[2月26日10:12.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス東20系統車内]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はこれから大口クライアントの斉藤社長の御宅へ行くところだ。
リサと2人で。
え?高橋はどうしたのかって?
拉致られたよ。
……うん、拉致られた。
何か……玄関のインターホンが鳴ったと思って、ドアを開けたら、ヤンキーの姉ちゃん2人が突入してきて、ずだ袋で高橋を拉致していったよ。
北朝鮮の工作員みたいに。
まあ、首謀者は誰かもう分かっている。
パールだな。
パールは斉藤絵恋さん専属メイドなのであるが、彼女が実家に帰省中は他のメイドが面倒を見るので、ヒマになる。
そこで、彼女なりのデートの誘い方なのだろう。
高橋もケンカは相当強いのだが、ヤンキーの姉ちゃん達もそれなりだった。
ま、今回は斉藤社長の所へ報告書を出しに行くだけなので、高橋は必要無いだろう。
リサに関しては、絵恋さんの御指名であるので。
それで、今回は私とリサの2人というわけだ。
高橋ファンの皆さん、ごめんなさい。
リサ:「あっ、バス来たよー」
愛原:「おう」
決して本数の多くないバスがやってきた。
都営バスで1時間に1~2本は確かに少ない。
しかし、少ないということは、乗客も少ないということだ。
実際ノンステップバス(三菱ふそう・エアロスター)の前扉から乗ってみると、座席は空いていた。
一本前の豊洲駅前経由、深川車庫行きが満席状態で出発していったのとは対照的である。
リサ:「ここにしよ」
愛原:「ああ」
後ろの開いている2人席に座った。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスが走り出す。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館前、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
リサ:「お兄ちゃん、大変だね」
愛原:「パールがムラムラする度に襲われる。だが、自業自得だろう」
リサ:「行き先は秋葉原?」
愛原:「どうだろう?」
高橋を拉致したヤンキーの姉ちゃん2人は、明らかにパールの後輩達であろう。
かつてはパールもヤンキーであり、どちらもヤンキーが過ぎて服役経験があるくらいだ。
愛原:「東京湾や秩父の山まで、片道ツーリングじゃなければいいが……」
リサ:「?」
愛原:「いずれにせよ、俺達のルートと被ることはないだろう」
リサ:「なるほど。分かった。先生は襲われるの嫌い?」
愛原:「そりゃな」
リサ:「分かった。じゃあ、襲うのはやめる」
愛原:「ん?」
リサはジャンパーのポケットからスマホを取り出し、絵恋さんとLINEを始めた。
[同日10:44.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
バスは東京駅丸の内北口の広場に到着した。
コロナ禍で、だいぶ旅行客が減っているはずだが、それでもレンガ造りの駅舎に向かって記念撮影している人が散見される。
中扉からバスを降りると、リサは太陽の眩しさに目を細めた。
BOW(生物兵器)として人体改造されたリサは、別に太陽が弱点というわけではない。
“バイオハザード”の世界で、太陽が弱点という化け物は殆どいない(明るいのが苦手という敵はいる。あくまでも苦手というだけなので、けして昼間は登場しないわけではない)。
日本版リサ・トレヴァー『6番』が珍しかっただけで、彼女は確かに白井から見れば失敗作だっただろう。
駅の中に入る。
リサ:「先生、Pasmoの中がちょっと……」
愛原:「ああ、分かった。チャージしておこう」
リサ:「ありがとう!」
改札口に行く前に、券売機に行ってリサのPasmoにチャージをしてやる。
ついでに私のSuicaにも、何千円が足しておいた。
愛原:「それじゃ、行こうか」
改札口を通って、上野東京ラインのホームに行く。
因みに横須賀線・総武快速線を除く、2階建てグリーン車付きの電車を『中距離電車』と呼ぶが、どうやら専門用語であるらしい。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の列車は、11時9分発、普通、宇都宮行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕
かつては東海道本線専用だったホームも、今では宇都宮線、高崎線、常磐線も発着するようになった。
BSAAとの取り決めに従い、先頭車両に向かう。
リサ:「サイトーが、『迎えに行く』と言ってるんだけど、お父さんが許してくれないんだって」
愛原:「ああ、そうだろうな」
リサ:「いつもの通り、大宮駅に行って、そこからバスに乗り換えるんでしょう?」
愛原:「そうだよ」
タクシーチケットはもらったが、なるべく公共交通機関を使うべきだと私は思った。
[同日11:08.天候:晴 JR東京駅→宇都宮線1578E列車15号車内]
〔まもなく7番線に、普通、宇都宮行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕
接近放送が鳴ると、単調な接近メロディが流れる。
