報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休みの移動」

2021-09-13 19:47:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月27日10:10.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→高崎線833M列車5号車]

〔「上野駅入谷口です」〕

 私達を乗せた路線バスは、JR上野駅前に到着した。
 昭和通りの方を向いた正面ではなく、北側の入谷口。
 東京中央学園に1番近い出入口でもある。

 斉藤絵恋:「あー、このバスだったんだ!」
 リサ:「おー、ここだここ!」

 通学でこの入谷口をよく利用する少女達が反応する。
 尚、この入谷口通りには桜並木があり、春には桜通りとなる。
 ここでバスを降りると、すぐ目の前が駅の入口である。
 入谷口に入るとすぐにエスカレーターがあって、そこで2階に上がる。

 リサ:「サイトー、麦わら帽子似合う」
 絵恋:「ほ、ほんと!?」
 リサ:「御嬢様って感じ」
 絵恋:「も、萌えぇぇぇぇっ!」
 リサ:「白いワンピも似合う。さすが御嬢様」
 絵恋:「も、萌えぇぇぇぇっ!もっと褒めてぇーっ!」
 高橋:「あー、暑ィ暑ィ。暑苦しい」
 絵恋:「モーホーの方が暑苦しいわよ!」
 高橋:「バカ。Gはそこがいいんだろうが」
 愛原:「悪いが、俺も理解できんよ」
 高橋:「ええっ、そんな!」Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
 愛原:「悪いが、俺はノーマルなんでね」
 リサ:「私も性的にはノーマル」
 絵恋:「リサさぁん、そんなぁ……」(´;ω;`)
 愛原:「いいから行くぞ」

 エスカレーターを昇って2階に上がり、長い通路を歩く。
 更に3階に上がるエスカレーターがあって、そこで初めてようやく入谷改札口に着くのである。
 そこのキップ売り場で、私はグリーン券を4枚購入した。

 愛原:「はい、これ」
 リサ:「おー、グリーン車」
 絵恋:「いいんですか?」
 愛原:「御嬢様をエスコートするんだから、これくらい当然さ」

 しかし、運賃はそれぞれ自腹だったりする。
 それは全員、SuicaやPasmoを使用した。
 改札の中に入ると、エキュートがある。
 ターミナル駅の駅ナカとあって、その店舗数は多い。

 愛原:「15番線だから低いホームだな。どこからか、エスカレーターで下りることになる」

 私がそう言いながら進もうとすると、どうしてもリサはエキュートにある銘菓店などに目が行ってしまう。

 愛原:「電車に乗り遅れるとマズいから、急ぐぞ」
 高橋:「そうだぞ。あんまり先生のお手を煩わせるんじゃねぇ」
 リサ:「はーい……」

 そしてエスカレーターを見つけ、それで1階に下りると、低いホームがあった。
 JR上野駅は様々な階層にホームがある。
 1階のホームのことを『低いホーム』または『地平ホーム』と呼ぶ。
 このホームは頭端式になっており、上野止まり・上野始発の列車が発着する。
 しかしここ最近、ダイヤ改正で昼間の上野止まり・上野始発の電車が激減したせいで、尚のこと、低いホームは寂しくなった。
 私達が乗る予定の10時30発の電車の次の普通列車は、16時32分まで無い。
 その間はずっと上野東京ラインを走行する列車しか無く、それは『高いホーム』から発着する。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。15番線に停車中の列車は、10時30分発、普通、籠原行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、尾久に止まります〕

 主に上野始発の普通列車が発車する15番線には、15両編成の普通列車が停車していた。
 午前中の下り列車ということもあって、電車は空いている。
 で、グリーン車のある4号車と5号車に向かうと、途中ホーム上に自販機がある。
 ジュースの自販機だけでなく、お菓子の自販機もあった。

 リサ:「…………」

 リサが足を止め、その自販機をジーッと見る。
 そして、何かを言いたそうに私を見た。

 愛原:「分かったよ。買っていいよ」
 リサ:「この自販機、現金しか使えない……」
 愛原:「分かった分かった。奢ってやるよ」
 リサ:「おー!サイトーは何にする?」
 絵恋:「先生、ありがとうございます。私、カードしか持ってなくて……」

 普通はICカードの事だと思うが、御嬢様たる絵恋さんの場合、それ以外のカードも持っているということだろう。
 まさか、海外セレブのようにアメリカンエキスプレスのいいカードということはないだろうが……。

 高橋:「先生、アルフォートならドラッグストアで買った方が安いですよ」
 愛原:「それを言うな」
 高橋:「えっ?」
 愛原:「さいたま市のココカラファインで安くアルフォートを買っていた作者が川口市に引っ越した際、近所のクリエイトSDに行ったら扱ってないと言われたんだから」

 雲羽:orz
 多摩:「だから無理に引っ越すことはないと言ったんだ」

 リサ:「おー、アルフォート!」
 絵恋:「リサさんはチョコが好きね」
 リサ:「うん、大好き」
 愛原:「分かった。アルフォートだな」

 私は2種類のアルフォートを買った。
 恐らく、1つずつ融通しあいながら食べるのだろう。
 飲み物の自販機についてはICカードが使えるので、それでそれぞれ自分で好きなのを買った。
 そして、グリーン車の5号車に乗る。
 リサはホイホイと2階席に行きたがったが、私はあえて引き留めた。

 リサ:「えっ?」
 愛原:「荷物があるんだから、こっち」

 私が向かったのは車端部にある平屋席。
 実は普通列車の2階建てグリーン車の1階席と2階席には、荷棚が無い。
 その為、荷棚を使いたい乗客にはその部分はネックなのである。
 新幹線車両のE1系やE4系にはあるのだが、車両限界の都合だろう。
 平屋席には荷棚がある。

 愛原:「高橋、荷物上げてやれ」
 高橋:「うっス」

 高橋は絵恋さんのキャリーバッグをヒョイと持ち上げ、荷棚に乗せた。
 こういう時、身長が高いと有利だな。

〔この電車は高崎線、普通電車、籠原行きです。グリーン車は4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 グリーン車と言っても、特急や新幹線のそれと比べれば豪華ではない。
 スペック的には、それらの普通車自由席と同じか、むしろそれよりも狭いくらい。
 だからグリーン料金も、同じ区間を走る特急の普通車料金と殆ど同じである。

 愛原:「取りあえず、社長に中間報告を入れておこう」

 私はスマホから斉藤社長のスマホに、上野駅から高崎線に乗った旨のメールを送った。
 これはすぐには返信は来なかったが、送信エラーにはならなかったので、一応は送れたようである。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の退院」

2021-09-13 14:54:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月27日09:30.天候:晴 東京都千代田区神田和泉町 三井記念病院→京成バス“ぐるーりめぐりん”車内]

 翌日になり、私達は再び斉藤絵恋さんの病院に向かうことになった。
 平日なので斉藤社長は仕事だ。
 一応、今後の治療についてや退院の手続きについては保護者として会社を抜け出して来るが、その後は会社に戻らなくてはならない。
 しかし当然ながら、会社に娘を連れて行くことはできない。
 そこで退院してから、埼玉の家まで護衛して欲しいという依頼が来たのだ。
 車については、まだお抱え運転手がコロナ療養中で使えないとのこと。

 愛原:「社長、お疲れさまです」
 斉藤秀樹:「愛原さん、突然の依頼申し訳ありません」
 愛原:「いえ、社長の為なら何でもお役に立ちますよ」
 秀樹:「頼もしい御言葉です。報酬は後でお支払いしますので、よろしくお願いします」
 愛原:「菊川のマンションではなく、大宮の御実家なんですね」
 秀樹:「さすがにトラウマとなりますので、あのマンションは引き払うことにします。幸い旧友は他にもマンションを持っているので、その中から適当な物件を見繕うことになります。その間は家に置いておこうかと思います」
 愛原:「それが賢明ですね」
 秀樹:「それでは私は退院の手続きに行って参りますので……」
 愛原:「あ、はい。私達はここで待っています」

 私達はロビーで待っており、斉藤社長が1人で病室に向かった。
 面会は原則禁止だが、入退院の手続きの際や、主治医や病院側が特に必要と判断した時に限っては認めることがある。
 今回は前者だろう。
 それからしばらくして、キャリーバッグを持った斉藤絵恋さんがやってきた。

 絵恋:「リサさぁん!会いたかったぁーっ!!」

 ダイレクト飛び込みハグ!

