報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cundy” 「MEGAbyteの日常」 2

2016-04-01 20:57:48 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月16日14:00.天候:晴 東京都墨田区菊川・敷島エージェンシー MEGAbyteの3人、シンディ、井辺翔太]

 結月ゆかりは定期検査の際、少しイメージチェンジをしようかと髪をイジった。
 アイドルはイメージが命である。
 イメージを崩さずにイメチェンしようとしたが、はっきり言って無意味であった。
 そこでプロデューサーの井辺を審査員に、ユニットメンバーのLilyと未夢でコーディネートをしてあげようということになった。
 実際に売り出すのは、プロデューサーの井辺である。
 その井辺の食指を動かすことができるのか。

 Lily:「ゆかりの着替え、終わったよ」
 シンディ:「よーし。じゃ、早速お披露目して。どやーってね」
 Lily:「ど、どやぁ……」

 Lilyは臨時更衣室にしている機械室のドアを開けた。

 中から出て来たゆかりは、Lilyのライブの衣装である黒いバドスーツを着ていた。
 へそが出ているのはもちろん、胸元も大きく開いた大胆な衣装である。
 MEIKOの露出も高いが、Lilyのはもっとロックなイメージである。

 未夢:「ゆかりちゃん、大胆!」
 シンディ:「ほっほー。こりゃまた大きなイメチェンですなぁ」
 井辺:「いいと思います」
 シンディ:「お、点数高かったみたいだよ。じゃ、次は未夢の案をお願い」
 未夢:「はーい(n*´ω`*n)」
 ゆかり:「ちょっと、恥ずかしいかもです」
 Lily:「結構、ゆかりの服って地味系だからね。イメチェンしたいなら、これくらいしないと」
 ゆかり:「そ、そうですかね……」

 未夢、ゆかりを機械室の中に連れて行く。
 未夢は正式なボーカロイドではない。
 元は筑波の研究所で開発された、当時、無差別テロロイドだったシンディに対抗する為に作られたマルチタイプであった。
 しかし、その後のテストに悉く失敗。
 廃棄処分寸前のところを敷島に引き取られ、平賀による改造を受けてボーカロイドに転用。
 敷島エージェンシーに入所して、今に至る。
 その為、未夢だけがソロシングルのCDを出していない。
 売れ行きは別にして、ゆかりやLilyが持ち歌を持ち、そのCDデビューをしているのとは対照的だ。
 ユニットでセンターを務めることはなく(センターはボーカルを担当する為)、センターを務めるゆかりやLilyと合わせてコーラスするくらいである。
 そんな未夢の宣材写真は、プラグスーツを着用した近未来的なイメージである。

 未夢:「着替えが終わりましたー」
 シンディ:「じゃ、よろしく」
 未夢:「はーい。シャラララーン♪どや〜っ!」

 機械室の中から出て来たゆかり。
 今度はプラグスーツを着た近未来的な感じであった。
 ゆかり自身がロイドなのだが、このまま別の巨大ロボに乗り込んで操縦し、強大な敵との戦いに赴くといった感じだ。

 Lily:「何か、強そうだね」
 井辺:「いいと思います。結月さんを、特撮ヒーローもののオーディションに出したくなってきました」
 シンディ:「おっ、じゃあ合格!?」
 井辺:「そうですね……」

 と、そこへ、

 鏡音リン:「たっだいまぁ〜っ!」
 鏡音レン:「只今戻りました!」

 鏡音リンとレンが仕事から帰って来た。

 リン:「あれーっ?何やってんの、みんな〜?」
 レン:「MEGAbyteのミーティングですか?」
 シンディ:「ま、そんなとこ。……おっ、そうだ。アンタ達、これから時間あるんなら手伝ってよ」
 リン:「なになに?」

 シンディは今、ここでやっていることを双子姉弟に話した。

 リン:「おお〜っ!?なになに!?ゆかりん、イメチェンしたいの!?」
 レン:「ボクはこのままでもいいと思いますが……」
 井辺:「あくまで、イメージの可能性を探るだけです。是非、鏡音さん達も、結月さんをコーディネートしてみてください」
 リン:「ブ・ラジャー!(^^ゞ」

 リンは早速、自分のイメージをゆかりに重ね合わさせた。
 着替えている間、レンは……。

 レン:「あの、プロデューサー」
 井辺:「何ですか?」
 レン:「プロデューサーも乗り気なところ、物凄く言い難いんですが……」
 井辺:「分かってます。どうしてもロイドというのは、自分のイメージをそのまま他人に押し付けてしまうところがあります。押し付ける、というのは語弊がありますね。人間でしたら、更にそこへもう一工夫するところなんですが……」
 レン:「あ、分かってました」
 井辺:「その一工夫については、私や社長にお任せください」

 リンがコーディネートしたゆかりの着替えが終わったらしい。

 リン:「じゃ、いっくよー!シャラララ〜ん♪どやーっ!」

 機械室から出て来たゆかりは、セーラー調の服に黒いショートパンツ、そして頭に大きな白いリボンを着けていた。

 シンディ:「……何か、ゆかりがリンのコスプレしたって感じだね」
 レン:「リン、それじゃダメだよー」
 井辺:「悪くはないと思いますが、もう一工夫……だけでは、ちょっと足りないかもしれませんね……」

 井辺は困ったような顔をして、右手を首の後ろにやった。

 リン:「えーっ!?じゃあ、もう1回!実は別に案があるんだ〜!ねぇ、もう1回いいでしょ!?」
 井辺:「まあ、私はいいと思いますが……」
 シンディ:「分かった。じゃあ、あと1回だけね」
 リン:「んっふっふ〜!リンの取って置きのイメチェン、見せてあげるYo!」

 今度は少し時間が掛かった。

 リン:「おっ待たせ〜!じゃあ、2度目の正直行くよ!シャラララーン♪今度はどやーっ!?」

 機械室から出て来たゆかり。
 黄色を基調としたドレスを着ていた。
 髪もしっかりと結ってあり、まるでどこかの王女様みたいだ。

 未夢:「かわいいっ!」
 Lily:「うん。まるでこれからお城の舞踏会に行くみたいだね」
 井辺:「いいと思います」
 シンディ:「おっ、今度は点数高いね!」
 レン:「でも、これ……。ミュージカル“悪ノ娘と召使”で着た衣装じゃない?」
 ゆかり:「わたしがあの有名なミュージカルの衣装を着れるなんて、夢みたいです」
 シンディ:「じゃあ、プロデューサー。今までの衣装を見てみて、どれが1番良かった?」
 井辺:「どれも良かったと思います」
 シンディ:「そういうのが1番困るんだよね!もっと男らしくビシッと決めて!」
 井辺:「と、言われましても、どれも甲乙付けがたく……。逆に、結月さん」
 ゆかり:「は、はい!?」
 井辺:「結月さんは色々着てみて、どれが1番良かったと思いますか?」
 ゆかり:「わ、わたしですか!?」
 井辺:「はい」
 Lily:「まあ、確かにゆかりの言い出しっぺで始めたことだしね。ゆかりが決めていいんじゃない」
 リン:「ゆかりん、どうだった?」
 ゆかり:「えっ、えーと……!わたし……わたしは……!」

 プシューッ!(両目がグルグル表示になり、右耳から煙が出る)

 リン:「わあっ!?ゆかりんが壊れちゃったYo〜!」
 Lily:「ゆかり、しっかりして!」
 未夢:「ゆかりちゃーん!」
 井辺:「シンディさん、すぐに氷を持って来てください!」
 シンディ:「あいよ!」

[同日17:00.天候:晴 同場所 シンディ、ゆかり、Lily、未夢、井辺、鏡音リン・レン、MEIKO、KAITO]

 どうにか再起動を行って事無きを得たゆかり。
 そうしている間に仕事から戻ってきたMEIKOが事情を聞いて、ゆかりの髪をセットしていた。

 MEIKO:「はい、終わり」
 ゆかり:「ありがとうございます。すいません、御迷惑をお掛けして……」
 井辺:「お気になさらないでください。大した故障でなくて良かったです」

 ゆかりは結局、元のイメージに戻った。

 リン:「レンの言う通りになったね」
 レン:「ボクはそのままの方がいいかなって……」
 未夢:「普段通りが1番かわいいね」
 KAITO:「でも、どうしていきなりイメージ・チェンジをしようと思ったんだい?」
 ゆかり:「色んな可能性にチャレンジしてみたくて……。私、ボーカロイドのお仕事しか無いですけど、ボイスロイドとしての用途もあるんです。でも、まだそんなお仕事が無くて……。イメージ・チェンジをすれば、他にもお仕事が来るかなって思ったんです」
 井辺:「申し訳ありません。私の……営業力不足のせいで。私も、もっと努力します。だから、待っていてください」
 ゆかり:「プロデューサーさん……」

 MEIKO、ゆかりをハグする。

 MEIKO:「よーしよしよしよしよし!」
 ゆかり:「め、MEIKO先輩!?」
 MEIKO:「よーしよしよしよしよし!」
 シンディ:「仲がいいね」
 KAITO:「それがボク達、敷島エージェンシーのボーカロイドです」
 リン:「KAITOっと!カッコいいっ!」

 その頃、社長室では敷島が電話していた。

 敷島:「何だよ、アリス?まだこっちは仕事中……はあ?帰りに卵買って来いだぁ!?アホか!二海に買いに行かせりゃいいだろ!……ああっ?二海だと卵割るからって、いや、そこを調整するのが科学者だろ?……あー、もう!分かった分かった!買ってくりゃいいんだろ!買ってくりゃ!」

 敷島エージェンシーは今日も平和!
コメント (4)
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