報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「地下実験場の化け物達」

2021-01-09 21:10:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月13日14:00.天候:不明 栃木県日光市某所 旧・日本アンブレラ地下実験施設]

 突然、昭和時代の木造校舎を模した実験施設に迷い込んでしまった私達。
 そのトイレから現れたのは、長い手の化け物だった。
 明らかに捕まればアウトである。
 しかし!

 愛原:「当たんねぇな、クソ!」

 専門的な銃の訓練を受けたわけではない上、狭いトイレの中、それにウネウネと蛇のように動き回る手達に、私や高橋は銃弾を当てることができなかった。
 撃ち方を間違えれば、互いの流れ弾に当たってしまう。

 リサ:「はーっ!」

 第1形態に変化しているリサが、長く鋭く尖った爪で引っ掻き攻撃をして、何とか対処している。
 手の化け物もリサがネックだと思ったのか、彼女に集中的に向かった。

 愛原:「リサ!!」
 リサ:「くっ!放せ!!」

 リサは手に捕まり、天井付近まで持ち上げられて逆さ吊りにされた。
 スカートの中身が丸見えになるが、リサは黒いスパッツを穿いている。
 今日は穿いて来たようだ。

 リサ:「私を誰だと思ってるんだ!?リサ・トレヴァーだぞ!」

 肝心の噛み付き攻撃だが、仮面を着けているせいでそれができない。
 そ、そうか!どうして日本アンブレラがリサ達に仮面を着けさせたかが分かった。
 制御装置という表現は随分と曖昧だが、恐らくこれはアンブレラ関係者の与り知らぬ所で勝手に人食いをしないようにする為の対策だったのだろう。
 とある鬼退治の物語で、鬼にされたヒロインは人食いを防ぐ為、竹製の口枷をしていたが、アンブレラは口だけでなく、顔全体を覆う方針を打ち出したようだ。

 高橋:「テメェ、コラ!リサを放しやがれ!」

 リサに全集中していた手の化け物達、高橋はその隙に手に近づいて手持ちのマグナムを発砲しようとした。

 愛原:「高橋、危ない!」

 だが、別の手がリサから離れると、代わりに高橋の首を後ろから掴んだ。

 高橋:「しまった!」

 こ、これはまずい……!
 手の1本が高橋の首を締め上げ、高橋はマグナムを落とした。
 それを別の手が拾い上げ、リサの所へ持って行く。
 そしてリサを掴んでいた別の手が、リサの仮面を取り去ると、口をこじ開けた。
 次に、その口の中にマグナムの銃口をねじ込む。

 リサ:「が……あがが……!」

 手の化け物は、リサの口の中に直接マグナムを撃ち込もうというのだ!

 愛原:「ど、どうする……!?どうしたらいい?どうしたら……」

 その時、ピッタリ閉じられていたドアがこじ開けられた。
 外から暖簾を潜るような形で入って来たのは……。

 愛原:「た、タイラント!?」

 タイラントだった。
 身長は2メートルを超える大男だが、トレンチコートを羽織り、中折れ帽を深く被ることで人間に化けているつもりでいる。
 タイラントはリサと手の化け物を一瞥すると、瞬時に手の化け物に向かった。
 手の一本がタイラントに向かってくるが、タイラントはその手を掴むと、持ち前の握力で手の骨を粉砕骨折させた。
 その手がボトッと床に落ちてのたうち回る。

 愛原:「こ、このっ!」

 私はそれを足で押さえつけると、手持ちのハンドガンで止めを刺した。
 手はリサの口にねじ込んだマグナムをそこから離すと、タイラントに向けて発砲した。
 それはタイラントに当たり、風圧でタイラントの帽子が脱げてしまうが、タイラントはビクともしない。
 次々にリサを掴んでいる手を掴んでは握力で骨折させたり、真っ二つにへし折ってしまったりと、正に『赤子の手をひねる』という言葉の通りの行動をした。
 しかし、高橋の首を掴んでいる手だけはそのままだ。

 リサ:「あ、ありがとう。タイラント君。あの……ついでに、あの手も殺してくれない?」
 タイラント:「御意」

 最後に高橋を掴んでいた手もあっさり倒すタイラント。
 さすがはリサと並ぶ上級BOWだ。
 恐らく力勝負だけなら、リサよりも上だろう。
 にも関わらず、日本国内で製造されたタイラントは必ずリサ・トレヴァーの命令を聞くように設定されているのだ。
 これは恐らくアンブレラのアメリカ本体が、タイラントの制御に悉く失敗して暴走させてしまった為、それを見た日本アンブレラが、『それなら同じ上級BOWに制御させてみてはどうか?』というアイディアによるものだという。
 もっとも、それすら難しく、実際に成功したのは、ここにいる『2番』のリサだけであった。

 リサ:「思い出した。この施設、もっと下の階があって、そこにタイラント君が眠らされてるんだった」
 愛原:「そうなのか!?」
 リサ:「他にも今みたいな化け物がうようよいるから気を付けて」
 愛原:「ほ、他にどんなのがいるんだ?」

 私がリサに近づこうとすると、タイラントが殴り掛かって来た。
 すかさずリサが、

 リサ:「タイラント君!この人達はいいの!」

 と、強く言うと、タイラントはピタッと動きを止めた。
 そして振り上げた拳を下ろすと、

 タイラント:「御意」

 と、答えた。

 リサ:「他にも……多分、“逆さ女”とかいると思う」
 愛原:「マジか!……じゃあ、随分長居してしまったし、そろそろ帰ろっか」
 高橋:「先生、タイラント連れて帰る気ですか!?さすが名探偵!パネェっすね!?」
 愛原:「いや、こちとら大ボスキャラ、リサ・トレヴァーと同居してるじゃないですか」
 リサ:「むふー」

 タイラントだってヘタすりゃラスボスクラスだが、取りあえずリサが制御している分には大丈夫だろう。
 さっさと外に出て、善場主任達に引き渡そう。
 私達は廊下に出ると、さっきのドアから出ようとした。
 だが、ドアが開か無くなっていた。
 具体的には頑丈な鉄格子がされていて、ドアを開けられないのだ。

 愛原:「だ、誰だ!?こんな嫌がらせしたのは!?」
 リサ:「ここからは出られないよ。別の出口を探さないと……」
 愛原:「タイラントとオマエの力でこじ開けられないか!?」
 リサ:「無理だよ。だからタイラント君も、あの化け物達も脱走できなかったんじゃない」
 愛原:「なっにーっ?」

 リサが仮面を着け直した時だった。

 高橋:「せ、先生!廊下の向こうから何か来ます!」
 リサ:「あれはデーモンキッズ!あれだよ!宮城の温泉に現れた餓鬼みたいなヤツ!」
 愛原:「あれか!?」

 てか、デーモンキッズって言うんだ、餓鬼って……。
 多分、日本アンブレラが勝手に付けた名前なんだろう。
 とにかく、餓鬼によく似たBOWが……鳴子温泉の時は一匹だけで、それでも結構倒すのに苦労した記憶があるのに、今度は5~6匹はいるぞ!?

 愛原:「高橋!迎撃準備!」
 高橋:「了解です!」

 全裸の5歳児だが、体は土気色。
 白目と小さな牙を剥き出しで、笑いながらこっちへ走ってくる。

 リサ:「私とタイラント君で何とかするから、先生達は休んでて」
 愛原:「えっ!?」

 この実験施設において、大きく想定外なことが発生している。
 それはこの実験参加者に、リサ・トレヴァーがいること。
 そしてそれにリサを慕うタイラントが馳せ参じ、一緒に参加していることだった。
 大ボス、ラスボスクラスの上級BOWがタッグを組めばどうなるか?
 チート以外の何物でも無いのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする