報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「JR石巻線」

2021-01-23 20:24:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日09:27.天候:晴 宮城県遠田郡美里町 JR小牛田駅→石巻線1631D列車先頭車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 私達は公一伯父さんの家に一泊した後、彼の車でJR小牛田駅まで送ってもらった。
 寒風が吹き、構内やホームの横にある操車場(小牛田運輸区)には雪が積もっている。
 2面4線のホームの一番東側、4番線には2両編成の気動車が停車していた。
 フロントガラスには、『ワンマン』の表示がされている。
 東北本線を走る電車は半自動ドアが中止になって、全自動ドアになっていたが、気動車の方は半自動ドアだった。
 しかもキハ110系シリーズは、基本的に窓が開かない。
 開くのは、乗務員室扉の窓のみ。
 その先頭車に乗り込むと、車内は空いていた。
 東北本線の方は賑わっていたことから、今日行われる『仙台初売り』に向かう人々だと思われる。

 愛原:「これで行くと、乗り換え無しで行ける」
 高橋:「ローカル列車ですね」

 4人用ボックスシートに固まって座る。
 窓の下にテーブルは無いが、窓の桟に飲み物くらいは置ける。

〔ピンポーン♪ お知らせ致します。この列車は石巻線、前谷地、石巻方面、各駅停車の女川行きワンマンカーです。上涌谷、涌谷、前谷地の順に各駅に停車致します。まもなく、発車致します〕

 車内に自動放送が流れると、運転士が乗務員室扉の窓からホームを覗き込んで笛を吹いた。
 駆け込み客がいないと分かると、そのままドアスイッチを『閉』にする。
 元々ドアそのものは全て閉まっているので、発車はすぐである。
 運転席からハンドルを動かす音が聞こえてくると、ディーゼルエンジン音が唸り声を上げ、列車は発車した。

〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は石巻線、前谷地、石巻方面、各駅停車の女川行き、ワンマンカーです。これから先、上涌谷、涌谷、前谷地の順に、各駅に停車致します。途中の無人駅では、後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。【中略】次は、上涌谷です〕

 列車は駅を出ると、右にカーブする。
 雪に覆われた田園地帯を走る長閑な路線である。
 しかし牧歌的な場所だからといって、バイオハザードとは無縁と思ってはいけない。
 2017年にはアメリカのルイジアナ州で、1つの農場がバイオハザードに見舞われたのだ。
 被害者は農場経営者家族とその従業員達、そして惨状を知らずに来訪した人々である。
 日本だって無縁ではない。
 昨夜、まさかのタイラントが勝手に来訪してきたというのだからな。
 恐らくはリサが目的だろう。
 だが、問題はそのタイラントを連れて帰ったヘリコプターだ。
 恐らくそのタイラントを連れて来たのも件のヘリコプターだと思われるが、どこの機で、リサに何の用で連れて来たのか分からない。
 日本製のタイラントは、日本製リサ・トレヴァーの命令を聞くように設定されている。
 もしも『2番』のリサを処分する為に来たとしたら、愚かな判断だと言わざるを得ない。
 まだネメシスを投入する方が賢明と言えよう。
 とはいうものの、恐らくこの推理はハズレだ。
 リサの話では、タイラントはリサの姿を見て狼狽していたという。
 それはまるで、リサがそこにいたとは知らなかったといった感じだったとのこと。
 なのでタイラントは、別の用件で来たのだろう。
 それが何かは分からない。
 公一伯父さんが作ったという、化学肥料とか農薬の強奪が目的なのだろうか。
 特に日本アンブレラが健在だった頃、伯父さんの作った『枯れた苗を元に戻す薬』を喉から手が出るほど欲しがったという。
 それが欲しかったのだろうか。
 因みにその技術は、NPO法人デイライトに渡している。
 何でも、リサを人間に戻す薬の参考になるのだとか。

 愛原:「このカード、一体何に使うんだろう?」

 私はタイラントが持っていて落としたと思われるカードを取り出した。
 サイズはICカードと同じ。
 全体的にグレーに塗られており、真ん中には“赤いアンブレラ”のロゴマーク(紅白の雨傘を開いて、上から見た図をデザイン化したもの)が描かれており、その中に日本法人を表す『JP』の文字が書かれている。

 高橋:「まあ、やっぱアンブレラの施設のドアとかに使うカードキーじゃないスかね」
 愛原:「金華山にでも行けって?でも、気軽に行けるようなダイヤじゃないよなぁ……」

 金華山は島全体が黄金山神社の神域とされており、そんな所にアンブレラの関係者が勝手に施設など造ろうものなら、バレるに決まっている。
 それとも金華山の島は関係無く、何かの例えなのだろうか。
 とにかく行ってみないと分からない。

[同日10:04.天候:晴 宮城県石巻市 JR石巻駅]

〔ピンポーン♪ まもなく、石巻です。石巻では、全部の車両のドアが開きます。お近くのドアボタンを押して、お降りください。【中略】石巻から仙石線、仙石東北ラインはお乗り換えです〕

 列車は線内のターミナル駅の1つである石巻駅に到着した。
 線内では唯一の市部駅である。
 その為か、ここまで乗車する客も多い。
 ところが、ここでローカル線ならではの事が起きた。

〔「ご乗車ありがとうございました。石巻、石巻です。お忘れ物の無いよう、お降りください。この列車は石巻線、普通列車の女川行きです。発車は10時36分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 高橋:「は!?10時36分!?」

 ↑現在時刻に注目である。

 愛原:「30分以上も停車するのか……。単線だからかな?」

 別にこの駅で車両の増解結が行われるわけではないし、列車番号が変わるわけでもないようだ。
 本当に運行上の都合らしい。
 ドアが開くと、ぞろぞろと乗客達が降りていった。
 殆どの座席が埋まるほどの乗客数にはなっていたのだが、それが一気に降りたと言った感じだ。
 新たに乗車する客は、殆どいない。
 それほどまでに乗客の少ない閑散路線というよりは、そもそも発車があと30分以上もあるからだろう。
 つまり、起点の小牛田駅から終点の女川駅まで通しで乗車する客などいないという前提で組まれたダイヤなのだろう。
 実際、線内の中間地点に規模の大きい駅が挟まれている場合、その駅を中心にダイヤが組まれることはよくある。
 線区によっては、その駅を境に運用が分断されるほどだ(例としてJR川越線の川越駅、JR八高線の高麗川駅など。私鉄では東武アーバンパークラインの柏駅、東武東上線の小川町駅など)。

 高橋:「……先生。30分も何してろと?」
 愛原:「タバコでも吸ってこい」
 高橋:「はあ……」
 リサ:「じゃあ、ジュース買って来る」
 愛原:「ああ。行ってこい」

 私は留守番していることにした。
 今現在停車している石巻線下りホームには、基本何も無い。
 喫煙所もトイレも自販機も、駅本屋に最も近い石巻線上りホームに集約されているのである。
 よし。2人が帰ってきたら、私も少し駅構内を歩かせてもらうとしよう。
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“愛原リサの日常” 「深夜の訪問者」

2021-01-23 16:00:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日02:00.天候:雪 宮城県遠田郡美里町某所 愛原公一の家]

 夕食は豪勢なすき焼きをたらふく食べたリサ。
 風呂にも入って、ちょっとした民宿気分を味わった。
 しかし、寝る所は1人。
 いくらBOWとはいえ、見た目は15歳の女の子を愛原達と同じ部屋に泊まらせるわけにはいかないということで。
 その代わりと言っては何だが、公一の飼い犬で柴犬(雄 3歳)のジョンが一緒に寝ていた。
 さすがは野性の勘。
 この家の中で、一番強い者が誰かを瞬時に把握し、それに媚びるという犬の習性である。

 ジョン:「ウゥウ……!」

 リサと同じ布団に入って丸くなっていたジョンだが、何かの気配を察知し、起き上がって唸り声を上げる。

 リサ:「ウゥウ……!侵入者……アリ……!」

 リサは第1形態に変化しており、やはり布団から出た。
 寒さなど物ともしないBOWだからか、この真冬にTシャツと短パンでも全く寒さを感じなかった。

 リサ:「家の外……?」

 リサは右手だけでバキッと骨を鳴らすと、玄関の鍵を開けて、そっと外に出た。
 外はシンシンと雪が積もっている。

 リサ:「あれは……!」

 母屋の隣にある車庫兼農機具小屋。
 何故かその横に、工事現場などで見られる仮設トイレが置かれている。
 使われていない為か、鍵が掛かっているらしい。
 それを開けようとしている者がいた。
 大きなガタイの男。

 リサ:「……おい」
 ジョン:「ワンッ!ワンワンワン!!」
 タイラント:「!?」

 それはタイラントだった。
 リサを見て驚いている。

 リサ:「何をしてるの?タイラント君?」
 タイラント:(;゚Д゚)

 まさかここに、上級BOWのリサ・トレヴァーがいるとは思ってもみなかったのだろう。
 リサを見て、明らかに狼狽している。
 命令されれば、ターゲットをどこまでも追い掛けて殺すことを平気でするというのに……。

 タイラント:「……!」

 タイラントは慌てて逃げ出した。

 リサ:「待てっ!」

 リサは後ろからタイラントに飛び掛かった。
 長く鋭く伸ばした爪で、タイラントを引っ掻く。
 如何に上級BOWであっても、それだけでタイラントを殺すことはできないが、タイラントはうつ伏せに転倒した。

 ジョン:「ガウウウッ!!」

 ジョンはそんなタイラントの頭に噛み付いた。

 リサ:「ジョン!離れて!」

 リサが命令すると、ジョンはタイラントの頭から離れた。
 だが、それで良かった。
 タイラントもまた大きな腕を振って、起き上がったからだ。
 リサが命令していなければ、ジョンはその腕の直撃を受けて即死していただろう。

 リサ:「何をしていたの!?誰の命令でやっていたの!?」

 リサが詰問したが、タイラントは答えない。
 それどころか……。

 リサ:「な、なに!?」

 上空からヘリコプターが舞い降りたかと思うと、そこから縄梯子が下ろされ、タイラントはそれに掴まった。
 そして、ヘリコプターが一気に舞い上がる。
 そのヘリコプターはダークグレーに塗装されていて、どこのヘリだか分からなかった。
 しかし、ライトグレーに塗装されたBSAAや、ブルーに塗装された“青いアンブレラ”のヘリではないようだ。

 リサ:「逃げられた。一体、何だっていうの?」

 するとジョンが、さっきタイラントが倒れた場所に向かって、そこから何かを咥えて来た。
 それはグレーのカードのようなもの。
 表には赤いアンブレラのロゴマークが大きく描かれており、その中心には『JP』と書かれていた。
 明らかに日本アンブレラ社のロゴマークである。

 リサ:「後で先生に言わなきゃ……!」

[同日07:00.天候:晴 愛原公一の家]

 愛原学:「何っ、タイラントだと!?」
 リサ:「そうなの!」

 リサは昨夜のことを起きて来た愛原学に話すと、カードを渡した。

 学:「うーむ……。何か、カードキーのようなものに見えるな……」
 公一:「ワシが解析しよう。機械ならある」
 学:「都合良くそんなものがあるの?」
 公一:「うむ。昔、大学の研究所のカードキーを紛失したことがあってな。それの偽造に……」
 学:「退職したから時効ってわけじゃないと思うよ、それは」
 高橋:「さすが先生の伯父さん……」

 それから1時間ほどして、解析が終わった。

 公一:「これはやはり、日本アンブレラのパスカードらしいぞ」
 学:「この近くにあるの?」
 公一:「いや、この近くではない。だが、日本アンブレラの施設であることは間違いない。具体的な場所まではこのカードのデータでは分からんが、『Onagawa』とか『Kinkazan』とかいう文字は出て来た」
 学:「女川!?金華山!?」
 公一:「恐らくはな。もしかすると、東日本大震災の復興のドサグサに紛れて、施設でも造ったのかもしれんな」
 学:「でもその頃には、日本アンブレラは倒産していたよね?」
 公一:「そうじゃ。しかし、あの倒産自体が計画倒産の茶番劇だとも言われておる。これ以上、アンブレラの悪事が露見せんようにな。資金はまだタップリある状態での計画倒産じゃ。しかも、震災の後で地価が大幅に下落した場所に設置する。地価の安い田舎や山奥に秘密の研究所を建てるのが、アメリカのアンブレラのやり方じゃった。それを現地法人たる日本アンブレラが真似ても、何らおかしいことはない」
 学:「確かに、この前は日光にあったな……。学校施設の地下に造って、ものの見事に誤魔化すというやり方ね」
 公一:「そしてそれとはまた別に、震災復興のドサグサということも有り得る」
 学:「そういった意味では、福島第一原発付近もかなり怪しいことになるね」
 公一:「まあな」
 高橋:「先生、どうします?」
 学:「どうせ明日までヒマなんだから、ちょっと行ってみるか。幸い、小牛田駅から石巻線一本で行ける」
 高橋:「はい!」

 リサは愛原達の会話を聞いていて疑問に思った。

 リサ:(どうしてタイラント君が、あのトイレをこじ開けようとしていたのか……調べないの?)

 リサはそのことについて愛原に指摘しようとしたが……。

 高橋:「先生。このことを報告書にまとめて、正月休み明けに善場の姉ちゃんに出したら、びっくりしますぜ?」
 学:「それもそうだな!上手く行けば報酬もバッチリ!」
 公一:「おいおい。解析したのはワシじゃぞ?その暁には、ワシの功績も忘れんといてくれな?」
 学:「へいへい」
 高橋:「さすが先生の伯父貴っス!」
 リサ:「…………」
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