報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村内を調査」

2023-03-18 20:27:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日13時00分 天候:雨 福島県南会津郡桧枝岐村見通 道の駅『尾瀬桧枝岐』]

 昼食を終えて、私達は取りあえず村の中心部に行くことにした。

 愛原「げっ!雨降ってきた!」
 高橋「そうっスね……」
 愛原「マジかよ。調査しにくいなぁ……」

 私は空を恨めしそうに眺めた。
 と、その時、救急車のサイレンがすぐ近くで鳴り始めた。
 静かな村だと思っている所に、けたたましいサイレンの音が聞こえるとびっくりする。
 もっとも、私達のいる場所は、村の中でも特に観光客が賑わう所なのだろうが。
 確かに1台の救急車が車庫から出て来て、国道の方を、村の中心部に向かって走り去って行った。
 車庫ということは、あそこは消防署なのか。
 消防署というよりは、消防団かもしれない。

 愛原「あ……!」

 そこで私は思い出した。
 確か、UBCSが来た後、現場は火災が起きていたはずだ。
 もしかしたら、消防車が出動したかもしれないと思った。

 愛原「ちょっと、あそこまで行ってみるぞ!」
 高橋「は、はい」

 私達は救急車が出動した建物へと向かった。
 そこは消防団ではなく、消防署の分遣所であった。
 消防団が民間人のボランティアから構成されるのに対し、こちらは本当に消防署から派遣されている消防士や救急救命士がいる所だ。
 さすがは土曜日でも、当直員はいるようだ。

 愛原「失礼します。突然の訪問、恐れ入ります」
 当直員「何でしょうか?」
 愛原「1つ、お聞きしたいことがありまして……」
 当直員「は?」
 愛原「今から7~8年ほど前、この村で火災はありませんでしたか?それも、住民に死傷者が出るほどの大規模な火災です。実は私達、東京から来た探偵の者ですが、その火災について調べております」
 当直員「と、急に言われても……」
 愛原「まあ、そうですよね。ただ、この村では滅多に火災など起こらないと思います。にも関わらず、死傷者が出るほどの火災とあらば、記憶に残られるのではないでしょうか?」
 当直員「そう言われても、自分も3年前に配属されたもので、それ以前となると……」
 愛原「そうですか」

 私は善場主任から渡された資料を見せた。

 愛原「この住所がどの辺りなのか分かりますか?」
 当直員「下見通ですか……」

 消防署には地図がある。
 当直員はその地図を私達に見せながら言った。

 当直員「この辺り一帯ですね」
 愛原「広っ!」

 元々が山間にある村であるが、更に山に入った所のようだ。

 愛原「ここに行くには……?」

 さっき通って来た国道352号線でも良いが、それ以外だと……。

 当直員「この道ですね。尾瀬・小繋ライン」
 愛原「これは県道ですか?」
 当直員「いえ。厳密に言えば林道です」
 愛原「林道……」
 高橋「こんなとこ、人が住んでるんスか?」
 当直員「いえ。林業の作業小屋とか、狩猟とか、そういう関係者が寝泊まりする小屋とかはありますが、住宅は無いですね」
 愛原「でもまあ、行ってみよう。何がしかのヒントくらいはあるかも……」
 高橋「はあ……」

 私は当直員に礼を言うと、分遣所をあとにした。
 そして再び車に乗り込み、来た道を戻る恰好になる。

 愛原「ああ、この道か!」

 スノーシェッドを出て、すぐの丁字路がそうだったのだ。
 信号など無いし、そもそも案内看板すら出ていない。

 愛原「ここを入るらしい」
 高橋「はい」

 林道といっても、舗装はちゃんとされているし、道幅も国道352号線と遜色ない2車線である。
 ただ、明らかに国道よりも車は少なかった。
 例え山間の村でも、そこは国道。
 田舎道は田舎道ならではの車通りがあるのに、こちらは一気に車が少なくなった。

 愛原「こ、これは……!」

 この道もグーグルマップのストリートビューで観れるはずだが、どうやら見落としていたようだ。

 高橋「大丈夫っスか、先生?」
 愛原「ああ」

 何となく夢で見た光景と、かなり雰囲気の似ている道だった。
 舗装はされていて、しかも道幅も広くなく狭くもなく、しかしなかなか滅多に車も通らない道……。
 夢の中で見た道路と、かなり似ていた。

