ドイツの片隅でー家族で「深夜食堂」の夜

2017年12月21日 | 日本の「食」

【12月21日】

クリスマスの前、家族で深夜食堂の夜。

イカのヒレの細切りとほうれん草の炒め物。
鳥の胸肉とハムと白菜の炒め物、魚の子、
高野豆腐、細ネギの卵とじなどの後、今晩のメインディッシュは、
ウイーンから帰って来る長男のために、特別に用意した久し振りの
鍋物、鱈ちり。
長男と次男が何度もお代わりをし、食べ終わったのは、なんと夜中の
2時頃でした。

生憎の悪天でウイーンからの飛行機が大幅に遅れ、ご飯のスタートが
そもそも午前零時を回った頃。
それでも今日からはクリスマス休暇だからなんでもOKか。

各々の勉強先からドイツの実家に帰って来た長男と次男。
まあまあその食べること、食べること。その上、箸の上げ下ろしの間に、
積もり積もった話を話すこと、話すこと。

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【12月30日】

クリスマスも過ぎて、うちの遅い晩御飯の締めは昨日、今日と
立て続けに冷たい細麺のうどんでした。
夏であれ、冬であれ、次男の健の大好物です。
昨日、一緒に食べていたのは幼馴染の親友。

今日のもう一人の連れは、この頃、幼馴染みのDavidと
同じくらい大事な存在の彼女。

作るのはいつも僕。健が小さい時からそうだった。

これからもそうだろう。
三人とも本当に美味しいと喜んでいた。
僕もああ、こうして自分の好きなものを伝えられて、本当に
嬉しいなぁと思う。
ただそれだけの話だけど、ちょっとノートしておきたかった。

さて、明日の夜のご飯は何にしよう?

 

 

 

 

 


「ドイツ・ヴィーガンの方々への和食料理教室」

2017年03月19日 | 日本の「食」

今日は午後から4時間、今年3回目、ドイツのヴィーガンの方々への、
和食料理教室でした。

「和のヴィーガン」は日本の料理の伝統や食材の選択、扱い方の中に
元々あるものです、というところからコースの説明スタートです。

一つ一つのレシピを伝えるのではなく、和食の基本的なこと、お米と
大豆のこと、昆布出汁、干し椎茸の戻し汁、旨味の相乗効果、日本の
発酵文化、天然調味料、味噌や醤油の種類と味の違いなどを、何度も
何度もその一つ一つの味見を繰り返しながら、キッコーマンやハナマルキ、
だしの素等の食品産業へのかなりキツイ冗談も交えながら、ゆっくり、
ゆっくりと伝えていきます。

米味噌、麦味噌、豆味噌の違いも分かって、豆腐の水抜きのやり方も
覚えて、合わせ味噌のコツも聞いて、最初の「絹さやと絹ごし豆腐の
お味噌汁」と、ほんの少しの隠元の胡麻和えが出て来る頃には、もう
一時間余りが過ぎています。

それでも、皆さん、本当に熱心で、「あぁ、本当に美味しい」とお代わり
もしてくれます。その間に箸の使い方だけでなく、箸の上げ下ろしの手順、
器の持ち方も一緒に練習します。

今日の参加者は計9人。20代後半から30代始めのカップルが3組、日本が
大好きな16歳の男の子とヴィーガンなどには全く興味のないお肉料理が
大好きなお父さん、それに、僕の長男の彼女のお母さんでした。
巨漢のお父さん以外は、皆もう長くベジタリアンで、その中ですっかり
ヴィーガン一本の人も半数以上でした。

昆布出汁や水だけで作る、具沢山の野菜中心のお味噌汁の部が終わると、
ドイツの人達が大好きな、お寿司の部に移ります。

紹介するのは巻き寿司、そして数種の具材とすし飯、四半切りの海苔さえ
あれば食卓で誰でも簡単に美味しく出来る手巻き寿司の二通りです。
巻き寿司は作りやすいように、そして、いろいろなネタを組み合わせて
楽しめるように、細巻きでなく、中巻きを選びます。

まずはお米の選び方、洗い方、炊き方、お砂糖を控えた寿司酢の作り方、
飯切りの仕方などを実演します。

その後はヴィーガンのコースなので、野菜中心の寿司ネタを次々に
紹介します。
最初に、火を使わずにぼぼ切るだけで出来る、すぐにネタになるもの
ー梅酢漬けの紅生姜、胡瓜の細切り、アボカドのスライス、クレソン、
ゴマなどがテーブルに並びます。
それから、椎茸の旨煮、細切り人参の塩煮、蒸し隠元、赤や黄色の焼き
パプリカ、オクラのたたき等を紹介し、一つ一つの味見もしてもらいます。
小休止もはさみ、もう二時間半は過ぎました。
いよいよ一人づつ、巻きずしに挑戦です。

両手に米粒が付いてどうしようもなくなったり、ご飯がはみ出したり、
上手く切れなかったり、或いはビギナーズラックで、一発でとても綺麗に
仕上がったり、本当にまちまちです。一人ひとりの作品を8巻から9巻に
切り分け、記念写真を撮り、グループ全員で相互に試食をします。形は
まちまちでも、皆とても美味しく出来上がっています。もちろん、
お醤油はあまりつけ過ぎないようにのアドバイスを忘れてはなりません。

『きちっとした天然の素材で、一つ一つの手順を丁寧に」の成果!
本当に美味しいね!
僕も参加者皆んなも、まさに笑顔の瞬間です。

今回のお醤油は、奧出雲の森田醤油さんの生醤油、野菜寿司にぴったり
の爽やかな深み、実に綺麗な味の醤油です。ドイツの人達もこんな醤油
は初めて、まさに目から鱗だとびっくりします。

これで大体コースも終わり、最後は皆で食卓に座って、手巻き寿司の
ホームパーティです。
数時間前は顔も知らなかった人達が和気あいあいと、ネタの組み合わせも
個人の勝手、日本のフィンガーフードを楽しむ、自由なフリースタイル
の寿司大会です。

寿司飯も海苔も、どんどんなくなっていきます。一方で、頭や知識だけ
でなく、各人の舌の記憶の中に、和食本来の味覚と寿司の味が初期定着
し始める時間だとも思います。

さて、開催者の僕達の方と言えば、僕と二人のスタッフ計三人で二日前
から準備と仕込みを始め、当日はほぼ10時間立ちっぱなし、集中力を
絶やさない長丁場。終わった時は相当にクタクタです。恥ずかしい話
ですが、採算面も毎回赤字です。過去10年、一度もプラスになったこと
はありません。

それでも、何故するのか、続けているのか?
やっぱり、和食が本当に好きだからそして、なんだか自分のためにも
なっているからだと思います。
また、昔よりも強く思うのは50半ばを過ぎてある程度年だからで
しょうか、この異国の地で半生を送り、家族も持ち、一つの仕事を
続けてこれたこと、そのドイツの社会や文化に自分の出来ることで
役に立ったり、喜んでもらったりして、恩返し出来ることは有難い
ことだという、心の動きです。

大分、長い文章となりました。料理コースの終わった後、一人で
ハノーバーまで列車で4時間移動してきました。もう真夜中になりました。
ホテルにも着きました。
明日からは三日間、日本の経済界の大型視察団の通訳、料理の仕事ほど
には気合も入りませんし、面白くもありません。
けれども、これが僕の生業、30年以上も家族と自分を経済的に支えて
きた活動です。

好きなことでなくとも、専門的に出来ることがあることを有難いこと
と思い、これからの10年間、ドイツ語でしっかりした和食の本を書き
表すためにも、この産業通訳の仕事を高い質で続けられるように、
家族の生計を立てられるように、もう少し頑張ろうと自分に話しかけます。

それでも、自分が本来、好きなこと、人生の中でずっと大切なことに、
和食の仕事に集中し切れない自分への歯がゆさ、情けなさは常につき
まといます。

このことについては、またの機会に、もっと根本的に前向きなこと、
新しいことをを書けるようにしたいと思います。

では、各々に、明日がまた良い一日となりますように。

(「www.culina-Japan.de」- ドイツで和食を伝えること」
 「ドイツの自宅で、和食の料理コース」という2つの関連の記事も
よければお読みください。)

 
 
 

「21世紀の和食かな ? - 固有と普遍の間で」

2017年01月04日 | 日本の「食」

次男と末娘に手伝ってもらって、夕食の準備中。
末娘に「今日の糠漬けは大根、長芋、キュウリ、人参、セロリ、
どのお新香も切って、盛り付けて置いてね。」と言ったら、
こんな感じになりました。 

娘の美弥のお新香の盛り付け方は本当にユニークです。
それに気がついたのは、約一年半前、「パパ、これどう思う ?」
と嬉しそうに自分で盛り付けたお皿  (下の写真)
を持って来たときのことです。びっくりするとともに
思わず吹き出しました。

こちらは次男の健。やはり一年半前のお新香の盛り付けです。

次男の健と末の娘の美弥、とても仲のいい二人ですが、お新香の
盛り付け方を見ると各人の個性の違いが実にはっきりと表れていて、
面白いものです。
そして、どちらも日本で生まれ育った僕ではまず思いつかなかった
盛り付けです。

さて、今日の夕飯の小鉢は、昔からの白和えをアレンジした我が家の
定番、「豆腐&練り胡麻・白味噌ソースのいろいろ野菜の和え物」でした。
今回はその豆腐ソースに赤ビーツのピュレーも少し加えました。
ちょっとピンクレディーな小鉢になりました。

こうして並べてみると、ピカソや印象派の絵画のような
カラフルな我が家の今日のご飯。

これも21世紀の和食かな⁉︎

『食』も文化の表現。いつかは国境や慣習を超えて、それでも
歴史と個人、普遍と固有の間で行ったり来たりするブーメラン、
ブランコのようなことかと思います。

個人の「独創」と言えども、一人の命が突然生まれてくることが
ないのと同じように、常に歴史と文化の大きな枠の中で成される、
個々の表現。だからこそ「捉われること」と「捉われないこと」の
間に色々な感動があるのだと思います。

固有と普遍の関係は、何百億、何千億の雨の一粒、一粒が一つの
大河になるようなことかもしれません。


「www.culina-Japan.de」- ドイツで和食を伝えること

2016年11月21日 | 日本の「食」

三ヶ月ぶりの日本、今は飛行機の中。約11時間の飛行時間もようやく
半分が過ぎ、機内の照明も消え半分闇の中、一人で自分の最近の仕事
や暮らし振りを落ち着いて見つめることの出来る貴重な時間です。

さて、30年近く産業通訳翻訳や語学学校の本業を営む傍ら、今日まで
約15年、ドイツの人達に日本の天然調味料や和食の文化を伝える活動
を、「クリナ・ヤーパン」という会社名のもとで行なってきました。

残念ながら、一度も利益を出したことのない会社です。
その中でいろいろな紆余曲折や長い中断がありましたが、今後の新たな
展開を考えて、初めて本格的なウェブサイト、ホームページを作りまし
た。

www. culina-Japan.de というアドレスです。 

サイトの基本的構成や各テーマだけでなく、過去の料理コースや刃物講
習会を基にした紹介スライドの作成、何千枚に渡る食材やレシピの写真
の整理選択、一つ一つのドイツ語の説明文や記事の執筆をスタッフの
協力やサポートを受けつつ、全て自分の力で行いました。

約7週間、毎日ほぼ朝から晩までの集中的な作業となり、日常生活も
ないがしろにする心身ともに随分としんどい仕事でした。
また、期せずとも過去15年間の自分の仕事の内容やその杜撰さをはっ
きり振り返ることともなりました。

一つ、その中で嬉しいこと、ないし、この作業の原動力となったのは、
小さい時から和食のことだけは毎日の食事の中で伝えていきたいと思
っていた日独ミックスの三人の子供達がドイツで若者となった今、
自分がこの15年間どんな思いを持って食の仕事をしてきたのか、それ
を目に見える形で、彼らの母国語であるドイツ語で書き表しておきたい
と思っていたことです。
それがひとまず最低限は出来たので、だいぶホッとしました。心の中の
荷を少し下ろせた気持ちです。

さて、今回の作業をしてみて、その中で分かってきたこと、やはり本当
にやりたいと思ったことは、自分の料理を丁寧に心愉しく作ること、そ
れを読みやすいドイツ語で語っていくことです。

60歳に近づいていく来年以降は、こんなことを毎日の暮らしの一つの
柱にしていきたいと思います。また、その中から、ドイツの人にも役立
つ和食の料理本のようなものが生まれてくればそれは嬉しいことです。

出来れば、美味しい白和えのようにレシピと食の随筆的な文章が一体
なったようなものが書ければと思います。

今回、日本に出発する前にはなんとかと思ってきたこのドイツ語のサイ
トが昨日の夕方、ひとまずは完成したので、自分の一つのけじめ、大き
な区切りとなりました。この先の足固めが少し出来た気持ちです。
それだけに今回の京都の滞在が本当に楽しみです。今年の春からの京都
の小さな住まいのプロジェクトも本格的にスタートしています。

日本、京都の友人、知人の方々、もうすぐ関空に到着します。では、
一人一人にお会い出来るのを楽しみにしています。また、ドイツ語の
サイトの方もよければ覗いてみてください。


