報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「お笑いテロ組織ヤング・ホーク団」

2022-03-27 20:09:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日10:30.天候:晴 東北地方某所上空 某航空会社旅客機内]

 首都圏から北海道に向かう、とある国内線旅客機。
 そのビジネスクラスに着席しているのは、斉藤秀樹。
 エコノミークラスよりも大柄な座席に座り、彼は手帳に何かを書き込んでいた。

 斉藤秀樹:(3月6日10時30分。東北地方○○県上空。○×航空○△□便。私は交通の選択肢を間違えたようだ。どうやら、私の命運はここで尽きたらしい。何故なら……)
 テロリストA:「おい、お前!何をしている!?両手を頭に上げろと言っただろ!」

 覆面をしたテロリストAが、ショットガンを秀樹の頭に突き付けた。

 秀樹:「ぐ……!どうせ最期だろうから、今から手記を書いているのだ。悪いか?」
 テロリストA:「それは閣下の許可を得ていないからダメだ!」
 秀樹:「閣下?閣下とは……?」

 その時、ガチャリと近くのトイレのドアが開けられた。

 ジャック・シュラ・カッパー:「ふー。スッキリスッキリ!快食快便で功徳~~~~~!」
 テロリストA:「カッパ閣下!」

 パーン!(シュラ・カッパーが発砲した音)

 シュラ・カッパー:「なぁんですって~?今、人のこと『修羅河童』と言いましたね?怨嫉謗法は即地獄行きですよ?我が総統、ダイ・サーク様の教えであります!」
 テロリストA:「ち、違います!私は、カッパー閣下と申し上げたのです!」
 シュラ・カッパー:「極めて単純な事ですが、以後慎みなさいね。それより、乗客の皆様に御挨拶をせねば」

 シュラ・カッパー、機内放送のマイクを取る。

 シュラ・カッパー:「あっ、あー!えー、御乗客の皆様、こんにちは。私達は世界平和を目指す正義の使者、ヤング・ホーク団でございます。私はリーダーのジャック・シュラ・カッパーと申します。以後、お見知りおきを」
 秀樹:(ハイジャック団の団長の名前がジャック……w)
 テロリストA:「おい、キサマ!何を笑っている!?」

 テロリストA、わざと秀樹の前でショットガンをリロードしてみせる。

 秀樹:「わ、笑っていませんよ。それより、あなた達は何が目的なのですか?」
 テロリストA:「今、これから閣下が申される!黙って聞け!」
 シュラ・カッパー:「当機は只今より、ロシアのウラジオストクへと参ります。皆様はロシアのウクライナ侵攻を御存知ですね?知らないとは言わせませんよ。しかし、これは陰謀なのです。私達は正義の使者として、この陰謀を止めに行くのであります!ですので皆様には、その片棒を担いで頂きたいのであります!」
 乗客A:「何を勝手なことを……」
 乗客B:「狂っている……」

 パン!パーン!

 乗客A:「ぎゃっ……!」
 乗客B:「!!!」
 乗客C:「きゃあああああっ!!」

 乗客AとBの頭をテロリスト達が撃ち抜いた。
 機内に轟く銃声と叫喚。

 シュラ・カッパー:「御協力頂けない場合……残念ですが、先に堕獄して頂くことになります。当然です。怨嫉謗法は厳に慎まなくてはなりません。それができない人は地獄に堕ちる。極めて単純なことですね」
 秀樹:「まさか、最初の銃声は……?」
 テロリストA:「そうさ。俺達がガンコ機長はもちろん、スッチーも全員殺したんだ。分かってるな?」
 秀樹:「くっ……!」
 シュラ・カッパー:「我々の信念に、皆様の御協力は不可欠なのであります!なに、何も難しいことではございません。皆様はただ、静かにウラジオストクに着くまで、おとなしく着席していて下さればそれで良いのです。それでは皆様が退屈なさらぬよう、功徳を語ります。【何か、ワックスが売れたとかクソダリィのでカット】功徳~~~~~~~!!!」

