報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台国際空港」

2021-09-03 19:52:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日12:00.天候:晴 宮城県名取市 SAT仙台空港駅→名取市・岩沼市 仙台空港]

〔まもなく終点、仙台空港、仙台空港。お出口は、右側です。今日も仙台空港アクセス鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車はおよそ30分遅れで、杜せきのした駅を出発した。
 ようやく運転再開となった時、線路の横に避けられた『異物』を見て私は驚いた。
 その『異物』は何とマネキンで、しかも日本版リサ・トレヴァーが日本アンブレラの研究所で着せられていたセーラー服を着ていた。
 顔までは分からなかったが、髪形が何だかうちのリサに似ているような気がした。
 どう見ても強風で飛んで来たようには見えず、悪質な悪戯かもしれず、『線路内人立入』の疑いもあるということで、安全確認に時間を取られてしまった。
 美田園駅では対向列車が快速の通過を待っていた。
 仙台空港駅を出発したものの、運転抑止を食らっていたのだろう。
 そして電車は唯一のトンネルを潜る。
 これは滑走路の下を潜る為である。
 地下トンネルである為、東日本大震災の時はここに津波が押し寄せてトンネルが水没し、復旧作業に1番手間取ったそうである。
 トンネルの中には遠方信号機がある。
 緑と黄色の『減速』を示していたので、その先の場内信号機は黄色1色の『注意』または黄色2色の『警戒』ということになる。
 1面2線のホームに速度制限ギリギリの速度で入線し、ようやく電車は終点駅に着いた。
 さすがにホームでは、多くの乗客が電車を待っていた。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台空港、仙台空港、終点です。本日電車遅れまして、御迷惑をお掛け致しました。……」〕

 どうやら本当に飛行機に乗り遅れそうなのか、電車のドアが開くや否や、ホームを全力疾走する乗客が何人かいた。
 私達はまだ時間があるので、後からホームに降りる。

 愛原:「リサ、さっきから黙ったままだな?」
 リサ:「うん、あのマネキンね……。もしかしたら、研究所にあったヤツかもしれない」
 愛原:「何だって!?」
 リサ:「気のせいかもしれないけど……」
 愛原:「気のせいだといいけどな……」
 高橋:「こんな真昼間からホラーはカンベンっスよ」
 愛原:「おいおい、高橋。BOWは昼間でも闊歩するんだぞ。ここにいるリサみたいに」
 高橋:「いや、まあ、そうですけど……」

 改札口を出て、仙台空港ターミナルビルに向かう。
 駅はバリアフリーをとても意識しており、ホームからターミナルビルまで、殆どフラットの状態で移動できる。

 愛原:「もう、すぐ国内線チェックインカウンターだな」
 高橋:「でもまだ早いっスよね?」
 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「分かった分かった。飯にしよう」
 高橋:「うス」
 リサ:「やった!」

 因みにお土産などは、この2階で購入することができる。
 エスカレーターで3階へ上がると、そこに飲食店が何軒かある。
 尚、牛タン定食はどの店でも食べれる。
 もう一度牛タンを食べてから帰ろうと思い、それを注文する。
 やはりというか、リサは1.5倍増しを所望した。

 愛原:「今のところ、まだ見つかってはいないな?」
 高橋:「そう簡単に見つかっちゃ困りますよ」
 愛原:「うん、そうだよな」
 高橋:「善場の姉ちゃんから、何か情報はありますか?」
 愛原:「元々オリンピック期間だから、警備強化はされてるだろ?」
 高橋:「ああ、さっきから駅やら空港やら、やたらオマワリがいますよね」
 愛原:「それに乗じて、今回のテロ組織関係に対する警備強化もするらしいぞ。今頃、高速やら新幹線の乗り場もパトカーや警察官、警備員がウヨウヨしている」
 高橋:「え?だったらぶっちゃけ、俺達、こんな回りくどいことしなくていいんじゃ?」
 愛原:「いやいや。中にはいきなり自爆テロやる奴もいるから、やっぱり見つからないに越したことはないんだよ」
 高橋:「あー、イスラムのテロとかありますよね」
 愛原:「俺達だけでなく、周囲の無関係な人達も巻き込んでしまう。だから、見つからないようにしないと」
 高橋:「分かりました」

