報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの研究は続く」

2023-03-11 20:54:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月24日15時00分 天候:不明 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター地下研究施設]

 いくらメタリックで明るい照明とはいえ、ずっと地下にこもっていると、何だか感覚が狂うような感じになる。
 研究員達は好きでここにいるんだろうが、確かにリサは何日もここに閉じ込められて、大変だろうなぁ。
 そう思っていると、新たな実験が行われるとの情報が入った。
 それはこの施設の更に下層部分にある空間だった。

 善場「この下には、闘技場のような空間があります。BOWの運動能力や戦闘力を確認する為なのですが、リサの電撃がどれくらいの物なのかの実験です」
 愛原「ええっ?」
 善場「まだ脱走していないハンターがいますので、リサと戦わせます」
 愛原「危険じゃないですか?また脱走したりしたら……」

 下級BOWたるハンターが、特級BOWのリサに勝てるわけがないから、リサの命の心配はしていない。
 それまでもリサは、持ち前の戦闘力でハンターを屠ったことがある。

 善場「もちろん、BSAAの協力は欠かせません。BSAAに警備してもらい、万が一のことがあったら、すぐに対処できるようにしておきます」

 2階席のような部分にBSAAの狙撃兵を何名か配置しておき、万が一リサが負けたり、ハンターが脱走しようとしたら、すぐにそれで射殺するようにするのだという。
 リサはそれでは死なないが、ハンターなら死ぬ。
 奇しくも、準備中のリサとはモニタ越しでまた会話することができた。
 リサの体には、様々な測定器が付けられている。
 これでは戦いにくいのではないかと思うが、ハンターの方も片足には鉄球が取り付けられており、これでだいぶ動きが遅くなるのだそうだ。
 今回の目的は、リサの電撃による戦闘データの確保にあり、ハンターとの勝敗ではない。

 愛原「リサ、頑張れよ!」
 リサ「要するに、わたしの電撃でハンターを倒せばいいんだね?」
 愛原「そういうことだ」

 リサが先に闘技場に入る。
 彼女は検査着ではなく、私が差し入れしたTシャツに黒い短パンを穿いていた。
 そこに腕やら頭やら足やらに、測定器が取り付けられている。
 そして、反対側の大きな鉄扉が開き、そこからハンターαとγが現れた。
 γは両生類を改造して造ったハンターである為、爬虫類から造ったαやβのように、鱗は無いのだが、蛙のような大きな口を開け、それで獲物を丸呑みしてしまうのが特徴だ。
 1度丸呑みされると、2度と出て来れられない。
 αやβは首狩りという即死攻撃を行うが、γはそれと比べれば動きが鈍いということもあり、そのような攻撃は繰り出さない。
 その代わり、丸呑み攻撃が即死攻撃の代わりと言える。

 高橋「ヒュー!1対2か!昔を思い出すぜ!」
 愛原「高橋、うるさい」

 私達はカンファレンスルームのモニタで、闘技場の様子を見ていた。

 高橋「レディー……ファイッ!」
 愛原「だから……」

 まずは動きの素早いハンターαがリサに飛び掛かった。

 リサ「わたしをナメるな!」

 リサは右手を前に突き出して、掌から電撃を放った。
 すぐにαが感電して、仰向けに倒れ、ビクンビクン震えている。
 γは口を大きく開け、リサを丸呑みにしようとした。
 γは他のハンターと比べれば、圧倒的に耐久力が強い。
 だが、口を大きく開けた際、その中が弱点となる。

 リサ「よっと!」

 リサはサッと後ろに下がり、またもや電撃を放つ。
 γに電流がまとわりつくように、火花が飛び散るが、あまり感電している感じが無い。

 リサ「口の中に当てなきゃダメか……」

 またもやγが口を大きく開けて、リサに向かってきた。

 リサ「今度は両手!」

 リサは右手と左手、両方突き出して、両手から電撃を加える。
 口の周りに感電したことで、さっきよりはダメージを受けたγだったが、それでも倒れない。

 ハンターα「ガァァッ!」

 そうしているうちに、αが復活してしまった。

 リサ「おっと!」

 リサ、何を思ったか、あえてγに接近し、γの横に立った。

 ハンターγ「???」

 何と、γのヤツ、リサが真横にいることに気づいていないようだった。

 善場「γは他のハンターと比べて視力が弱いそうです。視野も狭いので、真横に立たれると見えないようです」

 だったら後ろに立てば良いと思うだろうが、何故かγはリサの方を振り向くことはなかった。
 リサとは反対側を向いたり、後ろを向いたりはするのだが、例えばリサが右脇に立つと、何故かγは右を向こうとしない。
 何かの習性なのだろうか?