 シラける乗客達。
 と、そこへ……。

 秀樹:「ん、何だ?操縦席が騒がしくないか?」

 ビジネスクラスはコックピットに近い位置にある為、秀樹はすぐに気づいた。

 テロリストA:「操縦席、操縦席!何があった?応答しろ!操縦席!」

 テロリストAが持っていた無線機で操縦席とコンタクトを取る。
 機長も副操縦士もテロリスト達が殺したのだから、代わりにそいつらが操縦しているはずだ。

 テロリストB:「すいません、閣下!さっきの乱気流の揺れで、ジュースやら弁当やらコックピットにぶちまけてしまって、ショートして操縦不能になりました」
 テロリストC:「てへてへ」
 シュラ・かっぱー:「なにぃぃっ!?だからあれほど操縦席では飲食禁止って、事前の作戦会議で言ったでしょーが!」
 テロリストB:「このままでは墜落します。ちょうど自分ら、パラシュート持ってるんで、これで脱出させて頂きます!」
 テロリストC:「さ、さいなら~!」
 シュラ・カッパー:「あっ、こら!待ちんしゃい!」
 秀樹:「お、おいおい、どうなってるんだ?仲間割れか!?」
 テロリストA:「あのバカ共め!おい、他に操縦できる奴はいないのか!?おい!」

 しかし、応答する仲間はいなかった。

 シュラ・カッパー:「やだよぉ!死にたくないよぉ!助けてよぉ!カヨ~~~~~っ!」
 秀樹:「あ、あいつ、日本人妻でもいるのか?」
 テロリストA:「確か、2番目だか3番目の妻だったかな……」
 秀樹:「はあ!?なに1人で何回も結婚してるんだ!私なんか1人の妻だけなんだぞ!?」
 テロリストA:「そ、そんなこと俺に言われても……。俺なんか、未だに独身だぜ?」
 秀樹:「そ、それは悪かった。そ、それより、何とかしないと……」
 テロリストA:「何とかって、アンタにできるのかよ?」
 秀樹:「一応、セスナまでなら操縦できるが……」
 テロリストA:「セスナじゃ無理だろ!いいから、俺が許可してやるから、遺書でも書いてろ!」
 秀樹:「諦めるはまだ早い!」

 秀樹はシートベルトを外した。
 そして、うずくまってメソメソ泣いているシュラ・カッパーの首根っこを掴んで立たせた。

 秀樹:「おい、貴様!」
 シュラ・カッパー:「は、はいぃぃっ!?」
 秀樹:「お前、リーダーなんだろ!?閣下なんだろ!?偉いんだろ!?だったら、こんな所でメソメソするなっ!」
 シュラ・カッパー:「で、でもォ……。ワシ、操縦免許なんて持ってないしぃ……」
 秀樹:「免許が無いからって諦めるのか!いいからコックピットまで来い!」
 シュラ・カッパー:「は、はい……」

 秀樹、無理やりシュラ・カッパーをコックピットに連れて行く。
 そして、他にも部下を呼ばせて応急処置をさせた。

 シュラ・カッパー:「い、一応、取りあえず応急処置は済んだが……。こんなんで本当に上手く行くのか?」
 秀樹:「大丈夫だ。もしダメなら、皆一斉に地獄行きだ」
 シュラ・カッパー:「そ、そんなぁ!よよよ……!」
 秀樹:「いちいちメソメソすんな!もう一度カヨに会いたいんだろ!?だったら、生き延びることを考えろ!」
 シュラ・カッパー:「そ、そうだ。ワシには帰りを待っているカヨとアミバがおるんじゃった」
 秀樹:「私にも家族がいる。一緒に生き延びよう!」
 シュラ・カッパー:「で、どうすればいい?」
 秀樹:「私が合図をするから、それと同時に操縦桿を思いっ切り引くんだ。いいな?」
 シュラ・カッパー:「了解した……」

 飛行機はぐんぐん高度を下げて行き、ついには地面が見えて来た。
 その地面が日本なのかロシアなのか、はたまた実は中国なのか北朝鮮なのか、それは分からない。

 秀樹:「今だ!操縦桿を引けーっ!」
 シュラ・カッパー:「ぐおお……!だ、ダメだ……!凄く…カタいです……!」
 秀樹:「諦めるな!カヨとアミバの顔を思いだせ!」
 シュラ・カッパー:「か、カヨ!うぉぉぉぉ!こなくそぉ……!!」

 地面が目の前に迫って来た。

 秀樹:「うわっ?!さすがにやっぱりダメか!!」

 地面に大きな衝撃と爆発音が響いた。
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“私立探偵 愛原学” 「上野東京ライン1853E列車」

2022-03-27 16:24:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[同日09:29.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→上野東京ライン1853E列車5号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の6番線の列車は、9時30分発、上野東京ライン、普通、品川行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 大宮駅の券売機でグリーン券を買い、コンコースに入る。
 ホームに行く前にリサがトイレに行きたがったので、そこに立ち寄った。
 それからホームに向かったので、バスを降りてから電車に乗るまでの間にブランクが発生した由。

〔まもなく6番線に、上野東京ライン、普通、品川行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 グリーン車が来る辺りで電車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
 そして、電車がやってくる。
 往路と違い、今度は新型のE233系電車であるが、グリーン車の構造はE231系の物と大して変わらない。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。6番線の電車は上野東京ライン回り、普通列車の品川行きです」〕

 車内に入る。
 2階席ではまるっと空いている席が無かったので、平屋席に向かった。
 ドアと連結器の間にある部分である。
 普通車と同じ高さにある為、荷棚もある。
 但し、台車の外側部分に位置する為、揺れは大きい(連結器付近が大きく揺れるのはこの為)。
 進行方向左側に座る。
 私は1人で座り、その後ろに2人の少女が座った。

〔6番線の上野東京ライン、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 ホームから発車メロディが聞こえてくる。
 ドアチャイムの音色は、普通車もグリーン車も同じ。
 ただ、通勤電車と比べて、閉まる時にガチャンと大きい音がする。
 そして、スーッと走り出す。

〔この電車は上野東京ライン、普通、品川行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 リサ:「来る時に車内販売で買ったレモンドーナツっての、美味しかった」
 絵恋:「そうなの。何だか酸っぱそうね」
 リサ:「甘酸っぱい」
 絵恋:「甘酸っぱかったの。それなら、ちょっと食べてみたいわね」
 リサ:「車内販売で来る」
 愛原:「多分、さいたま新都心駅を出てからだな」

 と、私は言った。
 恐らく駅間距離が短い為、それが長くなるさいたま新都心駅を出てから、アテンダントが回って来るものと思われる。

 愛原:「ん?」

 またもや善場主任からのメールだ。
 それによると、斉藤社長は何時頃出て行ったかということだ。

 愛原:「絵恋さん、お父さんは何時頃出て行ったか分かるかな?」
 絵恋:「そんなの知りませんよ。私も、朝起きてからメイドに言われたんです」
 愛原:「分かった」

 私は今の絵恋さんの回答を、そのまま返信した。
 善場主任は、『分かりました。ありがとうございます』とのことだ。

[同日10:06.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 それから電車内では、善場主任からの連絡は無かった。

〔まもなく東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕

 ここから帰るには都営バスに乗り換えれば楽である。
 だが、ネットで調べたところ、乗り換え時間はギリギリだ。
 走れば間に合うといった感じ。
 1時間に1~2本しかない、都営バスの中でも屈指のローカル線だから、乗り換えは実は不便だったりするのだ。
 すると、また善場主任からメールが来た。

 善場:「GPSでは都内に戻られたようですが、具体的にはどの辺りにいらっしゃいますか?」

 とのことだ。
 そこで私は、今は電車の中で、まもなく東京駅に着くという旨の返信をした。
 すると、『それでは東京駅構内のカフェで落ち合えませんか?』とのことだ。

 愛原:「キミ達、善場主任が東京駅で会いたいと言ってるんだが、いいかい?」
 リサ:「善場さんが!?……な、なに?わたし、何もしてないよ?」
 愛原:「違う違う。多分、斉藤社長のことだ。だから、むしろ絵恋さんと話がしたいんじゃないのかな?」
 絵恋:「でも、私は父の行き先なんて知りませんよ?」
 愛原:「それ以外にも聞きたいことがあるのかもしれない。とにかく、いいね?」
 リサ:「分かった」
 絵恋:「分かりました」