 食事が終わった後は再び2階に下り、土産物屋を覗いた。

 愛原:「斉藤社長には“萩の月”でいいだろう。これを送っておこう」
 高橋:「じゃあ、俺もパールに……」
 リサ:「私もサイトーに買って行く」
 愛原:「善場主任に買って行こうとすると、『私は公務員ですので、受け取れません』とか言うしなぁ……」
 高橋:「善場の姉ちゃん、表向きは民間のNPO法人っスよね」
 愛原:「まあな」

 しかしその実、日本政府特務機関に所属するエージェントなので、国家公務員ということになる。
 確かにそんな公務員に金品を渡すと、贈賄罪に問われかねないか……。
 それは日本ではなく、外国でも同じ。
 え?どこかの後進国に行ったら、公務員にチップを請求されたって?その国の政治の腐敗ぶりをなじりましょう。
 ていうかそんな危ない国、行くんじゃない!

 愛原:「すいません、これを東京へ発送したいんですが……」
 店員:「はい、それではあちらへどうぞ」

 私は箱入りの“萩の月”を購入すると、それを発送する為、宅急便受付カウンターへ向かった。
 こうしておけば、うちの事務所の大口顧客である斉藤社長からまた仕事を回してもらえる。
 まさか、探偵協会の顧問(ボス)だったとはなぁ……。
 で、高橋は……。

 愛原:「酒買うのか!?」
 高橋:「あいつ、結構飲むんですよ」
 愛原:「意外だなぁ……」

 高橋と同じ愛煙家だというのは知っていたが、酒飲みでもあったのか。

 高橋:「で、大抵酔った勢いで襲って来ます」
 愛原:「しれっと言ってるけど、だいぶヤバいからな?」

 お土産を買った後、だいたい出発の1時間前くらいになったので、私達はそろそろ保安検査場に向かうことにした。
 因みにリサは、あまり良いネタが浮かばなかったらしい。
 まあ、テディベアからあるから良いのではないだろうか。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」 3

2021-09-03 15:44:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日11:19.天候:晴 宮城県名取市増田 JR名取駅→名取市杜せきのした SAT杜せきのした駅]

〔まもなく名取、名取。お出口は、左側です。東北本線、岩沼、白石方面と常磐線はお乗り換えです。名取を出ますと、次は終点仙台空港です〕
〔The next station is Natori.The doors on the left side will open.Please change here for the Tohoku line for Iwanuma and Shiroishi,and the Joban line.The stops after Natori,will be Sendai Airport,terminal.〕

 仙台駅から途中駅を飛ばして走行してきた快速電車。
 それが唯一の途中停車駅に差し掛かる。
 未だに何も起こらない。
 運転席からはATSの警報音が聞こえる。
 場内信号は黄色の『注意』。
 ということは、その次の出発信号は赤の『停止』だからだ。
 電車は上り本線の1番線ホームに入線した。
 但し、JRとしては上り方向であるが、仙台空港鉄道としては下りである。
 隣の2番線には、仙台空港から来た対向列車が停車していた。
 こちらと違い、短い2両編成のせいか、座席はほぼ全て埋まっているように思える。
 まあ、こちらも似たような状況だが。

 愛原:「ん?」

 電車がホームに止まってドアが開くと、多くの乗客達が降りて行った。
 意外だった。
 確かに客層を見ていると、私達のような旅行客には見えない風体の人達ばかりであったが。
 そして、乗って来る客は少ない。
 これがコロナ禍の影響か。
 途中駅に停車する普通列車であれば、途中駅での需要があったのかもしれないが。

 
(名取駅構内より仙台空港方面を臨む。3つ並ぶ信号機のうち、真ん中が1番線に対する仙台空港アクセス線用の出発信号。単線1閉塞の為、2灯式である)

〔「この電車は仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きです。名取を出ますと、次は終点、仙台空港です。杜せきのした、美田園は通過となります。ご注意ください。まもなく発車致します」〕

 ワンマン運転なので、運転士が肉声放送を行う。
 未だに何も起こらない。
 車外スピーカーから発車メロディが流れて来る。
 この辺りの駅では仙台駅以外発車メロディは無く、代わりに乗降促進メロディが搭載された車両においてはそれを発車メロディ代わりに流す。
 JR東日本の場合は本当に発車メロディ(“Water Crown”)だが、JR東海はオリジナルのメロディである。
 ドアが閉まって、再び電車が走り出す。
 ポイントの通過があるので、速度はゆっくりだ。
 電車はJR東北本線に別れを告げ、仙台空港アクセス線に入った。
 写真で見ても分かるように、ここから高架線となる。

〔この電車は仙台空港アクセス線、快速、仙台空港行きです。次は終点、仙台空港です〕
〔This is the Sendai Airport Access line rapid service train for Sendai Airport.The next station is Sendai Airport,terminal.〕

 電車は高架線に入ると増田川を2回渡る。
 それから国道4号線を高架で跨いで通過する。
 そして最初の通過駅、杜せきのしたに差し掛かる。
 仙台空港アクセス線は全区間単線であるが、途中駅で行き違いができるようになっている。
 但し、その設備があるのは美田園駅だけであって、杜せきのした駅は準備工事が行われているだけに過ぎない。
 その為、杜せきのした駅は1面1線のホームなのだが、島式になっている(つまり2番線はあるが、線路は敷かれていない)。
 通過する際、ホームの乗客に向かって警笛を鳴らすのは当然だろう。
 だが、その警笛が単なる注意喚起としての電子音ではなく、けたたましい空気笛であり、しかもやたら長く鳴らしている。

〔急停車します。ご注意ください。お立ちのお客様は、お近くの吊り革、手すりにお掴まりください〕

 愛原:「ん!?」

 電車がホームに入線した時、ゴツッという音が聞こえた。
 そして、運転室の後ろに立って前面展望を楽しんでいた乗客から、「やっちまった!」という声が。

 愛原:「人身事故か!?」

 私達の乗っている先頭車はホームに入っている。
 私は窓を開けてホームに身を乗り出し、前方を注視した。
 運転士が運転室内にある電話機の受話器を取って、何やら連絡している。

 リサ:「……血の匂いはしないな」

 リサが外からの匂いを嗅いで首を傾げた。

 愛原:「えっ?」

 以前、私達は鉄道人身事故に遭遇したことがある。
 それは本当に人が電車に轢かれたもので、そこから漂って来る血の匂いにリサは涎を我慢することができず、着けていたマスクをグショグショに濡らした。

〔「お客様にお知らせ致します。只今、杜せきのした駅におきまして、線路内に放置されておりました異物と接触し、急停車しました。現在、確認作業を行っております。終了まで、しばらくお待ちください。尚、危険ですので、線路内には絶対に降りないでください」〕

 運転士が肉声放送をしている。
 こういう時、ワンマンだと大変だ。
 階段から駅員が駆け上がって来る。
 そして放送が終わった運転士も電車から降りて、電車が轢いた物の確認に向かった。

 愛原:「今の放送からして、人身事故ではないようだな」
 高橋:「そうですね」
 リサ:「うん。血の匂いはしないから」

 今日も少し風が強い。
 例え人間そのものの姿をした第0形態であっても、嗅覚は普通の人間より優れているから、その風に乗って漂う臭いは分かるはずだ。

 高橋:「一体、何でしょうね?」
 愛原:「分からん」

 風が強いので、何かが飛んで来て線路に落ちたのだろうか。
 ホームに屋根はあるが、新幹線の駅と違って、横が壁で覆われているわけではない。
 しかし、さっきのゴツッという音はなかなか重くて硬い物にぶつかったという感じだったが……。
 それにしても、私達はまだ飛行機の時間まで十分過ぎるほどの時間があるからいいが、これからすぐに搭乗する予定の人達には災難だ。
 電車が遅れても、飛行機は待ってくれないからな。
 その逆はあったりするが(深夜到着便に遅延が発生し、その乗り換え列車が終電の場合は繰り下げ運転が行われることがあるし、場合によっては終電後に臨時列車が運転されることもある)。

 リサ:「お昼までには運転再開してくれるといいね」
 愛原:「そうだな……」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする