報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「子供の頃の夢」

2022-03-16 20:02:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月27日09:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 高橋:「先生、おはようございます」
 愛原:「ああ、おはよう」

 私は変な夢を見て、目が覚めた。
 修学旅行の引率補助から今の今までちゃんと休めていなかったから、疲労で変な夢を見てしまったのだろうか。

 高橋:「どうかしたんスか?」
 愛原:「いや……。ちょっと顔洗ってくる」

 私は洗面台に行って、洗顔してきた。

 リサ:「わたしも事務所行っていい?」

 私がダイニングに戻ると、リサが既に座っていた。

 愛原:「リサを1人にするわけにはいかないからな。ちゃんと事務所まで来てもらうぞ」
 リサ:「おー!」
 愛原:「但し、高橋の手伝いが終わってからな?」
 高橋:「今日は家の掃除の日だ。しっかり掃除してからだぞ」
 リサ:「そう、だった」
 高橋:「先生が安心して探偵業務に邁進できるよう、助手の俺達は全力でサポートだ」
 リサ:「おー!」
 愛原:「な、何だか大袈裟だが、とにかく、ありがとう。俺は先に事務所に行ってるから」

〔「昨日午後3時半頃、東京都大田区の都道で、暴走車が全国指名手配犯の乗った車と正面衝突し、この事故で2人が死亡しました」〕

 リサ:「あっ!兄ちゃんの事故だ!」
 高橋:「くっ……!」
 愛原:「高橋、俺の飯、頼む」
 高橋:「は、はい」

 高橋は台所に向かった。
 テレビは現地取材のリポーターに画面が変わった。

〔「事故があったのはここ、羽田空港近くの都道です。この道路を走っていた車が、向こうから逆走してきた車と正面衝突し、この事故で衝突された車が大破、炎上しました。この車には元・日本アンブレラ製薬の幹部社員で、全国指名手配中の白井伝三郎容疑者が乗っていたと思われ、病院に搬送されましたが、死亡しました。また、運転していた男性はTウィルスに感染していたと見られ、事故後に発症しました。……」〕

 高橋の事は全く出て来ない。
 報道規制でも掛けられているのだろうか。
 霧生市という地方都市を壊滅させ、今なお復興できずにいる状態を作り出した日本アンブレラの事は全国ニュースでも大きく騒がれた。
 尚、元社長と元副社長の五十嵐親子は、未だに裁判で係争中である。
 恐らく最高裁まで争い、しかし高裁に差し戻されて、からの……泥沼になると思われ、結審するまであと何年も掛かると予想されている。
 これで現場社員(研究職)のトップであった白井伝三郎が逮捕されれば、大きく展開すると思われていたのだが……。

 高橋:「先生、どうぞ」
 愛原:「ありがとう」

 昨夜、駅前のコンビニで買った食パンのトーストに、同じくそこで買ったマーガリンを塗りたくる。
 また、同じくそこで買った卵2個とベーコンで作ったベーコンエッグが出て来た。
 付け合わせは冷蔵庫にあったウィンナーとミニトマト、そしてコンビニで買った生野菜である。
 他にもコーンスープが出て来たが、これも買い置きしていた粉末スープだろう。
 リサは既に半分以上平らげていた。

 リサ:「先生、変な夢見たの?」
 愛原:「ああ。まあ、ちょっと疲れてるんだろう」
 リサ:「……それでも事務所に行くの?」
 愛原:「一応な。もっとも、善場主任の連絡とかを待つだけだから、事務所では何もできないだろうな。ちょっとした事務作業とか、あとは掃除とか……」
 リサ:「分かった。わたし、事務所の掃除も手伝うね」
 愛原:「ありがとう」
 リサ:「でも、お掃除って体力使うからなぁ……。体力使うと、お腹減っちゃうしなぁ……」
 愛原:「昼間は駅前のマックでも奢るよ」
 リサ:「おー!」

 最後は食後のコーヒーで締める。

 高橋:「でも先生、変な夢って何スか?パチンコ台からマリンちゃんが出てくる夢っスか?それとも、競馬場で本当にウマ娘が走ってる夢?」
 愛原:「その方がずっと良かったよ。子供の頃の夢さ」
 高橋:「先生の御家庭はとても幸せそうですから、俺やこいつよりはずっとお幸せだったのでは?」
 愛原:「おかげさまでね。でも、そういうことじゃないんだ。公一伯父さんは覚えてるな?」
 高橋:「当たり前じゃないスか。まさか、アンブレラと繋がってたとは……」

