報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の夜」

2021-01-03 21:42:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 私達は斉藤家の夕食に招かれた。

 斉藤秀樹:「うちのコックが腕によりを掛けて作ったディナーを、どうぞご堪能ください」
 愛原:「大変恐れ入ります。頂きます」
 高橋:「いただきゃス!」
 リサ:「おー!美味しそう!いただきます!」
 斉藤絵恋:「いただきます。……うちのサファイア、イケメンが来るとハッスルするのよねー」
 ダイヤ:「いつものことです」
 絵恋:「この人はパールが手を付けてるんだから、『流血の惨を見る事、必至であります』的なことはカンベンしてよねー」
 愛原:「サファイア?」
 秀樹:「コックのことですよ」
 高橋:「メイドのことをコックと呼ぶのも違和感ありますね」
 愛原:「ヴィクトリア朝では、女性のコックも結構いて、一応それもメイドの1つにカウントされていたんだよ。ただ、他のメイドとはやっぱり一線隔されていたみたいだけど」
 秀樹:「愛原さんはお詳しいですね?」
 愛原:「ただの雑学です。本とかに書いてあるのを読んだだけでして……」
 秀樹:「聞いたか、絵恋?オマエも遊んでばかりいないで、たまには本でも読め」
 絵恋:「ま、マンガなら読んでるわよ……」
 愛原:「まあ、『マンガで分かる○○』とかあるからね」

 でも、『マンガで分かる六法全書』とか、『マンガで分かる立正安国論』とかは無いんだよなぁ……。

 秀樹:「それとこれとは別ですよ。だいたいオマエ、こんな真冬に地下のプールなんか入って!」
 絵恋:「いいじゃないのよぉ。冬場ずっと放置しているくらいなら、使った方がいいじゃない」

 それでリサのヤツ、水着を持って行ったのか。
 冬場はどうせ着ないからと、スクール水着を持って行ったが……。

 愛原:「冷たくないの?」
 絵恋:「温水プールなんです」
 愛原:「そうなのか」

 邸宅にはプールが付いているイメージであるが、この斉藤家も御多分に漏れずといったところか。
 但し、敷地面積の都合から、斉藤家の場合は地下室に設置している。
 なので、面積は大した広さではないという。

 リサ:「だいたい10メートルくらい?」
 絵恋:「そんなところね」
 愛原:「学校と同じ25メートルあったら凄いわ」

 私は呆れた。
 因みに乗り物で言えば、10メートルは大型バス1台分、25メートルはフル規格の新幹線車両1両分に相当する。

 絵恋:「でも、望月興業の社長さんちのプールはそれくらいあるって言ってたよね?」
 秀樹:「自前で所属タレントの撮影もするくらいだから用意しているだけであって、自分用ではないだろう」

 それ、『例のプール』じゃないだろうな。

 リサ:「今度は先生も入ろう」
 愛原:「俺は水着持って来てないって」
 リサ:「大丈夫。水着なんて要らない。私もサイトーとは最後、裸で泳いだ」
 斉藤:「り、リサさんがどうしてもって言うからぁ……」

 絵恋さんは顔を赤らめて言った。

 リサ:「裸で泳ぐと気持ちいい」
 愛原:「それはどこかで体験したのか?」
 リサ:「アンブレラの研究所」
 高橋:「言うと思ったぜ、チクショー」
 秀樹:「全く。アンブレラにも困ったものですね。おかげで、製薬業界の信用ガタ落ちです。その信用を回復する為の新会社だというので出資してみたら、これまた違法操業だったんですから、救い無しですよ」
 愛原:「それ、“青いアンブレラ”のことですか?」
 秀樹:「はい。確かに欧米では、民間軍事会社として活動する手もアリではあったでしょう。しかし、日本は毛色が違います。確かに霧生市のバイオハザード事件は、アメリカのラクーン市やトールオークス市のそれと同じであり、鎮静には軍事力も必要かとは思います。しかしその2つの町にはBSAAが展開していなかった。しかし、今はBSAAという国連機関が存在します。日本にも地区本部があります。彼らに任せて、せめてどうしてもというのなら、合法的な軍属として活動していれば良かったのです。しかし、それでは満足できなかったのか、BSAAを差し置いて前に出てしまった。日本政府としては、そんな非合法活動は摘発の対象になるわけです」
 愛原:「そうですね」

 BSAAはバイオハザード事件が発生した際、その鎮静化をいち早く行うことを活動内容とする。
 その為には地元政府の了承が無くても、勝手に活動することが許されている。
 そして、それに日本も批准しているのだ。
 日本の自衛隊や在日米軍を差し置いて、である。
 どうしてもこの2つの軍事組織は活動内容に制約がある為、BSAAがどうしても前に出ざるを得ないのである。
 実際、霧生市のバイオハザード事件の際、自衛隊などが展開した際には、とうにパンデミックも過ぎ、生き残った市民達も大半が自力で脱出した後であった。

 秀樹:「愛原さんの所で働いていた元事務員さんはどうしてますか?」
 愛原:「拘置所でおとなしくしていますよ。あとは来年行われる初公判を待つだけです。彼女自身の罪は軽いものなんですが、彼女の政府への協力次第で、執行猶予付きが実刑かが決まると言われています」

 さすがに不起訴にも起訴猶予にもならなかった。
 彼女自身が実際に“青いアンブレラ”のヘリに乗り、許可されていない銃器を使って発砲していたのは事実だからだ。
 しかも“青いアンブレラ”が日本政府に提出した構成員名簿に、高野君を載せていなかったという杜撰ぶり。
 結果的に組織も、高野君自身も違法活動として摘発されてしまったわけである。

 秀樹:「そうですか。私が彼女に付けた弁護士が、上手くやってくれるといいのですが……」
 愛原:「何から何までお世話さまです」

 私は深々と頭を下げた。

 秀樹:「いえいえ。あなた達の事務所は楽しそうで羨ましい。見てて飽きないですよ。ま、どうぞお気になさらず」

[同日22:00.天候:晴 斉藤家]

 夕食が終わって私達は客間に戻った。

 リサ:「先生、お風呂上がった。次、どうぞ」

 リサが浴衣を着てやってきた。
 浴衣はこの家で貸し出されたもの。
 私達も貸し出されている。
 リサの場合、サイズがピッタリであった。

 愛原:「ありがとう。絵恋さんと一緒に入ったの?」
 リサ:「うん。何か、私の肌に触れる度に『萌え萌え』うるさくて……」
 高橋:「まあ、気持ちは分かる」
 リサ:「私の?サイトーの?」
 高橋:「……両方だ。先生、行きましょう」
 愛原:「ああ」

 両方の気持ちが分かるということは、やはり高橋君はLGBTのGではなくBということで確定だな。

 リサ:「私は先生と入りたかった……」

 リサがボソッとそんなことを呟いた。

 高橋:「先生を感染させようなんて、100年早ぇからな?」
 リサ:「感染とかそんなこと関係無く」
 高橋:「さっさと部屋に行け。先生も早いとこ行きましょう」
 愛原:「ああ。じゃリサ、また明日」
 リサ:「おやすみなさい」

 私達はホームエレベーターに乗り込んで1階へ向かった。
 別に階段でも良かったのだが、たまたまエレベーターが2階に止まっていたので。

 高橋:「先生、早く乗らないとリサに追い付かれて食われますよ」
 愛原:「オマエなぁ……」

 しかし、ドアが閉まる直前、リサがドアの真ん前まで来て、いかにもこじ開けようとするかのように見えた。
 BOWの追跡から逃れる為、エレベーターに急いで乗り込んでマップ移動する。
 そんなシーン、ゲームにも映画にもあったな。
 でも、場合によってはエレベーターのドアが開いた途端先回りされていて、そこで追い付かれて襲われるなんてバッドエンドもあったか。
 幸いリサはそんなことせず、1階でドアが開いても、先回りされているなんてことはなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 5

2021-01-03 10:22:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日15:40.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家1F応接間]

 私と高橋が応接間に通されると、そこに斉藤社長はいた。

 斉藤秀樹:「やあ、愛原さん、高橋さん。御足労ありがとうございます」
 愛原:「斉藤社長、本日はお招き頂き、恐れ入ります」
 秀樹:「到着したばかりで何なのですが、明日のことについてお話ししても?」
 愛原:「はい、もちろんです」

 私達は斉藤社長の向かいのソファに腰かけた。

 ダイヤ:「失礼致します」

 コードネーム“ダイヤモンド”のメイドさんがお茶を持ってくる。

 ダイヤ:「アップルティーが入りました」
 秀樹:「ああ。ここに置いてくれ」
 愛原:「凄いですね。アップルティーなんて、今年初めて飲みますよ」
 秀樹:「はは、そうですか。他にもハーブティーなんかも用意してるんですよ」
 高橋:「グリーンハーブっすか?レッドハーブっすか?」
 愛原:「こら、高橋」
 秀樹:「ハハハ!ブルーハーブもあるよ」

 高橋のボケに、ボケで返した斉藤社長。
 いや、斉藤社長の場合はガチかもしれない。
 ボケではなく、本当に回復薬としてのハーブを使ったハーブティーくらい用意できるかもしれない。

 斉藤:「明日のことですが、これを御覧ください」

 斉藤社長はリモコンを操作した。
 すると、窓の外側にあるシャッターが電動で閉まる。
 そしてまた別のリモコンを押すと、照明が消えた。
 その代わり、部屋の白い壁に何かが映し出された。
 それは何かの建物の図面のようだった。