 ハンターα「ガァァッ!」

 もっとも、それはγだけのこと。
 αには、そんな小細工通用しない。
 γは種類違いの仲間だと思うのだが、リサを攻撃したいのに、γが邪魔なので、ついにγを攻撃してしまった。

 ハンターγ「ギャァァッ!」
 ハンターα「ガァァァッ!」

 ハンター同士の同士討ちが始まる。
 リサはこれを狙っていたのか?
 そして、γが大きな口を開いて、αに食らいついた。
 γもそうだが、αも巨体である為、なかなか丸呑みできない。

 リサ「今だ!」

 リサはαの腕にしがみ付き、全身から電流を放った。

 ハンターα「ギャアアアアッ!!」

 まずはαが感電し、そのαを丸呑みしようとしていたγの口の中にも電流が流れ込んできて、γもついに感電した。

 リサ「しばらくこれで動けないでしょ」

 リサのヤツ、捨て身の攻撃をしたように見えたが、自身は全く感電していない。
 まあ、電気ウナギが自分の放電で感電するわけがないのと同じか。

 リサ「ねー?これで終わり!?」
 研究員「えー、確認します」

 研究員、ハンター2匹の生体反応を見る。

 研究員「2匹とも心肺停止の状態により、戦闘続行は不可能と判断!よっと、リサの勝利!」

 ハンター2匹の体からは、煙が立ち上っている。

 愛原「す、凄いな、あいつ!」
 高橋「人間発電機っスね。……あ、人間じゃねーかw」
 善場「フム。これはイケるかも……」

 善場主任も、興奮を隠しきれないでいた。
 カメラで見る限りでは、リサの自我は特に失われていないようだ。
 どうしてあんなことができるようになったのかまでは知らないが、悪用さえしなければ、別に大丈夫なんじゃないか?
 あとは、漏電とかに気をつけるとか……。

 控室に戻ったリサを私が労ってやると、リサは照れ笑いを浮かべていた。
 後に特異菌とGウィルスが絡み合ったところに、『アイコール』の成分が混じり、何らかの変異を起こした故での能力ではないかと結論付けられた。
 何らかとは何か、というのは引き続き研究課題となると……。
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“私立探偵 愛原学” 「一夜明けて」

2023-03-11 15:00:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月24日07時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターC棟3階313号室]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 今度のは、ただの目覚まし時計だ。
 私は音を止めて、起床した。

 愛原「おい、高橋。起きろ」
 高橋「……うっス」

 2段ベッドの上段に高橋が寝ており、私はカーテンを開けて高橋を起こした。
 私は洗面道具を手に、洗面所に向かう。

 高橋「朝飯、何時から食えるんスかね?」
 愛原「もうこの時間から、BSAAの軍人さん達は食べているらしいぞ。だから、俺達は後でゆっくり行くといいらしい」
 高橋「分かりました」

 高橋は一服しに、部屋を出て行った。

[同日08時00分 天候:晴 同センターA棟1階食堂]

 朝の支度を終えると、私と高橋は本館A棟の食堂に向かった。
 目論見通り、BSAAの朝食は終わっていて、食堂は私達の貸し切りとなっていた。
 朝食はサバの塩焼きをメインとした、和定食である。

 愛原「リサはちゃんと食事、もらえてるのかな?」
 高橋「どうっスかね……。まあ、ハンターみたいな化け物にも餌をやってたくらいですから、リサにもやってるんじゃないスか」
 愛原「だといいけど……」
 高橋「リサだって、豚一匹で十分スからね」
 愛原「こらこら」

 私達が朝食を取っていると、善場主任もやってきた。

 善場「おはようございます。私もご相伴にお預かりしても、よろしいですか?」
 愛原「ど、どうぞ!失礼!善場主任もまだでしたか!つい、先に頂いちゃってました!」
 善場「いえいえ。構いませんよ」

