報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

第1閉塞、注意!

2013-09-21 13:34:06 | 日記
 “ボーカロイドマスター”より。 もうそろそろ終わり?

 目が覚めた時♪僕は1人♪黒く塗り潰された部屋♪何も見えず♪何も聞こえず♪1人震える闇の中♪……

 るりらるりら♪響く歌声は♪キミに届いているのかな♪……

[??? ??? 鏡音レン]

『鏡音レン、起動します』

 目が覚めた時、僕は1人……じゃなかった。僕のカメラ(目)には南里博士と、なっちゃん……赤月奈津子博士がボクの顔を覗き込んでいるのが分かった。
「先生、起動値、正常です」
「うむ。……ソフトウェア、メモリー等のバックアップについても異常なし」
「あ、あの……」
 ボクは声を出した。
「ふむ。意識レベル、規定値。全ての数値、全て規定通りじゃ」
「レン、これで修理が終わったよ」
 なっちゃんがボクに言った。
「しかし、まだデータのバックアップに、少し手間取っているようじゃな」
 そう。ボクの頭の中には自分の持ち歌や、ボーカロイド仲間の持ち歌がループしている。
 ……瞬間、思い出した♪全ての記憶♪自らが重ねた罪の数々♪
 いや、思い出したけど、罪の数々じゃなくて……。
「2度も自殺志願の人間を助けるとは、大したもんじゃ」
 先日、ボクを激しく叱責したのとは別人のように、南里博士はにこやかな顔をしていた。確かボクは、団地から飛び降り自殺を図った由紀奈を追って……。
「! 由紀奈は!?由紀奈はどうなりましたか!?」
「まあ、落ち着きたまえ。お前がシャットダウンしてから、まずは3日経っておる。タイマーの自動設定は完了したかね?」
「あ……はい」
 確かに、3日経っていた。
「その間、色々あったのよ」
 なっちゃんも言った。

 ボクが混乱しないよう、なっちゃんは順を追って説明してくれた。由紀奈は地面に叩きつけられる直前、ボクに抱えられ、掠り傷で済んだそうだ。頭や胸を強く打ったわけではなく、入院も数日で済む程度のケガとのこと。
「ただいまぁ」
 ボクが研究室から事務室に移動すると、ちょうどプロデューサーが戻って来た。
「おっ、レン。修理終わったんだな。いや、お手柄だ」
「ありがとうございます。営業に行かれてたんですか?」
「違う違う。あっ、そうそう。池波さん親子な、顕正会辞めたから」
「えっ?」
「漁夫の利みたいで申し訳ないけど、平賀先生があんな状態だし、放っておけなかったから。俺の所属寺院で御受戒してもらったよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!プロデューサーって……」
「今まで黙ってたけど、俺は退転中の元信徒だったんだよ。色々ワケありでね。でもさすがに池波さん達が放っておけなかったから。俺は俺で勧誡したよ」
 また漢字変換のできない単語が飛んできたけども、どうやら少しは状況が改善されるのかなと思った。
「でも団地を追い出され……」
「それも無くなった。潔白を証明したから」
「潔白?」
「お前のメモリーを解析して、エミリーが池波さんが嘘を付いていないと言ったんだ。エミリーには嘘発見器が搭載されてるからな」
 ボク達にはそんなものは無いけど、さすがスパイ活動もしていたマルチタイプなだけのことはある。
「代わりに団地を出て行ってもらったのは、管理人の方さ」
「ええっ!?」
「顕正会員から見れば、『学会の謀略部隊』にカテゴライズされるのかねぇ。顕正会の評判を貶めるべく、精力的に活動していた池波さんが追い出されるように仕向けてたらしいよ」
「プロデューサー、どうやって証明したんですか?」
 しかし、プロデューサーは咳払いをしただけで、答えてくれなかった。
「まあ……ガサ入れ数回入っているという時点で評判も何も無いから放っといたっていいと思うんだけど、余計なことをした時点で運のツキってことだ」
「そうだったんですか」
「因みに由紀奈ちゃんには、リンが付き添ってる。あの子、顕正会活動のせいで友達がいなくて、それで孤独感から自殺衝動に駆られていたらしいな。でもまあ、リンがいるからもう大丈夫だ」
 リンなら誰とでも仲良くできるからな、そこはプロデューサーの言う通りだ。
「あの、平賀博士は……?」
 その話になると、途端にプロデューサーの顔が曇り始めた。
「こっちは芳しくない。多分もうすぐ平賀先生は、逮捕されるだろう」
「ええーっ!?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 因みに池波とは、私が顕正会時代にお世話になっていた上長達の名字を一文字ずつ合わせたものです。
 もうお分かりとは思いますが、あくまでフィクションですので念のため。
コメント (2)
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第2閉塞、進行!

2013-09-21 00:21:53 | 日記
 “ボーカロイドマスター”より。 前回の続き。

[13:00.市営中吉台団地1号棟4F 平賀太一]

 自分が目にした光景は半分想定内で、半分想定外である。
 自分には信仰上、大変お世話になった御方が妙観講におられる。あいにくと仏縁からか、結局自分は違うお寺に縁してしまったが、それでも大事な人に他ならない。今日はその方の誕生日であり、自分としては何としてでもお祝いをしたかった。だが、仕事が忙しく、上京は叶わなかった。そこで自分は一計を案じた。自分が今手がけているプロジェクト、ドクター・ウィリーの産物であるバージョン・シリーズを平和利用に転用できないかというものだが、このロボット達の最大の特長とも言える神出鬼没な機動性を利用し、サプライズ・イベントを考えたのだ。GPSで確認したが、自分の用意した5体はちゃんと大事な人が常に出入りしている本部へ着いたようだ。今頃は大騒ぎになっていることだろう。ここまでは想定内、というか計画通り。
 想定外というのは、自分の折伏対象である顕正会員が同じ団地住民により、集団抗議を受けてしまっていることだった。団地内で相当な苦情が出ているというのは調査したが、まさか住民達がこのタイミングで動くとは思わなかった。
「池波さん、いい加減にしてください!今度は2号棟と3号棟にポスティングしたそうですね!?」
「今度やったら出て行くという約束を忘れたのか!?」
「いくら被災者だからって、やっていいことと悪い事があるんですよ!」
 正に集中砲火だ。顕正会員の場合、『在所追い放たれて』という御金言を曲解しているからな。『退去させられた』という形で退去して、『不思議な御守護で、すぐに新しい新居が見つかり』というベタな流れで行くのだろう。『退去を求めて来た住民達の中には学会員がいた』というオチ付きでね。しかし、だ。
「私、知りません!約束通り、勧暁書も新聞もお配りしてません!」
 と、顕正会員は否定している。
「ウソを付きなさい!この封筒の連絡先、池波さんになってるでしょう!」
 抗議団の1人、中年男性が勧暁書の入っている封筒を掲げた。
「何かの間違いです!私、何もしてません!」
「この団地で、顕正会の信者は池波さんしかいないんですから、言い逃れできませんよ!」
 別の中年女性も言い放った。
 何だか、話の流れが微妙だな……。そう思っていると、レンが開け放たれた玄関ドアから部屋に入った。
「由紀奈!」
 自分もレンを視線で追うと、奥のダイニングですすり泣く少女の姿があった。レンは彼女を慰めると、部屋から連れ出した。
「博士、由紀奈は取りあえず公園にでも連れて行きます」
 と言った。
「ああ。そうしてくれ」
 その方がいいだろう。こんな醜い言い争いを子供に見せるわけには行かない。さて、自分はどこで割って入ろうか。タイミングを計っていると、抗議団の別の中年男性がトドメの一言を言い放った。
「とにかく、近いうちにここから出て行ってもらいましょう!どうですか、皆さん!」
 拍手が起こる。
「まあ、ちょっと、皆さん……」
 自分がやっと割って入ろうとした時だった。
「由紀奈!!」
 背後でレンの叫び声がした。自分が振り返るのと、由紀奈という名の少女が飛び降りたのは同時だった。
 その直後、レンも飛び降りた。
「レン!」
 何秒も経たないうちに、言葉では表現できない大きな音が聞こえた。レンは下のアスファルトに叩きつけられたようだ。体から火花が飛び散っているのが見えた。
「子供達が落ちたぞ!」
「ひゃ、119番だ!は、早く救急車を呼ぶんだ!!」
「急いで!」
 抗議団は抗議どころではなくなったようだ。パニックを起こした。

 くそっ!何てことだ!まさか、こんな展開になるなんて!

 大聖人様の尊き仏法を、邪法に変えることの何と恐ろしい罪深さよ。

 大人の勝手な異流儀活動で、未入信の子弟や無関係な知人を巻き添えにするなんて……!
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