これは大宮駅も同じだ。
しばらくすると、白いヘッドランプを光らせて、電車が入線してきた。
東海道本線の熱海駅からやってきた電車だが、実際に宇都宮まで乗り通す客はいるのだろうか。
ただ、遅いが新幹線よりも乗り換えの手間は無い。
〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕
下車客は多い。
それでもボックスシートがまるっと空くことはなく、まるっと空いたその隣の2人席に座った。
ドア横の席である。
〔「発車まで1分ほどお待ちください。上野東京ライン、宇都宮線直通の普通列車、宇都宮行きです」〕
愛原:「絵恋さん、何だって?」
リサ:「昼食、用意して待ってるって」
愛原:「そうか」
1分の停車時間では、すぐに発車の時間がやってくる。
恐らく乗務員交替の為の時間だろう。
発車メロディではなく、電子音の発車ベルがホームに鳴り響く。
〔「7番線から宇都宮線の普通列車、宇都宮行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕
〔7番線の宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕
上野東京ラインのホームには、まだホームドアが無い。
特急列車も発着するこのホームでは、車両の規格が統一できないからだろう。
通勤電車と比べて、ドアが閉まる時にガチャンという大きな音がする。
それから、電車はゆっくり発車した。
通勤電車と違ってATC(自動列車制御装置)ではないのだが、ゆっくり発車した後、運転室内からチンベルの音が一打鳴る(ATC搭載車だと、信号が変わる度にチンベルが鳴る)。
それから加速をするのだが、何か信号が切り替わる合図なのだろう。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通、宇都宮行きです。前5両、11号車から15号車までは、途中の小金井止まりです。グリーン車は、4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、上野です〕
東京駅を発車した電車は、一気に急坂を登る。
京浜東北線や山手線も高架線であるが、上野東京ラインは更にその上を行く。
今の車両ならそんな急坂でもスイスイ登って行くが、昔のSLではキツいだろう。
愛原:「こっちは高橋からの応答は無しだ。既読すら付かない」
リサ:「大変だねー」
愛原:「うん、大変だ」
この電車が秋葉原駅の横を通った時、車窓からヨドバシAkibaの横を爆走する族車のような物がいたのだが、そこに高橋が乗っていたかどうかは不明である。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はこれから大口クライアントの斉藤社長の御宅へ行くところだ。
リサと2人で。
え?高橋はどうしたのかって?
拉致られたよ。
……うん、拉致られた。
何か……玄関のインターホンが鳴ったと思って、ドアを開けたら、ヤンキーの姉ちゃん2人が突入してきて、ずだ袋で高橋を拉致していったよ。
北朝鮮の工作員みたいに。
まあ、首謀者は誰かもう分かっている。
パールだな。
パールは斉藤絵恋さん専属メイドなのであるが、彼女が実家に帰省中は他のメイドが面倒を見るので、ヒマになる。
そこで、彼女なりのデートの誘い方なのだろう。
高橋もケンカは相当強いのだが、ヤンキーの姉ちゃん達もそれなりだった。
ま、今回は斉藤社長の所へ報告書を出しに行くだけなので、高橋は必要無いだろう。
リサに関しては、絵恋さんの御指名であるので。
それで、今回は私とリサの2人というわけだ。
高橋ファンの皆さん、ごめんなさい。
リサ:「あっ、バス来たよー」
愛原:「おう」
決して本数の多くないバスがやってきた。
都営バスで1時間に1~2本は確かに少ない。
しかし、少ないということは、乗客も少ないということだ。
実際ノンステップバス(三菱ふそう・エアロスター)の前扉から乗ってみると、座席は空いていた。
一本前の豊洲駅前経由、深川車庫行きが満席状態で出発していったのとは対照的である。
リサ:「ここにしよ」
愛原:「ああ」
後ろの開いている2人席に座った。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスが走り出す。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館前、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
リサ:「お兄ちゃん、大変だね」
愛原:「パールがムラムラする度に襲われる。だが、自業自得だろう」
リサ:「行き先は秋葉原?」
愛原:「どうだろう?」
高橋を拉致したヤンキーの姉ちゃん2人は、明らかにパールの後輩達であろう。
かつてはパールもヤンキーであり、どちらもヤンキーが過ぎて服役経験があるくらいだ。
愛原:「東京湾や秩父の山まで、片道ツーリングじゃなければいいが……」
リサ:「?」
愛原:「いずれにせよ、俺達のルートと被ることはないだろう」
リサ:「なるほど。分かった。先生は襲われるの嫌い?」
愛原:「そりゃな」
リサ:「分かった。じゃあ、襲うのはやめる」
愛原:「ん?」
リサはジャンパーのポケットからスマホを取り出し、絵恋さんとLINEを始めた。
[同日10:44.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
バスは東京駅丸の内北口の広場に到着した。
コロナ禍で、だいぶ旅行客が減っているはずだが、それでもレンガ造りの駅舎に向かって記念撮影している人が散見される。
中扉からバスを降りると、リサは太陽の眩しさに目を細めた。
BOW(生物兵器)として人体改造されたリサは、別に太陽が弱点というわけではない。
“バイオハザード”の世界で、太陽が弱点という化け物は殆どいない(明るいのが苦手という敵はいる。あくまでも苦手というだけなので、けして昼間は登場しないわけではない)。
日本版リサ・トレヴァー『6番』が珍しかっただけで、彼女は確かに白井から見れば失敗作だっただろう。
駅の中に入る。
リサ:「先生、Pasmoの中がちょっと……」
愛原:「ああ、分かった。チャージしておこう」
リサ:「ありがとう!」
改札口に行く前に、券売機に行ってリサのPasmoにチャージをしてやる。
ついでに私のSuicaにも、何千円が足しておいた。
愛原:「それじゃ、行こうか」
改札口を通って、上野東京ラインのホームに行く。
因みに横須賀線・総武快速線を除く、2階建てグリーン車付きの電車を『中距離電車』と呼ぶが、どうやら専門用語であるらしい。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の列車は、11時9分発、普通、宇都宮行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕
かつては東海道本線専用だったホームも、今では宇都宮線、高崎線、常磐線も発着するようになった。
BSAAとの取り決めに従い、先頭車両に向かう。
リサ:「サイトーが、『迎えに行く』と言ってるんだけど、お父さんが許してくれないんだって」
愛原:「ああ、そうだろうな」
リサ:「いつもの通り、大宮駅に行って、そこからバスに乗り換えるんでしょう?」
愛原:「そうだよ」
タクシーチケットはもらったが、なるべく公共交通機関を使うべきだと私は思った。
[同日11:08.天候:晴 JR東京駅→宇都宮線1578E列車15号車内]
〔まもなく7番線に、普通、宇都宮行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕
接近放送が鳴ると、単調な接近メロディが流れる。
これは大宮駅も同じだ。
しばらくすると、白いヘッドランプを光らせて、電車が入線してきた。
東海道本線の熱海駅からやってきた電車だが、実際に宇都宮まで乗り通す客はいるのだろうか。
ただ、遅いが新幹線よりも乗り換えの手間は無い。
〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕
下車客は多い。
それでもボックスシートがまるっと空くことはなく、まるっと空いたその隣の2人席に座った。
ドア横の席である。
〔「発車まで1分ほどお待ちください。上野東京ライン、宇都宮線直通の普通列車、宇都宮行きです」〕
愛原:「絵恋さん、何だって?」
リサ:「昼食、用意して待ってるって」
愛原:「そうか」
1分の停車時間では、すぐに発車の時間がやってくる。
恐らく乗務員交替の為の時間だろう。
発車メロディではなく、電子音の発車ベルがホームに鳴り響く。
〔「7番線から宇都宮線の普通列車、宇都宮行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕
〔7番線の宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕
上野東京ラインのホームには、まだホームドアが無い。
特急列車も発着するこのホームでは、車両の規格が統一できないからだろう。
通勤電車と比べて、ドアが閉まる時にガチャンという大きな音がする。
それから、電車はゆっくり発車した。
通勤電車と違ってATC(自動列車制御装置)ではないのだが、ゆっくり発車した後、運転室内からチンベルの音が一打鳴る(ATC搭載車だと、信号が変わる度にチンベルが鳴る)。
それから加速をするのだが、何か信号が切り替わる合図なのだろう。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通、宇都宮行きです。前5両、11号車から15号車までは、途中の小金井止まりです。グリーン車は、4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、上野です〕
東京駅を発車した電車は、一気に急坂を登る。
京浜東北線や山手線も高架線であるが、上野東京ラインは更にその上を行く。
今の車両ならそんな急坂でもスイスイ登って行くが、昔のSLではキツいだろう。
愛原:「こっちは高橋からの応答は無しだ。既読すら付かない」
リサ:「大変だねー」
愛原:「うん、大変だ」
この電車が秋葉原駅の横を通った時、車窓からヨドバシAkibaの横を爆走する族車のような物がいたのだが、そこに高橋が乗っていたかどうかは不明である。
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