報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「代替修学旅行終了後」 3

2022-03-12 20:55:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日11:42.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔まもなく大宮、大宮。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が広く開いている所がありますので、足元にご注意ください〕

 東京駅から30分以上電車に揺られて、大宮駅に到着する。
 ホームに入る前に減速するのは、ポイントを通過する為だ。
 上野方面からの宇都宮線は、基本的には下り副線ホームに入る為。
 高崎線は本線ホームに入る為、ポイントによる減速は無い。
 これは高崎線の方が先に開通し、宇都宮線の方が後から開通した名残である。

〔「今度の高崎線下り、特別快速、高崎行きは11番線から51分の発車です。普通列車の高崎行きは、8番線から56分の発車です。この電車は宇都宮線の普通列車、宇都宮行きです。終点の宇都宮まで、各駅に停車致します」〕

 そして電車がホームに停車し、ドアが開く。
 高崎線よりも停止位置が前の方にある為、先頭車両に乗ると、コンコースに上がるエスカレーターまで多少距離がある。
 だからこそ、空いているのだが。

 愛原:「リサ、トイレとか大丈夫か?」
 リサ:「うん、大丈夫。サイトーの家のトイレ、使わせてもらう」
 愛原:「そうか」

 埼玉県一のターミナル駅は、多くの人が行き交っている。
 電車が到着していなければ、コンコースもそこまで人が多いわけではないのだが、到着すると【お察しください】。
 仙台駅よりも賑わっているのは、在来線でも発着本数が多く、またその編成両数も多いからだろう。
 改札口を出て、西口に向かう。
 ところでリサのヤツ、私のマネをしてホーム上の駅名看板を撮影していた。
 私がそうする理由は、善場主任に経過報告をする為の一環である。
 リサがそうするのは……。

 リサ:「サイトーにLINEを送る為。『東京駅なう』とか『大宮駅なう』みたいに」
 愛原:「なるほど。それはいいかもな。……ネットの画像から、北海道辺りの無人駅の写真を送ったら?『新十津川警部駅なう』なんて」
 リサ:「おー!面白い!……けど、やめておく」
 愛原:「なんで?」
 リサ:「サイトーなら血鬼術でも使って、本当に瞬間移動しかねない」
 愛原:「た、確かに……」

 例えウクライナのドネツク州にいても、絵恋さんならロシア軍の戦車を蹴散らして追い掛けて来そうだ。

[同日12:00.天候:晴 同区内 大宮駅西口バス停→丸建つばさ交通けんちゃんバス車内]

 西口からペデストリアンデッキに出る。
 そこからバス停に向かうのだが、西武バスや東武バスが発着するバスプールではない。
 かといって、そごうの前から出ている高速バスの乗り場でもない。
 一方通行の狭い道の所にポツンとバス停が立っていて、そこに1台の小型バスが発着している。
 そのバスに乗り込む。
 コミュニティバスなどでよく見られる車種(日野自動車・ポンチョ)だが、自治体主導のコミュニティバスではない。
 後ろのドアから乗り込むと、優先席や前方の席にお年寄りが乗っているだけだった。
 1番後ろの席に座ろうとするが、私はここでふとあることを思い付いた。
 このバスはICカードが使えない。
 かつてはコミュニティバスでは、そういうことは往々にしてあった。
 それもまた、このバスがさいたま市辺りが運営するコミュニティバスだと誤解される一因でもある。
 使用できるのは現金と回数券のみ。
 そして、最近の若いコは現金でバスに乗ったことなど無いだろう。
 リサもその1人だ。

 愛原:「リサ」
 リサ:「なに?先生」
 愛原:「このバスはICカードが使えない。現金で乗るしかないんだが、小銭が無くてね。1000円札があるから、これで両替して来てくれ」
 リサ:「うん、分かった」

 リサは私が渡した1000円札を手に、運転席に向かった。

 リサ:「これで両替お願いします」

 あ、運転手に直接言うのね!最近の若いコは!

