ドイツの秋 ー 紅葉、もみじ、Momijiに出逢う日々

2015年10月27日 | ドイツの暮らし

2015年10月24日

早くやって来たドイツの秋、土曜日の静かな午後。
「僕の心は、本当は何処にいるのだろうか?」





こうして一人で紅葉を見ていると、そんな不思議な文章も不意に
浮かんできます。


2015年10月27日 

日本の四季の移り変わりを象徴してきた、楓と桜。





ドイツに住めばそんなことを誰も気にしないし、その想いを詳しく
話すことも、分かち合うことも、まず出来ない。
その点では、ぼくの感覚は此処では一人ぼっちだけど、日本では、、
何千、何万の人がその風景に自分の生の経験を重ね合わせては、
また、この世を去って行ったのだろう。
秋の日がこんなに美しく、生きるもの全てに陽光が当たる、健やかな日々に。


ドイツの若いライフスタイル  ー 「ビーガンはストイックなベジタリアンの 話では全然ない。」

2015年10月24日 | オルタナティブ&オーガニック



今、ドイツの若い世代、20才前後から、30才過ぎまで、ベジタリアン
からさらに動物性は一切摂取しない、卵も乳製品も外した「ビーガン」(vegan)
が新しいライフスタイル、自分の健康や環境との調和を大切にする生き方
として、凄い勢いで広がっています。
1980年代初頭の「オルタナティブ」の生成発展時のような社会的、
政治的な変革の意識、ベクトルの強さとは異なりますが、若い人達
の意識の変化、その予兆をハッキリと感じます。



東西ドイツ統一後の1990年代に生まれた世代が、もう20歳~25歳に
なっています。現代ドイツは今でも、両親の学歴、職業、所得水準など
によって、相当の格差がある社会です。
最新の調査によれば、国民の上位1%が33%の富を所有し、更に
その上位の0.1%が国の富の17%を所有している国です。
このように貧富の差は激しい国ですが、低所得層の基本的な生活の安定は
確保されていると思います。また、一般企業のホワイトカラー、学校の
先生、市役所・区役所勤めの公務員など、いわゆる社会の中間層の
暮らしぶりの安定と堅実性は目を見張るものがあります。

僕の私見では、今回のビーガンの運動を支えている若い人たちは、
まさにこの中間層の子弟だと思います。生まれてから社会的にも家庭的
にも大きな苦難を経験することなく、安定した既成枠の中で育ってきた
子供達が今、成人して自らの人生を歩み始める時に、社会と大きく対立
することも拒否することもなく、その既成枠から二歩から三歩、あるいは
五歩くらいははみだそうとしているのだと思います。



西ヨーロッパの現代社会での肉の消費量は、日本と比べても桁違いです。
このところ多少減ったと言っても、成人一人あたりの肉の消費量は、
年間80kgを超えています。そこに大手メーカーによって生産され格安化した
牛乳、チーズ、ヨーグルトの大量消費が加わります。それは、大量生産型
の食肉・乳製品などに依存した食生活であり、工業化・商業化された
食生活でもあります。また、言葉を変えれば、生きた動物達を産業的、
商業的関心から100%物質化し、命をモノに変えてしまった姿です。



ドイツのビーガンの運動は、このような食生活を拒否するものです。
その運動を支える若い人達は、社会派でもなく、デモに進んで
参加する人達ではありません。むしろ、ファッションやライフスタイル
に興味があり、政治的にも大きく声を上げることはありません。けれども、
彼らが感じているのは、今までの両親の暮らし方や食生活をそのまま
続けたくはない、というはっきりした意志です。自分の暮らし方に
関わる、モラルの意識なのだと思います。

現代のドイツ人の食生活の変化だけでなく、毎日の個人の暮らし方、
社会のパーソナルな変革にもつながっていくのではないかと、嬉しい
期待が湧いてきます。



この新たな時代の流れの中で、日本のかっての伝統的な食生活や
それを支えていた暮らしの知恵や、食と人間との関わりについての
深い考えが役立つ場面、契機が相当あると思います。
その際に道元の典座まで遡る必要はないでしょうが、食に関する
生半可な知識や経験では役に立つことはできないと思います。
東西の食文化や風土の違いをしっかりとわきまえ、自らの生活上の
経験から発想出来れば、これからのドイツの若い世代の人達にも
役立つ新鮮な提案が必ず出来ると思います。

ビーガンは、乳製品や卵も摂らない、ストイックなベジタリアンの
話では全然ないと思います。今からが楽しみです。



 


料理が出来て良かった。 ー 和洋折衷の秋のポタージュ。

2015年10月17日 | ドイツ・ヨーロッパの「食」

ドイツ・ヨーロッパの秋を彩る剽軽もの。



パンプキン、カボチャ、キュルビス。
名前の通り、いろいろな形、様々な色。



食べ方もいろいろ。



僕が今年、一番凝っているのは、一度、昆布出汁、酒、味醂などで、
和風に炊いたカボチャに絹漉し豆腐をたっぷり加えて、ハンドミキサー
でピュレにして、そこに牛乳、バター、ナツメグなどで味を調えた、
和洋折衷の秋のポタージュです。





88歳になるドイツ人の義理の母のお昼ご飯に妻が届けると、後から、
わざわざ電話をかけてきて、「本当に美味しかったよ、知行は料理の芸術家だね」
と、この30年で最大級の賛辞を貰いました。



料理が出来ることは有難いことだと、この頃よく思います。
自分が愉しいことでひとの役に立てることは嬉しいことです。
自分の生業では、日独言語間の専門職について30年余りになりますが、
このように心が弾むことは一度もありませんでした。

少なくとも僕の場合には、経済や産業に関わった活動では自らの利害と
金銭的関心や損得が支配的になる部分が多く、その上、活動自体の意味
や価値に懐疑的になってしまうからでしょう。長い間、なんとか折り合い
をつけてきましたが、「これからの人生の選択肢ではないなあ」と、
スープを作りながら、煮え切らない自分を眺めています。

 


和洋折衷の野菜料理 ー「花咲くサラダ」

2015年10月15日 | ドイツ・ヨーロッパの「食」

仲の良い友達家族と久し振りに会った今週末の夕食です。
友達に合わせて今日は全てベジタリアン。
一見、全てが洋風の料理に見えても、野菜たっぷりのメニューの時
こそ、和食の調理方法やその発想法の力の見せ所と思います。



無水鍋で蒸し焼きした後、昆布水で炊いた赤ビーツや蒸した馬鈴薯の
スライスを土台に、サラダ菜や湯煎した名残りのトマトをたっぷり
入れて、白バルザミコやエクストラバージンオリーブオイル、野苺や
ザクロのビネガーのドレッシングに、たっぷり盛り付けた秋の花の
サラダをメインディッシュに、カボチャと豆腐のポタージュスープ。



昆布水と白醤油をたっぷり使い、梅酢を隠し味にしたポルキーニ
の炊き込み御飯。




美味しくて愉しい一晩でした。




鞍馬の器に、ブロッコリーの花を散らして。

2015年10月14日 | 日本の「食」



春と秋、年に2回、自宅の小さな菜園にブロッコリーの花が咲きます。



小さなレモンイエローの花は午後の光の中、各々が自らを祝うようです。
それでも、今年はドイツの秋が本当に駆け足でやって来ています。
明日は山間部では初雪になるところも多いそうです。



さて、今日のお昼ごはんにはこのブロッコリーの花を散らして、
ほんの少しのキノコと浅漬けの蕪、梅酢漬けの生姜で、秋の混ぜ寿司
を作りました。

なかなか美味しくできたので、京都鞍馬の陶芸家の友人、目片さんに
手ほどきを受けて初めて作った深めの丸皿を取り出して、盛りつけて
みました。我が家の食卓に初登場です。



寒さが厳しい鞍馬の冬も、今はまだ冬は遠く、秋の足音、秋の夜長を
楽しみにして、午後の光に輝く山々を望んでいるのだろうか。
こうして料理をしていると、これまでの人生の中で縁のあった人々の
顔や仕草を不意に思い出すことがある。
毎日の生活の中で大切なことは、忙しさの中にはあまりなく、のんびり
したひと時の中にあることが多い。

今年の秋には、また、もう一枚、お皿を作ってみたいと思う。

 


午後の光 ー 今年も秋が来た。

2015年10月11日 | ドイツの暮らし



ドイツの秋が、今年も自宅の庭にやって来ました。



9月から続けてきたリンゴの収穫もそろそろ終わりです。今年は
たくさんのアップルコンポートを作って楽しみました。



午後遅くから夕方に向かう陽光は、果物や緑の美しさを
引き立てるようです。



地面に這いつくばるようにして写真を撮ると、
キノコの国に迷い込んだようです。





林檎、きのこ、紅葉、うちの子猫。
今日は気持ちのいい天気です。





ルクセンブルクでのキノコ狩り ー 秋の味覚、香り高き「ポルキーニ」

2015年10月11日 | ドイツ・ヨーロッパの「食」

「天高く馬肥ゆる秋」と昔から言いますが、今日の日曜日はまさに
そんな感じです。ドイツはもう秋真っ只中です。



一昨日は生まれて初めてのキノコ狩りでした。
刃物の仕事でルクセンブルクに行きましたが、そのセミナーに参加した
料理長のクリストフさんが翌日の朝、彼のお店から車で10分ほど走った
ところにある、キノコの森の中に連れて行ってくれたのです。



お目当てはもちろん、秋の味覚の王者と呼ばれる「ポルキーニ」でした。
フランス、イタリアだけでなくドイツ語圏でも、ポーランドやチェコ、
ハンガリーでも、ヨーロッパ全体で食いしん坊の目が輝くキノコの王様です。





目を皿のようして一時間ほど森の中を二人で探し続けると、バケツ一杯の
収穫になりました。
キノコ狩りをすると、もちろん食べられないキノコも沢山あります。
特に、毒キノコには要注意です。それでも厄介なのは、下の写真のように
一目瞭然のものばかりではないことです。



特にこの赤いキノコは、ルクセンブルクだけでなく、どこの国にも必ず
いる、盛り場のしっかりしたお姉さんや夜の女王達のような風格があり、
なかなか見事なものだと思いました。



ポルキーニ狩りのベテラン、クリストフさんの話では、シーズンの盛りで
良いコンディションの時には一日で何十キログラムと採れることもある
そうです。彼のレストランでは、それをオーブンで素焼きにして粉末にし、
次のシーズンまで一年間、自家製の旨味調味料として使うそうです。

その日の午前中はルクセンブルクのシェフ達と刃物の研ぎ直しのセミナー、
午後はクリストフさんチームへの和食の基本の紹介と盛り沢山の一日でした。







二つのセミナーの間、ずっと「朝採ったポルキーニはどこに行っただろうか?」
と気掛かりだったのですが、帰りがけにクリストフさんが料理コースのお礼と
家族へのおみやげにと箱一杯の野生のポルキーニをプレゼントしてくれました。
感謝感激、実に有り難いことです。

ドイツの自宅への帰宅は夜中の10時頃になりましたが、長男を誘って友人の
アドリアーノのイタリア料理店にルクセンブルクのポルキーニを持ち込み、
早速ソテーにしてもらいました。
イタリア人の大好物のキノコだけに、味付けもオリーブオイル、にんにく、
パセリで手慣れたものでしたが、ありきたりと言えばありきたりのレシピ、
また見た目の美味しさに比べ、野生のポルキーニの深い味や芳香を生かし
きってはいないように感じました。



自宅に戻るときには「これなら僕でも出来る、もっと美味しく出来る、
明日はキノコの日だ!」と心に決めて、ルクセンブルクから持ち帰った
モーゼルのやや甘口の白ワインを一杯ひっかけて、すぐ床に入りました。

朝が来ました。人生五十年、初めて採ったポルキーニを竹ざるに乗せて、
まず記念写真を撮りました。が、その間も「どんな風に料理しようか」と
頭の中にいろいろなアイデアが巡ります。

 



いよいよ料理に入ります。



その結果が以下の写真です。



①ポルキーニのきのこそば
 いやぁ、美味しかったです。信州の大久保さんの薄口醤油との
 出汁とも相性抜群。「でも、信州で食べた大概のきのこそばよりは、
 僕の今日のポルキーニそばのほうが一段美味しいなぁ。」と自画自賛。



②ポルキーニの天ぷら
 揚げ物にすると、ポルキーニの味の広がりや香りを衣の中に
 閉じ込めてしまうようで、これはリピートのレシピにはならないな
 と感じました。



③ポルキーニの炊き込みご飯 
 土鍋で炊き上げた後、約10分間ほどの蒸し時間の間に、一番状態の
 良かった、生のままの小ぶりのポルキーニの軸と笠を薄くそぎ切りにし、
 パスタの上にパルメザンチーズを散らすかのように、たっぷりとのせました。
 蓋をあけると実に芳香高く、口にすると、上品で深みのある味でした。



④ポルキーニとチェリートマトのパスタ
 これもなかなか美味しかったのですが、パスタがマカロニ状のもの
 だったのが多少残念でした。妻が選んだパスタなのですが、食べる
 際にポルキーニの旨味と絡み合わせることがやや難しく、これは
 やはり、きしめん状のタリアリーニで行きたかったな、と思いました。
 けれども十分に美味しい一皿でしたし、夫婦円満も考え、小声の感想
 に留めました。



⑤ポルキーニの和風ソテー
 白醤油を使ったのですが、にんにく醤油をほんのすこし入れるつもり
 がちょっと入りすぎ、ポルキーニとの味のバランスが壊れたように思います。
 妻とスタッフのOさんは「美味しい、美味しい」と言ってくれましたが、
 「昨日のイタリアの古典的レシピのほうが、見栄えはずっと美しかったな。」
 と、ひとり頭を下げる気持ちでした。



⑥ポルキーニのストック
 椎茸やエリンギでもよくやる、我が家の定番「キノコのストック」
 をポルキーニに応用しました。とても良い味となりました。
 水出しした、天然真昆布の昆布水に、塩・酒・白醤油・薄口醤油で
 淡い味を付け、中火から弱火でキノコが柔らかくなるまで温度を
 入れます。時々灰汁を取りながら、キノコの旨味が十分に広がり
 解き放れるのを待てば、仕上がりです。これさえあれば、本当に
 いろいろな料理に使い回しが出来て、便利なレシピです。
 定番の椎茸もしっかりした味のストックとなりますが、それを上回る
 深み、椎茸にはない上品な味や香り、さすがポルキーニと思いました。



野生のポルキーニは大小様々、相撲取りの手を優に超えるような大きな
サイズのものも見かけますが、マルクトや野菜売り場にはそのような
サイズのものはなかなか出回りません。  



日本の秋は松茸、ヨーロッパの秋はポルキーニと言っても
良いのかもしれません。






 


村の郷土料理屋 ー ドイツは良いところですよ!

2015年10月04日 | ドイツの暮らし

東西ドイツ統一記念日の昨日、沖縄座間味島の同い年の友人の方の
娘さんが、初めての海外旅行でドイツに訪ねてきてくれました。



これから約3ヶ月の滞在期間、今のドイツの自由なところやその
暮らし振り、そしてクリスマスに至るドイツの秋冬の伝統的な風物詩
も十分に楽しんでくれたらと思います。



そんなことで、昨日は僕の住む村の郷土料理屋にご飯を食べに行きました。



何の混じりものもないドイツの昔からのビールをしっかり飲んで、
ポレー葱とジャガイモのスープに、シャンピニオンのフラムクーヘン、
牛肉の煮込み料理に、豚のスネ肉のローストと丸ごとオールド
ファッション・ドイツ料理を楽しみました。



最後はオーナーシェフとのツーショットです。



これからの若い世代の女性に、なるべく沢山、今の「自由と伝統のドイツ」
を持ち帰って貰えればとおもいます。
そんなことを思いながら、今日の晩はお土産に頂いた十年ものの
泡盛古酒「おもろ」、43度をロックで楽しんでいます。


ドイツで出来る、美味しい和食 ー 「チェリートマトたっぷりの洋風炊き込みご飯」

2015年10月02日 | 日本の「食」

今日のご飯は、小さなトマトたっぷりの洋風炊き込み御飯です。
思いつきで初めて作りましたが、皆んなが「美味しい、美味しい!」
と言ってくれたので、二日続いて作りました。



五分搗き米を数時間、十分に浸水させた後、炊く前にその水を、
水出しした昆布水で総取っ替えしてしまいます。
その昆布水には白醤油、薄口醤油、エクストラバージンのオリーブオイル、
梅酢、酒、塩を適度に入れて、さらにとても細かいみじん切りの生姜と
にんにくを数グラム入れて、ちょうど良い加減に味を決めて、
炊き込み御飯の調味液とします。トマト以外の野菜は数ミリに薄く切った
ニンジンとセロリのみ。



これらの具材と各々のうま味を秘めた東西の伝統的な調味料の力を信じて、
土鍋で炊き上げます。



すると、こんな感じになってちょっと洋風モダンですが、
口の中に優しく滋味が広がります。暖かくても、冷えても、
それぞれに美味しいと思います。

この炊き込み御飯は最近流行りのビーガンレシピとしても通用しますが、
最後の方で、ご飯が炊き上がり、土鍋の中でまだ良い頃合いに蒸して
いる間に、軽く、あっさりと下味をつけた鶏肉や魚介類をご飯の上に載せても、
ちょうど良く火が通って、さらに豪華な食事となります。
本当は子供達三人に食べさせたかったのですが、夏休みが終わって
勉強先に戻ってしまっているので、スタッフと昼ご飯や夕飯、夜食に
分け合って食べました。