[2月26日15:35.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 上落合八丁目バス停→西武バス大38系統車内]
帰りのバスの時間が迫ってきたので、私達は帰ることにした。
斉藤社長はすんなり私を解放してくれたが、問題は娘の方。
リサと離れるのが嫌で、何度も引き留めようとしたくらいだ。
最後には父親の斉藤社長がガツンと言ってくれたおかげで、何とか家から出ることができた。
これで、親子関係にヒビが入らなければいいが……。
リサ:「サイトー、『お父さんから愛されてない』なんて言ってた」
愛原:「そんなことないよ。斉藤社長も、絵恋さんのことは心配してるぞ?」
リサ:「うん。だから、ただの反抗期だと思う」
リサも見た目は反抗期の年齢なのに、そういう所は実年齢なんだな。
愛原:「……なあ。まさかと思うけど、『リサさんと引き離したお父さんが憎い!殺してやる!』ってなったらどうする?」
リサ:「うーん……わたしに言われても……。サイトーのお父さんの死体は、わたしが食べて始末する?」
愛原:「オマエに聞いた俺が間違ってたよ」
リサ:「んん?」
愛原:「まさかと思うけど、『止めなかった愛原先生も悪いわ!殺す!』ってなったらどうしよう?」
リサ:「え?だったら、わたしが全力で食い殺すに決まってるじゃん。何言ってるの?」
愛原:「ダメだ。絵恋さんが暴走すると、『流血の惨を見る事、必至であります』」
リサ:「そんなわたしにできることは?」
愛原:「絵恋さんが暴走しないよう、しっかり監視してくれ」
リサ:「わかった」
バス停でバスを待っていると、東の方から1台の路線バスがやってきた。
新型の中型バスだ。
免許維持路線である為か、中扉から乗っても他に乗客はいなかった。
それでも大手のバス会社なので、ICカードは使える。
バスに乗り込むと、後ろの席に座った。
〔発車します。お掴まりください。発車します〕
バスは県道の上を走り出した。
〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は上小小学校、上小小学校。……〕
リサは窓側に座り、景色を見たりスマホでLINEをやっていたりする。
早速、絵恋さんからLINEが来ているらしい。
私は斉藤社長とのやり取りを思い出していた。
斉藤社長が、今年度いっぱいで大日本製薬の代表取締役社長の椅子から降りるのは前々から言われている通り。
来年度からは、ダイニチグループの別の関連会社の社長の椅子に座るらしい。
どこの会社かまではまだ公表されていないのだが、一応私には打ち明けてくれた。
ダイニチグループの1つ、大日本エージェンシー。
元々はダイニチコーポレーション総務部調査課が分社、独立したもの。
簡単に言えば、私の商売敵とも言える。
もちろん、大手には大手の、私達のような零細には零細の仕事があるのだが。
元々世界探偵協会日本支部の役員もやっていた斉藤社長だったから、そういう業種に就くのは自然と言えば自然である。
『私が行くからには、規模を拡大させますよ』と、豪語していたが……。
『ますます愛原さんには、仕事をお願いすることになるかもですね』と言っていたのは、大手探偵社から二次、三次の下請けになってほしいということか。
[同日15:55.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 大宮駅西口バス停]
〔ピン♪ポン♪パーン♪ お待たせ致しました。まもなく終点、大宮駅西口、終点、大宮駅西口。【中略】毎度、西武バスをご利用頂きまして、ありがとうございました。どなた様も、忘れ物の無いよう、ご注意ください。……〕
バスは途中の渋滞にハマることもなく、無事に大宮駅西口に着いた。
到着後、回送になるからなのかは分からないが、ロータリーには入らず、手前の降車場に停車する。
目の前にはパチンコ屋があるので、ちょっと一発打ってみたい衝動に駆られるが、それを打ち消すものがあった。
運転手:「はい、ありがとうございました」
降りる時は慣れた様子でICカードを使い、運賃を払うリサ。
愛原:「うーむ……。久しぶりにマリンちゃんを見たくなるなぁ……」
リサ:「私が大きくなったら、マリンちゃんのコスプレをしてあげるから!」
愛原:「確かに、今のリサはどちらかというと、ウリンだもんな」
パチンコ台でパチンコが禁止されている15歳の女の子が登場して良いのかというツッコミがあるが、ウリンはアニメ版で初登場したアニメオリジナルキャラだったので。
アニメから原作のパチンコ台に逆輸入されたキャラだったのである。
アニメ版では、パチンコのことは一切触れられていないので。
リサ:「ツーサイドアップにする?」
リサはウリンの絵を見て言った。
愛原:「似合うとは思うけど、リサはいつものショートボブの方がいいな」
同じような髪形でも、善場主任の場合は性格が出ているのか、前髪から後ろ髪まで、キチンと直毛で切り揃えられている。
リサの場合は、多少のウェーブが入っている。
リサ:「そーお?サイトーみたいなセミロングのウェーブとか……」
愛原:「いや、いいよ。それより、マジで一発打っていきたいな……」
と、そこへ私のスマホに着信が入った。
愛原:「はいはい」
取り出してみて、画面を見ると、東京03から始まってて、最後の番号が110になっている。
これはつまり、都内の警察署から掛かって来たということだ。
愛原:「な、何だ?」
私は電話に出た。
愛原:「も、もしもし?」
警察官:「もしもし。愛原さんのケータイでよろしいですか?」
愛原:「あ、はい」
警察官:「愛原学さんですね?」
愛原:「はい、愛原学です」
私は鸚鵡返しに答えた。
警察官:「私は警視庁東京空港警察署、交通課の……」
私は電話の向こうの警察官の話を聞いて、溜め息が出そうになった。
何でも高橋とパールが羽田空港近くの道路で飛ばし過ぎて、警察に捕まったらしい。
警察官:「当署の管内で危険運転行為を摘発しましたので、取り調べの最中です。それで、身元引受人に愛原学さんを指定したのですが、今から署まで来れますか?」
愛原:「……分かりました。今から参ります」
高橋正義~!オマエ、何やってんだよ!?
あと、パールも!
車デートの最中で警察に交通違反を咎められ、キップを切られるというのはたまにあることだ。
しかし、逮捕まで行くとは……。
警察官の話では、相当なスピード違反を現認したので停止命令を出したところ、それを無視して逃走したらしい。
で、逃走中に衝突事故を起こしたと。
高橋とパールにケガは無かったようだが、相手が【お察しください】。
愛原:「リサ、これから別のバスに乗るぞ」
リサ:「どこに連れて行ってくれるの?」
愛原:「羽田空港」
リサ:「飛行機に乗るの!?」
愛原:「……の、近くの警察署。タイーホされた高橋とパールを迎えに行く」
リサ:「ええーっ!?」
私達は降車場の反対側、そごうの前の羽田空港行きリムジンバスの乗り場に向かった。
それにしても、身元引受人が条件とはいえ、逮捕されても即日で釈放されるということは……どういうことだ?
相手もケガをしなかったということか?
愛原:「次のバスは16時45分か。少し時間あるな。……あそこのドトールで、少し時間潰すか」
リサ:「うん。……スイーツも頼んでいい?」
愛原:「いいよ」
リサ:「やった!それじゃ、行こう」
だが、この出来事について、後ほど意外且つ衝撃的な事実を知ることになる。
帰りのバスの時間が迫ってきたので、私達は帰ることにした。
斉藤社長はすんなり私を解放してくれたが、問題は娘の方。
リサと離れるのが嫌で、何度も引き留めようとしたくらいだ。
最後には父親の斉藤社長がガツンと言ってくれたおかげで、何とか家から出ることができた。
これで、親子関係にヒビが入らなければいいが……。
リサ:「サイトー、『お父さんから愛されてない』なんて言ってた」
愛原:「そんなことないよ。斉藤社長も、絵恋さんのことは心配してるぞ?」
リサ:「うん。だから、ただの反抗期だと思う」
リサも見た目は反抗期の年齢なのに、そういう所は実年齢なんだな。
愛原:「……なあ。まさかと思うけど、『リサさんと引き離したお父さんが憎い!殺してやる!』ってなったらどうする?」
リサ:「うーん……わたしに言われても……。サイトーのお父さんの死体は、わたしが食べて始末する?」
愛原:「オマエに聞いた俺が間違ってたよ」
リサ:「んん?」
愛原:「まさかと思うけど、『止めなかった愛原先生も悪いわ!殺す!』ってなったらどうしよう?」
リサ:「え?だったら、わたしが全力で食い殺すに決まってるじゃん。何言ってるの?」
愛原:「ダメだ。絵恋さんが暴走すると、『流血の惨を見る事、必至であります』」
リサ:「そんなわたしにできることは?」
愛原:「絵恋さんが暴走しないよう、しっかり監視してくれ」
リサ:「わかった」
バス停でバスを待っていると、東の方から1台の路線バスがやってきた。
新型の中型バスだ。
免許維持路線である為か、中扉から乗っても他に乗客はいなかった。
それでも大手のバス会社なので、ICカードは使える。
バスに乗り込むと、後ろの席に座った。
〔発車します。お掴まりください。発車します〕
バスは県道の上を走り出した。
〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は上小小学校、上小小学校。……〕
リサは窓側に座り、景色を見たりスマホでLINEをやっていたりする。
早速、絵恋さんからLINEが来ているらしい。
私は斉藤社長とのやり取りを思い出していた。
斉藤社長が、今年度いっぱいで大日本製薬の代表取締役社長の椅子から降りるのは前々から言われている通り。
来年度からは、ダイニチグループの別の関連会社の社長の椅子に座るらしい。
どこの会社かまではまだ公表されていないのだが、一応私には打ち明けてくれた。
ダイニチグループの1つ、大日本エージェンシー。
元々はダイニチコーポレーション総務部調査課が分社、独立したもの。
簡単に言えば、私の商売敵とも言える。
もちろん、大手には大手の、私達のような零細には零細の仕事があるのだが。
元々世界探偵協会日本支部の役員もやっていた斉藤社長だったから、そういう業種に就くのは自然と言えば自然である。
『私が行くからには、規模を拡大させますよ』と、豪語していたが……。
『ますます愛原さんには、仕事をお願いすることになるかもですね』と言っていたのは、大手探偵社から二次、三次の下請けになってほしいということか。
