報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「冬の仙台駅」

2021-01-20 19:51:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日15:00.天候:曇 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 実家に帰省し、顔を出して少し話をした後、私達は公一伯父さんの所へ向かうことにした。
 仙台駅から電車で向かうことにしたのだが、父親が車で実家から乗せてくれた。
 そして西口の一般車乗降場に着いて車を降りようとした時、父親のケータイに母から電話があった。

 父親:「へぁい、もすぃすぃ?……ンあ~、いま学達降ろすところだど?……ああ」

 高橋やリサがいると、なるべく標準語で話そうとする父親だったが、母との電話の時は何の飾りっ気も無い仙台弁丸出しになる。

 父親:「えぁ?帰りに生協さ寄って、玉子買ってこい?この近く、生協どこさあんの?」

 父親はカーナビをテレビにしていたが、それをナビの画面にする。

 愛原:「……!」

 その時、私はふと気が付いて納得してしまった。
 この車も日産・ノートだ。
 それはいい。
 しかし私達はこれと同じ車種に、少し前に乗っている。
 それは栃木県日光市に行った時のこと。
 旧アンブレラの地下秘密実験場の跡を調査した後、リサの学校の合宿所の管理人を名乗る者の車に乗って、日光駅まで送って行ってもらった。
 名前を白井伝三郎と名乗った。
 私は……やっぱり探偵の素質は無いのだろうか。
 この名前でピンと来なければならなかったのに、全く思い出さなかった。
 斉藤社長の指摘で、やっと思い出したくらいなのだ。
 かつて斉藤社長が現役高校生だった頃、科学教師で潜入していた日本アンブレラの研究員だったことを。
 あれからずっと行方不明になっていたが、いま再び東京中央学園が所有する合宿所の管理人に成り済まして潜入していたのだ。
 そして、もう1つ。
 あの車にもカーナビが搭載されていたが、それが本当のナビ画面になっていた。
 普通、学校施設の管理人というと、校務員(用務員)のような扱いだろう。
 それって基本、地元で採用された人だと思うのだ。
 地元民なら、仕事の行き帰りに乗る車のカーナビ画面をナビ画面のままにするだろうか?
 うちの父親みたいに、テレビ画面とかにするのではないだろうか。
 そこにも気づくべきだった。

 高橋:「どうしました、先生?」
 愛原:「俺は……探偵の素質が無いかもしれない」
 高橋:「えっ!?いや、そんな……!そんなことないっスよ!先生が名推理してくれたおかげで、俺は今ここにいるんスから!でなかったら、俺は今頃、冤罪で拘置所かムショのどっちかっスよ」
 愛原:「本当の名探偵だったら、ナビの画面でパッと閃くんだろうなぁ……」
 リサ:「そんなの、マンガやアニメの世界だけだよ、先生」
 愛原:「リサ?」
 リサ:「逆に言えば、先生が迷探偵だと誤断して、アンブレラが油断して、更に尻尾を出してくれるかもしれないよ?」
 愛原:「リサ……!そう言ってくれるのか?」
 リサ:「先生は名探偵だよ。アンブレラのヤツに自分の名前を言わせるほどにね」
 高橋:「そういうリサも、あの時、アンブレラの研究員だって気づかなかったのか?」
 リサ:「研究員の顔と名前なんて、いちいち覚えてないよ。全員がリサ・トレヴァーの研究に関わってたわけじゃないんだから」
 愛原:「それもそうだな」

 私達は父親と別れると、駅構内に入った。

 高橋:「前に乗った普通電車ですね?」
 愛原:「そうだ。まあ、45分くらいで着くから」

 SuicaやPasmoが使えるので、それで改札口を通る。

 愛原:「15時25分発、小牛田行きは1番線か」

 改札口から1番近いホームである。
 階段を下りてホームに向かうと、まだ電車はいなかった。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の列車は、15時25分発、普通、小牛田行きです。この列車は、4両です。……〕

 愛原:「伯父さんにメールしておこう。15時25分発の電車に乗るから、小牛田に着くのは16時10分になるって」
 高橋:「なるほど。しかし先生、泊まりはどうするんですか?」
 愛原:「もう返信来た。『迎えに行く。今夜はうちに泊まってけ』だってさ。想定内だよ」
 高橋:「ガチの『田舎に泊まろう』ですね」
 愛原:「まあな」
 高橋:「いい経験ですよ。『田舎の祖父ちゃんち』に泊まる機会なんて、俺には無かったっスからねぇ……」
 リサ:「私も」
 愛原:「伯父さんに会ったら、そう言ってやれ。しかし、迎えに来てくれるのかぁ……。どうするんだろ?プリウスはあの時のアタックで全損したわけだし、まさか本当に軽トラで来るつもりじゃないだろうなぁ……?」
 高橋:「その時は俺とリサでタクシーで追い掛けますんで、先生は軽トラに乗ってください」
 愛原:「その方がいいか」

〔まもなく1番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。この列車は、4両です。折り返し、15時25分発、普通、小牛田行きとなります。……〕

 JR西日本の山陽エリア辺りだと、賑やかな接近メロディと共に明るい声で接近放送が流れると聞いたが(岡山駅だと“桃太郎”とか“瀬戸の花嫁”とか。ところで、“がんばれカブトガニ”って何?)、JR東日本ではどこも淡々とした接近放送である。

 高橋:「ここから北の方から来る電車ですよね?」
 愛原:「そうだよ」
 高橋:「随分雪とか乗ってそうですね?」
 愛原:「小牛田辺りだとどうかな……。仙山線の山形とかから来る電車なら有り得るけどな」
 リサ:「雪が乗ってるの?」
 愛原:「そう」

 この時、私と高橋は屋根に雪を乗せて走って来る電車をイメージしていたのだが、リサは違うイメージをしていたようだ。

〔せんだい~、仙台~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
〔「秋田新幹線、仙山線ご利用のお客様、雪の影響が出ております。駅の案内にご注意ください」〕

 上り電車がやってきてドアが開くと、ここまでの乗客がぞろぞろと降りて来た。

 愛原:「ちょっとだけ乗ってるか?」
 高橋:「あー、そうっスね。ちょっとだけっスね」

 屋根の上にはうっすらと雪が積もっていた。
 しかし、リサは車内を見ていた。

 リサ:「先生、雪(ダルマ)なんて乗ってないよ?」
 愛原:「え?」
 高橋:「あ?」
 リサ:「んん?」

 認識の違いに気づいたのは、車内に入ってから。
 先頭車のボックスシートに座った私達は、それでしばらく間、大笑いした。
 新型コロナウィルス対策として、公共の場での大きな声での笑いは不謹慎なことこの上無いのは分かっているが、さすがにこれは笑いを堪えきれなかった。
 一応、マスクは全員しているので念の為。
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“私立探偵 愛原学” 「帰省の探偵」

2021-01-20 15:38:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日11:39.天候:曇 宮城県仙台市青葉区 JR東北新幹線1015B列車1号車内→仙台駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は年明け早々、実家に顔を出す為に東北新幹線に乗っている。
 普通車3人席には、他にリサと高橋も乗っている。
 折からの新型コロナウィルスが猛威を振るう中、私も最後まで判断に迷ったが、結局は顔を出すことにした。
 但し、実家には泊まらない。
 あくまでも土産を渡して、少し話をするだけ。
 リサは体内に有したTウィルスだのGウィルスだのがコロナウィルスを食い殺してしまうから感染の危険は無いが、私や高橋がな。
 もちろん症状など全く無いのだが、だからといって安心できないのが、インフルエンザと違う所。
 インフルエンザは例え抗体があっても重症化しないだけで、感染したら漏れなく発症するのに対し、新型コロナウィルスは感染しても無症状であることがあり、しかもその状態でも他人には感染させるというタチの悪いウィルスなものだから困るのだ。
 もっとも、インフルエンザだって潜伏期間中でも他人には感染させるのだという(潜伏期間は『無症状』とは見做されない。『無症状』とは潜伏期間を過ぎて、本来なら症状があるはずなのに、見当たらない状態のことをいう)。

 リサ:「雪が積もってる」

 窓側に座っているリサが外を見ながら言った。

 愛原:「ああ。予報通りだな」

 栃木県までは見られなかった雪も、福島県に入ってから見られるようになった。
 そして、郡山駅や福島駅では降雪していた。
 仙台市内に入ると雪は止んだが、太陽は時々雲間から少し顔を覗かせるだけで、空は殆ど曇っていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車が速度を落とし始めると、車内に到着放送が響き渡った。

 高橋:「先生。御実家には御両親の他に、例の博士もいらっしゃるんですか?」
 愛原:「いや、どうも小牛田(こごた)の家にいるみたいだな。俺達が訪ねて来るのを待っているんだろう」
 高橋:「先生の先生ですから、『オマエが来い』とは口が裂けても言えませんが、ちょっと微妙っスね」
 愛原:「いや、先生じゃなくて、親戚の伯父さんだよ」
 高橋:「あっ、サーセン!」

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、仙台、仙台です。到着ホームは11番線、お出口は右側です。お乗り換えの御案内を申し上げます。……」〕

 愛原:「降りる準備をしておこう。お餅とお節料理忘れんなよ?」
 高橋:「もちろんっス」

 高橋はいつもラフな服装である。
 この前は何故かスーツを着ており、リサも制服を着ていたが、今は2人とも私服だ。
 リサは相変わらず短いスカートに、ニーソックスを履いている。
 東北の寒さをナメているように見えるのだが、それでもBOWは寒さに強いんだよなぁ……(冬の北欧や東欧で元気に活動した個体もいる)。
 でもさすがに、上にはジャンパーを羽織るリサ。
 列車は下り副線ホームに入った。
 ここから回送列車として、更に北側にある車両基地まで向かうのだろう。

〔仙台、仙台。仙台、仙台。ご乗車、ありがとうございました。……〕

 列車を降りると案の定、乗客の姿は疎らだった。
 一時的にはホーム上の人は多くなるのだが、すぐにまた消えて行く。
 そして何より、東京より寒い。

 愛原:「よし。じゃあ、行くぞ」
 高橋:「はい」
 愛原:「この前の爆発事故からさすがに復旧したみたいだから、もう大丈夫だと思うけどな」
 高橋:「それは良かったっスね」

 因みに裏庭に開いた、旧アンブレラの秘密研究所跡に繋がっている地下道だが、これも塞いだという。
 私達は改札口を出ると、タクシー乗り場に向かった。

[同日12:00.天候:曇 仙台市若林区某所 愛原の家]

 仙台駅から乗ったタクシーは、チェーンを巻いていた。
 平地ならまだしも、台地へ向かおうとすると、チェーンを巻かなくてはならないのだという。
 もっとも、雪深いとチェーンを巻いていても厳しい。
 それでやっと実家に到着する。

 母親:「あらまあ、お節料理作って持って来てくれたの?」
 愛原:「高橋が作ってくれたんだ。これでも食べて、ゆっくりしてよ」
 母親:「お餅もあるのねぇ」
 愛原:「高橋がついて、リサがこねたんだ」
 父親:「そして、『座りしままに食うは学』ってか」
 愛原:「父さん!」
 母親:「こんなにあるんだもの。皆で食べましょう。お雑煮は作ってあるから、それと一緒にね」
 愛原:「悪いね」
 高橋:「ゴチになります!」
 リサ:「わぁ!コタツなのん!」

 寒さに強いはずのBOWだが、コタツに入るとまるで猫のように丸くなる。

 父親:「はっはっは!こっちは寒いだろう。ゆっくり温まって行くといい。伯父さんの所には行くんだろう?」
 愛原:「そういうことになるね。小牛田駅から、何気に遠いんだよなぁ……」
 父親:「迎えに来てくれるよ。プリウスで」
 愛原:「プリウスアタックの責任取らされるのはカンベンだよ」
 父親:「じゃあ、軽トラだな」
 愛原:「定員オーバーだし。いいよいいよ。タクシーで行くよ」
 父親:「仙台駅までだったら、俺が送って行ってやるよ」
 愛原:「あ、そう。悪いねー」
 リサ:「むふー」(コタツの温かさに溜め息を吐いている)
 父親:「そして、これはお年玉だ」
 高橋:「ええっ!?マジっスか!?あざース!いや、ありがとうございます!」
 リサ:「わぁい!ありがとうございますぅ!」
 愛原:「リサはともかく、高橋にも渡すなんて、きっと明日は吹雪だな」
 父親:「うるさいな。どうせオマエのことだから、ロクに冬のボーナスも支給してないんだろ?」
 愛原:「支給したよ!」
 父親:「ボーナスというのはな、学。一定の重量があって、一定の厚みがあって、そして何より机の上に立てることができる額を支給できて一人前の経営者だ。従業員である彼に渡したボーナスというのは、それか?」
 愛原:「う……。そ、それは……」
 高橋:「いや、大丈夫っスよ、おやっさん!俺はボーナスもらえるだけでありがたいっス!」
 愛原:「ほら、高橋もこう言ってるし……」
 愛原:「社員が社長に気を使ってるだけだよ。それに胡坐かくな」
 愛原:「ううっ……」

 さすがは私の親父。
 現役時代、労働組合の委員長だっただけのことはある。
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富士急静岡バス全便運休のお知らせ。

2021-01-20 15:01:13 | その他
 http://www.shizuokabus.co.jp/2020/11/08/7187/

 辛うじて1往復運行を保っていた富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”も、ついに今日から全便運休となりました。
 公式サイトでは『当面の間』となっていましたが、日蓮正宗公式機関紙“大白法”1月16日号(第1045号)によれば、2月29日までとのこと。
 尚、新富士駅から運行されている登山バスにあっては通常通りの運転だそうです。

 これは途中経路上の東京都、神奈川県に新型コロナウィルス緊急事態宣言が発令されたことに際し、乗客が激減したことによります。
 私は東京駅日本橋口に程近いビルに勤務しているのですが、そこに到着する高速バスの利用者が明らかに少なくなりました。
 試しに昨日まで運行されていた“やきそばエクスプレス”東京到着便の乗客数を数えてみると、2~3人のみという有り様でした。
 昨日は御開扉があったにも関わらず、です。
 こういうことが毎日続いていましたので、いずれはこれも運休になるのではと懸念していましたが、その通りになってしまいました。

 運休期間を2月29日までとした理由については、大石寺側の視点で見ると分かり易いでしょう。
 菅総理大臣は緊急事態宣言発令期間を2月7日までとしましたが、本当にそれまでに感染者数が減るのか(ステージ3まで下げられるのか)懐疑的な国民が多数だと思います。
 明らかに延長される確率の方が高い。
 バス会社側もそれを見越し、そして大石寺側も、せめて3月の春季彼岸会までには運転再開して欲しいという思いから2月29日までにしたのだろうと推測します。
 一公共交通機関に一宗教団体の意向が反映されるのは、無宗教の方々から見れば変な話かと思うかもしれませんが、何もこの高速バスに限らず、そういうことは多々あるものです。
 ぶっちゃけ、今年は運転されなかった初詣客輸送臨時列車の運転もそれに当たるかと。
 かつては(今も?)日蓮宗池上本門寺で御会式が行われる日には、東急池上線で臨時列車が運転されていた(されている)ことは地元民や鉄ヲタなら誰でも知っていることです。
 また、創価学会が日蓮正宗の団体だった頃は、身延線で多数の臨時列車が運転されていたことも有名な話です。
 鉄道ダイヤをも動かす宗教団体、侮らない方が良いかと。
 それでさえ動かせるのですから、バス路線のダイヤを動かすことも可能なわけです。
 しかし、大石寺としては緊急事態宣言が発令されている1都3県から信徒を呼ぶわけにも行かず、バス会社側も地元民や信徒の数が減って赤字になった路線をいつまでも運転しているわけにはいきませんから、それでついに今日から運転を中止したのでしょうね。

 新富士駅からの登山バスは通常通りというのは、まだ静岡県内には緊急事態宣言が発令されていないこと、他にもまだ発令されていない自治体が存在すること、そして何より御開扉そのものが中止になっているわけではないので、バス会社としてもまだ一定の需要があると見ているのでしょう。
 ただ、見方によっては高速バスが運休になったことは、東京方面在住の信徒からすれば1つの指針にはなるのかなと思います。
 私は緊急事態宣言が解除されたら御登山をと思っていたのですが、それに加えて件の高速バスが運転再開されたらという基準もできたわけです。
 障魔に打ち勝つ為には判断力も必要になってきますが、その判断の材料となるものが存在するのは良いことでしょう。
 判断を誤って失敗を何度も繰り返して来た私にとっては、むしろありがたいことです。

 これで私の初登山は3月以降という1つの判断ができました。
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