 愛原「高橋、後ろから車来てるか?」
 高橋「あ、はい。来てますが?」
 愛原「ちょっと、先に行かせてやってくれ。ここからは、ゆっくり走ってほしいんだ」
 高橋「わ、分かりました」

 高橋は車を左に寄せると、左ウィンカーを点けて、後続の車を先に行かせた。
 栃木ナンバーの車だった。
 あれも、観光客の車なのだろうか。
 この道には速度制限の標識は無く、ということは法定速度の60キロで走って良い道なのだろうが、そこを半分以下の速度に落としてもらう。
 夢の中の光景が見えてきたら、すぐに車を止められるように。

 愛原「後ろから車が来たら、先に行かせてな?」
 高橋「分かりました」

 そして……。

 愛原「待て!車止めろ!」
 高橋「は、はい!」

 いつの間にか雨は止んだ。
 まだ、空は曇っているが、通り雨だったのだろう。
 そこは橋の近くだった。
 橋の手前に交差点がある。
 交差点といっても、信号などあるはずがない。

 愛原「ここは……!」

 夢の中で見た光景にかなり似ていた。
 私は車を降りた。
 車を降りると、とても静かな場所だった。
 聞こえてくるのは車のエンジン音と、ハザードランプのカチカチ音。
 自然音としては橋の近くということもあり、川のせせらぎの音と、天候が不安定なのか、時折吹いてくる突風のような風の音だった。

 愛原「リサ、ここに見覚えはあるか?」
 リサ「うん。わたしも、夢で見た光景に似てるような気がする」
 愛原「人間としての記憶はどうだ?戻りつつあるんだろ?」
 リサ「そ、それが……」
 愛原「ん?」

 どうも波があるのか、それとも変異のせいなのか、最近は人間だった頃の記憶が夢となって現れるようなことはないらしい。

 愛原「だが、この道の先かもしれんぞ。ちょっと行ってみよう」
 高橋「は、はい」
 愛原「高橋は車で待っててくれ」
 高橋「ええっ?」
 愛原「この道、駐禁の標識は無かったが、こんな所に車がポツンと止まってたら怪しまれちまう。そうなった時に上手く説明しといてくれ。オマエの点数、残り1点だろう?」
 高橋「そ、そうでした」

 何も無いと思うが、私は一応、後ろの荷物からショットガンを取り出し、ヘルメットを被った。

 愛原「リサはいいのか?」
 リサ「うん、大丈夫。ブルマ穿いてる」

 リサは黒いスカートを穿いていたが、それをピラッと捲ってみせた。
 確かにスカートの下には、昨日から穿いているエンジ色のブルマがあった。

 愛原「ああ、そう。いや、そういう問題じゃないんだが……。まあいい。行くぞ」

 私はリサを伴って、夢の中に酷似した脇道に入って行った。
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“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村へ」

2023-03-18 16:07:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日10時45分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町 道の駅『きらら289』]

 国道289号線を西進する。
 そんなに高規格な国道ではないものの、バイパスは完成しており、走りやすい道路となっている。
 断続的にトンネルが続く区間を越えても、平成の大合併の結果か、町の名前が変わることはない。
 そして、バイパスと旧道の分岐点の手前に、道の駅があり、そこで休憩を挟むことにした。

 高橋「こっちっスね」
 愛原「そう」

 道の反対側にあるのだが、道の駅は国土交通省の肝煎りということもあり、入口には右折レーンが設けられている。
 右折レーンが設けられていたり、信号機が設置されていたり、はたまた高速道路のサービスエリアみたいな感じだったりと、道路構造的に恵まれているのが道の駅なのである。
 どうやらこの道の駅、日帰り温泉もあるようだ。
 一瞬食指が動いたが、さすがにまだ仕事先に向かっている最中で、温泉にのんびり浸かるわけにはいかない。
 駐車場に車を止める。