 つい、BSAAの隊員達と一緒に食べたのかと思っていた。

 愛原「私がよそおいましょう!」

 私は御ひつの中から、茶碗にご飯をよそおった。

 善場「いえいえ、お構いなく」
 高橋「それよりねーちゃん、事故処理はいつ終わるんだ?俺達も仕事があるんだぜ?」
 善場「それは申し訳ありません」
 愛原「リサの学校については、体調不良ということで伝えてあります」
 善場「ありがとうございます。一両日中には終わるのではないかと思われます」
 愛原「係員の死亡については、どうされるのですか?」
 善場「それは、こちらにお任せください。……逆に、忘れてください」
 高橋「おっ、お得意の隠蔽かぁ!?俺の免停も隠蔽してほしいもんだぜ!」
 善場「ですから、そう申し上げてるじゃないですか」
 高橋「あっ……!」
 愛原「高橋!黙ってろ!」
 高橋「さ、サーセン……」
 愛原「すいません。後でよく言っておきますから」
 善場「愛原所長にお任せします」
 愛原「それで、今日は私達は何をすれば宜しいのでしょう?」
 善場「リサへの面会をお願いします」
 愛原「分かりました。また、レセプションにて、リモート面会ですね?」
 善場「そう、ですね……」
 愛原「ん?」

 何か、主任の返事が曖昧だ。

 善場「9時になりましたら、また研究施設に向かいましょう」
 愛原「? はい」

 まさか、面会できないかもしれないのだろうか。
 私は理解できても、リサが理解できないかもしれないぞ。

[同日09時15分 天候:晴 同センター地下研究施設]

 朝食を終えると、C棟のエレベーターからまた研究施設へと下りた。
 レセプションの端末ではなく、普通の電話機で主任は中の関係者と話をしていた。

 善場「……なるほど、そうですか。それでは、それで参りましょう」

 主任は電話を切ると、私達の方を向いた。

 善場「10時から面会が可能です。但し、面会室での対面が可能とのことです」
 愛原「えっ、そうなんですか?」
 善場「リサの暴走が確認できない以上は、もう少し人道的な扱いでも良いということになったようです」

 その割には、まだこの地下研究所暮らしをさせられているが……。
 私達は施設内の使用されていない会議室で待機した後、面会室へ向かった。

 愛原「これは……」

 そこは、まるで刑務所か拘置所の面会室のような造りになっていた。
 違うのは、壁一面にゴムシートが貼られていること、防護板にも透明の絶縁フィルムが貼られていることだった。
 こうすることで、少しでもリサの放電による感電を防ごうという魂胆なのだろう。
 しばらくして、防護服に身を包んだ研究員やBSAA隊員に連れられ、リサが入室してきた。
 リサもまたゴムのウェットスーツを着せられている。

 リサ「先生!」

 リサが防護板に張り付いてきた。

 リサ「先生!そっちに行きたいーっ!」
 愛原「事故処理と、お前の調査が終わるまではダメらしいな。それにしても、昨夜は上手くやったな。ハンターを感電させたんだって?」
 リサ「いきなり入って来やがったから、『何だ、お前らーっ!』って、手を伸ばしたら、電気がビリビリーってね」
 愛原「そんなことができるのか。制御はできるのか?」
 リサ「何となく……。こうすると、電気が出るなぁって感じ」

 寄生虫の時みたいに、自分で制御できるようになれば、ここから出ても安心なんじゃないのかと思う。
 因みに今回の面会時間は、1時間に延長されていた。
 リサの活躍と本人自体は、特に反抗的でもないし、暴走していないからという判断なのかもしれない。

[同日11時00分 天候:不明 地下研究施設カンファレンスルーム]

 リサには着替えやお菓子やジュースを差し入れしておいた。
 一応、食事は普通の定食が出されているという。
 また、安全の確保の為、リサは研究室からの出歩きを許可されていないが、必要な物は研究員に頼めば購入してくれるとのこと。
 それから私と高橋は、カンファレンスルームに移動し、リサの現況についての説明を受けた。