 直接アンブレラと繋がっていたわけではないのだが、伯父さんが開発した化学肥料に日本アンブレラは目をつけ、伯父さんはそれを譲ってしまったのだ。
 最初は断ったと言っていたのだが、日本の捜査機関にしっかりバレてしまった。
 『あの時はアンブレラの悪事を知らなかったのじゃ!』とウソを付いていたが、後の捜査で、アンブレラの悪事を知っていて譲渡したことが判明し、善場主任の機関からは、共犯者として告発された。

 愛原:「その公一伯父さん、昔から小牛田(こごた)に住んでいたわけじゃなかったんだ。小牛田に住み始めたのは、今から凡そ20年くらい前だ。その前は、仙台市内に住んでいたんだよ」
 高橋:「そうなんですか」
 愛原:「昭和時代に造成されたニュータウンに家を買ってね。だけど、住むのに飽きたからって、小牛田に移り住んだんだよ」
 高橋:「その時から凄い人だったんですね」
 愛原:「ああ」
 高橋:「その夢の、どこが変な夢なんですか?」
 愛原:「その家にも仏間があったんだが、その仏壇を置くスペースの下の空間が隠し部屋だったって夢だ」
 高橋:「あれ?それって、小牛田の家のことじゃ?」
 愛原:「多分、その記憶とごっちゃになったんだろう。仙台の家でも、そういう隠し部屋があったって夢だ」
 高橋:「実際、どうだったんスか?」
 愛原:「あくまで子供の頃の記憶だが、色んな物が入っていたけど、普通の押入れって感じだったよ」
 高橋:「なんだ、そうっスか」
 リサ:「その隠し部屋に入った先生は、どうなったの?」
 高橋:「ゾンビに捕まって、食い殺される夢だよ。だから、嫌な夢だったんだ」
 高橋:「先生を襲うとはいい度胸ッスね、そのゾンビ!」

 高橋、ジャキッとマグナムを取り出した。

 高橋:「これで頭フッ飛ばしてやりましょう!」

 リサも第1形態に変化し、長くて鋭く尖った爪を立てた。

 リサ:「私がこの爪で引き裂いて殺してやるから、先生安心して」
 愛原:「だから夢の話だって言ってんだろ!」

 私はさっさとコーヒーを飲むと、席を立った。

 愛原:「とにかく、俺は先に事務所に行くから、後片付けと掃除よろしく」
 高橋:「はい」
 リサ:「分かった」
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“私立探偵 愛原学” 「深夜の帰宅」

2022-03-16 16:51:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日21:00.天候:晴 東京都港区新橋 新橋バス停→都営バス業10系統車内]

 東京空港警察署で高橋とパールの身元引受を行なった。
 いくら結果オーライ(?)とはいえ、ヤンチャが過ぎた2人に私は強い口調でキツく注意した。

 愛原:「成人として自制できない者に、保証人にはなれん!」

 と、預かっていた2人の婚姻届はその場で破り捨てた。

 高橋:「先生!申し訳ございませんでした!!」
 パール:「…………」

 高橋は土下座して謝って来たが、パールはそこまでではない。
 だが、さすがに私と目を合わせようとはしなかった。
 プライベートである為、さすがにパールはメイド服姿ではなかった。
 迷彩柄のジャンパーを着ていた。
 その後、新橋の事務所に戻るという善場主任の車に乗せてもらい、新橋へ。
 取りあえず、そこで腹ごしらえをして帰ることにした。
 そうしないと、空腹に耐えかねたリサが暴走しかねなかったからだ。

 善場:「詳しい話は後日にしましょう。月曜日、事務所にお伺いしても?」

 ということだったので、私は了承した。

 愛原:「最後のとうきょうスカイツリー行き、間に合った」

 夕食後は帰りの都営バスに乗る。
 今回は殆どバスにしか乗っていない。

 リサ:「この後は?」
 愛原:「深川車庫行きだけになる。つまり、豊洲辺りまでしか行かないので、菊川には帰れない」
 リサ:「そうなんだ」

 バスに乗り込んで、後ろの2人席に座った。
 さすがの高橋は小さくなっていたし、パールも無言だった。

〔「お待たせ致しました。とうきょうスカイツリー駅前行き、発車致します」〕

 バスの行き先表示はLEDだが、いつもの表示に対して、赤い枠が表示されている。
 これは最終便であることを表している。
 通常のとうきょうスカイツリー駅前行きとしては、これが最後だからそういう表示になっているのだ。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは前扉を閉めて、時間通りに発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは勝どき橋南詰、豊洲駅前、東京都現代美術館前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座六丁目、銀座六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は本所吾妻橋で、日蓮正宗本行寺と常泉寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前でお降りになると便利です。次は、銀座六丁目でございます〕