 リサ「わぁい!早速何か食べるー!」
 愛原「飯はまだだぞ」

 さすがにお昼にはまだ早い。
 桧枝岐村内にも道の駅はあるようなので、そこで食べればいいだろう。

 愛原「ここでは、おやつくらいにしときなよ」
 リサ「おやつ……ね」

 しかしリサにとってのおやつとは……。

 リサ「ビーフジャーキー……。辛味入りの……」
 愛原「ソフトクリームとかじゃねーのかよ」
 リサ「先生。何かね、味覚が変わったみたい」
 愛原「え?」
 リサ「甘い物は食べ物ではあるんだけど、あんまり美味しくないっていうか……」
 愛原「え?え?え?」
 リサ「どっちかっていうと、辛い物の方がいいっていうか……」
 愛原「そ、そうなの?」
 高橋「先生。鬼は辛い物が好きだと言います。ますますこれは、人食い鬼化へのフラグっスね」
 リサ「今ならあれも飲めそう」

 リサは土産物として売られている、辛口の日本酒を指さした。

 愛原「それは年齢的にアウトだからダメ」
 リサ「先生より年上なのに……」
 愛原「それは、『もしもリサがリサ・トレヴァーになっていなかったら』の話だろう」

 ここではトイレ休憩と、高橋はタバコ休憩。
 私はコーヒーと甘味休憩とした。
 まあ、リサはトイレ休憩と辛味休憩のようだが。

 高橋「そういやリサのヤツ、カレーの辛口を食うようになったみたいですよ?」
 愛原「マジで?」

 うちでは中辛くらいにしているのだが、リサはそれでも物足りないということで、辛子を入れたりするようになった。
 この辺は、後で善場主任に報告した方が良いだろう。

[同日11時55分 天候:曇 福島県南会津郡桧枝岐村 道の駅『尾瀬桧枝岐』]

 いつの間にか桧枝岐村に入ったようだ。
 恐らくは村の入口辺りであろう、道の駅に辿り着いた。

 愛原「ちょうどお昼の時間帯だ。ここでお昼を食べて行こう」
 リサ「おー!」

 駐車場に車を止めて、道の駅の本館と思われる『尾瀬桧枝岐 山旅案内所』という看板の出ている建物へ向かった。
 真新しい建物で、道の駅に指定されたのも、つい最近なのだろうと思われる。

 愛原「結構、広い道の駅だな」
 高橋「そうっスね」
 愛原「食事処は、向こうの交流センターにあるらしい」
 リサ「早く食べたい」

 私達は同じ敷地内にある別の建物、“尾瀬の郷交流センター”に行ってみた。
 さっきから尾瀬が出てきているが、その通り、この村は観光地で有名な尾瀬の入口があるのである。
 といっても、そろそろシーズンオフだと思われるが……。
 建物に向かうまでの間、ヒュウッと強くて冷たい風が吹く。

 リサ「ん……」
 高橋「先生、天気が悪くなるフラグじゃないっスか?」
 愛原「参ったな。調査を終えるまでは、何とか持って欲しいところだが……」

 建物の中に入り、食事処へ行く。
 お昼時ということもあり、建物内は観光客でそこそこ賑わっていた。
 尾瀬への観光シーズンもそろそろ終わるということで、その名残を惜しむ人達だろうか。
 私達は先に空いている席を確保してから、食券販売機に向かった。

 愛原「“ベタな道の駅の法則”通り、食事処は食券方式だ。何にする?」
 高橋「蕎麦が多いっスね」
 愛原「この村は蕎麦も名産らしいよ。まあ、俺は岩魚のフライ定食にするか」
 高橋「じゃあ、俺も」
 愛原「リサは?」
 リサ「厚切りカツカレー」
 愛原「あいよ」

 それで昼食を確保する。

 愛原「まあ、宿泊先の宿でも、立派な料理は出てくるだろうがな」
 高橋「それはいいっスね」

 しばらくして注文した料理が出来上がる。

 リサ「ん?んー……」

 リサはカレーを一口食べてみたが、どうも辛さが物足りないようで……。

 愛原「おいおい、そんなにかけるのか!?」
 リサ「ん」

 テーブルの上の七味唐辛子をドバドバ、カレーにかけていた。

 高橋「うへー……」

 高橋もまた比較的辛いのが好きなクチだが、さすがにリサのこの行為には驚いていた。
 私自身がそんなに辛い物が得意ではないということもあり、それでうちではカレーは中辛になっているのだが……。

 リサ「ん、美味しい!」
 愛原「そりゃあ良かった……」
 高橋「し、七味の辛味が俺んとこまで漂ってくるんですが……」
 愛原「お、俺もだ。高橋、我慢しろ。これも仕事だ」
 高橋「う、うっス……」

 ところで、辛味の方はリサの体にも多少の影響が出ているらしく、リサが辛い物を食べると、体が赤身を増す。
 それはまるで、赤鬼のようだった。

 高橋「それで先生、調査はどうやってやるんスか?」

 食事が終わり、セットのコーヒーやジュースを飲みながら、高橋が聞いてきた。

 愛原「俺の夢の中の話だ。それに、この村もなかなか面積が広い。闇雲に探す場合、恐らく時間は最低1週間は欲しいところだろう。もちろん、そんな時間は無い」
 高橋「それで?」
 愛原「俺やリサの夢の通りだとしたら、こんな田舎の村にとっては大事件だろう。ということは、村の資料に残っていると思われる」
 高橋「サツに行きますか?」
 愛原「実はこの村、警察署も駐在所も無い」
 高橋「マジっスか!?」
 愛原「意外だな。で、恐らく週末だから役場の方も休みだろう。観光案内所とかは、さっきの道の駅で見た通り、開いていたがな」
 高橋「他には?」
 愛原「グーグルマップで見てみたが、少なくともストリートビューでは見つからなかった。恐らく、ストリートビューでは映らないような場所だと思う」
 高橋「……ほとんどノーヒントでは?」
 愛原「そうなんだよなぁ……。まあ、取りあえず、役場の方に行こう」
 高橋「はあ……」
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“私立探偵 愛原学” 「南会津の旅」

2023-03-18 11:31:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日08時12分 天候:曇 栃木県日光市今市 東武鉄道下今市駅]

 

〔「まもなく下今市、下今市です。2番線に入ります。お出口は、左側です。下今市駅で、前3両と後ろ3両の切り離し作業を行います。“リバティ会津”101号は、8時16分に発車致します。“リバティけごん”1号は……」〕

 私達を乗せた特急列車は、ダイヤ通りに下今市駅に到着した。

 愛原「……なあ、おい」

 私達は先頭車両に乗っているので、ホームに入線した時、先にホームの様子を知ることができる。
 そこで私は気づいた。

 愛原「駅弁の売店、閉まってなくね?」

 と。
 私がそれを呟くと、背後からパンタグラフがスパークするような音が聞こえた。
 えーと……この車両、パンタグラフがあったかなぁ……と。

 高橋「先生、リサの放電のせいで、電子機器がヤバそうなんスけど……」
 リサ「駅弁が買えない……!」

 段々と鉄道の旅も不便になってくるねぇ……。
 しょうがないので、この駅では自販機で飲み物だけ買い足しておくことにした。

[同日09時40分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道田島駅]

〔「長らくのご乗車、お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。1番線に入ります。お出口は、左側です。会津田島より先へおいでのお客様、9時47分発、快速“リレー”101号、会津田島行きは3番線から発車致します。……」〕

 何時間もかけて、ようやく鉄道の旅は終わりを見せようとしている。
 そう、『鉄道の旅』は!
 何せ、目的地はこの町ではない。
 今度は、鉄道の無い村まで、車で行かなくてはならない。
 お昼ぐらいには着けるのかなぁ……?
 そう考えると、リサの言った通り、学校は早退させてでも、前乗りして今夜はこの町に泊まり……といった方法でも良かったかもしれない。

 愛原「あー、やっと着いた」

 電車が架線の張られているホームに到着する。
 1番線は行き止まりのホームだが、他のホームはまだ線路が先まで続いている。
 だが、架線が張られているのはこの駅まで。
 接続列車が発車するホームには、架線が張られていない。
 つまり、接続列車はディーゼルカーだということだ。
 ホームに降りると、案外ヒヤッとした風が私達に吹き付けた。
 もうここは東北地方。
 しかも、山間で冬は豪雪地帯ということもあり、既に冬の影がチラチラとこちらの気配を窺っているような10月末である。
 2番線を挟んだ向こうのホームでは、ディーゼルカーのアイドリング音が響いている。
 一部の乗客達は、そちらへ移動する。
 電車は確かに、東武鬼怒川線の各駅で乗客を降ろしていった。
 会津田島駅で降りた乗客はもちろん私達だけではないが、それでも都内から乗り通した客は週末であっても、少ないようだった。

 駅員「はい、ありがとうございました」

 自動化されていない改札口に立つ駅員に、浅草からのキップを渡して出場する。

 愛原「この後は地元のレンタカーショップに行くが、もう行って大丈夫か?少し休んでから行くか?」
 高橋「いえ、俺は大丈夫っス。久しぶりに運転できて、腕が鳴りますよ!」
 リサ「わたし、トイレに行って来る」
 愛原「ああ、行ってこい」

 リサにとっては駅弁も車内販売も無い、つまらない鉄旅であったか。
 まあ、帰りに期待しよう。

[同日10時00分 天候:晴 同町内 会津レンタカー]

 リサがトイレから戻ってきた後、私達はレンタカー会社へ向かった。
 レンタカー会社は全国チェーン店ではなく、地元の会社である。
 駅から徒歩4~5分くらいだということで、そこへ向かう。

 愛原「いいか?本当はオマエ、免停なのに、今日と明日だけは善場主任の計らいで、特別に運転できるんだ。感謝の気持ちを忘れんなよ?」
 高橋「も、もちろんです、先生」

 善場主任は政府機関の職員で、そこからデイライトに出向しているという形を取っている。
 そしてそんな主任が本当に所属している機関の手に掛かれば、高橋の免停を解除できる力を持っているのだろう。
 とはいえ完全にというわけではなく、あくまで今日と明日の2日間だけ。
 持ち点も1点だけというものだった。
 もしまた減点を食らおうものなら、今度は良くて免停期間の延長、最悪は免取になるかもしれないという。

 スタッフ「それでは、こちらのお車をご利用ください」

 私達のプランでは、コンパクトカーである。
 車種は選べないとのことだったが、スタッフが指定したのはホンダのフィットだった。
 大抵、レンタカー会社で私達が乗ろうとすると、これである。

 愛原「ありがとうございます」

 私達はハッチを開けると、そこに荷物を積んだ。

 スタッフ「これから、どこに行かれるんですか?」
 愛原「桧枝岐村です」
 スタッフ「桧枝岐ですか」
 愛原「ここから車で、どのくらい掛かりますか?」
 スタッフ「そうですねぇ……。休憩無しで急いで向かっても、1時間強といったところでしょうか。村の中心部までくらいでしたら、そんなに難しい道じゃないですし、カーナビも付いてますから」
 愛原「ありがとうございます」

 高橋は運転席に乗り込んだ。
 私が助手席に乗り込み、リサはリアシートに乗り込んだ。

 愛原「リサ、狭くないか?」
 リサ「ううん、大丈夫。……けど、何だか車が小さいような……?」
 愛原「それはオマエが大きくなったんだよ」
 リサ「あ、そうか」

 車を出して、まずは会社の前の町道に出る。
 そこから西進して、国道121号線に向かった。
 この国道だけで行ければ良いのだが、そんなことはない。

 愛原「さっきのスタッフ、急いでいけば1時間ちょっとって言ってたな。まあ、こっちはそれまでにも鉄道の旅をしてきたわけだし、休憩を挟みながら行こう」
 高橋「うっス」
 愛原「遅くても、昼過ぎぐらいに着ければいいんだ。だから高橋、スピード違反とか信号無視で捕まるなよ?あとは、一時停止不停止とか」
 高橋「だ、大丈夫っスよ」

 国道121号線は数百メートル走っただけで別れる。
 今度は国道289号線に入り、さっき乗って来た会津鉄道の線路の下を潜った。

 愛原「そうだな……。途中に道の駅があったら、そこで休もう」
 高橋「はい」

 どうやらこの国道沿いに、それはあるようだ。
 まずは、そこを目指してみることにした。
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