 善場「リサの放電体質の原因については、未だに不明です。ただ、『アイコール』投与後に変化したことから、それによる副作用である可能性が指摘されています」
 愛原「やっぱりなぁ……」
 高橋「ねーちゃん、他にも電気放つBOWとかいなかったのかよ?」
 善場「一例だけあります」
 愛原「えっ!?」
 善場「2013年、香港で起きたバイオハザード事件でのことです。そこもBSAAが対応に当たったのですが、北米支部のクリス・レッドフィード氏が隊長として、副隊長としてピアーズ・ニヴァンス氏がネオ・アンブレラのアジトに潜入しました」
 愛原「確か、海底に造られた油田の発掘施設に偽装されていたということでしたね?」
 善場「そうです。しかし、そこでピアーズ氏は瀕死の重傷を負ってしまいます。そこであろうことか、ピアーズ氏は自分にCウィルスを投与してしまったのです。しかしながら彼は、体の半分がBOWと化しながらも、不屈の精神で自我を保ち続け、クリス氏の脱出に最後まで尽力したと言われています」
 愛原「BSAAの資料にもありますね」
 善場「その半分BOW化したピアーズ氏は、そこから電撃を放ち、敵を倒したとのことです」
 愛原「やっぱり他にもいたんだ!」
 高橋「いやいや、待て待て、ねーちゃん。Cウィルス、どっから出てきた?今、リサが持っているのはGウィルスと特異菌だろ?」
 愛原「確かに……」
 善場「今のところ、調査中としか申し上げられません。リサから採血したりしているのですが、それでもCウィルスは見つかっていません」
 愛原「他に分かっていることはありますか?」
 善場「リサの寄生虫が殆ど無くなっています」
 愛原「ほお?」
 善場「体質の変化と帯電に伴い、死滅したものと思われます」
 高橋「それだけは良かったっスね。キモい蟲を見なくて済む」
 愛原「うん」

 それにしても、帯電体質について分からない事には、ここから出られないのではと思った。
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“私立探偵 愛原学” 「異常事態発生」

2023-03-11 11:11:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月23日19時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターC棟]

 善場主任から話を聞いた後、私と高橋は部屋で乏しい夕食を取った。
 本館A棟の自販機コーナーで買ったカップラーメンとお菓子、それとビールとおつまみである。

 愛原「独り暮らしの男の王道だろうが、まさかここまで来て、夜飯カップラーメンとはな……」
 高橋「明日に期待するしかないっスね」

 ズルズルと麺や具、スープまで飲み干して、満腹感を得たような気になってみる。
 あとは、スナック菓子やおつまみでも……と思った時だった。

 ビービービービー!と、私達のスマホがアラームを鳴らした。
 これはBSAAが開発したアプリが作動したものである。
 即ち、近辺に悪意を持ったBOWが接近するとアラームを鳴らすというものだ。

 愛原「な、何だ!?」
 高橋「BOWですって!」
 愛原「何いっ!?」

 私は急いで、荷物の中からショットガンを取り出した。
 高橋も、大型拳銃を取り出す。

 高橋「先生、場所は!?」
 愛原「近いぞ!100メートルほどだ!」
 高橋「100メートル!」

 私はカーテンの隙間から、窓の外を覗いてみた。
 どうやらBOWの接近を感知したのは私達だけでなく、BSAAもそうだったようだ。
 彼らは搬入口から向かうらしく、銃火器を持って、一斉にそちらの方へと走って行った。

 高橋「あれだけの軍隊が行くってことは、このアラームはリサでは!?」
 愛原「くっ……!やっぱりダメだったか!」

 私は急いで、善場主任に連絡した。

 善場「善場です。愛原所長も、アラームが鳴りましたか?」
 愛原「はい!BSAAが地下施設の方に向かいましたが、そちらで何かあったのですね!?」
 善場「そのようです。今、BSAAの地上部隊のヘリに便乗しましたが、少なくとも空中からではBOWの存在を確認することはできません」

 確かに100メートルというのが、地下へ向かって100メートルというのなら、あの研究施設が該当する。

 善場「安全が確認されるまで、所長達は部屋から出ないでください。万が一の場合は、発砲を許可します」
 愛原「分かりました!」

 おいおい、マジかよ……。

 愛原「いきなり、大変なことになったな……」
 高橋「せっかく先生が励ましてやったというのに、あの恩知らず!」
 愛原「自分でも制御できないくらいに変化してしまったのかもしれないな……」

 それから1時間後……。

 愛原「!」

 アプリに表示されていた赤い警戒表示が消え、代わりに青表示の『確認されない敵』に変わった。
 日本語がおかしいのは、このアプリ、BSAA北米支部で開発されたものをそのまま輸入し、英語を日本語に直訳しているからである。
 英語だと、『No Enemy』という表示になるだけなので、むしろそちらの方が分かりやすいかも。
 という表示になったのが、今から30分前。
 それから連絡があったのは、更に30分経ってからのことであった。