 斉藤:「これは明日、愛原さん達が行かれる東京中央学園栃木合宿所の建物の図面です」
 愛原:「2階建てなんですね」
 斉藤:「木造モルタル2階建て。かつては学校として使われていた建物で、それが廃校になった後、日本アンブレラが買い取りました。その後、東京中央学園に払い下げられたわけです」
 愛原:「はい、伺いました」
 斉藤:「この建物には地下室がありまして、図面上はただの倉庫ということになっています。ここ、分かりますか?」

 斉藤社長は赤いポインターで、地下階のある一角を指した。

 愛原:「何か、扉があるような書き方ですね」

 倉庫には1階から下りる階段室の他、もう1つドアがあるような書き方がされていた。
 しかしその先に何があるのはまでは、書かれていなかった。

 斉藤:「今の場所をよく覚えておいてください。次に……」

 今度は全く別の建物の図面が映る。

 斉藤:「これは旧・日本アンブレラ栃木研究所の図面です。先述したように、この研究所は日本アンブレラ崩壊後、取り壊されて今は更地になっています」
 愛原:「北関東の山奥にあっただけあって、霧生市の研究所みたいな秘密の実験場のような所だったんでしょうな」
 斉藤:「その噂が立つのは当然です。しかし現地は既に更地になっており、日本アンブレラにしてやられた、証拠隠滅を図られたと思うところです。で、これがその研究所の地下室です」

 先ほどの合宿所と比べれば広大な地下階だ。

 斉藤:「これを御覧ください」

 斉藤社長は赤いポインターで、その地下階の一角を指し示した。

 斉藤:「ここにもドアがあるような書き方がされています。しかし、何故だかこの図面にもその先に何があるのか書かれていないのです」
 愛原:「本当ですね」

 今度は合宿所と研究所跡の位置関係を示した地図が出て来た。
 明らかにグーグルマップである。

 斉藤:「こちらが研究所跡、こちらが合宿所です」
 愛原:「はい。確かに、そんなに離れてませんねぇ……」

 明らかに徒歩圏内に両者は存在する。

 斉藤:「この地図上に、先ほどの図面を照らし合わせます。上が北です」
 愛原:「はい」

 斉藤社長は研究所跡の下に、研究所地下室の図面を表示した。
 そして合宿所の下に合宿所の図面を表示した。

 愛原:「! これは……!?」

 合宿所地下室の図面だと、右下に意味不明のドアが書かれている。
 研究所跡の図面だと、左上に意味不明のドアが書かれている。

 斉藤:「お気づきになりましたか?どちらもアンブレラの息が掛かっていた場所です。このドアとドアの間に、秘密が隠されていると思いませんか?」
 愛原:「確かに……」
 斉藤:「それを確認して来て頂きたいのです。何も無ければそれで良し。でも何かあったら……?その場合はその秘密も探って来てください」
 愛原:「分かりました。お引き受けしましょう」
 斉藤:「ありがとうございます」
 愛原:「念の為、今の図面を貸して頂けないでしょうか?」
 斉藤:「いいですよ。ただ、原本はお渡しできないので、コピーでよろしければ」
 愛原:「構いませんよ。現地調査の為です。それと、合宿所に私達が立ち入る許可は大丈夫ですか?」
 斉藤:「はい。私から関係者に知らせておきます。愛原さん達はすんなり合宿所に入ることができますよ」
 愛原:「それは助かります」

 どういう手筈で私達が簡単に入れるようにしてくれるのかは不明だが、斉藤社長の名前を出せばOKのようにはしてくれるはずだ。

 斉藤:「これで決まりですね。明日はよろしくお願いします」
 愛原:「こちらこそ、よろしくお願い致します」

 最後に契約書を交わして、これで私達は晴れて斉藤社長から仕事の依頼を受けたことになる。

 斉藤:「今夜はこちらにお泊り下さい。明日は早くに出発されますね?」
 愛原:「そのつもりです」
 斉藤:「分かりました。あとは自由にお寛ぎください」
 愛原:「ありがとうございます」

 私達はアップルティーを頂くと、今夜の宿となる客間に向かった。
 客間は2階にある。
 ホームエレベーターもあるのだが、私達は階段で向かった。
 3階には絵恋さんの部屋があり、リサはそこに泊まることになっている。

 愛原:「図面の方が間違ってて、何も無かったら拍子抜けだな」
 高橋:「でもその辺、斉藤社長は確認してないんスかね?」

 客間はベッドが2つ置かれたツインルームだった。
 まるで、民宿の洋室に泊まってる気分だ。

 高橋:「研究所跡の方はともかく、合宿所は今でもあるんスよね?」
 愛原:「確認してたら、その情報もくれると思うよ?まあ、後で一応聞いてみよう」
 高橋:「はい」
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