和のビーガン - 精進の寿司いろいろ -

2016年09月10日 | 日本の「食」

今日はビーガンレシピの土曜日。

友人の調理師、スタッフ、息子や娘と、精進の野菜寿司を初めていろ
いろと作りました。丸かったり、四角だったり、芯がずれたり、
 形も格好も実に様々、それでもネタだけは丁寧に作ったので
どれでもとてもおいしかった。

用意したネタは、

蒸したインゲンを薄味の漬け地に浸したもの。
昆布出汁と塩、薄口味醂で炊いた千切りのニンジン。
しその醤油漬け。
赤や黄のピーマンを焼いて漬け地に浸したもの。 
高野豆腐の肉味噌風 。
ラディッシュのぬか漬け。
ドイツのオーガニック豆腐の厚揚げ風。
生姜の梅酢漬け。
オクラとアボカドのスライスなど。 

みんなの感想。
「まともな酢飯にパリッとした海苔、それに美味しい醤油があれば、
ネタは二の次かな、野菜寿司、十分に美味しいね。またやろうね!」

さて、巻き方の一番下手っぴなのが僕でした。トホホです。酢飯もま
だ沢山有るし、一人で明日もまた練習しようかな。


 


長ひじき & 干ししいたけのリバイバル

2016年06月15日 | 日本の「食」

昨日の夜から、すっかり「乾物クッキング」モードです。
昨日はヨーロッパカップの第一戦。ドイツの快勝を祈りつつ、
自宅の地下の食料室で7年近く息を潜めていた長ひじきの袋を
取り出しました。

水に戻すと、まさに「水を得た魚のように」黒々、生き生きとしてきました。
たっぷりの刻み生姜と少しの刻みニンニクを、良いオリーブオイルで
少し炒めてから、ざっくり切った長ひじきを投げ入れ、梅酢と玄米甘酒、
梅醤油で味付けしました。最後にドイツ九条ネギを割とたっぷり入れて、
一緒に炒めて出来上がり。四、五日は日持ちする、ちょっと和洋折衷な
ご飯のお供です。

大袋3袋位、まだどっさりある長ひじき君達。
次の一手はクラシカル、大豆と人参とひじきを一緒に昆布汁
たっぷりで、炊きあげました。
(きのこのストックもついでに入れたかな?)
自然の甘さも欲しかったので、ここでも玄米甘酒が大活躍、日本の
食物誌の古参兵二人、相互の相性も抜群なのだろうと思いました。

ひじきの隣では、やはり地下の食材整理で見出した5~10年
ヴィンテージの干し椎茸が、弱火でことこと煮えています。

 

二日ほど初夏の太陽の明るい世界で日向ぼっこをして、二度ほど
新しいお湯にも入って、すっかり元気を取り戻した干し椎茸です。
雑味も大分影を潜めました。それでも薄口醤油だけでなく、珍しく
濃口もたっぷり入れて、やはり10年ヴィンテージの枯から梅干し
を戻した水で、今日はどこにでも顔おを出す玄米甘酒を溶き入れ、
甘辛酸のバランスを取りました。

一つ一つの椎茸がぷっくり膨らんでなかなか美味しそうです。
何日も日持ちがしますし、細かく刻んで混ぜご飯に使ったり、
巻き寿司に入れたり、もちろんそのままごはんのお供でもよし、
いろいろと使い回しができそうです。 


自宅ランチは和食で、ビーガン!

2016年06月14日 | 日本の「食」

今日は夕方から夜10時、11時まで仕事、アカーン!
また、不健康だ!
それでお昼だけでもと健気に作った、今日の自宅ランチ定食です。





まずはあっさりと、梅味、薬味たっぷり、冷やしにゅう麺。



それに続いて、一昨日ぬか漬けにした二十日大根の残りの葉っぱ&
しっかり水切り豆腐&下煮したブラウンマッシュルームの精進つゆ。



最後はこのところの定番、セロリの根っこ(ともかく安くて美味しいな)
のカツに初夏のトマトの爽やかさをたっぷりかけて!
最後に椎茸やひじきの煮物のご飯の友で今日もお腹一杯。
でも体は軽い。
「和食でビーガン料理」のパターンは実に無理なく、やっぱり良いなあ
と改めて思う。
この後、夕方の仕事の前に事務所をこっそり抜け出して、ちょっと走るか、
泳ぐか出来れば、今日の長い長い残業の日もそんなに悪いことはない。
そうなりますように!


「花冷えの一日 ー ドイツでも日本でも、毎日のご飯は野菜が一番」

2016年04月23日 | 日本の「食」

日本から帰った後、ドイツ国内の長期出張で外食、肉食に片寄った
一週間のあと、野菜たっぷりの夕食。お腹も体もホッとしました。





メインディッシュの白アスパラとグリーンアスパラのピラフ風炊き込み
御飯に、庭のブロッコリーの花とローズマリーのスミレのような花弁を
散らしてみました。アスパラが少し柔らかすぎたのと、アスパラのストック
の旨味が足らなかったので、明日もう一度作ってみようと思っています。





ドイツは今、ほうれん草が走りで、行者ニンニクが盛り、そして白アスパラ
がこれから旬に向かいます。



野菜料理はあまり手を加えずに作って食べても美味しいなあ、
楽しいなあとよく思います。



ドイツ風の野菜天ぷら。
(日本から持ち帰ったものも少し入っています。)

 

今日は花冷えのする一日でした。 でも、体は温まりました。


タイからやって来た料理の先輩 ー 「マクロビ&つぶつぶ雑穀料理&タイ流ベジタブル&玄米パスタ。」

2016年02月19日 | 日本の「食」

今日はタイから来た料理の名人、めぐみさん夫婦達との夕御飯、
特別な晩でした。
僕の奥さんはもう二週間以上ベトナムに行ったまま!!
そんな時に、留守番役の僕と末の娘には、隣国のタイからはるばる、
まさに「朋、遠方より来る」の楽しい一晩でした。



木幡めぐみさんは知る人ぞ知る、雑穀料理「つぶつぶ」を約20年ほど前に
考案・開発し、マクロビ・ベジタリアン料理の新たなジャンルとして
日本に広めた第一人者です。
ひえ、あわ、もちきび、たかきび等、日本古来からの雑穀を「つぶつぶ」
と命名し、その旧式なイメージを一新し、調理法もアイデア豊かに
和・洋・エスニックの様々な展開で自由自在なレシピを生み出しました。



(めぐみさんの手元に置いてあった、今日の料理のアイデアスケッチです)

彼女の著した「つぶつぶクッキング」の料理本には、健やかで美味しい
レシピが沢山あります。

さて、今日の料理は以下の通り。僕は急ぎの仕事で外出していたので、
一緒に料理が出来ず本当に残念。でも、うちのキッチンスタッフの
「大」さんが見事にサポートしていました。







下のオーガニック玄米パスタ、お湯だけで簡単に戻せて、保存も簡単。
めぐみさん達がタイで契約農家を見つけ出し、開発した商品です。
東京のガイアやクレヨンハウス等、日本の自然食品でも販売されて
いるとのことです。 



僕が帰宅すると同時に、次々に素晴らしい料理が食卓に
運ばれてきました。



南国風のグレープフルーツと赤タマネギ、コリアンダー、荒く砕いた
ピーナッツのコンビネーション。ヨーロッパ風のドレッシング等は
使わず、酸味と塩の加減が抜群の出来。簡単に見えて、食材の各々の
持ち味をよく見極めて、彩りも味のコントラストもくっきり爽やか、
素敵な一品でした。



軽く塩茹でした、やや大ぶりの房のブロッコリーにはしっかりした
噛み心地を残しつつ、すり鉢の中でくるみと水と塩だけを合わせて
やや粗めのピュレー状にすりあげたところに放り込み、ざくっと
仕上げた、グリーンとホワイトカラーの和え物。京都亀岡の
吉井さんの黒釉の器にアレンジしたのもバッチリ。
和食のポイントをしっかり押さえた、モダンな一皿でした。



大ぶりのエリンギの丸のままの姿を生かし、しっかり縦に厚切りし、
オイルは最小限、厚手の鉄鍋で焼き付け、きのこの香りを引き出し、
最後に天然醸造の味醂と濃口醤油をかけ合わせた、照り焼き風の
合わせ調味料で味付けした、食べ応えのある一皿です。
シンプルなレシピですが、調理の一つ一つの手法・手順が実に
理にかなっていると思いました。エリンギ自体の旨さ、噛み応えが
しっかり伝わってきます。



昆布水で炊いてあったセロリの根を大ぶりに切り、それに合わせて
洋野菜のズッキーニも棒状に切り、細長く切っただし昆布も加えて、
油で揚げた車麩で重厚感もある一品。溶き卵で〆るのではなく、
そこにもちきびがどんと乗っかってきます。野菜や食材の特徴を
よく知った料理人ならではの、自由な発想だと思いました。
美味しかったです。



タイ料理を応用した揚げビーフンがアクセントの、やや辛めのスープ麺。
辛みが苦手の「大」さんも、「うん、これは美味しい」と唸った一品です。



木幡さんご夫婦がタイで開発したオーガニックの細麺と太麺の玄米パスタ。
今回は細麺ではなく、きしめん風の太麺がちょっとイタリアンな感じで
鍋ごと出てきました。牛乳も卵も使わないビーガンレシピですが、
十分にコクがあり、かつ一方ではお腹にもたれない、美味しさたっぷり
のパスタでした。



写真では最後になりましたが、僕の手が最初に伸びたのはトマトのお寿司。
湯煎したトマトの皮を剥き六つに分割した後、薄塩をあて、握り寿しに
相応しいしっとりとした食感のねたとなっています。五分搗きのごはんに、
梅酢と味醂を合わせたすし酢がトマトの味と一体となり、レシピ自体の
発想もさることながら、味も楽しさも絶品の前菜でした。
「大」さんと一緒に早速作ってみようと思っています。



ウイーンの大学に行き始めてから、ベーガン料理にはまっている
下の娘も今日は大喜びでした。昨年、タイ・カンボジア・ラオスの
旅行の時も、起点となったバンコクで大変お世話になった間柄です。

日本・タイ・ドイツと暮らすところは異なっても、そして母と娘ぐらい
の世代の違いがあっても、「食」の楽しさ、「食」を大切にする心は共通です。

今日から明日へ、今の世代から明日へ、未来につながる料理交流の
一晩でした。



めぐみさん、木幡さん、どうもありがとう。



僕も相当の食いしん坊ですが、本当に食いしん坊の二人。
「好きこそ物の上手なれ!」


 興味のある方、木幡さん達のリンクです。 http://gaiatable.com


「ドイツで作る和食のごはん ー 89歳の誕生日に、互いにありがとう! 」

2016年02月02日 | 日本の「食」

今日は義理の母の89歳の誕生日でした。



僕達と同居するようになって約三ヶ月、初めてのお祝いです。

去年は88歳、米寿のお祝いだったのでドイツの旧首都ボンの郊外、
ドイツの戦後史にその足跡を刻む歴史的なホテルに一泊し、その
何十年を女手一人で生き抜き、うちの妻とその弟、二人の子供を
育て上げ、孫たちを常に大切に可愛がってきた、みんなのオーマを
家族全員で祝いました。

今年は長男も末の娘も今日の日に勉強先から戻ってくることが出来ず、
また、義理の母の希望もあり、自宅でひっそりと祝いました。

それでも、夕食作りは僕の当番、和食オンリーのメニューで、腕を
振るいました。今年63歳で定年した妻の従姉妹と89歳の義母、
二人とも舌は生粋のドイツ人、日本レストランに足を運んだことは
まずありません。

最初の入り口のみ少し派手なものをと思い、手料理ではなく、
デュッセルドルフの和食屋の持ち帰り寿司を皿に盛り直し、出来合いの
ものでスタートしました。
その後は、サーモンの酢締め、山芋のとろろ、鶏肉と椎茸の炊き込みご飯、
柚子風味の蕪と豆腐の味噌汁、自家製のお新香三種と、あっさりした構成
で箸を進めてもらい、最後のメインディッシュは少しパンチを利かせ、
贅沢に100%バージンオリーブオイルベースの揚げ物としました。
まずはドイツの伝統野菜、セロリをテーマとしました。



昆布水と白醤油で下煮したセロリ根を厚めに切ってパン粉をはたき、
カツレツ風に揚げて、そこににレモン、パプリカ、ショウガの葛ソース
をかけ、野菜自体の味と旨味を楽しんでもらい、同じ皿に一方では
塩麹と柚子胡椒で一晩マリネした牛肉のセロリ巻のフライを添えました。
これは大好評でした。
次は鳥の唐揚げを胸肉とモモ肉で其々、味付けを変えて山椒風味と
レモンソース味、これも美味しい、美味しいと沢山食べてくれました。
義理の母は、ベットに入る前、妻に「いい息子を持って良かった!」
と言っていたそうです。

妻と来週から三週間、ベトナムに自転車旅行に行く義理の従姉妹にも
定年祝いと念願のアジアの旅の前祝いということで、「今日はお祝いの
料理、しっかり作るよ!」と約束していたので、彼女の大満足、満腹の
笑顔に僕もホッとするとともに嬉しい気持ちでした。

自分で家族に、人のために料理が作れること、そして、本当に料理が
美味しい日本という国に生まれ育ったことを、とても有り難いことだと
実感する一晩でした。


「日本から戻って ー 家族との御飯、久しぶりの和食」

2015年12月25日 | 日本の「食」

日本から戻って二日目、クリスマスイブの翌日は、久し振りに
家族揃って和食の一日でした



昼食には、ゆずを絞ったなめこおろしや国産大豆のなっとう、
きのこ、お揚げさん、ネギの味噌汁。



夕食には舞茸、本しめじ、椎茸等いろいろなきのことセロリ、
菜の花に茗荷、コリアンダーの炒め物。



そして、今日のハイライトは京都、錦の大國屋さんのうなぎ
の八幡、玉子締めでした。



88歳のドイツの義母も初めてなのに、とても美味しそうに
食べていました。
山岡さん、いつもご馳走様です。





 


「大阪・石橋の小さな焼き鳥屋さん ― 想像してもらうために私は唄おう」

2015年12月21日 | 日本の「食」

大阪、石橋は生まれて初めての街でした。
一年に一回だけ会える人のライブを聴きに行きました。
(行って本当に良かったです。このことはまた別の機会に書こうと思います。)

さて、「開演前に何か口にしないと」と思って入った10m平米位の
小さな焼鳥屋さん。石橋の駅の改札から歩いて20秒ほどのところです。
一人、心の中で「ああ、日本に帰ってきたなぁ」と思わず呟きました。





4席のカウンターだけ。頼めばすぐに冷たいビールと美味しい
お通しが出てきます。時間に急かれつつ、いくつかの焼き鳥も
頼みました。
それはそれは見事な焼き加減、タレの具合でした。







焼きおむすびも見事なもの。普通の白米のご飯ではなく、細かく
切った人参だけを薄味でほんの少し炊き込んだご飯をベースに
していました。
大きさも表面の焼き加減も実にきちんとしていました。



若い大将ながら、熟練した心のこもった仕事だと思いました。



最後の手羽先の焼き上げが時間切れになっても一言の文句も言わず、
「ああ、いいですよ、申し訳ないですね。」とニッコリ笑うのみです。

「こんなに美味しい焼き鳥、本当に久し振りでした。ありがとうございます。」
と深々頭を下げて、店を去りました。 
「食は人であり、文化である」とつくづく思ったひと晩です。
 
その後、石橋の商店街を小走りで抜けて、飛び込んだ高架下の
小さなライブハウス「アビリーン」。
(国交省から現在立ち退きを命じられ、12月末で閉店とのことです)

ギリギリで間に合ったそのライブ、今日の歌い手、よしだよしこさんとは
去年の京都でのライブ以来、ちょうど一年ぶりの再会でしたが、歌詞も
メロディーラインも心に響く歌が続きました。
そして最後を飾った曲は、「高野くんの焼き鳥屋」という曲です。



この曲は、シンガーソングライター、よしだよしこさんの新しいアルバム、
「3/4あたり」の中心となる曲だと思います。
大きな時間を内包した、一つの物語のような曲です。
その一部を抜粋で下記に記します。


「いわきの駅から歩いて1分
 高野くんの作った焼き鳥屋がある
 七人座れる立派なカウンターは 
 取り壊された家から譲ってもらった…

 …故郷は富岡まち半径20キロ圏内という
 名前の町のひとつ
 美しい海辺の町にまだ人は
 住んでいない、住んでいない…

 …4回目に店に行った夜初めて話してくれたこと
 がれきの中で両親を探して歩いた時のこと
 私は一生懸命想像しながら黙って話を聞いた
 寒くて暗くて悲しくて怖い風景想像しながら
 黙って聞いた
 淡々と話す高野くんは昔原発で働いていたから
 自分の被曝量も量りながら
 がれきの中をさまよった
 お母さんは2週間後、
 糖尿病で目が不自由になったお父さんは
 3週間後に見つかった…

 …自分の目で見ること 自分の耳で聴くこと
 そして自分の心で感じたことを唄うところから
 また始めようと思った
 いわきの小さな焼き鳥屋のカウンターで
 そう思った…

 …立ち止まったら二度と前には進めない
 そんな風に生きてきた人たちのことを唄おう
 例えばあなたが遠くって聞こえない場所にいるのなら
 想像しよう 想像しよう
 想像してもらうために私は唄おう…

 …いわきの駅から歩いて1分
 高野くんの作った焼き鳥屋がある
 いらっしゃい 店は繁盛 いつも繁盛
 私はレバーのタレが好き」


その夜、僕は以前よりやや細面になったよしこさんの笑顔、
歌い、話す形姿に触れながら、自分の人生の中でその生き方を
一生忘れることのない女性の一人だと、改めて思いました。
そしてこんな晩には「もう一度、日本で暮らすようにしよう」と
思うのです。
 


「ムッター、どうも有難う! ー 今日は何を作ろうか?」

2015年12月03日 | 日本の「食」

ドイツの88歳になる義理の母が、一人暮らしはもうシンドイということで
引っ越して来て、僕達と同居するようになってから、約二週間になります。

ここ数年、家の料理は僕の担当なので、義理の母のご飯も僕が作ることが
多いのですが、いつも「本当に知行のご飯は美味しいね。ほっとするね。」
と言ってよく食べてくれます。



それも、こんな感じで和洋折衷というよりは、かなり日本の昔からの
和食風なのですが、全然違和感がないようです。



手前味噌ですが、うちの料理ではいつも昆布水や出汁だけはきちっと
整えて、醤油や味噌などの基本調味料は、日本の天然の本当に良い
昔からのものを使っています。そうすると、食材自体はドイツにあるもの
で作りますが、和食の本来の優しい旨みや滋味がしっかり備わるのだと
思います。そして、その味わいは万人共通の美味しさにつながるのだと
思います。





上の写真の野菜や雑穀(たかきび)の炒め物や、あるいは豆腐と
根菜(昆布水で下煮したドイツのセロリの株の部分)とほうれん草の
炒め物なども喜んで食べてくれます。



毎日、こんなことが実感できるので、義理の母に「今日は何を作ろうか?」
と、冷蔵庫やテラスから食材を取り出して考えるのは
なかなか楽しく、
嬉しいことです。


「ムッター、どうも有難う!」



鞍馬の器に、ブロッコリーの花を散らして。

2015年10月14日 | 日本の「食」



春と秋、年に2回、自宅の小さな菜園にブロッコリーの花が咲きます。



小さなレモンイエローの花は午後の光の中、各々が自らを祝うようです。
それでも、今年はドイツの秋が本当に駆け足でやって来ています。
明日は山間部では初雪になるところも多いそうです。



さて、今日のお昼ごはんにはこのブロッコリーの花を散らして、
ほんの少しのキノコと浅漬けの蕪、梅酢漬けの生姜で、秋の混ぜ寿司
を作りました。

なかなか美味しくできたので、京都鞍馬の陶芸家の友人、目片さんに
手ほどきを受けて初めて作った深めの丸皿を取り出して、盛りつけて
みました。我が家の食卓に初登場です。



寒さが厳しい鞍馬の冬も、今はまだ冬は遠く、秋の足音、秋の夜長を
楽しみにして、午後の光に輝く山々を望んでいるのだろうか。
こうして料理をしていると、これまでの人生の中で縁のあった人々の
顔や仕草を不意に思い出すことがある。
毎日の生活の中で大切なことは、忙しさの中にはあまりなく、のんびり
したひと時の中にあることが多い。

今年の秋には、また、もう一枚、お皿を作ってみたいと思う。

 


ドイツで出来る、美味しい和食 ー 「チェリートマトたっぷりの洋風炊き込みご飯」

2015年10月02日 | 日本の「食」

今日のご飯は、小さなトマトたっぷりの洋風炊き込み御飯です。
思いつきで初めて作りましたが、皆んなが「美味しい、美味しい!」
と言ってくれたので、二日続いて作りました。



五分搗き米を数時間、十分に浸水させた後、炊く前にその水を、
水出しした昆布水で総取っ替えしてしまいます。
その昆布水には白醤油、薄口醤油、エクストラバージンのオリーブオイル、
梅酢、酒、塩を適度に入れて、さらにとても細かいみじん切りの生姜と
にんにくを数グラム入れて、ちょうど良い加減に味を決めて、
炊き込み御飯の調味液とします。トマト以外の野菜は数ミリに薄く切った
ニンジンとセロリのみ。



これらの具材と各々のうま味を秘めた東西の伝統的な調味料の力を信じて、
土鍋で炊き上げます。



すると、こんな感じになってちょっと洋風モダンですが、
口の中に優しく滋味が広がります。暖かくても、冷えても、
それぞれに美味しいと思います。

この炊き込み御飯は最近流行りのビーガンレシピとしても通用しますが、
最後の方で、ご飯が炊き上がり、土鍋の中でまだ良い頃合いに蒸して
いる間に、軽く、あっさりと下味をつけた鶏肉や魚介類をご飯の上に載せても、
ちょうど良く火が通って、さらに豪華な食事となります。
本当は子供達三人に食べさせたかったのですが、夏休みが終わって
勉強先に戻ってしまっているので、スタッフと昼ご飯や夕飯、夜食に
分け合って食べました。