報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家を訪問」

2022-03-22 20:54:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日13:42.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 私達を乗せた宇都宮線電車は、順調に大宮駅に接近した。

〔まもなく大宮、大宮。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が広く開いている所がありますので、足元にご注意ください〕

 愛原:「そろそろ到着だな。降りる準備をしよう」
 リサ:「うん」

 2階建てグリーン車の1階席と2階席は天井が低い為、荷棚が無い。
 なので、荷物は床の上に置くことになる。
 リサはバッグを床に置いて、足の間に挟むようにして置いていた。

〔「今度の高崎線下り、特別快速、高崎行きは、11番線から13時51分。その後、普通列車、高崎行きは、8番線から13時55分。川越線、各駅停車、川越行きは、21番線から13時51分の発車です。……」〕

 愛原:「なあ、リサ」
 リサ:「なに?」
 愛原:「よく、女子中高生が電車で立つ時に、鞄を床に置いて足の間に挟んだりするだろう?」
 リサ:「あるね。わたしもよくやるよ。サイトーは御嬢様だから、『そんな床に置くなんて汚い』なんて言ってるけど」
 愛原:「だろうな」
 リサ:「それがどうしたの?」
 愛原:「いや、その鞄にカメラを仕掛ければ、いかにも『JC・JKスカート盗撮』とかできるよなぁ……なんて」
 リサ:「! 先生、わたしので良かったら、カメラ貸してくれれば、それやってあげる!」
 愛原:「いや、そうじゃないんだ。そう考えると、まさかとは思うが、ワザとやってて金を稼ぐ悪いコなんかいるのかなぁって思うんだ」
 リサ:「あー……」

 リサは素直には答えなかった。
 答えなかったということは……。

 リサ:「まあ、金に汚いヤツはどこにでもいるから」
 愛原:「リサの学校にもいるのか!?」
 リサ:「お察しください」
 愛原:「こら!」

 そして、電車が駅に到着する。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。9番線の電車は13時43分発、宇都宮線の普通列車、宇都宮行きです。終点の宇都宮まで、各駅に止まります」〕

 私達は電車を降りた。
 さすがグリーン車は恵まれていて、車両のすぐ前が階段である。
 ……できれば、エスカレーターかエレベーターがあった方がいいな。

 JK1:「この人、痴漢です!!」
 愛原:「ん?」
 リサ:「?」

 階段を昇ろうとしたら、何か騒ぎが起きた。
 隣の6号車はロングシートの普通車であるが、そこから降りて来たJK3人が気弱そうなサラリーマン風の男性を捕まえて降りて来た。

 リーマン:「そ、そんな……わ、私は何も……。だいいち、こんな空いてる車両で痴漢なんて……」
 JK2:「うそ!今さっき降りる時に私のお尻触りましたよね!?」
 リーマン:「そ、それは、キミ達の方から近づいてきたんじゃないか……」
 JK3:「オジさん、ケーサツに来てもらうからね!」
 リーマン:「そ、そんな……警察は……」

 どうやら痴漢騒ぎらしい。
 しかし、サラリーマンの言う通り、土曜日の午後の下り電車で、痴漢ができるほど混んでいるだろうか?
 それとも、グリーン車の前後は混みやすいと聞いていたので、そうである6号車は混んでいたのだろうか?
 それに、JK達は制服姿だったが、その制服は……リサが着ているものに酷似していた。

 リサ:「あれは5組の菱川達!」
 愛原:「知ってるのか?クラスが違うのに……」
 リサ:「さっきわたしが話した、『金に汚い奴ら』だよ。クラスは違っても、そんな噂が聞こえるほどだってこと」
 愛原:「最近のJKは怖いな……」
 リサ:「今も昔も、だよ」
 愛原:「えっ?」
 リサ:「……って、“花子さん”が言ってた。ちょっと行って来る」
 愛原:「え?おい……」

 リサは騒動の現場に向かった。

 菱川:「いいからオッサン、さっさと来な!示談にしてやっからよ!」
 リーマン:「か、カンベンしてください……」
 愛原:「菱川、また金に汚いことやってるの!」
 菱川:「あぁ?……あっ!オマエは3組の愛原!」
 JK2:「誰?」
 菱川:「3組の『終焉の始まり』、愛原リサだよ!」
 JK3:「ええっ!?あいつが!?」

 リサの通り名の由来は、“リサのテーマ”のモデルが“終焉の始まり”という曲名だからである。
 https://www.youtube.com/watch?v=BayW7aXI0zI

 リサ:「また痴漢冤罪で稼いでるの?」
 菱川:「またとは何!?」
 リサ:「この前は池袋駅でも同じことやってなかったっけ?」
 菱川:「はあ!?」
 リサ:「更にその前は、秋葉原駅でもやったんだって?確か、渋谷駅でもやったって聞いてるけど?」
 JK2:「ちょっ……!何でコイツ知ってんの!?」
 菱川:「バカ!黙ってろ!」
 JK2:「あっ……」
 愛原:「あんた、今のうち逃げろ!」
 リーマン:「それでも僕はやってましぇーん!」
 菱川:「愛原!後で覚えてろよ!」
 愛原:「『終焉の始まり』を直に体験したい?」

 痴漢冤罪JKグループは立ち去った。

 愛原:「よくやったと褒めたいが、大丈夫か?ああいうのは、必ず復讐してくるタイプだろ?」
 リサ:「先生、わたしを誰だと思ってるの?日本版リサ・トレヴァー『2番』だよ?」
 愛原:「わ、分かっているが、彼女らをゾンビにしてはいかんぞ?もちろん、食い殺してもダメだ」
 リサ:「分かってるよ。早く行こう」

 私達は階段を昇った。

[同日15:15.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 駅前のタクシー乗り場からタクシーに乗って、斉藤家に向かう。
 タクシーとしてはあまり乗り心地の評判は良くない、商用バンタイプのタクシーだが、贅沢は言っていられない。
 それで、斉藤家の正門前に着けてもらう。
 この前バスで来た時は、わざわざバス停まで迎えに来ていた絵恋さんも、さすがにタクシーでは迎えに来ないか。
 私がタクシーチケットで料金を払い、後から降りると、既にリサは門扉の横のインターホンを押していた。

 ダイヤモンド:「いらっしゃいませ、愛原様」
 サファイア:「お待ちしておりました。どうぞ、お上がりくださいませ」
 オパール:「絵恋御嬢様も、首を長くしてお待ちしておりました」
 リサ:「! サイトー、いつの間にBOWになったの!?首を長く伸ばせるの!?」
 愛原:「ンなワケない。あくまでも、比喩だよ」

 すると、バタバタと絵恋さんが家の奥から走ってきた。

 絵恋:「リサさん!?」
 リサ:「サイトー、また来た。歓迎よろしく」
 絵恋:「もちろんよ!なに!?絵恋さん、何で来たの!?」
 リサ:「何って、タクシーだけど?」
 絵恋:「タクシー!?おかしいわね。黒い車、全てチェックしてたけど、タクシーなんて……」
 愛原:「ああ、そうか。いやね、絵恋さん、今日は、大宮のタクシーにしては珍しく、黄色い車で来たんだ」

 確かに大宮駅の東西で客待ちしているタクシーの、9割以上は黒塗りである。
 残り1割以下に、シルバーやイエローがある程度だ。

 絵恋:「そ、そうだったんですか」
 リサ:「サイトー、ゴメン」
 絵恋:「い、いいのよ」

 それより絵恋さんは、どうやってチェックしていたのだろう?

 リサ:「それよりサイトー、話がある」
 絵恋:「な、なに?ケッコンの話なら……」
 リサ:「違う。5組の金の亡者、菱川達のことだ」
 絵恋:「ああ。世の中、金が全てで、金で買えない物は無いって本気で言ってる人達だったっけ?それがどうしたの?」

 リサは手短に、大宮駅であったことを話した。
 すると絵恋さん、サッと表情が変わる。

 絵恋:「へぇ~……。リサ様に、よくもまぁケンカ売ってくれたわねぇ……」
 愛原:「リサ……様!?」
 リサ:「サイトーの金の力で、あいつらを痛い目に遭わせてほしい。報酬は『一晩のお付き合い』」
 絵恋:「リサ様の御命令!お任せを!」

 絵恋さんは自分のスマホを取り出した。
 そして、どこかに連絡し始めた。
 わ、私は知らんぞ。
 最近のJKは怖いねぇ……。
コメント
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