とかなるだろう」

 私達は東武浅草駅前のコンビニに立ち寄ることにした。

[同日06時20分 天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅→東武スカイツリーライン1101列車先頭車内]

 愛原「キップは1人ずつ持とう。どうせ終点の会津田島駅も、自動改札じゃないからな」
 高橋「分かりました」

 新幹線と違って、座席は2人席しかないので、鍵型に乗るしかない。
 リサと高橋には後ろに乗ってもらって、私はその前に座ればいいだろう。

 

 特急ホームにはインフォメーションを兼ねた中間改札があり、そこで特急券の確認が行われる。

〔「3番線に停車中の電車は、6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。1号車から3号車が会津田島行き、4号車から6号車が東武日光行きです。お手持ちの特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席をご利用ください。……」〕

 ホームの前の方に向かって歩く。
 東武浅草駅は、ターミナル駅としては特殊な構造をしていて、駅を出ると、すぐ90度に近い右カーブがあるのである。
 駅のホームからして既に曲がっており、前の方に行けば行くほど細くなるという構造になっている。

 リサ「代替修学旅行を思い出す」
 愛原「ああ。その時も、このリバティだったな」

 しかも、同じく先頭車だ。
 今回は代替修学旅行と違って夜行列車はなく、朝出発の電車だ。
 土曜日の朝ということもあり、既に多くの行楽客がドアが開くのを待っている。
 ただ、その多くがお年寄りの団体だったり、外国人グループという辺りに格差を感じるのは、私が格差を一身に受けるロスジェネ世代だからだろうか。

〔「お待たせ致しました。まもなくドアが開きます」〕

 ドアが開くと、前の車両の方には渡り板が置かれる。
 ホームが湾曲しているので電車とホームの間が広く空く為、乗客が落ちないようにする為である。
 この渡り板は、発車の直前に外される。

 

〔♪♪♪♪。東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。……〕

 高橋「飲み物買って来ます」
 愛原「そうしよう。まあ、俺はコーヒーだな」
 高橋「了解っス」

 座席に荷物を置くと、高橋はホームの自販機に向かって行った。
 コンビニで食べ物とペットボトルは購入したが、それとは別にコーヒーでもといったところだ。
 それにしても、私達のように終点まで乗って行く客はどれだけいるのだろうか?
 多くが鬼怒川温泉辺りで降りそうな気がして、しょうがないのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「『四天王』のお見舞い」

2023-03-17 14:50:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月27日15時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 淀橋「魔王様ぁ、体の具合どう?」
 小島「家で倒れたって聞いて、もー心配で心配で……」
 上野凛「リサ先輩、御無事で良かったです!」
 桜谷「リサ様のお元気になった姿、今度は彫像にして……」

 『魔王軍』の『四天王』が見舞いに来た。
 凛を除けば、全員文化部である。
 凛だけ体育の時間、ブルマを穿いていないが、陸上部に所属しており、そこのユニフォームとしてのレーシングブルマを穿くことにより、リサからの圧を免れている。

 高橋「いきなりうるさくなりやがりましたね。在宅ワークの邪魔だ」
 愛原「こういうこともあるからな。やはり、事務所と住居、建物は統一するにしても、そこは分かれている方がいい」
 高橋「先生、何の話ですか?」

 『魔王』と『四天王』達は、リサの部屋にいる。
 リサは白いTシャツに黒い短パンでベッドに横になることにより、病気療養であることをさりげなくアピール。

 愛原「事務所移転の話だよ。オマエもそうだったが、いつでも3人が事務所にいるとは限らない。そんな時、あの事務所は広過ぎる」
 高橋「あー、まあそうですね」

 私が長期入院している間、デイライトさんが動いてくれて、今の状態なのだが、何年もやっていると、さすがに不都合が出てきた。

 愛原「何とか、条件に合う移転先が見つかればと思っている」
 高橋「俺も探しているんスけど、先生の仰る条件って、『なるべくこの近く』『事務所と住居が同じ建物』『事務所と住居は別の区画』ってことっスよね?」
 愛原「そうなんだ。探せばありそうで、実はあまりない」

 『なるべくこの近く』という条件を外せば、遠くにあったりするのだが、リサも通学が大変になるからな……。

 高橋「良さそうな物件が無いかどうか、俺の知り合いにも探させますよ」
 愛原「知り合いに不動産関係とかいるの?」
 高橋「そうなんです。『追い出し屋』とかやってるヤツがいますもんで、良さそうな物件にいやがる奴がいたら、あの手この手で追い出して……」
 愛原「昔のヤクザか!地上げ屋とかの!」
 高橋「法律のせいでヤーさんができなくなったもので、半グレが……」
 愛原「後でこっちが泣きを見そうだから、別にいいよ」

 私と高橋は休憩とばかりに、ダイニングでコーヒータイム。

 愛原「そうだ。あのコ達にも、お茶を持って行ってあげよう」
 高橋「先生、自らですか?」
 愛原「ああ。LGBTの自称G、実質Bのお前が持って行くより、どノーマルの俺が持って行った方がいいだろう」
 高橋「後でこのブログが炎上しても知りませんよ?」
 愛原「Twitterじゃないから問題なし」
 高橋「さすが先生、天才っス!」
 愛原「だろう?」

 私は紅茶を入れて、リサの部屋に向かって行った。

 愛原「おーい、リサ!入るぞー」
 リサ「オッケー!」

 私が部屋のドアを開けると……。

 愛原「紅茶を持って来たぞ」
 リサ「ありがとう」

 少女達は見舞いの品のお菓子と、持ち寄ったジュースを飲んでいた。

 愛原「ってかリサ、何だその恰好は?」

 リサは東京中央学園のものではない体操服に、下はエンジ色のブルマを穿いていた。

 リサ「皆からのお見舞いの品。秋葉原で買って来たんだって」
 愛原「コスプレ衣装か?」
 淀橋「コスプレ衣装ではあるんですけど、素材は本物ですよ?」

 確かにペラペラの生地や、テカテカと光るコスプレ撮影用の衣装とは違う学販用の体操服とブルマだった。

 小島「学校用の緑や、インナー用の紺色は既に購入したと聞いたもので、エンジ色にしてみました。似合いますよね?」
 愛原「似合うと思うが、どうして見舞いの品がこれなんだ?」
 桜谷「『魔王様の肖像画』が思いの外、大好評でして……」
 凛「都のコンクールで、最優秀賞を受賞したんです」
 愛原「それは凄い!」
 桜谷「特別審査員の南原先生の推薦も大きかったようです」

 大丈夫かな?
 絵を購入したことで、票を買ったことにならないかな?
 でもまあ、リサも欲しかったみたいだし……。

 桜谷「第2段として、また描かせて頂こうと思いまして。南原先生から、『今度は情熱性を狙うと良い』とアドバイスを下さったこともあり、それで今度はブルマを赤にしてみようと思いました」
 愛原「そ、そうなのか。完全な赤色ではなく、エンジ色というのも何か拘りがあるのかな?」
 淀橋「魔王様はコスプレ用は着心地が悪いから嫌だと言っていたもので……。で、お店に行ってみたら、赤いブルマはコスプレ用でしか売ってなかったので」

 学販用としてはエンジ色しか無かったというわけか。
 ……ん?

 愛原「ん?あれだよな?ブルセラショップじゃないよな?キミ達」
 小島「何ですか、それ?」
 リサ「あれだよ。だいぶ前、ヤンキーの八島とか伊藤とかがやってたヤツ。気の弱いコ捕まえて、下着脱がせて転売してたヤツ」
 小島「ああ、要は下着の転売ヤーってことですか」
 愛原「そ、そう!そういう店!」
 淀橋「大丈夫ですよ。ちゃんと、新品を買いましたから。中古品なんて、魔王様に失礼ですから」
 リサ「他の女の穿いたヤツなんて穿きたくない」
 凛「先輩も、こう仰ってますし」
 愛原「そ、そうか。それより、下着の転売してたコ達ってどうなった?」

 するとリサ、目の色を変えた。

 愛原「!?」

 私が息を呑んだのは、目の色の変わり方が以前と異なっていたからだ。
 以前は瞳の色が赤や金色に変わるだけだった。
 それが今や、白目が黒くなり、瞳の色が銀色に変わるというもの。

 リサ「『イジメ、ダメ!ゼッタイ!』」
 淀橋「ついにあいつら、『魔王軍』のメンバーにも手を出しやがったので、魔王様が自ら制裁に乗り出されました」
 小島「具体的には寄生虫を植え付け、授業中お漏らしの刑です」
 凛「さすがは魔王様」
 桜谷「魔王様は偉大です」

 リサの寄生虫の影響を未だに色濃く受けている『四天王』の4人は、リサの武勇伝に対し、目を死なせて褒め称えたのであった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする