報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「旧アンブレラ地下研究所跡へ」

2021-01-06 15:41:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月13日12:00.天候:曇 栃木県日光市某所 東京中央学園栃木合宿所B1F倉庫→B2F ?]

 斉藤社長から許可を得た私達は再び地下倉庫へ下りた。

 愛原:「これだよ、これ。まだ燃料があるといいが……」

 試しにリサが第1形態に変化してコンクリート壁を叩いてみたが、ビクともしない。

 リサ:「第2形態か第3形態まで変化すれば、もしかしたら壊せるかも……」

 とのことだが、その後で戻れなかったり、それを機に暴走したりしたら大変なので、それは止めておいた。

 愛原:「よし、行くぞ」

 私はチェーンソーを手に取ると、エンジンを掛けた。
 幸い燃料は入っているようだ。
 地下倉庫内に響くエンジン音。
 壁に当てると、ガガガという音が響いて壁が壊れて行く。

 高橋:「先生、その調子です!」

 粗方壁を壊し、私がエンジンを切ると壁の奥が顔を覗かせた。
 ただでさえ倉庫内は薄暗いので、壁の向こうはもっと見えない。
 私はチェーンソーを床に置いて、手持ちのマグライトを点けた。

 リサ:「ドアがある!」

 果たしてその奥にはドアがあった。
 しかし、ただのドアではない。

 高橋:「先生、これ、エレベーターっスか!?」

 私は扉だと聞いていて、まあ、確かに扉っちゃあ扉だ。
 高橋が言ったように、それはフェンス型のドアだった。
 要は片側に引いて、フェンスを畳んで開けるタイプ。
 しかも横には、ボタンもある。
 そのボタンには▽のマークが刻まれていた。

 愛原:「エレベーター……だな」

 恐らく戦時中に防空壕として掘られた当初は、ただの扉が付いていただけだったのだろう。
 それを旧アンブレラが買い取った後、その防空壕を更に掘り下げてエレベーターにしたのではないだろうか。
 何の為に?
 そりゃもう地下秘密研究所を造る為ではないか。
 何とかして、このエレベーターを動かさなくては……。
 仙台の時は、どうやって起動させたんだっけ……?

 高橋:「先生、このボックスの中にスイッチがあるかもですよ?」
 愛原:「そうだな」

 私はボックスを開けようとした。
 開かなかったが、もらっていた小さな鍵で開けることができた。
 その中に入っていたのは電源ボックス。
 ヒューズが何本か入っている。
 その中に、1本だけヒューズの抜かれている場所があった。
 よく見ると、『EV』と書かれている。
 ひょっとして、エレベーターのことではなかろうか。

 愛原:「予備のヒューズを探せ!」
 高橋:「ええーっ!?」

 仕方なく、私達は再び管理人室に戻らざるを得なかった。
 管理人からは、「行ったり来たり、大変ですね」と言われたが。
 しかし汎用のヒューズということもあり、予備のヒューズは管理人室にもあった。
 私はそれを手に再び倉庫に戻り、例のEVの所に嵌めた。
 すると……。

 リサ:「あっ、点いたよ!」

 エレベーターの籠の中の照明が点灯した。

 愛原:「よし、行くぞ」

 私はボタンを押した。
 しかし、扉は空かない。

 愛原:「手動か!」

 蛇腹扉は手動で開けるのだ。
 開けて乗り込み、再び手動で扉を閉める。
 ボタンはB1FとB2Fしか無かった。
 私がB2Fのボタンを押した。
 すると!

〔声紋認証します。所属と名前をお話しください〕

 ボタンの横にあるスピーカーのランプが光った。
 ええっ?声紋認証なんてあんの!?

 愛原:「え、えー……。私の名前は愛原学。都内で小さな探偵事務所を経営している」

〔登録されておりません〕

 なので、エレベーターは動かない。

 愛原:「高橋、オマエやれ!」
 高橋:「ええっ!?俺っすか!?……た、高橋正義っス。新潟県生まれ。サツの留置場、少年鑑別所、少年院、拘置所、少年刑務所、だいたいコンプしたっス」

〔登録されておりません。IDが確認できない場合、不審者と見做します〕

 すると天井からマシンガンの銃口が現れた。
 おいおいおい!ここでもう蜂の巣にする気か?!

 リサ:「リサ・トレヴァー『2番』!愛原リサでーす!」

 ダメ元でリサが喋ると、機関銃が天井に戻った。

〔声紋認証完了。下に参ります〕

 ガクンと揺れて、エレベーターが降下した。

 愛原:「リサ?!」
 リサ:「えへっw 認証できちゃった」
 高橋:「オメー、まさかここの施設のこと、知ってんじゃねーだろうなぁ?」
 リサ:「ここからは入ったこと無いよ?でも、私がいた研究所は霧生市だけじゃないから。もしかしたら私、ここにいたことがあるのかもしれないよ?」
 愛原:「下に行けば分かるということだな」

 そしてエレベーターがB2Fに到着する。
 一瞬、ドアが開くのを待った私達だったが、手動で開け閉めしないといけないのだった。

 愛原:「荷物用エレベーターでも、なかなかこういうの無いぞ」
 高橋:「ですよねー」

 扉を開けて閉めておく。
 そうしないと、外で呼んでもエレベーターが動かないのだ。
 エレベーターを降りた先は、まるで荷捌場のようだった。
 しかし、その外はシャッターが下りていて、外の様子は分からない。

 高橋:「車でここに到着して、何か積み降ろしをする場所なんでしょうね?」
 愛原:「だろうな」

 ということは、どこかに入口があるはずだ。
 地下駐車場のフリをして、ここまで来れる道が。
 それでいて、部外者は入ってこれないように……。

 愛原:「待てよ、あの駐車場……!」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「管理人さん、車で来たみたいだ。その時、この合宿所の駐車場に止めたみたいだけど……」
 高橋:「ええ」
 愛原:「あの駐車場、もうちょっと奥に行ける感じしなかったか?」
 高橋:「えーっと……。そう言われれば、そんな気も……」
 愛原:「奥へ行くと、この荷捌場の入口なんじゃないかな?」
 高橋:「なるほど。そうかもしれませんね」
 愛原:「いざという時の脱出路にしておきたいところだけど、シャッターボックスの鍵が無いな……」

 スイッチボックスの中にシャッターを上げ下げするスイッチがあるはずだが、その鍵が無かった。

 愛原:「まあいい。後で探そう」

 この荷捌場、変わった構造をしていた。
 低いホームがあり、ここにトラックをバックさせて着けるのだろう。
 そして降ろした荷物は、すぐ後ろにまた大型のエレベーターがあり、それに乗せるようである。
 だが残念なことに、どのエレベーターも電源が切れていた。
 そして、電源ボックスらしき物は見当たらない。

 愛原:「エレベーターは無理か。どうにかして、この先に行けないかな……」
 高橋:「先生、奥にドアがありますよ?」
 愛原:「なにっ?」

 エレベーターが並んでいる向こう側に、鉄扉があった。
 鍵が付いているが、開いているだろうか。
 しかも、ただの鍵ではない。
 電子ロックであった。

 愛原:「カードキーはどこだ!?」
 高橋:「マジっすか!?」
 リサ:「カードキー……」

 リサはバッグの中からカードケースを出すと、そこから金色に光るカードを出した。
 そこには旧アンブレラのロゴマークが書かれている。

 リサ:「これかな?」

 ピッ♪ピー♪
 カチッ。

 リサ:「開いたよ?」
 愛原:「マジかよ!?」

 そのゴールドカード、どこかで見た気がしたが、アレだ。
 リサが私に送ってくれた、旧アンブレラのカードキーだ。
 これで豪華客船“顕正号”や“正信号”の隠し金庫やドアを開けたものだ。
 そのカードが、ここでも有効とは……。

 愛原:「ていうかリサ、何でオマエ、そんなもん持ってんの?」
 リサ:「霧生市の研究所からパクッた」
 愛原:「オマエなぁ!ありがとう!」

 私はリサの頭をクシャクシャに撫でた。

 リサ:「えへへ……」(∀`*ゞ)

 リサは照れ笑いを浮かべた。

 愛原:「よし、先に行くぞ」

 私達はドアの奥に向かった。
 そこはまるで、普通の高層ビルの地下のような佇まいであり、まだ研究施設という要素は見られなかった。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「地下アンブレラ研究所跡」

2021-01-06 10:23:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月13日11:00.天候:晴 栃木県日光市某所 東京中央学園栃木合宿所B1F倉庫→1F管理人室]

 地下の倉庫の鍵を開け、中に入ると、そこにあったのは色々な物であった。
 雑多に置かれていて、いかにも倉庫って感じだ。
 しかし、その中に目を引く物も置かれていた。
 それは大型のカプセルや水槽、あとは用途不明ではあるが、明らかに学校の合宿所としては絶対に使わないであろう何かの実験器具。
 ここが運動部だけでなく、科学部や生物部も使うというなら、100歩譲って分からなくはない。
 しかし、ここはあくまでも運動部が夏休みや冬休みなどの連休の際、合宿の為に使う場所であり、文化部が使うことはまず無いとのこと。
 かつては高等部がレクレーション活動で全校生徒が何回かに分けて使用することもあったそうだが、今はここでは行われていないという。

 高橋:「先生、これこそアンブレラの置き土産じゃないですか?」
 愛原:「絶対そうだな」

 ようやくここに来て、旧・日本アンブレラが使用していた痕跡を見つけることができた。
 しかし、問題はこれではない。
 これくらいなら、特に違法ではないからだ。
 一応、私は写真を撮った。
 報告書に添付するのに必要である。

 リサ:「ヤな感じ。私もこの中に入っていたことがあったんだ……」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「2度と入りたくない」
 愛原:「オマエが暴走したりしなければ大丈夫だよ」
 リサ:「うん。ありがとう」
 高橋:「それより先生、隠し扉はどこに?」
 愛原:「ああ、そうだな」

 倉庫内にも照明はあったが、それを点けても薄暗い。
 何しろこの倉庫の照明ですら、今時電球なのだ。
 もちろんLED電球は普通に販売されているので、それを使えば良いのだが、今のところ普通の電球である。
 私はこの建物の図面を取り出して、電球の下で確認した。

 愛原:「えーと……階段がそこだから、図面の向きはこうか。となると、ドアがあるのは……そこだ」

 その場所こそが、件の遺棄された実験道具の数々の置き場であった。
 確かによく見ると、まるで隠し扉を隠すかのように置いてある。
 なるほど。
 旧アンブレラの奴ら、新研究所は自分達で取り壊して更地にすることで証拠隠滅を図ったが、こっちの旧研究所においては、既に東京中央学園の手に渡っていたので、勝手なことができず、せめて要らなくなった道具で隠しておくということにしていたのか。
 杜撰なやり方だが、しかし全体的に管理が杜撰なアンブレラらしいやり方でもある。

 愛原:「よし。まずはこいつらを退かそう。まずは水槽からだ。高橋、そっち持て」
 高橋:「はい」

 私達は実験道具を退かすことにした。

 リサ:「私も手伝う」

 リサはブレザーを脱いで、大型のカプセルを……ヒョイと1人で持ち上げた。
 おいおい。
 水槽でさえ、大の大人2人でやっとこさ持ち上げられる重さだぞ?
 それよりヘタすりゃ大きいカプセルを1人でヒョイと持ち上げるなんて、さすがはBOW。