[同日15:55.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 大宮駅西口バス停]
〔ピン♪ポン♪パーン♪ お待たせ致しました。まもなく終点、大宮駅西口、終点、大宮駅西口。【中略】毎度、西武バスをご利用頂きまして、ありがとうございました。どなた様も、忘れ物の無いよう、ご注意ください。……〕
バスは途中の渋滞にハマることもなく、無事に大宮駅西口に着いた。
到着後、回送になるからなのかは分からないが、ロータリーには入らず、手前の降車場に停車する。
目の前にはパチンコ屋があるので、ちょっと一発打ってみたい衝動に駆られるが、それを打ち消すものがあった。
運転手:「はい、ありがとうございました」
降りる時は慣れた様子でICカードを使い、運賃を払うリサ。
愛原:「うーむ……。久しぶりにマリンちゃんを見たくなるなぁ……」
リサ:「私が大きくなったら、マリンちゃんのコスプレをしてあげるから!」
愛原:「確かに、今のリサはどちらかというと、ウリンだもんな」
パチンコ台でパチンコが禁止されている15歳の女の子が登場して良いのかというツッコミがあるが、ウリンはアニメ版で初登場したアニメオリジナルキャラだったので。
アニメから原作のパチンコ台に逆輸入されたキャラだったのである。
アニメ版では、パチンコのことは一切触れられていないので。
リサ:「ツーサイドアップにする?」
リサはウリンの絵を見て言った。
愛原:「似合うとは思うけど、リサはいつものショートボブの方がいいな」
同じような髪形でも、善場主任の場合は性格が出ているのか、前髪から後ろ髪まで、キチンと直毛で切り揃えられている。
リサの場合は、多少のウェーブが入っている。
リサ:「そーお?サイトーみたいなセミロングのウェーブとか……」
愛原:「いや、いいよ。それより、マジで一発打っていきたいな……」
と、そこへ私のスマホに着信が入った。
愛原:「はいはい」
取り出してみて、画面を見ると、東京03から始まってて、最後の番号が110になっている。
これはつまり、都内の警察署から掛かって来たということだ。
愛原:「な、何だ?」
私は電話に出た。
愛原:「も、もしもし?」
警察官:「もしもし。愛原さんのケータイでよろしいですか?」
愛原:「あ、はい」
警察官:「愛原学さんですね?」
愛原:「はい、愛原学です」
私は鸚鵡返しに答えた。
警察官:「私は警視庁東京空港警察署、交通課の……」
私は電話の向こうの警察官の話を聞いて、溜め息が出そうになった。
何でも高橋とパールが羽田空港近くの道路で飛ばし過ぎて、警察に捕まったらしい。
警察官:「当署の管内で危険運転行為を摘発しましたので、取り調べの最中です。それで、身元引受人に愛原学さんを指定したのですが、今から署まで来れますか?」
愛原:「……分かりました。今から参ります」
高橋正義~!オマエ、何やってんだよ!?
あと、パールも!
車デートの最中で警察に交通違反を咎められ、キップを切られるというのはたまにあることだ。
しかし、逮捕まで行くとは……。
警察官の話では、相当なスピード違反を現認したので停止命令を出したところ、それを無視して逃走したらしい。
で、逃走中に衝突事故を起こしたと。
高橋とパールにケガは無かったようだが、相手が【お察しください】。
愛原:「リサ、これから別のバスに乗るぞ」
リサ:「どこに連れて行ってくれるの?」
愛原:「羽田空港」
リサ:「飛行機に乗るの!?」
愛原:「……の、近くの警察署。タイーホされた高橋とパールを迎えに行く」
リサ:「ええーっ!?」
私達は降車場の反対側、そごうの前の羽田空港行きリムジンバスの乗り場に向かった。
それにしても、身元引受人が条件とはいえ、逮捕されても即日で釈放されるということは……どういうことだ?
相手もケガをしなかったということか?
愛原:「次のバスは16時45分か。少し時間あるな。……あそこのドトールで、少し時間潰すか」
リサ:「うん。……スイーツも頼んでいい?」
愛原:「いいよ」
リサ:「やった!それじゃ、行こう」
だが、この出来事について、後ほど意外且つ衝撃的な事実を知ることになる。