今年も残りわずかとなり、今週から冬休みですね。お元気ですか。
この週末は、ようやく満足のいくコーヒー豆を調達できました。Camdenというロンドン北西部の下町の、商店街から少しはずれたところに、恐らくロンドンで唯一の自家焙煎店があります。みるからに頑固爺が店を切り盛りしているのは、東京のこだわり珈琲店に似ています。店主に好みを伝えて、薦められたブラジル産の豆は、私にとってはやや物足りない部分があるものの、いかにもブラジルらしくバランスのよい万人受けしそうな味でした。なにより、焙煎して日が浅いので、気持ちよく淹れることができます。これまで、いつ焙煎したのかわからないくらい酸化の進んだ豆ばかりだったので、いくら湯を注いでも吸収するばかりでなかなか落ちてこなかったのですが、ここ豆はイメージ通りに淹れることができます。まずは、調達先をひとつ確保し、日頃のささやかな不満の種をひとつ消すことができました。
土曜日、コーヒー豆を買った後、ナショナル・ギャラリーに行って、キュレーター・トークを聴いてきました。まず、形式ですが、一枚の絵を題材に、その絵のこと、その作家のこと、その時代のことをキュレーターが説明します。所要時間は約30分。今回のお題はSalvator Rosaの”Witches at their incarnations”でした。私はこの作家を知らなかったのですが、日本では彼の作品を観ることは殆どできません。風景画、特に山岳風景画で有名らしいのですが、詩人でもあり版画家でもあり哲学者でもあります。彼が生きた17世紀の画家というのは、誰も多才な教養人であることが要求されたようで、彼が特別そうであったというわけではなさそうです。この絵は彼自身の詩(諷刺詩)をモチーフに描かれたそうで、かなりグロテスクです。解釈はどうにでもできるでしょうが、私には人間の心の闇のイメージを描いたように見えました。 キュレーター・トークの客は、東京の美術館のそれと良く似ています。老人が多く、熱心にメモをとりながら聴いている人もいれば、半分居眠りをしている人もいます。好きで観に来ている人もいれば、暇つぶしでそこにいるだけという様子の人もいます。年寄と子供というのはいつの時代もどこの世界も似たり寄ったりなのではないでしょうか。
今週は火曜日が職場有志の忘年会で、水曜は美術館のセミナーで外食なので、今日は冷蔵庫のなかのものを整理しました。玉葱、パプリカ、マッシュルーム、ズッキーニ、トマトが少量ずつあったので、先日買ったカレーペーストの残りを使って野菜カレーを作りました。これで、木曜と土曜に買い物をすれば、適切な食料在庫を持って、うまい具合に週末とクリスマスの連休をしのぐことができそうです。
こちらはクリスマスと、その翌日が祝日で、特にクリスマスには都市機能がほぼ停止します。それなのに、仕事は東京時間に合わせなければならないので、地下鉄も動いていないのに出勤しなければなりません。ちょっとこの体制は勘弁して欲しいものです。クリスマスがこれほど厄介だと思ったことは、過去にありません。
キリスト教徒でもない多くの日本人にとって、クリスマスもへったくれも無いでしょうが、楽しいクリスマスを迎えることができるよう、健康に気をつけてください。