ドイツの若いライフスタイル  ー 「ビーガンはストイックなベジタリアンの 話では全然ない。」

2015年10月24日 | オルタナティブ&オーガニック



今、ドイツの若い世代、20才前後から、30才過ぎまで、ベジタリアン
からさらに動物性は一切摂取しない、卵も乳製品も外した「ビーガン」(vegan)
が新しいライフスタイル、自分の健康や環境との調和を大切にする生き方
として、凄い勢いで広がっています。
1980年代初頭の「オルタナティブ」の生成発展時のような社会的、
政治的な変革の意識、ベクトルの強さとは異なりますが、若い人達
の意識の変化、その予兆をハッキリと感じます。



東西ドイツ統一後の1990年代に生まれた世代が、もう20歳~25歳に
なっています。現代ドイツは今でも、両親の学歴、職業、所得水準など
によって、相当の格差がある社会です。
最新の調査によれば、国民の上位1%が33%の富を所有し、更に
その上位の0.1%が国の富の17%を所有している国です。
このように貧富の差は激しい国ですが、低所得層の基本的な生活の安定は
確保されていると思います。また、一般企業のホワイトカラー、学校の
先生、市役所・区役所勤めの公務員など、いわゆる社会の中間層の
暮らしぶりの安定と堅実性は目を見張るものがあります。

僕の私見では、今回のビーガンの運動を支えている若い人たちは、
まさにこの中間層の子弟だと思います。生まれてから社会的にも家庭的
にも大きな苦難を経験することなく、安定した既成枠の中で育ってきた
子供達が今、成人して自らの人生を歩み始める時に、社会と大きく対立
することも拒否することもなく、その既成枠から二歩から三歩、あるいは
五歩くらいははみだそうとしているのだと思います。



西ヨーロッパの現代社会での肉の消費量は、日本と比べても桁違いです。
このところ多少減ったと言っても、成人一人あたりの肉の消費量は、
年間80kgを超えています。そこに大手メーカーによって生産され格安化した
牛乳、チーズ、ヨーグルトの大量消費が加わります。それは、大量生産型
の食肉・乳製品などに依存した食生活であり、工業化・商業化された
食生活でもあります。また、言葉を変えれば、生きた動物達を産業的、
商業的関心から100%物質化し、命をモノに変えてしまった姿です。



ドイツのビーガンの運動は、このような食生活を拒否するものです。
その運動を支える若い人達は、社会派でもなく、デモに進んで
参加する人達ではありません。むしろ、ファッションやライフスタイル
に興味があり、政治的にも大きく声を上げることはありません。けれども、
彼らが感じているのは、今までの両親の暮らし方や食生活をそのまま
続けたくはない、というはっきりした意志です。自分の暮らし方に
関わる、モラルの意識なのだと思います。

現代のドイツ人の食生活の変化だけでなく、毎日の個人の暮らし方、
社会のパーソナルな変革にもつながっていくのではないかと、嬉しい
期待が湧いてきます。



この新たな時代の流れの中で、日本のかっての伝統的な食生活や
それを支えていた暮らしの知恵や、食と人間との関わりについての
深い考えが役立つ場面、契機が相当あると思います。
その際に道元の典座まで遡る必要はないでしょうが、食に関する
生半可な知識や経験では役に立つことはできないと思います。
東西の食文化や風土の違いをしっかりとわきまえ、自らの生活上の
経験から発想出来れば、これからのドイツの若い世代の人達にも
役立つ新鮮な提案が必ず出来ると思います。

ビーガンは、乳製品や卵も摂らない、ストイックなベジタリアンの
話では全然ないと思います。今からが楽しみです。



 


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