[7月9日12:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 東京駅八重洲地下街]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
群馬県山中の屋敷において新型BOWによる特異菌に感染させられ、3ヶ月の入院を余儀なくされた高橋がようやく退院することになり、私と高野君とで迎えに行った。
しかし病院で政府エージェントの善場氏達に捕まり、彼らの事務所がある都内の一等地のビルにて事情聴取を受けていたというわけだ。
で、今は昼休み。
昼食代をもらった私達はすぐ近くにある東京駅の地下街の1つ、八重洲地下街を訪れたというわけだ。
平日の昼間ということもあり、近隣のビルや東京駅で働く人々で飲食店はどこも混雑している。
店員:「お待たせしました!3名でご来店の愛原様、ご案内致します!」
で、ようやく席に着く。
愛原:「遠慮しないで好きなもの頼んでいいからな。よーし、俺はオールスター天丼だな」
高橋:「俺も同じので!……できれば先生の食べ残しで」
愛原:「おい、やめろ」
高野:「私は上天丼で」
高橋:「アネゴ、そこは空気読んで先生と同じものを……」
高野:「別にいいじゃない。ねぇ、先生?」
愛原:「そうだぞ。高橋、俺は最初に何て言った?」
高橋:「先生!?今頃、特異菌の影響が!?」
愛原:「そういうことじゃねぇ!……遠慮しないで好きな物頼んでいいって言ったろが!だから高野君の行動は正しいの!」
高野:「そういうことよ。じゃ、注文しますね」
愛原:「ああ、よろしく」
高野君が店員を呼んで注文した。
愛原:「本当に高橋、見た目が少し変わったな」
高橋:「やっぱそうですか?」
別に顔や体型が変わったわけではない。
何というか、体の色素が抜けた感じになっている。
元々高橋は色白な男だった。
髪も金髪に染めていたのだが、今はそれが銀色に染めたかのような色になっているし、肌の色も余計に白くなっている。
瞳の色も黒が抜け落ち、グレーに近い色になってしまった。
つまり、アルビノのようになってしまったということである。
実際、強い光の所ではサングラスが必要になってしまっている。
私が地下街を狙ったのは、そういう太陽の光を避ける為でもあった。
高橋:「俺も人間じゃなくなったんですかね?」
愛原:「いや、そんなことはないと思うけど……」
別に、リサみたいにBOWに変化するわけではない。
それに、善場氏の話では、アメリカでも同じようなBOWが暴れ出し、危うくその特異菌によって死亡寸前までいった被害者がいたそうだ。
その被害者は死亡する直前にワクチンを投与したことにより生還を果たしているが、やはり高橋と同じように髪の色が抜けたり、虹彩の色が抜けたりしたそうだ。
これは特異菌が死滅する際、石灰化する現象があり、その影響であるという。
石灰は白いので、そういうことだと。
高橋:「まあ、いいです。これでリサがワガママ言い出しやがったりしたら、俺が対処できるということですよ」
愛原:「……まあ、いざとなったらよろしく」
ワガママ座敷童のエヴリンより、うちのリサ・トレヴァーの方がよっぽど素直でいいコだと思うのだが。
[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
車が都道50号線(新大橋通り)沿いにある私の事務所の前に止まる。
善場:「それでは、今後とも御協力をお願い致します」
愛原:「分かりました。できることなら、協力させて頂きます」
高橋:「先生の貴重なヒマな時間を無駄に使わせたんだから、報酬はちゃんともらうぞ?」
愛原:「高橋、日本語おかしいぞ。……それじゃ、送って頂いてありがとうございました」
運転席と助手席には善場氏の部下と思しき黒スーツの男2人が座っている。
彼らと比べると善場氏は華奢な女性のように思えるが、高野君曰く、なかなか隙の無い武闘派のように見えるという。
ゾンビが1人や2人やってくる程度では、簡単に振り払って逃げられるくらいのスキルはあるだろうと。
なるほどなぁ……。
高野:「先生、事務所はどうなさいますか?」
愛原:「いや、今から開けるさ。数時間程度でも、1件くらい依頼があるかもよ」
高野:「あるといいですねぇ……」
事務所に戻って来た。
愛原:「どうだ、高橋?3ヵ月ぶりの事務所はァ……」
高橋:「いや、マジで懐かしいですね。まあ、3ヶ月くらいじゃそうそう変わらない……ん?」
その時、高橋は何かを見つけた。
スーッとキャビネットの上を指で擦る。
高橋:「アネゴ!埃が溜まってんじゃんかよ!?先生の事務所を埃塗れにしやがって!」
高野:「お姑さんかオマエは!?」
高橋:「先生!すぐに掃除します!」
愛原:「いや、いいよ。明日からで」
高橋:「いいえ!俺に任せてください!」
愛原:「あ、そう。退院したばっかりなんだから、無理すんなよ」
高橋:「はいっ!」
と、そこへエレベーターが5階に到着する音が聞こえた。
高野:「ん?誰か来ましたよ?」
愛原:「おっ、依頼者かな?」
リサ:「ただいま」
斉藤絵恋:「お邪魔しまーす!」
そうではなかった。
BOWであるがちゃんと自己制御できている稀有な例、リサ・トレヴァーの亜種である。
日本政府としては是非ともエージェント候補として囲い込みたいらしい。
日本は核兵器を保持することができない(ことになっている)為、それに代わる軍事力の確保を模索しているようなのだ。
核兵器がダメならBOWといったところか。
そしてそれは、他国も同じことらしい。
その為、リサは数少ない成功例として是非とも政府で管理したいということなのだ。
但し、リサはまだ10代前半。
しかも生い立ちが、元々人間だったものをアンブレラ・ジャパンが非人道的な方法で人体実験したものの産物である。
バレたらそれを利用した政府も世論から非難轟々になることは明らかである。
その為、成人になるまで私達が面倒看ることになった。
まさか、名も無き探偵が管理しているとは誰も思わないだろう。
で、今では近くの中学校に通っているというわけである。
リサ:「お兄ちゃんが退院したって聞いて、家庭科でパウンドケーキ焼いたの。食べてください」
高野:「あら、美味しそう」
高橋:「食ったら即効ゾンビ化決定、ウィルス入りケーキじゃねーだろうな?」
愛原:「高橋!」
斉藤:「いーえ!リサさんの愛情てんこ盛りケーキでーっす」
高橋:「食ったのか!?」
リサ:「お兄ちゃんの為に焼いたのに、サイトーが全部食べちゃったから作り直した」
斉藤:「リサさん、お代わりちょうだい!お代わり早よ!」
リサ:「ダメ。これはお兄ちゃんと愛原先生達用」
高橋:「お、おい!オマエ、大丈夫か?体の方は何とも無いのか!?」
リサ:「リサさんの愛情で、体がすっごい熱いんですよ……」
高橋:「先生!こいつゾンビ化寸前です!早いとこ射殺を!」
愛原:「落ち着け、高橋。ていうかお前、射殺の前にワクチンという発想が無いのか!」
まあ、斉藤さんの場合、本当に感染したわけではなく、違う意味でゾンビ化寸前だろう。
高野:「まあまあ、お茶入れるから皆で食べましょうよ」
愛原:「そうだな。リサ、俺達も食べていいんだろう?」
リサ:「うんうん」
高橋:「お、俺もですか?」
愛原:「オマエなぁ、こういう時こそ空気読むんだよ」
高橋の場合、特異菌に感染したことで、それまでに世界を震撼させたゾンビウィルスのほぼ全てを無力化させるほどの抗体が付いたそうだ。
凄い副産物である。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
群馬県山中の屋敷において新型BOWによる特異菌に感染させられ、3ヶ月の入院を余儀なくされた高橋がようやく退院することになり、私と高野君とで迎えに行った。
しかし病院で政府エージェントの善場氏達に捕まり、彼らの事務所がある都内の一等地のビルにて事情聴取を受けていたというわけだ。
で、今は昼休み。
昼食代をもらった私達はすぐ近くにある東京駅の地下街の1つ、八重洲地下街を訪れたというわけだ。
平日の昼間ということもあり、近隣のビルや東京駅で働く人々で飲食店はどこも混雑している。
店員:「お待たせしました!3名でご来店の愛原様、ご案内致します!」
で、ようやく席に着く。
愛原:「遠慮しないで好きなもの頼んでいいからな。よーし、俺はオールスター天丼だな」
高橋:「俺も同じので!……できれば先生の食べ残しで」
愛原:「おい、やめろ」
高野:「私は上天丼で」
高橋:「アネゴ、そこは空気読んで先生と同じものを……」
高野:「別にいいじゃない。ねぇ、先生?」
愛原:「そうだぞ。高橋、俺は最初に何て言った?」
高橋:「先生!?今頃、特異菌の影響が!?」
愛原:「そういうことじゃねぇ!……遠慮しないで好きな物頼んでいいって言ったろが!だから高野君の行動は正しいの!」
高野:「そういうことよ。じゃ、注文しますね」
愛原:「ああ、よろしく」
高野君が店員を呼んで注文した。
愛原:「本当に高橋、見た目が少し変わったな」
高橋:「やっぱそうですか?」
別に顔や体型が変わったわけではない。
何というか、体の色素が抜けた感じになっている。
元々高橋は色白な男だった。
髪も金髪に染めていたのだが、今はそれが銀色に染めたかのような色になっているし、肌の色も余計に白くなっている。
瞳の色も黒が抜け落ち、グレーに近い色になってしまった。
つまり、アルビノのようになってしまったということである。
実際、強い光の所ではサングラスが必要になってしまっている。
私が地下街を狙ったのは、そういう太陽の光を避ける為でもあった。
高橋:「俺も人間じゃなくなったんですかね?」
愛原:「いや、そんなことはないと思うけど……」
別に、リサみたいにBOWに変化するわけではない。
それに、善場氏の話では、アメリカでも同じようなBOWが暴れ出し、危うくその特異菌によって死亡寸前までいった被害者がいたそうだ。
その被害者は死亡する直前にワクチンを投与したことにより生還を果たしているが、やはり高橋と同じように髪の色が抜けたり、虹彩の色が抜けたりしたそうだ。
これは特異菌が死滅する際、石灰化する現象があり、その影響であるという。
石灰は白いので、そういうことだと。
高橋:「まあ、いいです。これでリサがワガママ言い出しやがったりしたら、俺が対処できるということですよ」
愛原:「……まあ、いざとなったらよろしく」
ワガママ座敷童のエヴリンより、うちのリサ・トレヴァーの方がよっぽど素直でいいコだと思うのだが。
[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
車が都道50号線(新大橋通り)沿いにある私の事務所の前に止まる。
善場:「それでは、今後とも御協力をお願い致します」
愛原:「分かりました。できることなら、協力させて頂きます」
高橋:「先生の貴重なヒマな時間を無駄に使わせたんだから、報酬はちゃんともらうぞ?」
愛原:「高橋、日本語おかしいぞ。……それじゃ、送って頂いてありがとうございました」
運転席と助手席には善場氏の部下と思しき黒スーツの男2人が座っている。
彼らと比べると善場氏は華奢な女性のように思えるが、高野君曰く、なかなか隙の無い武闘派のように見えるという。
ゾンビが1人や2人やってくる程度では、簡単に振り払って逃げられるくらいのスキルはあるだろうと。
なるほどなぁ……。
高野:「先生、事務所はどうなさいますか?」
愛原:「いや、今から開けるさ。数時間程度でも、1件くらい依頼があるかもよ」
高野:「あるといいですねぇ……」
事務所に戻って来た。
愛原:「どうだ、高橋?3ヵ月ぶりの事務所はァ……」
高橋:「いや、マジで懐かしいですね。まあ、3ヶ月くらいじゃそうそう変わらない……ん?」
その時、高橋は何かを見つけた。
スーッとキャビネットの上を指で擦る。
高橋:「アネゴ!埃が溜まってんじゃんかよ!?先生の事務所を埃塗れにしやがって!」
高野:「お姑さんかオマエは!?」
高橋:「先生!すぐに掃除します!」
愛原:「いや、いいよ。明日からで」
高橋:「いいえ!俺に任せてください!」
愛原:「あ、そう。退院したばっかりなんだから、無理すんなよ」
高橋:「はいっ!」
と、そこへエレベーターが5階に到着する音が聞こえた。
高野:「ん?誰か来ましたよ?」
愛原:「おっ、依頼者かな?」
リサ:「ただいま」
斉藤絵恋:「お邪魔しまーす!」
そうではなかった。
BOWであるがちゃんと自己制御できている稀有な例、リサ・トレヴァーの亜種である。
日本政府としては是非ともエージェント候補として囲い込みたいらしい。
日本は核兵器を保持することができない(ことになっている)為、それに代わる軍事力の確保を模索しているようなのだ。
核兵器がダメならBOWといったところか。
そしてそれは、他国も同じことらしい。
その為、リサは数少ない成功例として是非とも政府で管理したいということなのだ。
但し、リサはまだ10代前半。
しかも生い立ちが、元々人間だったものをアンブレラ・ジャパンが非人道的な方法で人体実験したものの産物である。
バレたらそれを利用した政府も世論から非難轟々になることは明らかである。
その為、成人になるまで私達が面倒看ることになった。
まさか、名も無き探偵が管理しているとは誰も思わないだろう。
で、今では近くの中学校に通っているというわけである。
リサ:「お兄ちゃんが退院したって聞いて、家庭科でパウンドケーキ焼いたの。食べてください」
高野:「あら、美味しそう」
高橋:「食ったら即効ゾンビ化決定、ウィルス入りケーキじゃねーだろうな?」
愛原:「高橋!」
斉藤:「いーえ!リサさんの愛情てんこ盛りケーキでーっす」
高橋:「食ったのか!?」
リサ:「お兄ちゃんの為に焼いたのに、サイトーが全部食べちゃったから作り直した」
斉藤:「リサさん、お代わりちょうだい!お代わり早よ!」
リサ:「ダメ。これはお兄ちゃんと愛原先生達用」
高橋:「お、おい!オマエ、大丈夫か?体の方は何とも無いのか!?」
リサ:「リサさんの愛情で、体がすっごい熱いんですよ……」
高橋:「先生!こいつゾンビ化寸前です!早いとこ射殺を!」
愛原:「落ち着け、高橋。ていうかお前、射殺の前にワクチンという発想が無いのか!」
まあ、斉藤さんの場合、本当に感染したわけではなく、違う意味でゾンビ化寸前だろう。
高野:「まあまあ、お茶入れるから皆で食べましょうよ」
愛原:「そうだな。リサ、俺達も食べていいんだろう?」
リサ:「うんうん」
高橋:「お、俺もですか?」
愛原:「オマエなぁ、こういう時こそ空気読むんだよ」
高橋の場合、特異菌に感染したことで、それまでに世界を震撼させたゾンビウィルスのほぼ全てを無力化させるほどの抗体が付いたそうだ。
凄い副産物である。
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