 運転手:「それじゃ、ここに1000円札を入れて」

 年配の運転手は、両替機を指さした。

 リサ:「はい」

 リサ、1000円札を入れる。
 ジャラジャラと100円玉が受け皿に出てくる。

 リサ:「誤魔化して無いよね?」
 両替機:(;゚Д゚)

 リサ、100円玉を手に席に戻って来た。
 窓側に座らせる。

 リサ:「はい、両替してきたよ」
 愛原:「ご苦労さん。とまあ、現金で乗る場合で、小銭が無い場合は、ああやって1000円札を両替してくるんだ」
 リサ:「1000円札が無い場合は?」
 愛原:「まあ、どこかで崩してくるしか無いな」

 運賃が4ケタになることが珍しくない高速バスなら、高額紙幣にも対応しているのだが(JRバスの東名ライナーなど)。
 尚、外国ではバス車内に両替機が設置されている事はとても珍しいらしい。
 日本では基本的に、どこのどんな路線バスでも、両替機が設置されている(例外、東京23区内の前乗り先払いタイプの路線バスなど)。

 愛原:「200円渡しておくから、これは降りる時に運賃箱にな」
 リサ:「分かった」

 そして時間になり、バスは後ろ扉を閉めて発車した。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは与野本町先回り、大宮西口循環線でございます。【中略】次はあおぞら保育園、あおぞら保育園でございます〕

 バスが最初の丁字路交差点を曲がる時、左角には、いきなりステーキがある。

 リサ:「おおっ!ステーキ!……ごくっ」

 そういえばもうお昼時で、リサは空腹であるはずだ。

 リサ:「……あの赤いお肉、美味しそう……」
 愛原:「そ、そうだな。いずれ、ステーキ食べさせてやるから」
 リサ:「おー!」

 で、左折してスクランブル交差点を通過し、ペデストリアンデッキ下の交差点に差し掛かる。

 リサ:「おおっ!焼き肉!」

 今度は焼肉ライクに反応した!
 リサを進行方向左側に座らせたのが間違いだった。

 リサ:「お腹空いた……」
 愛原:「そ、そうだ!絵恋さんに、今日の昼食会の料理は何か聞いてみたら!?」
 リサ:「……なるほど」

 取りあえずスマホを弄らせて、気を紛らわせさせよう。

 リサ:「ローストビーフだって!」
 愛原:「そうか。それは良かったな。おとなしく乗っていれば、それに有りつけるぞ」
 リサ:「わ、分かった。早く着いて」

 私は、このバスが無事に下車停留所に着くのを祈る他無かった。
 もし途中で事故になんか遭ったら、リサは暴走するだろう。
 食べ物の恨みは恐ろしい。
 それはBOWも同じなのである。
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“私立探偵 愛原学” 「代替修学旅行終了後」 2

2022-03-12 15:57:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日10:12.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス東20系統車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから大口クライアントの斉藤社長の御宅へ行くところだ。
 リサと2人で。
 え?高橋はどうしたのかって?
 拉致られたよ。
 ……うん、拉致られた。
 何か……玄関のインターホンが鳴ったと思って、ドアを開けたら、ヤンキーの姉ちゃん2人が突入してきて、ずだ袋で高橋を拉致していったよ。
 北朝鮮の工作員みたいに。
 まあ、首謀者は誰かもう分かっている。
 パールだな。
 パールは斉藤絵恋さん専属メイドなのであるが、彼女が実家に帰省中は他のメイドが面倒を見るので、ヒマになる。
 そこで、彼女なりのデートの誘い方なのだろう。
 高橋もケンカは相当強いのだが、ヤンキーの姉ちゃん達もそれなりだった。
 ま、今回は斉藤社長の所へ報告書を出しに行くだけなので、高橋は必要無いだろう。
 リサに関しては、絵恋さんの御指名であるので。
 それで、今回は私とリサの2人というわけだ。
 高橋ファンの皆さん、ごめんなさい。

 リサ:「あっ、バス来たよー」
 愛原:「おう」

 決して本数の多くないバスがやってきた。
 都営バスで1時間に1~2本は確かに少ない。
 しかし、少ないということは、乗客も少ないということだ。
 実際ノンステップバス(三菱ふそう・エアロスター)の前扉から乗ってみると、座席は空いていた。
 一本前の豊洲駅前経由、深川車庫行きが満席状態で出発していったのとは対照的である。

 リサ:「ここにしよ」
 愛原:「ああ」

 後ろの開いている2人席に座った。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスが走り出す。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館前、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕

 リサ:「お兄ちゃん、大変だね」
 愛原:「パールがムラムラする度に襲われる。だが、自業自得だろう」
 リサ:「行き先は秋葉原?」
 愛原:「どうだろう?」

 高橋を拉致したヤンキーの姉ちゃん2人は、明らかにパールの後輩達であろう。
 かつてはパールもヤンキーであり、どちらもヤンキーが過ぎて服役経験があるくらいだ。

 愛原:「東京湾や秩父の山まで、片道ツーリングじゃなければいいが……」
 リサ:「?」
 愛原:「いずれにせよ、俺達のルートと被ることはないだろう」
 リサ:「なるほど。分かった。先生は襲われるの嫌い?」
 愛原:「そりゃな」
 リサ:「分かった。じゃあ、襲うのはやめる」
 愛原:「ん?」

