報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「ロボット未来科学館・オープン2日目」

2016-04-29 21:00:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月2日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区・DCJロボット未来科学館 シンディ、井辺翔太、MEGAbyte]

(※真に勝手ながら、形式を“大魔道師の弟子”みたいな感じに戻します)

 土曜日のロボット未来科学館は昨日、テレビやインターネットなどのメディアに公開されたこともあり、敷島の予想通り、客足は早かった。
 MEGAbyteの3人は、バックヤードにある会議室を控え室に充ててもらい、そこで午前と午後の2回に分けて行われるミニライブの準備をしていた。
 MEGAbyteの専属プロデューサーである井辺も一緒である。
「皆さん、社長と館長がお見えです。御挨拶を」
 井辺が敷島と西山館長を連れて、会議室に入った。
「おはようございます。今日はよろしくお願い致します」
 さすが3人ユニットの中では、設定年齢が最年長になっている未夢がスッと椅子から立ち上がり、西山館長に挨拶した。
「よろしくお願いします!」
「お願いします!」
 続いてLilyと結月ゆかりも挨拶する。
 西山は大きく頷いて、今日のミニライブに期待している旨の返事をした。
「井辺君、俺は館長について館内を回って来るから」
「了解しました。あとは、こちらに任せてください」
「じゃ、よろしく」
 敷島と西山が出て行くのを見送った後、ホッとするMEGAbyteのメンバー達。
「まさか館長さんが来られるなんて、思わなかったわぁ〜」
 それまでキリッとした顔付きだった未夢は、いつものおっとりした表情に戻っていた。
「それだけ期待されているということです。頑張ってください」
 井辺は咳払いをして答えた。
「そうね。今日もマスコミは来ているんでしょう?」
「ええ。週末の方がこういったパビリオン施設は賑わうので、その模様を取材したいのでしょう。ですから皆さんも、アピールするチャンスです」
「おお〜!わたし、頑張ります!」
 ゆかりは両手に拳を握った。
「よろしくお願いします。開演時間は11時です。時間になりましたら、シアターホールの方へ……」
 と、そこへ、ドアノブをガチャガチャやる音が聞こえた。
「ん?誰かしら?」
 未夢は右目を緑色に光らせた。
 元はマルチタイプの後継機として開発された経緯があるだけに、未だにスキャニングは可能のようである。
「ロイドの反応ね」
 未夢のスキャン結果に、ゆかりがポンと叩いた。
「あっ、もしかして、ここのスタッフロボットさんですかねー?ミク先輩が来た時、握手を求められたって話ですよ?」
「だとしたらルール違反じゃない?握手会は今日はやらないんでしょう?プロデューサー」
 Lilyが無表情で井辺に振った。
「そうですね」
 尚も外からドアノブがガチャガチャされる。
「私が出ます」
 井辺は入口のドアに近づいた。
 井辺がガチャッとドアを開けると、
「翔太さぁーん!!」
 井辺の胸に飛び込んでくる者がいた。
「萌っ!?」
 それは妖精型ロイドの萌。
「来てくれたんですねぇ!?嬉しいなぁ!どうしてボクの所にすぐ来てくれなかったんです!?寂しいですよ!」
 萌は世界的ロボット・テロ組織、KR団の秘密研究所に捕われていたが、同じくそこに拉致・監禁された井辺と共に脱出した、言わば戦友である。
「も、申し訳無い。あくまで今日は、MEGAbyteのプロデューサーとして来たものだから……」
「後で僕の飛行技、見せてあげますよ!苦手な2回転宙返り、できるようになったんですよ!」
「それは、おめでとう」
 井辺が苦笑し、Lilyが呆れている中、ゆかりはポンと手を叩いた。
「わあ!何だか楽しそうです!」
「萌にも皆さんと同じ、少しずつ学習していく人工知能が搭載されています。萌の凄い所は、まるでフィギュアサイズであるにも関わらず、複雑な人工知能をここまで超小型化できたことにあります」
 その特殊技術、実はデイライト社でも把握できていない。
 本来は萌をデイライト社で引き取りたかったが、どういうわけだか、敷島エージェンシーが手に入れてしまったため、デイライト社は敷島エージェンシーから萌を長期契約でレンタルしているという形になってしまった。
 本来なら分解して、その内部構造を調べたいらしい。
「後で皆さんにも見せてあげますよー」
 萌は得意げに言った。
「そうだ!萌、ちょっと協力してもらいたいことがある」
 井辺は何かを思いついたようだ。

[同日12:00.天候:晴 ロボット未来科学館1F・シアターホール]

 MEGAbyteは持ち歌の他に、先輩ボーカロイド達の持ち歌もカバーした。
 特に初音ミクの持ち歌である“千本桜”、他のボーカロイドもカバーしているのだが、このMEGAbyteもカバーした。
 その際、萌が持ち前の飛行能力を駆使して、天井から花吹雪を撒き散らすという大役を果たした。
 初音ミクよりマイナーなこの3人、集客は到底ミクには及ばないものの、そういった何気ない演出が、観客の心を掴んだようである。
 館長室のモニタで、この様子を見ていた西山と敷島。
「おー、これはかなり期待できるねぇ!まるで人間のアイドルユニットそのものだねぇ!」
 と、西山は絶賛していた。
「ありがとうございます」
「明日もあのコ達が来てくれるの?」
「はい。あと、明日は午後の部に限りまして、うちのMEIKOも参加させて頂きます」
「あのメジャーなボーカロイドにも来てもらえるの?」
「はい。たまたまで申し訳無いんですが、スケジュールの調整が効きましたので……。人間のアイドルにはできないことです」
「なるほど。機械である為、人間のような休憩とかも要らないわけだしね」
「そうです」

 シンディはバックヤードを通って、控え室に戻るMEGAbyte達についていた。
「ご苦労さん。次は15時からの午後の部だって。それまで休んでて」
 シンディは3人に言った。
「あの、私達は館内の見学はできないのでしょうか?」
 ゆかりが手を挙げた。
 するとシンディはクックッと笑った。
「あのねぇ、アタシ達はむしろ見学される側でしょう?見学するんじゃなくて、されに行きなさいな。もっとも、そこはプロデューサーの判断になるけどね」
「あっ、そっかぁ!」
 ポンと手を叩くゆかりだった。

 控え室に戻ると、井辺と敷島がいた。
「おー、ご苦労さんな、お前達」
 敷島が手を振って出迎えた。
「お疲れさまです!」
「話は聞いたよ。館内を回って、お客さん達と触れ合うのも営業だと思うから、限度を弁えた上でならいいよ」
「おお〜!ありがとうございます!」
「社長、私もついていた方がよろしいでしょうか?」
 と、井辺。
「基本的にはな。ただ、午後の部の流れについても打ち合わせしておきたいから……」
「じゃ、アタシがついてるよ。それにまあ、館内だったら、あいつらもいるから」
 シンディは窓の外を指さした。
 窓にはロール式のブラインドが下ろされているが、それでも分かるほどに、セキュリティロボット達がガッツリ“警備”しているのが分かった。
「ボーカロイドは、あいつらからも大人気だからねぇ……」
「ハハハハ……」
 呆れながら笑うLilyに、
「あらぁ……」
 照れ笑いをする未夢、
「はい、頑張ります!」
 と、何故かテンションアップのゆかりだった。
コメント (1)
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