[7月26日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
リサ:「……ごめんなさい。私は早く友達を作りたかったの……」
事務所の応接室で善場主任に説教を食らうリサ。
善場:「そう言って特異菌パラダイスにした新型BOWエブリンの例とかあるんだからね。エブリンには何の悪気も無かったと言われてるけど、あの大惨事よ。あなたもそうならないように。エブリンの末路……あなたも聞いてるでしょ?」
リサ:「はい……」
無邪気な子供は、時として大人より残酷だ。
残酷な大人でさえ、利権や利害、建前や打算が挟めば子供よりも純情になるというのに。
エブリンは少女型BOWであったが為に、大人より残酷な無邪気な子供の性格が全面的に出てしまったのだろう。
まだ10歳程度の少女の姿をしていたエブリンは、残酷な無邪気を沢山持っていたそうだが、それよりは大人に近い15歳のリサはどうなのだろう?
善場:「最悪は殺処分よ?そしたらあなた、もう2度とここでは暮らせなくなるのよ?」
リサ:「それは嫌……」
善場:「それなら2度とウィルスをばら撒くことはしないように。分かった?」
リサ:「はい……」
ようやく説教から解放されたリサは、応接室から出て来た。
愛原:「よお。済んだか?」
リサ:「うん……」
愛原:「よし。あとはもう心配しなくていい。今日は運が悪かったと思って諦めろ。明日に期待すればいい」
リサ:「明日の楽しみなんて……」
愛原:「斉藤社長から聞いてるだろ?明日には絵恋さんが退院する。その迎えでもやればいい。親友と会えば、少しは気が晴れるだろう」
リサ:「うん、そうだね……」
その時、応接室のドアが開けられた。
善場:「愛原所長、ちょっとよろしいですか?」
愛原:「あ、はい」
私は呼び出しに応じ、応接室の中に入った。
愛原:「リサのことは……」
善場:「あとは検査機関に持ち帰り、リサのウィルスの状態について詳しく調べるだけです」
愛原:「学校のことはどうします?」
善場:「幸いながら、リサがウィルスを植え付けたのは女子生徒だけのようです。子宮頸がんワクチンの接種と称して、TウィルスやGウィルスのワクチン接種を行うことを考えています」
愛原:「いいんですか、それ?」
因みに子宮頸がんというと、まるで癌の一種のように思えてしまうが、実際は性病の1つである。
しかも、男性側から感染させられるものなので、海外では男性も件のワクチンを打つことが一般的だという。
善場:「『ゾンビや化け物に変貌を遂げるウィルスに感染したので、そのワクチン接種です』と素直に言えば、パニックになること請け合いですので」
愛原:「全員が元霧生市民なら大丈夫だと思いますけどね。そういうわけにもいかないか……」
善場:「そういうことです。私共が把握している中、東京中央学園に通う元霧生市民は数人のみです」
愛原:「そのうちの2人は栗原姉妹ですね」
善場:「そういうことです。まあ、幸い夏休みですので、学校側から対象生徒に呼びかけてもらいましょう」
愛原:「でも、本当に大丈夫なんですか?子宮頸がんワクチンと称して、別のワクチンを打つなんて……」
善場:「TウィルスやGウィルスのワクチンは、同時に子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウィルスに対しても効果を発揮するのです。ですので、問題はありません」
因みにそれをリサに打てば、リサは人間に戻れるのではないかと思ったそこのあなた、残念でした。
肉体レベルで『歩くゾンビウィルス』にそんなのを打っても効かないし、よしんば効いたとしても、死ぬだけである。
特異菌に対する特効薬を投与されたエブリンは死にはしなかったものの、ラスボスに相応しい化け物へと変化を遂げたそうだ。
リサもそうならないとは限らない。
エブリンは制御不能となっていたから、あんなこと(“バイオハザード7”またの名を“バイオハザード・レジデントイービル”)になったが、今のリサは制御できている。
え?勝手に学校にウィルスばら撒いただろうがって?
それはそうだが、リサの意思で不活性状態になっているし、何より先輩BOWの説教で済むなんて制御できている方だと思うが?
