報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの緊急検査」

2021-09-12 20:53:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 三井記念病院からタクシーで事務所に戻った私達。
 ビルの中に入ると、私達はそのまま中を通り過ぎて、反対側の駐車場へ抜けた。
 というのは、タクシーで戻る途中、善場主任から電話があったからだ。
 こういう時、タクシーだとすぐに電話に出れるから助かる。
 で、その電話というのは、リサのウィルス検査をしたいので、戻り次第、ビルの駐車場に向かって欲しいというものだった。
 あえて駐車場前ではなく、新大橋通り側にタクシーを着けてもらったのは、まだどこかでテロリストが見ているかもしれないという警戒感からだ。

 善場:「愛原所長、お疲れさまです」

 駐車場に行くと、そこには1台の救急車のような車が止まっていた。
 『のような』というのは、消防署から出動する救急車はワンボックスタイプが一般的なのに対し、そこにいたのは2トントラックをベースに製造された特殊な救急車だったからだ。
 見た目は救急車というよりは、献血バスのようにも見える。
 もっとも、献血バスは、それこそ大型バスからマイクロバスくらいのサイズの車種が主流で、今時はトラックベースの物は余り見かけない。
 とにかく、8ナンバー車の特殊車両であることは間違いない。
 それでも救急車っぽく見えるのは、キャブの屋根の上に赤色灯が搭載されているからだろう。
 別に緊急出動してきたわけではないのか、普通に駐車場に止まっているだけで、赤色灯は点灯させていない。

 愛原:「善場主任、お疲れ様です」
 善場:「リサのお友達がテロリズムに巻き込まれてしまったようで、お気の毒です」
 リサ:「大丈夫。サイトーは体は元気だから」
 愛原:「それより主任、いきなりリサのウィルス検査をするというのは、どういうことなんですか?」
 善場:「そのお友達が入院している病院、昨今のコロナ禍の影響で、彼女にもウィルス検査をしたのですよ」
 愛原:「あー、PCR検査ですよね」
 善場:「それだけではありませんよ。とにかくその結果、高濃度のTウィルスやGウィルスが検出されたということです」
 リサ:「……ごめんなさい。それ、私の影響」
 善場:「1つ屋根の下で暮らしている愛原所長や高橋助手が感染しているのは想定内ですし、友人関係においても感染者はいるでしょう。しかし、リサにはそのウィルスを活性化させないように伝えてあります」
 リサ:「聞いてます」

 活性化しない限り、TウィルスやGウィルスはただの居候ということになる。
 しかも、他のウィルスを食い倒してくれる役割も持つ。

 善場:「しかし、いくら活性化させていないとはいえ、想定外の高濃度のウィルスが検出されたので、病院側から私共に通報が入ったのです。もしかしたら、リサの体内でウィルスが変異している可能性があるので、こうして緊急検査を行うというわけです」
 リサ:「えーと……」
 善場:「あなたに拒否権はありませんよ。採尿と採血、それから検便に【その他もろもろ】やりますからね」

 よく見るとこの救急車っぽい車、小さく『BSAA』と書かれている。
 どうやら普段は、自衛隊の駐屯地の奥に止まっている移動診療車のようだ。
 善場主任の所属する組織がBSAAの医療部隊に手を回し、この車を用意させたのだろう。
 移動診療車ということもあって、中で検査ができるようだ。

 リサ:「お注射やだー!」
 善場:「注射ではなく、採血です。10本は取りますからね」
 リサ:「10本も!?」

 ブスッ!(注射針がリサの腕に刺さる音)

 リサ:「きゃーっ!」

 有無を言わさない検査だな。
 きっと、日本アンブレラの実験はこれよりもっと非人道的だったのだろう。

 善場:「次は採尿です!」
 リサ:「オシッコ出ないよー!」
 善場:「嫌なら尿道カテーテル突っ込んで、強制採尿します!」
 リサ:「それも嫌ーっ!」

 トイレまでは移動診療車に付いていないので、ビル1階のトイレを使わせてもらうことになる。
 このビルには各階共用トイレが付いているのだが、1階のトイレだけは多目的トイレしかない。
 逆に言えば、他の階には多目的トイレが無いのだが。

 リサ:「うぅ……先生見ないで。恥ずかしい……」
 愛原:「オマエ、前に俺に『オシッコ引っ掛ける』とか言ってなかったか?」
 リサ:「『1番』が先生にそうやってマーキングしたんだもん!だったら、私もそうして上書きしてやるって思ったの」
 愛原:「はいはい。あれはもうとっくに洗い流してるよ」

 で、採尿の次は……。

 善場:「次は検便です!」
 リサ:「ウ○○出ないよー!」
 善場:「はい、これ」
 愛原:「主任、そ、それは……」
 リサ:「何でお浣腸持ってるの!?」
 善場:「それは緊急検査だからです」
 リサ:「ワケ分かんないよーっ!」
 高橋:「てか、よく浣腸って分かったな?」
 リサ:「学校の保健室にもあるから。ひどい便秘でお腹が苦しくなって保健室に行くコとかいるから、それで常備してるんだって」
 愛原:「オマエには要らないシロモノだな」
 リサ:「そうなの。で、そういうコには私が触手を突っ込んで、老廃物を根こそぎ頂く……はっ!」
 善場:「このおバカ!そうやって学校にウィルスばら撒いたのね!!」
 リサ:「で、ででで、でも、活性化はさせてないし……」
 善場:「そういう問題じゃありません!とにかく、さっさと検便してきなさい!」
 リサ:「はーい!」

 リサは市販の浣腸を持ってトイレへ駆け込んだ。
 さすがのリサも、リサ・トレヴァーの先輩には頭が上がらないか。
 善場主任は厳密に言えば、今はリサ・トレヴァーではない。
 人間に戻れた元リサ・トレヴァーで、OGとも言える。
 どこの世界でも、OB・OGの力は強い。
 こりゃ後で、リサは説教の刑を食らうことになりそうだ。
 実はリサが食人しない代わり、老廃物を吸い取る行為については黙認されていた。
 それで食人衝動が抑え切れず、暴走されるよりは……という考えからだった。
 しかし、リサはあまりにも学校内で『獲物』を取り過ぎた。
 さすがの善場主任達も、先述の理由から見て見ぬフリをしていたが、直接報告が入ってしまった以上は動かざるを得なかったというわけだ。

 愛原:「見た限り、リサには何の変化もありませんがね?」
 善場:「見た限りは、ですね。でも実際、体内では何がしかの変化が起こっているかもしれませんし、何より……リサには調子に乗ると、こういう目に遭うという警告にもなりますので」
 愛原:「な、なるほど……」
 善場:「BSAAの車両をレンタルできた時点で、お察し頂ければと思います」
 愛原:「は、はい」

 BSAAでもうちのリサの動きについて、何か怪しいとでも思ったのだろうな、きっと。
 まあ、窓口機関でもあるデイライトがまずは出動してみて、何も無ければそれで良いということだろう。
 そして、そういう判断をするのは、現場の長である善場主任なのだ。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の暴走」

2021-09-12 15:59:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日12:15.天候:晴 東京都千代田区神田和泉町 三井記念病院]

 斉藤絵恋さんの入院先に到着した私は、まず電話で斉藤社長に連絡を取った。
 院内にいると思われるので、通話ではなく、メールにしておく。
 するとすぐに返信があり、院内のレストランで待機しているように言われた。
 そこで私達は院内にあるレストランに向かった。
 お昼時で賑わっていたが、すぐにテーブル席に着くことができた。

 愛原:「先に昼食を食べてていいらしい」
 高橋:「そうですか。じゃあ、注文しちゃいましょう。親友の見舞いより、昼飯が優先の『歩くウィルス兵器』がここにいますから」
 リサ:「煮込みハンバーグ……」
 高橋:「先生は何にしますか?」
 愛原:「俺はカレーでいいよ」
 高橋:「でも今日の夕飯、カレーっスよ?」
 愛原:「マジか。じゃあ、天ぷらそばだ」
 高橋:「じゃあ、俺も」

 料理を注文して待っていると、斉藤社長がやってきた。

 斉藤秀樹:「やあ皆さん、お揃いですな?」

 仕事を抜け出して来たのか、私のよりもずっと高級そうなスーツを着ていた。

 愛原:「社長、お疲れ様です」
 リサ:「サイトーのお父さん、これ、手紙……」
 秀樹:「おー、ありがとう。後で渡しておく。絵恋もきっと喜ぶよ」

 私の向かいに座った社長は、カツサンドとコーヒーを注文した。
 で、先に注文した私達の料理が来る。

 秀樹:「どうぞ、先に食べてください。食べながらでいいので、聞いてください」
 愛原:「お先に失礼致します」
 リサ:「サイトーのお父さん、サイトーの様子はどう?」
 秀樹:「症状自体は落ち着いています。ただ、眠る度に死体が襲ってくるという悪夢に魘されるのと、時折フラッシュバックが襲うというものがありますが」
 愛原:「まるで、霧生市のバイオハザードから生還した人達のようですね」
 秀樹:「それに似ています」
 愛原:「しばらくはカウンセリングを受けることになるわけですか」
 秀樹:「はい。入院そのものは今日までです。明日には退院して、あとは通院ということになりそうです」
 愛原:「そうでしたか」
 リサ:「今、サイトーはどうしてます?」
 秀樹:「ベッドに繋いでおいたよ」
 リサ:「ん?」
 秀樹:「どうやって知ったのか、キミが来ると分かったら、『すぐに会いたい!』と喚いてねぇ……」
 リサ:「会いに行きましょう!」
 愛原:「だからリサ、面会はコロナ禍で禁止なんだって」
 リサ:「わたしなら大丈夫!」
 愛原:「それは分かってる」
 秀樹:「だから、キミの手紙だ。これを渡せば、少しは大人しくしてくれるだろう」
 高橋:「いや、そりゃ甘いっスよ、社長」
 秀樹:「え?」
 高橋:「人間の下半身を甘く見ちゃダメっス」