 愛原「もしもし!?」

 善場主任から電話があった。

 善場「愛原所長、善場です。安全が確保されました。もう、部屋の外に出て大丈夫です」
 愛原「リサは!?リサはどうなってんですか!?」
 高橋「殺処分っスか?」
 善場「その逆です。リサが良い活躍をしてくれましたよ」
 愛原「何ですか、それは!?」
 善場「今から、C棟へ向かいます。ちょっと、関係者にとっては不祥事になりますので、電話ではお話しできませんので」
 愛原「あ、はい」

 私達は部屋を出て、ロビーに向かうことにした。

〔1階です〕

 エレベーターを1階で降りると、アナウンスが止まった。
 そして、私達が降りると、何のアナウンスも無く、ドアがバンと勢い良く閉まる。
 まるで平壌の地下鉄のようである。
 これは、このエレベーターが、秘密の研究施設へ下りることの表れである。
 無許可の者が便乗しないようアナウンスは無く、ドアを勢い良く閉めるのだという。
 つまり、善場主任が下から上がってくるということだ。

 愛原「今度は私が飲み物を用意しておいてあげよう」
 高橋「いいっスね」

 さすがにこんな山奥では、自販機も現金しか使えない。
 ロビーに1台だけあるソフトドリンクの自販機で、お茶を用意していると、エレベーターのドアが開いた。

〔ドアが閉まります〕

 閉まる時にアナウンスがあって、今度は普通の閉まり方をする。
 1階でドアが開いた時点で、エレベーターは通常状態に戻るということだ。

 善場「お待たせしました」
 愛原「お疲れ様です、主任」

 私は主任にお茶のペットボトルを渡した。

 善場「恐れ入ります」
 愛原「それで、何があったんですか?」

 私達はロビーの椅子に座りながら話した。
 外からは時折、BSAA隊員達の声や車のエンジン音、そしてヘリコプターの音が聞こえてくる。
 だが、誰一人として、ここに入ってこようとする者はいない。
 立入禁止の通達が徹底しているのだろうか。

 善場「実験用のハンターが脱走しました」
 愛原「ええっ!?」
 善場「ハンターαとβですね」
 愛原「緑のゴリラと赤いゴリラか……」

 どちらも爬虫類から作った下級BOWである為、表皮は鱗に覆われている。
 初出はゾンビパラダイスと化したアメリカのラクーン市であり、日本においては霧生市である。

 善場「どちらも生餌を与えるのです。生きている豚などですね」
 愛原「それであの施設、たまに豚の鳴き声とか聞こえてくるんですね」
 善場「生餌を与える為に、それ専用の投入口を開けるのですが、係員が間違えて檻の扉のロック解除ボタンを押してしまったのです」
 愛原「はあ!?」
 善場「生餌投入口は穴が小さいので、大柄なハンターが通り抜けることはできません。しかし、係員は間違えて、隣の檻の扉のロック解除ボタンを押してしまったようです」

 その隙を突いて、ハンターが脱走してしまったのだという。
 ハンターは操作ミスをした係員をまず即死攻撃し、それから何を思ったか、リサが隔離している部屋に飛び込んだ。
 ハンターから見れば、リサも生きている人間(餌)に見えたのかもしれない。
 しかし、リサはハンター達に対して電撃を行った。
 感電して動けなくなった2匹に対し、駆け付けたBSAA隊員達の集中砲火で退治されたというわけである。

 愛原「それはお手柄ですな!」
 高橋「ただ単に、リサが護身しただけじゃ?」
 愛原「それでも、ハンターの動きを止めただけでも大したもんだよ。高橋、俺達も案外素早い奴らの動きには、だいぶ苦労させられたものだろう?」
 高橋「まあ、確かにそうっスね」

 感電させて動きを止めれば、あとは大きな的同然!
 BSAAのようなプロフェッショナル集団に掛かれば、もうあの世行きだ。

 愛原「これから、どうなるんですか?」

 リサの調査は中止かな?

 善場「事故処理が終わるまでは、この施設に待機して頂きます。リサもです。あくまでも今回は、ハンターが脱走したというだけの事故ですから」

 係員1人死んでるはずだが、そこは冷たく見放すところは、国家機関っぽいな。
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