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます〕

 私達は電車を降りた。
 そして、そのまま改札口へと向かう。
 そこから向かったのは、日本橋口の方。
 八重洲側の改札口を出て北に向かうと、それはある。
 団体客が待ち合わせなどに使う広場があるが、この辺りは丸の内中央ビルというビルの中に当たる。
 そこの2階にスターバックスコーヒーがあり、そこで待ち合わせることになった。

 愛原:「俺が席を確保しているから、先に買ってきていいよ」
 リサ:「はーい」

 私はテーブル席を確保し、リサ達に先に買いに行かせた。
 すると……。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です」

 エスカレーターを昇って、善場主任がやってきた。

 善場:「お休みのところ、真に申し訳ありません」
 愛原:「いえいえ、善場主任こそ、週末なのに大変ですね」
 善場:「いえ。……あのコ達は、先に買いに行ってるのですね?」
 愛原:「そうです」
 善場:「では、私も買って来ましょう。所長はいつものブレンドコーヒーでいいですか?」
 愛原:「はい。……って、いえいえ!コーヒー代くらい、自分で出しますよ!?」
 善場:「お時間を取らせてしまったので、そのお詫びです。お気になさらないでください」

 いつもはポーカーフェイスの善場主任が微笑を浮かべた。
 仕方が無いので、ここは御厚意に甘えることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の朝」

2022-03-27 14:25:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日07:00.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 私は訳の分からぬ夢を見て目が覚めた。
 どうも、枕が変わると眠りが浅くなるせいか、変な夢を見てしまう。
 今回の夢はどんなのかと聞かれても、口では説明できない。
 悪夢というわけではないのだが、かといって吉夢というわけでもない。
 とにかく、何とも言えぬ夢だ。
 私はベッドから出ると、洗面所に向かった。

 オパール:「おはようございます、愛原様」
 愛原:「ああ、おはよう」

 メイドのオパールが挨拶して来た。

 オパール:「愛原様の御用意ができ次第、御朝食の用意をさせて頂きますので、いつでもダイニングにお越しください」
 愛原:「ああ。ありがとう」

 顔を洗い、携帯用の自分の歯磨きセットで歯を磨き、旅行用の乾電池式のシェーバーで髭を剃る。
 そうしているうちに、30分は経つ。
 なので私がダイニングに行った時には、既に7時半にはなっていた。

 リサ:「先生、おはよう」
 愛原:「ああ、おはよう」

 ダイニングに行くと、既にリサと絵恋さんが朝食を食べていた。
 さすがに2人とも、昨夜の体操服から着替えている。
 リサは制服に着替えていたし、絵恋さんも御嬢様っぽい私服を着ていた。

 サファイア:「おはようございます。まずはコーヒーをどうぞ」
 愛原:「ああ、ありがとう」

 いい匂いがする。
 インスタントではなく、ちゃんと豆から挽いたレギュラーコーヒーだというのが分かる。

 リサ:「先生。サイトーも一緒に行くことになった。いいでしょ?」
 絵恋:「先生、よろしくお願いします」
 愛原:「俺は構わないけど、社長……キミのお父さんは?」
 絵恋:「父は朝早くに出ました。今日は帰らないそうです」
 愛原:「ええっ!?はい!?」
 リサ:「どうした、先生?何をそんなに驚いている?」
 愛原:「いや、社長にちょっとお話があったんだけど……。何か急用?」
 絵恋:「そのようです。なので、『家族団らんの為に週末は実家にいる』という必要も無くなったので」

 絵恋さんの母親も、今週はいない。

 愛原:「そうなのか……。いや、まあ、そういうことならいいけど……」
 絵恋:「ありがとうございます。交通費なら、自分で払いますから!」

 絵恋さんはアメリカンエキスプレスを取り出した。
 何色のカードかは、【お察しください】。

 愛原:「いや、せめてSuicaを用意しようね?」
 リサ:「その通りだ、サイトー。バスや電車に、アメックスで乗るバカはいない」
 絵恋:「え?でも、タクシーなら乗れますよ?」
 愛原:「まさか、菊川のマンションまでタクシーで行くつもりだったのか???」

 お金持ちの金銭感覚って……。

[同日08:50.天候:曇 同地区内 上落合公園前バス停→丸建つばさ交通“けんちゃんバス”車内]