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「院内の御呼び出しを申し上げます。斉藤秀樹様、斉藤秀樹様。至急、精神科病棟までお戻りください。お言付けがございます。繰り返し、院内の御呼び出しを申し上げ……ああっ!?ちょっと!」「リサさーん!病院にいたら、すぐに来てーっ!会いたいーっ!」「キミっ、やめなさい!すぐに病室に戻って!」「ちょっと!何すんのよ!?放しなさいよ!」「こら、暴れるな!!」ドシン!バタン!……プッ〕

 秀樹:("゚д゚)
 高橋:「ね?LGBTのLとGの下半身の力、凄まじいものがあるっス!」
 愛原:「うん、オマエがBでまだ良かったよ」
 高橋:「いやァ、そんなぁ……」(´∀`*)ポッ
 愛原:「いや、褒めてねーし!」
 秀樹:「ちょ、ちょっとすいません!席を外します!」
 愛原:「お、お疲れさまです……」
 リサ:「サイトー、どうして放送室の場所分かったんだろう?」
 秀樹:「だから言ったろ?ビアンは全身性感帯だから、その力は凄まじいものがあるってな」
 愛原:「読者の皆さん、これはノーマルの私や作者じゃなくて、同じLGBTの人が言ってたことですからね?別に勝手に差別発言してるわけじゃないですからねー?」
 リサ:「先生、誰に向かって言ってる?……ていうか、何かサイトーか怖い」
 高橋:「オメェ、あいつにウィルス送り込んで、操れるようにしたって言ってたじゃねーか?制御不能になってんじゃねーか?」
 リサ:「ウィルスからは何の反応も無いけど……」
 愛原:「何さらっと後でBSAAが掃討しに来るかもしれない発言してんだよ?とにかく、さっさと昼食食べたらズラかるぞ。絵恋さんという中身BOWが襲撃してくるかもしれん」
 高橋:「了解っス」
 リサ:「りょ、りょ!何か私も、今のサイトーには勝てる気がしない……」

 ゲームのシリーズによっては、ラスボスを張ってたオリジナルのリサ・トレヴァー。
 その改良型亜種が怯える瞬間であった。

 高橋:「精神病棟ですから、完全に拘束ですかね?」
 愛原:「……かもな。だけど、今の絵恋さんだったら……」
 リサ:「オリジナルの大先輩みたいに、きっとわたしを探して追ってくるよ……」
 高橋:「俺は一瞬、ターミネーターをイメージした……」
 愛原:「ま、まあ、その……何だ。早く事務所に戻りたいし、帰りはタクシーに乗ろうか」
 高橋:「それはいいアイディアっスね」

 それから私達は昼食をかき込むようにして食べた。
 食後のコーヒーを注文しなかったのは幸いだ。
 会計を済ませて出ようとすると、何故か伝票が無い。
 確認すると、いつの間にか斉藤社長が支払を済ませてくれたのだという。
 御礼は後でするとして、私達は病院の外に出ようとした。

 秘書:「あっ、愛原様でいらっしゃいますか?」
 愛原:「あっ、あなたは確か……斉藤社長の秘書さん?」
 秘書:「さようでございます」

 私と同じくらいの歳の男性秘書がやってきた。

 秘書:「社長をお見かけしなかったでしょうか?そろそろ会社に戻る時間なのですが、連絡が取れませんで……」
 愛原:「あー……それなんですけど、ちょっと……御嬢様にトラブルが発生して、その対応に当たられております」
 秘書:「御嬢様に何かあったのですか?」
 愛原:「まだ精神的ショックが大きいのでしょうな。ちょっと……錯乱されてしまったみたいで……」

 ある意味ではリサのせいでもあるが、ここでそんなことを言う必要はあるまい。

 秘書:「そうだったのですか」
 愛原:「申し訳ありませんが、これはあくまで医療上の問題ですので、私共、民間の探偵業者が入れるところではございません。ここにいてもお役に立てそうにないので、お先に失礼させて頂きます」
 秘書:「お疲れ様でございます」
 愛原:「あっ、あの……よろしければ、社長に言付け願いたいのですが……」
 秘書:「あ、はい。何でございましょう?」
 愛原:「先ほど、この病院のレストランで昼食を御馳走になったのです。その御礼を申し上げたかったのですが、その前にトラブルが発生してしまいましたので……」
 秘書:「かしこまりました。社長に伝えておきます」
 愛原:「お手数お掛け致します。どうか、よろしくお願い致します」

 私は秘書さんに挨拶して、それから病院をあとにした。
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