嘘だと思うなら、説教で済まなかった“バイオハザード7”をプレイすると良い。
但し、説教で済まなかった描写はゲームの後半くらいになるが。
つまり、制御できているのなら、ヘタなことはせずに、確実かつ安全に人間に戻す方法を考えた方が良いというわけだ。
善場:「そこは我々にお任せください」
愛原:「よろしくお願いします。因みに、ウィルスの結果はいつ頃出ますか?」
善場:「まあ、3日もあれば何とか……といったところでしょうか」
愛原:「案外、時間が掛かるものなんですね」
善場:「何しろ取り扱うウィルスが、とても特殊なものですから。今流行りの新型コロナウィルスや、致死量の高い狂犬病ウィルスや、エボラ出血熱のウィルスよりも更に危険なウィルスですので、取り扱いには十分に注意しないといけないのです」
愛原:「しかしリサが自分の意思で不活性化しているのでは?」
善場:「だからといって感染しないに越したことはありません。いつ暴走して、感染者達がゾンビ化するか分かったものではありませんから」
愛原:「……もしかして、霧生市にばら撒かれたTウィルスも、リサの意思によるものだったんですか?」
善場:「それについては今も分かっておりません」
愛原:「えっ?」
善場:「アメリカのラクーン市で蔓延したTウィルスと、霧生市のTウィルスは似て非なるものだとされています。前者は全く制御できないものでしたが、後者はリサ・トレヴァーが制御できるという違いはあります。ですが、見た目には区別は付かないのです。今ここにいる『2番』のリサは、自分のウィルスをばら撒いてはいません。ウィルスをばら撒いたのは、研究所を抜け出した他のリサ・トレヴァー達です」
愛原:「『2番』のリサは、研究所ではばら撒いたとされていますが……」
善場:「それが本当に『2番』が撒いたものなのかは分かりません。何しろ、研究所に残っていたのは彼女だけでしたからね」
愛原:「話は変わりますが、テロ組織についてはどうですか?」
善場:「今のところは安全になったと見て良いでしょう。何しろ、ヤング・ホーク団が洗い浚い喋ってくれましたから」
ヴェルトロは下請け選定を間違えたようだな。
善場:「ただ、肝心のヴェルトロについてはまだ摘発できておりません。引き続き、警戒は怠らないようにしてください」
これが実情である。
あくまで、実行犯がいなくなったというだけだ。
リサ:「……ごめんなさい。私は早く友達を作りたかったの……」
事務所の応接室で善場主任に説教を食らうリサ。
善場:「そう言って特異菌パラダイスにした新型BOWエブリンの例とかあるんだからね。エブリンには何の悪気も無かったと言われてるけど、あの大惨事よ。あなたもそうならないように。エブリンの末路……あなたも聞いてるでしょ?」
リサ:「はい……」
無邪気な子供は、時として大人より残酷だ。
残酷な大人でさえ、利権や利害、建前や打算が挟めば子供よりも純情になるというのに。
エブリンは少女型BOWであったが為に、大人より残酷な無邪気な子供の性格が全面的に出てしまったのだろう。
まだ10歳程度の少女の姿をしていたエブリンは、残酷な無邪気を沢山持っていたそうだが、それよりは大人に近い15歳のリサはどうなのだろう?
