報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「研修センター地下秘密医療施設」

2021-09-29 20:17:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月29日09:30.天候:雨 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター別館2F→地下研究施設B2F]

 高橋:「どうぞ、先生。お茶が入りました」
 愛原:「ありがとう」

 部屋で待っている間、高橋は室内に備え付けられていた電気ケトルで湯を沸かし、これまた室内にあった茶器でお茶を入れてくれた。

 絵恋:「雨が降ってきたわ」
 リサ:「ゲリラ豪雨?」
 絵恋:「うーん……。普通の低気圧じゃない?」
 リサ:「血圧が低いと、天気の悪い日は具合が悪くなるって聞いたことある」
 絵恋:「気圧が低くなると、血圧の低い人は影響を受けやすいって言うよね。あの小島さんなんかもそうだって」
 リサ:「コジマが」
 絵恋:「『女の子の日』が来そうな時、低気圧が来るタイミングがきっかけで来るって言うから、その点は分かり易いよね」
 リサ:「するとサイトーは高血圧……」
 絵恋:「いや、普通だから!」

 窓際で外を眺めている少女達。
 こちらは山側……というのか。
 北東側と言えばいいのか。
 窓の外から藤野の町や、遠くに中央高速などが見える。
 きっと夜景はきれいだろう。
 しかし、あんまり窓の外を覗いてもいいのか?というと、実は大丈夫。
 真っ先に気づいたのは高橋だが、これは防弾ガラスだという。
 しかも、開口部が換気できる程度に小さく開く程度だ。
 これなら外から狙撃されても、ガラスが割れることはないだろう。
 私が湯呑みで緑茶を啜っていると、室内の電話が鳴った。

 愛原:「電話だ」

 さすがに室内の電話は今風の固定電話で、八王子中央ホテルにあるような黒電話ではなかった。
 着信音もジリジリベルではなく、電子音だ。

 愛原:「はい、もしもし?」
 職員:「愛原さんですか?」
 愛原:「はい、そうです」
 職員:「私、地下の研究施設の者です。本日はよろしくお願い致します」
 愛原:「こちらこそ、よろしくお願い致します」
 職員:「準備ができましたら、エレベーターで地下2階までお越しください。愛原リサさんと斉藤絵恋さんにあっては、動き易い服装にされることをお勧めします」
 愛原:「あ、そうですか。それでは、着替えるのに少しお時間をください」
 職員:「分かりました。10時までに来て頂ければ結構ですので」
 愛原:「10時までですね。分かりました。……はい。それじゃ、失礼致します」

 私は電話を切った。

 愛原:「地下から呼び出しだぞ。リサと絵恋さんは、動き易い服装に着替えた方がいいらしい。多分、色々と検査をするからだろう。持って来てるよな?」
 リサ:「もちろん」
 絵恋:「はい」
 愛原:「じゃ、そっちで着替えて来て」

 私は引き戸の向こう側を指さした。
 引き戸の向こう側は、2段ベッドが1つある。
 そちらがリサと絵恋さんの寝床だ。
 この座卓などがあるスペースを挟んで、反対側にも同じ引き戸がある。
 それを開けると、今度は私と高橋の寝床である2段ベッドがあるという寸法だ。
 ベッドルームは四畳半くらいのスペース、このリビングと言って良いのかどうか分からないが、座卓やテレビのある間は8畳ほどあった。
 どうしてこのような造りになっているのか分からないが、男女グループが1つの部屋に泊まろうとする時、男女別で寝起きしたり着替えたりできるので、その為かと思った。
 しばらくして、2人の少女は学校のジャージに着替えて来た。
 夏なので、上は半袖Tシャツに、下はグリーンのハーフパンツである。

 リサ:「お待たせ」
 絵恋:「着替えは置いて行っていいんでしょうか?」
 愛原:「いいみたいだよ。貴重品だけ持って行けばいいらしい」
 リサ:「なるほど」

 まあ、財布とスマホってことになるか。
 あとは忘れて行けないカードキー。
 絵恋さんはポーチを持って来た。
 リサは手ぶら。
 もっとも、ハーフパンツのポケットが膨らんでいるので、そこに色々と入れているのだろう。
 部屋を出て、カードキーでドアを施錠する。
 そしてその足でエレベーターに向かった。
 このエレベーターは少し変わっていて、L字型になっているのである。
 よく駅のエレベーターとか、福祉施設などで見かけるあのタイプだ。
 変わっているのは、防犯窓が反対側のドアには付いていないこと。
 地下階へ行くボタンが、反対側のドア横にだけ付いているということだ。
 そして、そのボタンの下にはカードリーダーがあって、カードキーをそこに当てないとボタンを押しても反応しない。
 駅などにあるのは比較的新しいタイプだが、ここにあるのは案外古いタイプだということだ。
 表向きには車椅子などのバリアフリーに対応する為であろが、実際は地下へアクセスする為のエレベーターということだ。
 その証拠に、地下階のボタンを押すと、音声案内が無くなった。

 高橋:「何か、荷物用のエレベーターっぽいですね」
 愛原:「確かにな」

 八王子中央ホテルのは古めかしい機種でも、一応宿泊客用の為か、床がカーペット敷であったが、こちらは黒い金属製であった。
 滑り止めの為に凹凸が付けられている。

 リサ:「地下やだな……」

 エレベーターのドアが閉まって降下すると、リサはそう呟いた。
 1階と2階では開くドア側には防犯窓が付いているが、1階から下に行くとその窓の外はコンクリートの壁しか見えなくなる。
 上昇・下降のスピードは比較的ゆっくりである為、油圧式で稼働しているのだろうと推測する。
 指定された通り地下2階へ着くと、ビーッというブザー音が鳴った。
 八王子中央ホテルでは、ドアが閉まる時にブザーが鳴ったが、こちらでは開く時にブザーが鳴るようだ。

〔ようこそ、お越しくださいました。訪問を歓迎します〕

 重々しい金属製のドアが開くと、その先は見覚えのある光景が広がっていた。
 見た目はまるで病院。
 そしてその受付では、先ほどの電話と同じ声の女性職員がいた。

 職員:「おはようございます。本日はよろしくお願い致します」
 愛原:「あ、どうも。よろしくお願い致します」
 職員:「所内ではリストタグを着けて頂きます」
 愛原:「あ、なるほど。カードキー式から、リストタグ式にしたんだってね」
 職員:「さようでございます」

 職員は事務職員なのか、白衣ではなく、普通の事務服を着ていた。
 私達は緑色のタグの付いたリストタグをもらった。
 緑色はビジター用だという。
 所内でもアクセス権限が一番弱く、開けられるドアの数が1番少ない。
 この職員のは一般職員用ということで、青色であった。
 この他に管理職が着けられる上級職員用と、所長クラスが着ける『マスター』があるという。

 職員:「まずは今回、どのような流れで検査が行われるのか御説明させて頂きますので、会議室までご案内致します」
 愛原:「よろしくお願いします」

 私は受付の女性職員に付いて行った。
 途中あった部屋の入口を見ると、どの色のタグで開けられるのか、色の付いたラベルが貼ってあった。
 案内された会議室には緑色のラベルだけが無かったので、一般職員以上の者しか開けられない(入れない)のだと分かる。
 まあ、訪問者が単独で会議室に入ることはないか。
 もし仮に単独で入ることになったとしても、会議の始まる時間までは扉は開放されるに違いない。

 職員:「因みにの皆さんにお渡ししたリストタグは、お手洗いやリフレッシュルームなどの共用エリアくらいしかアクセスできません」
 高橋:「なにっ?トイレに行くのにも、鍵を開けないといけないのか?」
 職員:「ここはそれだけ機密事項を扱っている所なのです。ですので皆さん、どうかここでのことは御内密にお願いします」
 愛原:「ご安心ください。我々探偵業者には守秘義務がありますので」
 職員:「よろしくお願いします。それでは、席にお着き頂きまして、本日の検査担当者の御紹介から始めさせて頂きたいと思います」

 こりゃ本格的だな。
 目的は……リサの体内に宿っているという新種の寄生虫か。
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“私立探偵 愛原学” 「藤野研修センター」

2021-09-29 16:02:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月29日08:37.天候:曇 神奈川県相模原市緑区 JR藤野駅]

 高尾駅から先は様相が一変し、一気に雰囲気が山岳ローカル線と化すという話は前回藤野に電車で行った時も語ったと思う。
 なので、ここでそういう話は省略したい。
 大正時代には既に開通していた区間であり、無限列車もこの路線を通ったのかと思うと感慨深いものがあり、とても歴史の深い所である。
 山岳区間に入るということはトンネルの多い区間でもあるということで、長短様々な長さのトンネルを通過することになる。
 尚、野岩鉄道線やJR飯田線などのように、トンネルの中に駅やホームがあるという事は無い。
 よくアニメや映画なんかでは、こういうトンネルの多い所を走ると、そこで何か展開が待っているというのがセオリーで、私も敵側のBOWが襲撃してくるんじゃないかと思って警戒していたが、そんなことはなかった。

〔「まもなく藤野、藤野です。お出口は、右側です。電車のドアは、自動で開きます。ドア付近にお立ちのお客様、開くドアにご注意ください」〕

 中央快速線内では自動で開閉するドアも、高尾以西は半自動ドアになる。
 ドア横に開閉ボタンが付いているのは、そこで使う為だ。
 しかし今は保温効果よりもコロナ禍による換気促進が優先されている為、半自動運用を中止しているもよう。
 JR東日本管内では、ワンマン列車を除いてそうなっている。

 愛原:「案外大丈夫だったな」
 高橋:「そうですね。意外とトンネルの中で、リサみたいな化け物が襲って来るかもと思っていたんスけど……」
 リサ:「私みたいな、って何よ?」
 高橋:「リサ・トレヴァーの亜流みたいなヤツだよ。最近見ないっスね」
 愛原:「そうだな。きっと、BSAAや“青いアンブレラ”が根こそぎ退治してくれてるんだろう」

 そう考えると、いかにリサが特別扱いされているのかが分かる。
 何しろ……。

 愛原:「あれじゃ、テロ組織も襲って来れんよ」
 高橋:「確かに」

 トンネルを出ると、BSAAのヘリコプターが低空飛行していた。
 私達の護衛の為に追っているのだとすぐに分かる。
 テロリストが現れようものなら、ヘリからの機銃掃射からの特殊部隊の降下作戦開始といったところか。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます〕

 久しぶりに藤野駅のホームに降り立った。
 平場の少ない所に駅を作った為、ホームは狭い。
 有効長を確保する為に、島式ホームでありながら、上下線を少しズラして互い違いにしているのだとか。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車は発車メロディを1コーラスも鳴らすことなく、すぐに発車していった。
 帰りはボックスシートの電車にでも乗れればいいかなと思うが、もし仮にそれに乗れたとしても、そこに座れるかどうかまでは分からない。

 リサ:「先生、残り少なくなった」

 自動改札機をICカードで通過したリサがそう言った。

 愛原:「ああ、分かった。後でチャージして……あ、いや、今ここでチャージしてあげるよ」
 リサ:「おー!」

 改札口を出ると、券売機に行ってリサのカードにチャージしてあげた。

 リサ:「ありがとう」
 愛原:「いやいや……。てか、俺もチャージしておくか」

 この時、そうしておいて良かったと私は後で実感することになる。
 駅を出て広場に出た。

 高橋:「ここからどうするんですか?」
 愛原:「タクシーで行こう」

 私は駅前のタクシー乗り場に止まっているタクシーに乗ることにした。
 黒塗りのプリウスが停車していた。
 高橋は助手席に乗ってもらい、私達はリアシートに乗る。

 愛原:「国家公務員特別研修センターまでお願いします」
 運転手:「はい、分かりました」

 車は静かに走り出した。
 プリウスだと後ろはちょっと狭い。
 少女2人だからいいが、大の大人が3人だと窮屈だろう。
 それでもリサとは、くっつく形に……。
 いや、待て。
 助手席の後ろに座る私にリサがくっつき、そのリサに絵恋さんがくっつくような座り方をしていないか?
 全く。
 因みに天気は八王子市内よりも曇っており、今にも降り出しそうである。
 直射日光は避けられているのだが、その分蒸し暑い。
 車内のクーラーの風が心地良い。
 このタクシーを追ってくる車がいるのかどうか分からないが、少なくともヘリが追尾しているのだけは分かった。
 あのヘリは、まさか研修センターに着陸するのではないかとさえ思う。

[同日09:00.天候:曇 同区内 国家公務員特別研修センター]

 運転手:「正門前でいいですか?」
 愛原:「あ、はい。そこでお願いします」

 堅く門扉の閉じられた正門前にタクシーが止まった。
 料金はタクシーチケットで払う。
 タクシーチケットは同じ種類ではなく、いくつかの種類があって使い分けられるようになっている。
 タクシー会社ごとに使えるチケット、そうでないチケットがあるからだろう。
 その間に高橋が降りて、トランクを開けてもらい、そこから荷物を降ろしていた。

 運転手:「ありがとうございました」
 愛原:「どうもお世話さま」

 最後に領収書を受け取ってタクシーを降りた。
 この辺りはタクシーアプリでタクシーが呼べるかどうか不明なので、地元のタクシー会社の連絡先が書かれている領収書は保管しておいた方が良い。

 高橋:「先生、ピンポンっスか?」
 愛原:「そうだ」

 門扉は堅く閉ざされているので、その横の通用口から入る形になる。
 もちろんそれも施錠されているので、横のインターホンを押す形となる。

 守衛A:「はい、守衛所です」
 愛原:「おはようございます。東京から参りました愛原と申します」
 守衛A:「愛原さんですか。お連れの方の名前は?」
 愛原:「高橋正義、愛原リサ、斉藤絵恋です」
 守衛A:「はい、確認できました」

 頭上の監視カメラが遠隔操作で動いたのが分かった。
 私達をカメラで確認しているらしい。

 高橋:「まるでムショの入口だな」

 高橋がそう呟いた。
 そして、電気錠がカチッと開く音がした。

 守衛A:「どうぞ、お入りください」
 愛原:「失礼します」

 私は開錠されたドアを開けて中に入った。
 高橋達も後ろから付いてくる。
 ドアを閉めてまた鍵が掛けられた時、何だかホッとした。
 いつの間にかヘリコプターも去って行った。
 ここまで来れば、もう安全なのだろう。

 守衛B:「おはようございます!それでは、こちらで入構手続きを」

 守衛所から、水色の半袖シャツに制帽を被った守衛がにこやかに出て来た。
 彼らは直接この研修センターで雇用されているので国家公務員であり、警備会社から派遣された警備員ではない。

 愛原:「はい」

 私達はもう何度かここに出入りしているので、要領については既に分かっていた。
 所定の書類に記入し、手荷物検査を受けて入ることになる。
 前と変わったのは、手荷物検査にX線検査が導入されたこと。

 守衛C:「これは許可されたものですね。これはこちらでお預かりします」

 所持している銃については、一時没収となった。

 守衛B:「それではご案内します」

 私達は守衛さんについて、敷地の奥へと向かう。
 いつもなら宿泊施設のある本館へと向かうのだが、今回は違った。

 高橋:「今日は本館じゃねーのかよ」
 守衛B:「ええ。今回は別館になります」
 愛原:「別館……」

 前にリサと栗原蓮華さんが対決した体育館を挟んで、その別館はあった。
 見た目には本館よりも新しい。
 本館が3階建てなのに対し、こちらは2階建てだった。
 こちらにはフロントが無い代わりに、エントランスのドアはカードキーで開けるタイプであった。

 守衛B:「あちらがエレベーターです。地下の研究施設へは、あちらから向かって頂きます」

 こちらにもエレベーターがあった。
 試しにエレベーターに乗って、2階に行ってみることにする。

 守衛B:「1階と2階の間はセキュリティカード無しで行き来できます。地下の施設に行く時のみ、セキュリティカードが必要です」

 ここまで来ると、今度は緊張してくる。
 テロリストからの安全は確保されている代わりに、自由度はほぼ軟禁状態であるからだ。

 守衛B:「呼び出しがあるまで、部屋でお待ちください」
 愛原:「分かりました。ありがとうございます」

 部屋の造りは本館とは異なっていた。
 木製の2段ベッドという所は同じだが、一部屋が二間に区切られている。
 私と高橋、リサと絵恋に別れて寝られようになっているということか。
 取りあえずは荷物を置いて、待機することにした。
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