 リサはジャンパーのポケットからスマホを取り出し、絵恋さんとLINEを始めた。

[同日10:44.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 バスは東京駅丸の内北口の広場に到着した。
 コロナ禍で、だいぶ旅行客が減っているはずだが、それでもレンガ造りの駅舎に向かって記念撮影している人が散見される。
 中扉からバスを降りると、リサは太陽の眩しさに目を細めた。
 BOW(生物兵器)として人体改造されたリサは、別に太陽が弱点というわけではない。
 “バイオハザード”の世界で、太陽が弱点という化け物は殆どいない(明るいのが苦手という敵はいる。あくまでも苦手というだけなので、けして昼間は登場しないわけではない)。
 日本版リサ・トレヴァー『6番』が珍しかっただけで、彼女は確かに白井から見れば失敗作だっただろう。
 駅の中に入る。

 リサ:「先生、Pasmoの中がちょっと……」
 愛原:「ああ、分かった。チャージしておこう」
 リサ:「ありがとう!」

 改札口に行く前に、券売機に行ってリサのPasmoにチャージをしてやる。
 ついでに私のSuicaにも、何千円が足しておいた。

 愛原:「それじゃ、行こうか」

 改札口を通って、上野東京ラインのホームに行く。
 因みに横須賀線・総武快速線を除く、2階建てグリーン車付きの電車を『中距離電車』と呼ぶが、どうやら専門用語であるらしい。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の列車は、11時9分発、普通、宇都宮行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 かつては東海道本線専用だったホームも、今では宇都宮線、高崎線、常磐線も発着するようになった。
 BSAAとの取り決めに従い、先頭車両に向かう。

 リサ:「サイトーが、『迎えに行く』と言ってるんだけど、お父さんが許してくれないんだって」
 愛原:「ああ、そうだろうな」
 リサ:「いつもの通り、大宮駅に行って、そこからバスに乗り換えるんでしょう?」
 愛原:「そうだよ」

 タクシーチケットはもらったが、なるべく公共交通機関を使うべきだと私は思った。

[同日11:08.天候:晴 JR東京駅→宇都宮線1578E列車15号車内]

〔まもなく7番線に、普通、宇都宮行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 接近放送が鳴ると、単調な接近メロディが流れる。
 これは大宮駅も同じだ。
 しばらくすると、白いヘッドランプを光らせて、電車が入線してきた。
 東海道本線の熱海駅からやってきた電車だが、実際に宇都宮まで乗り通す客はいるのだろうか。
 ただ、遅いが新幹線よりも乗り換えの手間は無い。

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕

 下車客は多い。
 それでもボックスシートがまるっと空くことはなく、まるっと空いたその隣の2人席に座った。
 ドア横の席である。

〔「発車まで1分ほどお待ちください。上野東京ライン、宇都宮線直通の普通列車、宇都宮行きです」〕

 愛原:「絵恋さん、何だって?」
 リサ:「昼食、用意して待ってるって」
 愛原:「そうか」

 1分の停車時間では、すぐに発車の時間がやってくる。
 恐らく乗務員交替の為の時間だろう。
 発車メロディではなく、電子音の発車ベルがホームに鳴り響く。

〔「7番線から宇都宮線の普通列車、宇都宮行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕
〔7番線の宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 上野東京ラインのホームには、まだホームドアが無い。
 特急列車も発着するこのホームでは、車両の規格が統一できないからだろう。
 通勤電車と比べて、ドアが閉まる時にガチャンという大きな音がする。
 それから、電車はゆっくり発車した。
 通勤電車と違ってATC(自動列車制御装置)ではないのだが、ゆっくり発車した後、運転室内からチンベルの音が一打鳴る(ATC搭載車だと、信号が変わる度にチンベルが鳴る)。
 それから加速をするのだが、何か信号が切り替わる合図なのだろう。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通、宇都宮行きです。前5両、11号車から15号車までは、途中の小金井止まりです。グリーン車は、4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、上野です〕

 東京駅を発車した電車は、一気に急坂を登る。
 京浜東北線や山手線も高架線であるが、上野東京ラインは更にその上を行く。
 今の車両ならそんな急坂でもスイスイ登って行くが、昔のSLではキツいだろう。

 愛原:「こっちは高橋からの応答は無しだ。既読すら付かない」
 リサ:「大変だねー」
 愛原:「うん、大変だ」

 この電車が秋葉原駅の横を通った時、車窓からヨドバシAkibaの横を爆走する族車のような物がいたのだが、そこに高橋が乗っていたかどうかは不明である。
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