 リサ:「サイトー、分かった分かったから」

 さすがのリサも、このダイレクトハグについては閉口する。

 高橋:「ったく、びーびー泣きやがって」
 愛原:「そりゃ、窓を開けたら惨殺死体が上から落ちて来るシーン、ガチで見ちゃったらねぇ……。俺達でさえ、それなりのホラーだろ?ましてや、バイオハザード慣れしていない絵恋さんにとってはドギツイと思うよ?」
 高橋:「まあ、それはそうっスけど……」
 秀樹:「リサさんに会いたくて、どうしようもなかったらしいです。それでは、あとはよろしくお願いします」
 愛原:「あ、はい。お任せください」

 私達は斉藤社長と別れた。

 愛原:「それじゃ、行こうか」

 病院の外に出ると、斉藤社長の車が出て行くところだった。
 セダンタイプに私達4人は乗れないよな。
 因みに、絵恋さんはしっかりとリサの手を握っていた。

 高橋:「先生、どうやって行きますか?」
 愛原:「まずはバスで上野駅まで行こう」
 高橋:「バスがあるんですか」
 愛原:「コミュニティバスだけどね、あるよ」

 病院の敷地外に出ると、すぐにバス停はあった。
 バスを待っている間、絵恋さんはしきりに、『死体が追って来る夢を見た』『リサが現れてそれを倒してくれた』という話をしていた。
 もちろんリサの力を持ってすれば、ゾンビの1匹や2匹、軽く屠れるだろう。
 何しろ、ゾンビの1匹や2匹、軽く殴り飛ばせるほどのタイラントを従わせるほどなのだ。
 しばらくして、『上野方面』と書かれたバスがやってきた。

 

 オリジナルの塗装がされてはいるが、車種的にはどこでも見られる中型バスである。
 コミュニティバスというと小型バスで運行されるイメージがあるが、この路線は利用客が多いのだろう。
 実際、お年寄りなどの通院に使われることが多く、降り口の中扉からはそれらしい乗客達がぞろぞろ降りて行った。
 こういう時、ノンステップバスだと楽で良い。
 東京都区部ということもあり、バスは前乗り運賃先払い。
 ICカードが使えるので便利である。

〔発車致します。お掴まりください〕

 私達は座席には座らず、折り畳み椅子の横の手すりや吊り革に掴まった。

 絵恋:「リサさん、危ないからリサさんに掴まってていい?」
 リサ:「ん」

 リサは手すりを指さした。

 絵恋:「はぁーい……」(´・ω・`)

〔次は東京法務局台東出張所前、東京法務局台東出張所前でございます。東京都警備業協会へおいでの方は、新御徒町駅前が御便利です。次は、東京法務局台東出張所前でございます〕

 高橋:「先生、ずっとバスと電車で移動されるおつもりですか?」
 愛原:「俺の計画では、大宮駅からタクシーなんだよ。ほら、言っちゃあ何だけど、絵恋さんの家の辺りって、路線バスが不便だからね」
 高橋:「あー、本数少ないですもんね」
 愛原:「ぶっちゃけ、斉藤社長からもらったタクシーチケットが1枚しか無いから、そういう所で使わないと」
 絵恋:「えっ、そうなんですか?だったら、父に言えばまたもらえますよ?」
 愛原:「いやあ、でも何だか厚かましそうで……」
 絵恋:「だったら、私に言ってくだされば、私から父に言いましたわ」
 リサ:「サイトー、今度はそうして」
 絵恋:「分かったわ。リサさんの頼みですもの。リムジンだって用意するわ」
 高橋:「おー、分かってるじゃねぇか。そうだぞ。先生はそれくらい偉大な御方だ」
 愛原:「いやいやいや、そんなのいいよ!」
 高橋:「何しろ、VIP相手にリムジンを呼ぶと見せかけて、リムジンバス呼んだアホ主人公が他にいたらしいからな」

 “ユタと愉快な仲間たち”シリーズより、“大魔道師の弟子”における一幕。

 愛原:「フツーにタクシーでいいよ。俺なんか下級国民の1人なんだから」

 身分相応という言葉がある。
 池袋の暴走老人事故だって、上級国民なら上級国民らしく、タクシーやハイヤーに乗っていれば良かったのだ。

 リサ:「先生、そのタクシーチケットって上限額とか決まってるの?」
 愛原:「いや、そんなことは書いてないな」
 リサ:「だったらそのタクシーチケットでタクシーに乗って、そのままサイトーの家に行くというのは?」
 高橋:「その手があったか!」
 愛原:「バカ。いくら掛かると思ってんだ。他人の金だと思って……」
 リサ:「父は気にしないと思いますけど、私もその案には反対です」
 高橋:「なにっ!?」
 リサ:「だってぇ、車で一気に帰るより、リサさんとだったら、電車やバスでゆっくり帰る方がいいに決まってるじゃない

 絵恋さんはそう言って、リサと腕を組んだ。

 高橋:「先生、こいつもう少し入院してた方が良かったんじゃないスか?」
 絵恋:「何でよ!?
 愛原:「まあまあ……」
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“私立探偵 愛原学” 「善場の話」

2021-09-13 11:12:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサ:「……ごめんなさい。私は早く友達を作りたかったの……」

 事務所の応接室で善場主任に説教を食らうリサ。

 善場:「そう言って特異菌パラダイスにした新型BOWエブリンの例とかあるんだからね。エブリンには何の悪気も無かったと言われてるけど、あの大惨事よ。あなたもそうならないように。エブリンの末路……あなたも聞いてるでしょ?」
 リサ:「はい……」

 無邪気な子供は、時として大人より残酷だ。
 残酷な大人でさえ、利権や利害、建前や打算が挟めば子供よりも純情になるというのに。
 エブリンは少女型BOWであったが為に、大人より残酷な無邪気な子供の性格が全面的に出てしまったのだろう。
 まだ10歳程度の少女の姿をしていたエブリンは、残酷な無邪気を沢山持っていたそうだが、それよりは大人に近い15歳のリサはどうなのだろう?

 善場:「最悪は殺処分よ?そしたらあなた、もう2度とここでは暮らせなくなるのよ?」
 リサ:「それは嫌……」
 善場:「それなら2度とウィルスをばら撒くことはしないように。分かった?」
 リサ:「はい……」

 ようやく説教から解放されたリサは、応接室から出て来た。

 愛原:「よお。済んだか?」
 リサ:「うん……」
 愛原:「よし。あとはもう心配しなくていい。今日は運が悪かったと思って諦めろ。明日に期待すればいい」
 リサ:「明日の楽しみなんて……」
 愛原:「斉藤社長から聞いてるだろ?明日には絵恋さんが退院する。その迎えでもやればいい。親友と会えば、少しは気が晴れるだろう」
 リサ:「うん、そうだね……」

 その時、応接室のドアが開けられた。

 善場:「愛原所長、ちょっとよろしいですか?」
 愛原:「あ、はい」

 私は呼び出しに応じ、応接室の中に入った。

 愛原:「リサのことは……」
 善場:「あとは検査機関に持ち帰り、リサのウィルスの状態について詳しく調べるだけです」
 愛原:「学校のことはどうします?」
 善場:「幸いながら、リサがウィルスを植え付けたのは女子生徒だけのようです。子宮頸がんワクチンの接種と称して、TウィルスやGウィルスのワクチン接種を行うことを考えています」
 愛原:「いいんですか、それ?」

 因みに子宮頸がんというと、まるで癌の一種のように思えてしまうが、実際は性病の1つである。
 しかも、男性側から感染させられるものなので、海外では男性も件のワクチンを打つことが一般的だという。

 善場:「『ゾンビや化け物に変貌を遂げるウィルスに感染したので、そのワクチン接種です』と素直に言えば、パニックになること請け合いですので」
 愛原:「全員が元霧生市民なら大丈夫だと思いますけどね。そういうわけにもいかないか……」
 善場:「そういうことです。私共が把握している中、東京中央学園に通う元霧生市民は数人のみです」
 愛原:「そのうちの2人は栗原姉妹ですね」
 善場:「そういうことです。まあ、幸い夏休みですので、学校側から対象生徒に呼びかけてもらいましょう」
 愛原:「でも、本当に大丈夫なんですか?子宮頸がんワクチンと称して、別のワクチンを打つなんて……」
 善場:「TウィルスやGウィルスのワクチンは、同時に子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウィルスに対しても効果を発揮するのです。ですので、問題はありません」

 因みにそれをリサに打てば、リサは人間に戻れるのではないかと思ったそこのあなた、残念でした。
 肉体レベルで『歩くゾンビウィルス』にそんなのを打っても効かないし、よしんば効いたとしても、死ぬだけである。
 特異菌に対する特効薬を投与されたエブリンは死にはしなかったものの、ラスボスに相応しい化け物へと変化を遂げたそうだ。
 リサもそうならないとは限らない。
 エブリンは制御不能となっていたから、あんなこと(“バイオハザード7”またの名を“バイオハザード・レジデントイービル”)になったが、今のリサは制御できている。
 え?勝手に学校にウィルスばら撒いただろうがって?
 それはそうだが、リサの意思で不活性状態になっているし、何より先輩BOWの説教で済むなんて制御できている方だと思うが?
 嘘だと思うなら、説教で済まなかった“バイオハザード7”をプレイすると良い。
 但し、説教で済まなかった描写はゲームの後半くらいになるが。
 つまり、制御できているのなら、ヘタなことはせずに、確実かつ安全に人間に戻す方法を考えた方が良いというわけだ。

 善場:「そこは我々にお任せください」
 愛原:「よろしくお願いします。因みに、ウィルスの結果はいつ頃出ますか?」
 善場:「まあ、3日もあれば何とか……といったところでしょうか」
 愛原:「案外、時間が掛かるものなんですね」
 善場:「何しろ取り扱うウィルスが、とても特殊なものですから。今流行りの新型コロナウィルスや、致死量の高い狂犬病ウィルスや、エボラ出血熱のウィルスよりも更に危険なウィルスですので、取り扱いには十分に注意しないといけないのです」
 愛原:「しかしリサが自分の意思で不活性化しているのでは?」
 善場:「だからといって感染しないに越したことはありません。いつ暴走して、感染者達がゾンビ化するか分かったものではありませんから」
 愛原:「……もしかして、霧生市にばら撒かれたTウィルスも、リサの意思によるものだったんですか?」
 善場:「それについては今も分かっておりません」
 愛原:「えっ?」
 善場:「アメリカのラクーン市で蔓延したTウィルスと、霧生市のTウィルスは似て非なるものだとされています。前者は全く制御できないものでしたが、後者はリサ・トレヴァーが制御できるという違いはあります。ですが、見た目には区別は付かないのです。今ここにいる『2番』のリサは、自分のウィルスをばら撒いてはいません。ウィルスをばら撒いたのは、研究所を抜け出した他のリサ・トレヴァー達です」
 愛原:「『2番』のリサは、研究所ではばら撒いたとされていますが……」
 善場:「それが本当に『2番』が撒いたものなのかは分かりません。何しろ、研究所に残っていたのは彼女だけでしたからね」
 愛原:「話は変わりますが、テロ組織についてはどうですか?」
 善場:「今のところは安全になったと見て良いでしょう。何しろ、ヤング・ホーク団が洗い浚い喋ってくれましたから」

 ヴェルトロは下請け選定を間違えたようだな。

 善場:「ただ、肝心のヴェルトロについてはまだ摘発できておりません。引き続き、警戒は怠らないようにしてください」

 これが実情である。
 あくまで、実行犯がいなくなったというだけだ。
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