 リサ:「このバスもWi-Fi使える」
 愛原:「良かったな。普通の路線バスで、Wi-Fiが使えるってなかなか無いぞ」
 リサ:「うん」

 私もスマホのニュースを観た。
 速報で、全国指名手配を食らっていた白井伝三郎が交通事故で死亡したことが報じられている。
 『白井伝三郎容疑者、暴走車と衝突し、死亡!』『日本最後のマッドサイエンティスト、呆気ない死』『容疑者死亡!全容解明困難か?』など、大きな見出しである。

 リサ:「……あ」
 愛原:「どうした?」
 リサ:「白井が死んだってことは、“花子さん”の遺骨はどうするの?」
 愛原:「! そうだよな!?」

 白井の高校の同級生で、東京中央学園上野高校の旧校舎に“トイレの花子さん”として君臨していた幽霊。
 その正体は白井の同級生からのイジメを苦に自殺した女子生徒であったわけだが、遺骨は墓地に埋葬されていた。
 それが白井の手により盗み出され、“花子さん”の幽霊も消えてしまった。
 日本版リサ・トレヴァーのモデルになったと言われている。

 愛原:「本人が死んだから、有耶無耶……?」
 リサ:「えー、そんなのかわいそうだよ」
 愛原:「なー?」

 今、警察や善場主任の政府機関が、白井が乗っていた車を調べている。
 だが、車は爆発・炎上してしまった。
 それでどこまで分かるかどうか……。

 リサ:「善場さん、ずっと事務所にいるのかな?」
 愛原:「そうかもな。情報収集とかしなきゃいけないだろうから」

 大変だと思う。
 きっと、土日休み返上なのだろうな。

[同日21:44.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→ファミリーマート]

 バスはいつもの停留所に止まった。
 乗り換え無しで行けるというのは、バスの長所だろう。
 中扉から降りて、バスの進行方向に向かって歩く。

 高橋:「あ、先生。明日の朝飯の材料、まだ買ってないんスけど……」
 愛原:「そうなのか。じゃあ、コンビニで適当に見繕うか」

 菊川駅前の交差点の角にあるコンビニに入る。
 そこで高橋は、食パンとマーガリンと卵とベーコン、それと袋を開ければそのまま食べれる生野菜を買った。
 明日のメニュー、トーストとベーコンエッグ、生野菜で決まりだな。

 高橋:「先生、タバコもいいですか?」
 愛原:「いいよ。因みにビールとつまみはストックがあるから、今買わなくても大丈夫だ」
 高橋:「了解です」
 パール:「……このナプキンが使い易いですよ、リサ様?」
 リサ:「おー!」
 愛原:「……刑務所にいた時、ナプキンってどうしてた?」
 パール:「私は自弁で購入してました」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「あと、ファミチキとファミコロください」
 店員:「はい、ありがとうございます」
 愛原:「まだ食うのかよw」
 リサ:「お肉が足りなかった」
 愛原:「あ、そう」

 リサはパールに勧められた生理用品と食べ物を購入した。
 パールは生理用品と酒とタバコ。

 愛原:「じゃあ、帰るか」

 私達は買った物を手に、コンビニを後にした。

 リサ:「先生、明日の予定は?」
 愛原:「明日は日曜日だろ?特に無いが、白井のことが気になる。一応、事務所で待機していようかと思う」
 高橋:「なるほど。それはいいっスね」
 愛原:「善場主任にも、そう伝えておいたからな」

 そして、パールと別れ際、私は言った。

 愛原:「もう2度と警察の御厄介にならないように。分かったね?」
 パール:「かしこまりました」

 言葉遣いと深々と頭を下げる姿勢は良かったのだが、あまり言葉には感情が入っていなかった。
 大げさであるが、これならまだ土下座してきた高橋の方が良かったかも。
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“私立探偵 愛原学” 「白井伝三郎、突然の死!?」

2022-03-16 10:03:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日16:45.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 西武観光バス大宮羽田線車内]

