報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「埼京を過ごす」

2016-04-14 20:58:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月27日08:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区・稲生の家 稲生勇太&マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]

 朝の勤行を終えた稲生。
「さーて、今日はどうしようかな……。寺院参詣でもするか。大原班長や藤谷班長にお世話になったお礼に……って、ああっ!?」
 稲生は自室に貼っている年間行事予定表を見ていた。
「きょ、今日は春季総登山だったのか……!置いてかれちゃったなぁ……」
 そして、ふと昨夜のことを思い出した。
(もしかして、顕正会が昨日、総幹部会をやってた理由って……)
 春季総登山中で、武闘派達が会場で待ち受けていることが無いからだったのではと思った稲生だった。
(じゃあ、今日行ってもあまり意味無いか……。いや、僕がクリスティーナに殺されそうになった時、御題目を唱えたら、威吹を使わせてくれたわけだから……)

 稲生が1階に降りた。
「おはよう。もうマリアンナさん、起きてるわよ。早く食べなさい」
「あ、うん……」
 母親が朝食を用意していた。
「父さんは……ゴルフか」
 会社役員ともあらば、日曜日はゴルフである。
 顕正会員が日曜勤行に行くほどのやり込みようだ。
「マリアさん、おはようございます」
「おはよう。おかげで、魔法も戻った。朝食後、すぐに師匠に連絡してみる」
「よろしくお願いします」
 稲生はスマホ片手にトーストを齧っていた。
 稲生家では週末はパン食と決まっている。
 稲生はスマホで、とある法華講の掲示板を見ていた。
(あれ、【ぴー】さんの書き込みがあるぞ?……うわ、この人、また日曜勤行にスパイに行ってるのか……)

『ケンショー監視人 投稿者:【ホワホワ】 投稿日:2016年3月27日(日)07時58分2秒

 Jかよw
 メタボはまたもやバックレwww』

(もしかして、浅井会長が日曜勤行休んだのって、僕達が……?)
 さすがに悪い気になった稲生だった。
(いやいやいや!日顕上人を追放だなんて平気で言い放つヤツに情けは無用だ!……あー、でも、上から押し潰すのはさすがに……)
「ユウタ、どうした?何か、悪い夢でも見たか?」
 悶々としている稲生を見て、マリアが不審そうに話し掛けて来た。
「い、いや、何でもありません!」
 稲生は慌ててトーストに齧り付いた。

[同日09:00.天候:晴 稲生の家1F・客間 稲生&マリア]

 朝食を終えた稲生達は、早速マリアの水晶球でイリーナと連絡を取った。
「師匠、師匠。こちら、マリアンナです。応答願います。師匠」
(毎度のことながら、どうしてマリアさんが水晶球で交信しようとすると、無線通信みたいになるんだ?)
 稲生はマリアの様子を見て、そう思った。
{「あいよ。だいたい状況は把握してるよー」}
 ローブを羽織ったイリーナが水晶球に映る。
「師匠、一体どこへ行ってらしたんですか?こっちは大変な騒ぎだったんですよ」
{「いやー、ダンテ先生の付き人として、冥界に行ってたんだよぉ」}
「冥界?バァル絡みですか?」
{「年寄りのティータイムに付き合わされる方も大変だったけど、弟子達がもっと大変なことになっていたってのに、愚痴ってられないね」}
「師匠はどこまで知ってるんですか?」
{「だいたいね。といっても、アタシも今朝方戻ってきたばかりだから、ちょっぴり混乱しているところだけど……」
(その割には、表情はいつもの『のほほん』だよなぁ……)
 と、稲生は思った。
{「とにかくマリアは、稲生君が一生懸命助けてくれたんだから、ちゃんとお礼を言っておくんだよ?」}
「わ、分かってますよ!……で、今、私達はユウタの実家にいるんです。私達、これからどうしたらいいですか?」
{「首謀者達はアナスタシアに捕まったみたいだから、適当に帰ってきていいよ。急いで帰りたければそれで良し。ゆっくり帰ってきてもいいから」}
(マリアさんの予想通りの答えが返ってきたなぁ……)
{「交通手段はユウタ君に任せるわ。交通費はいくら掛かってもいいから、ユウタ君のいいように帰ってきてー。クレカ持ってるでしょ、マリア?」}
「ええ、まあ……」
「分かりました」
{「後でダンテ先生から色々と発表があるだろうから、慌てて戻ってくる必要も無いけど、あんまりのんびりし過ぎないようにね」}
「分かりました」
{「それじゃ。チャオ♪」}
 ここで通信が切れる。
「……だってさ。予想通りの答えが返ってきたな」
「そうですね」
「どうする?」
「マリアさんは何で帰りたいですか?」
「いや、何でもいいよ。師匠の言う通り、ユウタに任せるって」
「ちょっと、検討してみます」
「まあ、師匠の言う通り、慌てる必要は無いみたいだ」
「ええ。ネットで検討したいと思います。取りあえず今日のところは……」
「ん?」
「正証寺に行きたいのですが……」
「ああ。そうしよう」

[同日10:00.天候:晴 JR大宮駅 稲生&マリア]

〔「お待たせ致しました。埼京線、各駅停車の新宿行き、まもなく発車致します」〕

 稲生とマリアは大宮駅に移動すると、そこから埼京線に乗り込んだ。
「すいません。僕の信仰に付き合ってもらっちゃって……」
「いや、いいよ。逆を言えば、それのおかげで助かったようなものだ。私もエイミーも……」

〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 E233系のドアが閉まる。
 電車は地下ホームを定刻に発車した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側に変わります。……〕

「……本当言うと、私は魔女の部類には入らない」
「えっ?」
「魔法は使う。使うが、私の使う魔法は、本来は魔術に近い。私は人形を操る魔法を使うが、恐らくそれは魔術に近いだろう」
「はあ……」
「でも、クリスチャンから見れば全部同じか……。エレーナの方が、よっぽど魔法使い、魔女だよ」
「まあ、ホウキで空飛びますしね」
 確かに魔女と言えば黒い服を着ているイメージがあり、アナスタシア組もそれで統一しているし、エレーナも黒いブレザーにベスト、黒いスカートをはいている。
 しかしイリーナ組は違う。
 師匠のイリーナをして薄紫色のドレスコートだし、マリアだって緑色のブレザーとグレーのプリーツスカートだ。
 稲生が弟子入りする前は、青と白を基調としたロングスカートのワンピースを着ていた。
 稲生は完全に私服だし、たまにスーツを着ることがあるくらい。
 確かに、イリーナ組は魔法使いであるが、魔女のイメージとは見た目は違う。
「一線を画していると言えば、そうかもしれませんね」
「私もホウキで空飛んだ方がカッコいいか?」
「いや、別に、マリアさんはこのままでいいです」
「そう」
「そうだ。エレーナと言えば、僕が通勤快速に乗っていた時、ホウキで追い掛けたことがありましたね」
 まだエレーナが敵対していた時だ。
 埼京線の通勤快速の最高速度は90キロ。
 なので、当時のエレーナのホウキの最高速度も90キロだったと言える。
 今では、中距離電車といい勝負だというので、100キロ以上出せるようだが。
 赤羽台トンネルの手前で失速して、危うく横を走る新幹線とぶつかりそうになり、墜落して大ケガした。
 マリアに回復魔法を掛けてもらったことで、エレーナはしばらく間、マリアへの手出しを控えている。

 そんなことを思い出しながら、2人は都内を目指す。
コメント (5)
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