 朝食を終えてから家を出ると、私達は最寄りのバス停に向かった。

 愛原:「悪いけど、電車とバスで行くよ?」
 リサ:「サイトー。先生の仰ることは絶対」
 絵恋:「もちろん、リサさんと一緒なら徒歩でもいいです」
 愛原:「いや、さすが歩いて菊川には帰りたくない」

 バスを待つ間、斉藤社長に電話をしたが、電話には出てくれなかった。

 愛原:「うーむ……。斉藤社長が出てくれない……」
 リサ:「あ、バス来た」

 往路と同じ車種の小型バス(日野・ポンチョ)がやってきた。
 これが大型バスなら、横断歩道に車体がはみ出してしまう危険なバス停になってしまうが、小型バスなら問題ない。
 それを知ってて、わざと交差点の角にバス停を設置したのだろう。
 バスに乗り込むと、空いている1番後ろの席に並んで座った。

〔「発車します。ご注意ください」〕

 バスは市道を南下した。

〔ピンポーン♪ 次は児童センター入口、児童センター入口でございます〕

 愛原:「絵恋さん、お父さんがどこに行くとか言ってた?」
 絵恋:「分かりません。ただ、週末はゴルフに行くことが多いです」
 愛原:「ゴルフかぁ……」
 絵恋:「色々と付き合いの為のゴルフらしくて……。でも、最近はコロナ禍でそれもできなかったんですよ」
 愛原:「だけどその場合、車がいるよね?」
 絵恋:「新庄がいた頃は、新庄の車でゴルフ場に行ってました」
 愛原:「すると、今は新庄さんがいないから……」
 絵恋:「ハイヤーで行くことになりますね。でも、コロナ禍でゴルフ接待とかも自粛になったので、結局一度もハイヤーでは行ってません」
 愛原:「それが急に行くことになったか……」

 私はスマホを取り出すと、揺れるバスの中、善場主任にメールを打った。
 さすがに日曜日の朝だからか、今度は返信が来るのは遅かった。

[同日09:10.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 大宮駅西口バス停→JR大宮駅]

 善場主任から返信メールが来たのは、バスが終点近くの付近を走行している頃だ。
 大宮駅の東西は車が混みやすい。
 私達のバスもまた、そういった混雑にハマってしまった。
 考えようによっては、ゆっくり返信メールが見れるということではあるのだが……。

 善場:「斉藤社長が逃走したのですね?承知しました。すぐに私共の組織で追跡します」

 とのこと。
 な、何だか話が物騒になっていないか?

 善場:「何か新しい情報が入りましたら、すぐにお知らせください」

 と、締められていた。
 まさかこれは、タイーホなのか?
 前回は書類送検で済んだ斉藤社長、今度という今度はタイーホなのか!?

〔「お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、大宮駅西口、大宮駅西口です。お忘れ物、落とし物にご注意ください」〕

 バスはかつて西武大宮線の廃線跡を走行する。
 中途半端な1車線分の道路幅なのは、かつて単線で運転されていた西武鉄道大宮線の廃線跡だからである。
 そして、その先にある小さなバス停に到着した。

 愛原:「あ、このバス、現金でしか乗れないんだけど、現金ある?」
 絵恋:「現金……」

 絵恋さんが財布を開くと、カードしか入っていなかった。

 愛原:「大人3人です」
 運転手:「ありがとうございます」

 しょうがないので私は、600円を運賃箱の中に入れた。

 リサ:「サイトー、運賃は自分で払う約束……!」
 絵恋:「ご、ゴメンなさい。まさか、現金だけだなんて……」
 愛原:「いや、先に言うのを忘れてたよ。絵恋さんは悪くない」
 絵恋:「お詫びに新幹線代は出させて頂きます」

 絵恋さんは再びアメリカンエキスプレスを取り出した。

 絵恋:「新幹線のキップなら、これで買えるはずなので」

 た、確かに。
 いや、しかし……。

 愛原:「無駄金使っちゃダメだって。在来線で行こう。在来線のグリーン車ならいいだろう?」
 リサ:「フム。あれなら車内販売もある」
 絵恋:「リサさんがそう言うなら……」
 愛原:「よし、決まりだな」
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