報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 富士市内

2021-06-27 11:34:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月22日08:30.天候:晴 静岡県富士市 JR富士駅南口→身延線ホーム]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、富士駅南口です」〕

 バスが終点に到着する。
 ここから見えるホームは比較的遠く、多くの線路を挟んだ先にある。
 そこから見える東海道本線は、この辺りではローカル区間であり、電車もラッシュ時は5~6両編成といったところである。
 バスを降りて駅の中に入ると、一応まだ朝のラッシュ時であることが伺えた。
 始業時間が程近いのか、学生の姿はあまり無く、むしろ通勤客の方が多い。
 だが、中には学校に遅刻しそうなのか、駅構内を全力ダッシュする学生の姿も。
 とはいうものの、トーストを咥えたまま走る女子中高生の姿はさすがに無い。
 地方駅でも、朝ラッシュの光景の基本は変わらぬということだ。

 稲生:「ここまで来ても、さっきのバスみたいにSuicaが使えるのは便利です」
 マリア:「確かに」

 富士駅の改札口も自動化されており、Suicaを使って通過する。
 もっとも、この辺りはJR東海なので、エリア的にはToikaとなる(でも、地元の路線バスはPasmoを主張している)。

 稲生:「特急はさすがに乗れないよな……」

 稲生はコンコースの発車標を見て呟いた。
 先発の身延線下りは特急“ふじかわ”1号。

 マリア:「そう?」
 稲生:「あれだと西富士宮駅、止まらないので」

 急行“ふじかわ”時代は停車していた。

 マリア:「ふーん……」
 稲生:「次の電車は8時52分発か……。これでも、身延線では本数の多い区間なんですよ」
 マリア:「別にいいよ。急いでるわけじゃないし」

 

 稲生:「今のうちに田部井さんに電話しておこう」

 身延線のホームは、幾分東海道本線のホームよりは人が少ない。
 そのホームに下りると、稲生は自分のスマホを取り出した。

 マリア:「ミスター田部井もいるの?」
 稲生:「言い出しっぺは自分だからと、立ち会ってくれるみたいです。それに、いくら同じお寺の信徒さんでも、僕とはあまり面識が無い人達ですから。田部井さんという仲介人が立ち会ってくれる方がいいでしょう」
 マリア:「なるほど」

 稲生は田部井に電話した。

 稲生:「あ、もしもし、田部井さん。稲生です。今、富士駅にいまして……はい。8時52分発の電車に乗りますので、9時半頃にはそちらの御宅に到着するかと……はい。是非、よろしくお願いします」
 マリア:「ミスター田部井は迎えに来てくれないのか?」
 稲生:「フェアレディZじゃ、3人乗れないから」
 マリア:「ああ、あの赤い車……」

 信徒が乗り回す分にはまだ『功徳』だから良いが、僧侶が乗り回すと批判の的になるのだから不思議なものだ。
 尚、作者の父方の菩提寺の住職氏はハーレーダビッドソンを【お察しください】。
 さすが真言宗は景気いいなぁ!


 稲生:「ま、駅からタクシーも出ているので、それで行こう」
 マリア:「分かった。……ああ、それで現金ね」
 稲生:「そういうこと」

[同日08:52.天候:晴 身延線3533G列車先頭車内]

 

 しばらくして、折り返しの普通列車が1番線に入線してきた。
 2両編成のワンマン列車である。

 

 東海道本線を走る同じ形式の電車はオールロングシートだが、身延線のはロングシートとボックスシートが組み合わされたセミクロスシートである。
 名古屋駅付近を走る転換クロスシート車は、基本静岡支社管内にはいない。
 電車に乗り込むと、稲生とマリアはボックスシートに向かい合って座った。
 今は駅舎に隠れているが、下りの進行方向右側に乗ると、富士山側である。

〔「お待たせ致しました。8時52分発、身延線の普通列車、西富士宮行き、まもなく発車致します」〕

 ワンマン列車なので、肉声放送は運転士が行う。
 また、ホームにベルやメロディは流れない。
 車両に取り付けられた車外スピーカーから、発車メロディが流れる。
 ドア開閉時に流れるチャイムは、首都圏では京王電車のそれと音色が同じ。
 そして、電車が走り出した。
 朝ラッシュの終わり掛けであるが、車内はそんなに混んでいない。
 稲生達の座る4人用ボックスシートも、まだ相席になることはなかった。

〔お待たせ致しました。次は柚木、柚木です。柚木では、後ろの車両のドアは開きません。お降りのお客様は、前の車両にお移りください〕

 マリア:「あれから人形に、何か異常はあったかどうか聞いた?」
 稲生:「いえ、そこまでは……。ただ、もし何か異常があったら、僕に言ってくるはずですからね」
 マリア:「そう」
 稲生:「実は僕、少し気になって調べてみたんだけどね……」
 マリア:「なに?」
 稲生:「マリアがあの人形を透視してみて、アメリカのパスポートが映ったってことだけども……」
 マリア:「一瞬だけね」
 稲生:「実はそれだけで、ある人形達のことがヒットしたんだ」
 マリア:「何それ?」
 稲生:「『青い目の人形』」
 マリア:「『青い目の人形』?」
 稲生:「第2次世界大戦前、アメリカから日本に大量に送られた西洋人形のことだよ。あくまで民間レベルでの、日米親善活動の一環だったらしいんだけど……」
 マリア:「第2次世界大戦前とはいえ、結局その後のことを考えたら、その活動は失敗だったのでは?」
 稲生:「そういうことになる」
 マリア:「アメリカ政府が関わってるのなら、私の手に負えないかもしれないよ?」
 稲生:「その時は、先生にお願いすればいいよ。先生達の中には、アメリカ政府高官に何か言える人もいるでしょ?」
 マリア:「いると思うね。誰だったかなぁ……」

 イリーナとかアナスタシアはロシア政府だし、マルファはフランス、ポーリンはイギリスと……。

 稲生:「まあ、あくまでも可能性だから。人形の特徴と、アメリカのパスポートという特徴が一致しただけのね」
 マリア:「私がこれから見に行く人形以外で、そういう人形は現存している?」
 稲生:「してるしてる!何体かは今でも一般公開されてるくらいだよ」
 マリア:「ほお!」

 マリアは久しぶりに目を丸くした。

 マリア:「是非、見てみたいものだ」
 稲生:「後で検索しておくよ」

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2021-06-27 13:05:33
 https://news.goo.ne.jp/article/itmedia_business/business/itmedia_business-20210627_022.html

 JR東日本でもやってくれ~!
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