 私達は急きょ、羽田空港近くの警察署に向かわなくてはならなかった。
 その為、大宮駅から羽田空港行きのリムジンバスに乗り換えた次第である。
 コロナ禍で乗客は少なく、車内には7~8人の乗客が乗っていただけだった。
 バスは途中まで、往路に乗った“けんちゃんバス”と同じルートを通る。

 リサ:「先生、Wi-Fi繋がった」
 愛原:「良かったな。これでネット使い放題だ」
 リサ:「うん」

 私もスマホを取り出して、Wi-Fiに繋げてみた。
 私のプランはパケット容量が大きいから良いのだが、リサの場合は小さい。
 その為、Wi-Fiが繋がるか否かは大きい。
 家や事務所ではWi-Fiを飛ばしているので、そこでも繋げている。
 と、そこへ善場主任からメールが届いた。

 善場:「今、埼玉県さいたま市におられますか?」

 とのこと。
 どうやら、GPSで私達の位置を確認したらしい。
 そこで私は正直に、ここにいる理由を答えた。
 すると、

 善場:「高橋助手のことについて、何か御存知ですか?」

 と、返って来た。
 え?まさかあいつ、善場主任にも身元引受人の指定をしたんじゃないだろうな?

 愛原:「はい。実は先ほど東京空港警察署から連絡があり、身元引受人としてこれから向かう所です。今、羽田空港行きのバス車内です」

 と、送信した。

 善場:「高橋助手が大田区内で事故を起こし、東京空港警察署の取り調べを受けた事は御存知だったのですね。事故の相手については、伺っていますか?」
 愛原:「いいえ、そこは何も聞いていません」
 善場:「それでは警察署で落ち合いましょう。私も今、警察署にいます。本来、事故で相手を死なせた場合は釈放などされるわけがないのですが、今回は特別ですので。それでは、失礼致します」
 愛原:「は?!」
 リサ:「なに?どうしたの?」

 事故で相手を死なせた!?
 どういうことだ!?
 え、なに?
 それじゃ、善場主任が警察に高橋を釈放するように言ったのか?
 事故で相手を殺しといて???
 さっぱり分からん。

[同日18:45.天候:晴 東京都大田区羽田空港3丁目 東京空港警察署]

 バスは第2ターミナルで降りた。
 ここからは徒歩で警察署に向かう。

 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「悪いな。まずは高橋と合流してからだ」
 リサ:「むー……」

 もう外は暗い。
 リサが腹を鳴らす度に、リサの瞳の色は金色に鈍く光る。
 そして、ようやく東京空港警察署に到着した。

 善場:「お疲れ様です。愛原所長」

 警察署のロビーでは、善場主任が微笑を浮かべていた。

 愛原:「うちの高橋が申し訳ありません」
 善場:「高橋助手にあっては警視庁的にはアウトでしょうが、当機関においては見事なファインプレーでした。その為、道路交通法違反だけとします」
 愛原:「はあ……。一体、高橋は何をやったんです?」
 善場:「スピード50キロオーバー、信号無視、一時停止不停止、通行区分逆走の上、正面衝突事故ですが?」

 おい、これ逮捕だろ!?
 ……あ、逮捕されてんのか。

 愛原:「でも、相手は死んだって……?」
 善場:「ええ、そうですよ。残念なことですが、できれば生きているうちに逮捕したかったですね」
 愛原:「一体、何の話なんですか?」
 善場:「高橋助手と正面衝突して死亡したのは、白井伝三郎である可能性が高いです」
 愛原:「え?ええーっ!?」
 リサ:「!」
 善場:「病院で死亡が確認されましたが、身体的特徴が驚くほどあの白井伝三郎に酷似していることのことです」
 愛原:「車に乗っていたのは、白井1人ですか?」
 善場:「いえ。運転者が別にいました。恐らく、白井の助手とか従者でしょう。彼もまた死亡ですが、救急搬送直前にゾンビ化しました。高橋助手が手持ちのマグナムで射殺しましたが」

 ゾンビに車の運転をさせていたのか?
 いや……。
 感染無症状であっても、死亡後にウィルスに侵蝕され、ゾンビ化することはあるという。
 それかな。

 愛原:「白井は近くの病院にいるんですか?」
 善場:「もっと厳密に本人確認をする必要がありますが、そうです。あと、彼がどうしてあそこにいて、どこに向かおうとしていたのか、ですね。これは警察と、こちらの機関で調べています」

 それにしても、呆気ない幕切れだったな。
 あれだけ捜しても見つからなかった白井が、こういった形で死亡するとは……。
 天網恢恢疎にして漏らさず、とはこういうことを言うのか。
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