 リサ:「このキャビネットも退かす?」
 愛原:「それだよ、それ。それが一番邪魔なんだ」

 私と高橋が2馬力で何とか作業している間、リサは1人で10馬力分は動いた。
 それでも余裕の表情である。
 平均的な中学3年生女子の体つきなのに、どこにあんな力が備わっているのだろうか。
 もっとも、人間形態のままでは無理だと思ったのか、第1形態に変化してはいたが。
 鬼の力だと余裕なのだろう。
 キャビネットを1人でヒョイと持ち上げると、それを退かした。
 キャビネットで塞ぎ、その後でカプセルやら水槽やらを置いて隠していたのだが、それだけではまだ飽き足らなかったようだ。

 愛原:「あーっ!くそっ!」

 その扉があった場所は壁で塞がれていた。
 地下倉庫の壁はコンクリートであるが、周りの壁は古いダークグレーの色をしているのに対し、そこだけが比較的新しいライトグレーの色をしていたからだ。

 高橋:「ドアが塞がれてますね」

 新しいコンクリートの形、大きさからして、そこにドアがあったと見て間違いない。

 愛原:「でもここまでする以上、この奥には絶対何かあるぞ?」
 高橋:「どうします?ブチ破りますか?」
 愛原:「待て待て。さすがにやり過ぎだ。取りあえず一旦、管理人室に戻ろう」

 私達が管理人室に戻ると、管理人がお茶を入れてくれた。
 また、埃を被ったこともあって、濡れたタオルも出してくれた。
 それで顔などを拭きながら、私は管理人に質問した。

 愛原:「地下倉庫の奥にドアがあったと思うのですが、これについて何か知りませんか?」

 すると管理人は、こう答えた。

 管理人:「それは戦時中の防空壕の跡ですよ」
 愛原:「ええっ!?」
 管理人:「戦時中はこの辺り、疎開先になっていたんですが、末期になると地方都市も空襲などを受けるようになりましたからね。もしかしたら、この辺りも狙われるんじゃないかと思ったのか、地下室より更に下に防空壕を掘ったと聞きます。それがあれですよ」
 愛原:「すると埋められたのは……?」
 管理人:「ここが最初の学校だったうちは、ドアは鍵を掛けた状態でそのままだったらしいんですが、その後、日本アンブレラさんが使うに辺り、危険だからという理由で埋めてしまったとのことです」

 恐らくそれは表向きの理由だろう。
 コンクリートで埋めたのは、この建物が東京中央学園に払い下げられる直前だったと思われる。
 本当はこの建物も『老朽化したから』という理由でも付けて取り壊したかったのだろうが、その時には既に買い手が付いていて、それができなかったのだろう。
 それで急きょ、あのドアを埋めたというわけだ。

 愛原:「管理人さん、あの壁を壊してドアを開けることはできますか?」
 管理人:「ええっ!?それは困ります。私の一存では決められません」
 愛原:「分かりました。ちょっと失礼します」

 私は自分のスマホを取り出した。
 そして、それで斉藤社長に電話する。

 愛原:「あ、もしもし。愛原です。お疲れ様です。今、例の合宿所に来てるんですが、件の場所のことで……ええ」

 私はこれまでの経緯を話し、そして地下倉庫の状況を話した。

 愛原:「……というわけで、これ以上調査を続ける為には、その壁を壊さないといけないんですよ。……そうですね。比較的脆そうではあるので、チェーンソーで破壊できるかとは思いますが?」

 その時、ふと私は気づいた。
 あの倉庫の中に、正しくチェーンソーが置かれていたことを。
 あれを使えば、壁を破壊できるかもしれない。

 斉藤秀樹:「分かりました。学園には私から言っておきます。愛原さんは思う通りにやってください」
 愛原:「分かりました。ありがとうございます」

 私は電話を切った。

 愛原:「今の話、聞きましたね?PTA会長の許可が出ましたので、実行させて頂きます」
 管理人:「し、しかし……」
 愛原:「PTA会長の斉藤社長は、この学園で1、2を争う多額の寄付金を出しておられる方ですよ?その方が良いと仰ってるんですがね?」
 管理人:「わ、分かりました……」
 愛原:「ついでに、倉庫にあるチェーンソーもお借りします」

 私達はお茶だけ頂くと、その足で再び地下室へと向かった。
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