善場:「最悪は殺処分よ?そしたらあなた、もう2度とここでは暮らせなくなるのよ?」
リサ:「それは嫌……」
善場:「それなら2度とウィルスをばら撒くことはしないように。分かった?」
リサ:「はい……」
ようやく説教から解放されたリサは、応接室から出て来た。
愛原:「よお。済んだか?」
リサ:「うん……」
愛原:「よし。あとはもう心配しなくていい。今日は運が悪かったと思って諦めろ。明日に期待すればいい」
リサ:「明日の楽しみなんて……」
愛原:「斉藤社長から聞いてるだろ?明日には絵恋さんが退院する。その迎えでもやればいい。親友と会えば、少しは気が晴れるだろう」
リサ:「うん、そうだね……」
その時、応接室のドアが開けられた。
善場:「愛原所長、ちょっとよろしいですか?」
愛原:「あ、はい」
私は呼び出しに応じ、応接室の中に入った。
愛原:「リサのことは……」
善場:「あとは検査機関に持ち帰り、リサのウィルスの状態について詳しく調べるだけです」
愛原:「学校のことはどうします?」
善場:「幸いながら、リサがウィルスを植え付けたのは女子生徒だけのようです。子宮頸がんワクチンの接種と称して、TウィルスやGウィルスのワクチン接種を行うことを考えています」
愛原:「いいんですか、それ?」
因みに子宮頸がんというと、まるで癌の一種のように思えてしまうが、実際は性病の1つである。
しかも、男性側から感染させられるものなので、海外では男性も件のワクチンを打つことが一般的だという。
善場:「『ゾンビや化け物に変貌を遂げるウィルスに感染したので、そのワクチン接種です』と素直に言えば、パニックになること請け合いですので」
愛原:「全員が元霧生市民なら大丈夫だと思いますけどね。そういうわけにもいかないか……」
善場:「そういうことです。私共が把握している中、東京中央学園に通う元霧生市民は数人のみです」
愛原:「そのうちの2人は栗原姉妹ですね」
善場:「そういうことです。まあ、幸い夏休みですので、学校側から対象生徒に呼びかけてもらいましょう」
愛原:「でも、本当に大丈夫なんですか?子宮頸がんワクチンと称して、別のワクチンを打つなんて……」
善場:「TウィルスやGウィルスのワクチンは、同時に子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウィルスに対しても効果を発揮するのです。ですので、問題はありません」
因みにそれをリサに打てば、リサは人間に戻れるのではないかと思ったそこのあなた、残念でした。
肉体レベルで『歩くゾンビウィルス』にそんなのを打っても効かないし、よしんば効いたとしても、死ぬだけである。
特異菌に対する特効薬を投与されたエブリンは死にはしなかったものの、ラスボスに相応しい化け物へと変化を遂げたそうだ。
リサもそうならないとは限らない。
エブリンは制御不能となっていたから、あんなこと(“バイオハザード7”またの名を“バイオハザード・レジデントイービル”)になったが、今のリサは制御できている。
え?勝手に学校にウィルスばら撒いただろうがって?
それはそうだが、リサの意思で不活性状態になっているし、何より先輩BOWの説教で済むなんて制御できている方だと思うが?
嘘だと思うなら、説教で済まなかった“バイオハザード7”をプレイすると良い。
但し、説教で済まなかった描写はゲームの後半くらいになるが。
つまり、制御できているのなら、ヘタなことはせずに、確実かつ安全に人間に戻す方法を考えた方が良いというわけだ。
善場:「そこは我々にお任せください」
愛原:「よろしくお願いします。因みに、ウィルスの結果はいつ頃出ますか?」
善場:「まあ、3日もあれば何とか……といったところでしょうか」
愛原:「案外、時間が掛かるものなんですね」
善場:「何しろ取り扱うウィルスが、とても特殊なものですから。今流行りの新型コロナウィルスや、致死量の高い狂犬病ウィルスや、エボラ出血熱のウィルスよりも更に危険なウィルスですので、取り扱いには十分に注意しないといけないのです」
愛原:「しかしリサが自分の意思で不活性化しているのでは?」
善場:「だからといって感染しないに越したことはありません。いつ暴走して、感染者達がゾンビ化するか分かったものではありませんから」
愛原:「……もしかして、霧生市にばら撒かれたTウィルスも、リサの意思によるものだったんですか?」
善場:「それについては今も分かっておりません」
愛原:「えっ?」
善場:「アメリカのラクーン市で蔓延したTウィルスと、霧生市のTウィルスは似て非なるものだとされています。前者は全く制御できないものでしたが、後者はリサ・トレヴァーが制御できるという違いはあります。ですが、見た目には区別は付かないのです。今ここにいる『2番』のリサは、自分のウィルスをばら撒いてはいません。ウィルスをばら撒いたのは、研究所を抜け出した他のリサ・トレヴァー達です」
愛原:「『2番』のリサは、研究所ではばら撒いたとされていますが……」
善場:「それが本当に『2番』が撒いたものなのかは分かりません。何しろ、研究所に残っていたのは彼女だけでしたからね」
愛原:「話は変わりますが、テロ組織についてはどうですか?」
善場:「今のところは安全になったと見て良いでしょう。何しろ、ヤング・ホーク団が洗い浚い喋ってくれましたから」
ヴェルトロは下請け選定を間違えたようだな。
善場:「ただ、肝心のヴェルトロについてはまだ摘発できておりません。引き続き、警戒は怠らないようにしてください」
これが実情である。
あくまで、実行犯がいなくなったというだけだ。
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