ルクセンブルクでのキノコ狩り ー 秋の味覚、香り高き「ポルキーニ」

2015年10月11日 | ドイツ・ヨーロッパの「食」

「天高く馬肥ゆる秋」と昔から言いますが、今日の日曜日はまさに
そんな感じです。ドイツはもう秋真っ只中です。



一昨日は生まれて初めてのキノコ狩りでした。
刃物の仕事でルクセンブルクに行きましたが、そのセミナーに参加した
料理長のクリストフさんが翌日の朝、彼のお店から車で10分ほど走った
ところにある、キノコの森の中に連れて行ってくれたのです。



お目当てはもちろん、秋の味覚の王者と呼ばれる「ポルキーニ」でした。
フランス、イタリアだけでなくドイツ語圏でも、ポーランドやチェコ、
ハンガリーでも、ヨーロッパ全体で食いしん坊の目が輝くキノコの王様です。





目を皿のようして一時間ほど森の中を二人で探し続けると、バケツ一杯の
収穫になりました。
キノコ狩りをすると、もちろん食べられないキノコも沢山あります。
特に、毒キノコには要注意です。それでも厄介なのは、下の写真のように
一目瞭然のものばかりではないことです。



特にこの赤いキノコは、ルクセンブルクだけでなく、どこの国にも必ず
いる、盛り場のしっかりしたお姉さんや夜の女王達のような風格があり、
なかなか見事なものだと思いました。



ポルキーニ狩りのベテラン、クリストフさんの話では、シーズンの盛りで
良いコンディションの時には一日で何十キログラムと採れることもある
そうです。彼のレストランでは、それをオーブンで素焼きにして粉末にし、
次のシーズンまで一年間、自家製の旨味調味料として使うそうです。

その日の午前中はルクセンブルクのシェフ達と刃物の研ぎ直しのセミナー、
午後はクリストフさんチームへの和食の基本の紹介と盛り沢山の一日でした。







二つのセミナーの間、ずっと「朝採ったポルキーニはどこに行っただろうか?」
と気掛かりだったのですが、帰りがけにクリストフさんが料理コースのお礼と
家族へのおみやげにと箱一杯の野生のポルキーニをプレゼントしてくれました。
感謝感激、実に有り難いことです。

ドイツの自宅への帰宅は夜中の10時頃になりましたが、長男を誘って友人の
アドリアーノのイタリア料理店にルクセンブルクのポルキーニを持ち込み、
早速ソテーにしてもらいました。
イタリア人の大好物のキノコだけに、味付けもオリーブオイル、にんにく、
パセリで手慣れたものでしたが、ありきたりと言えばありきたりのレシピ、
また見た目の美味しさに比べ、野生のポルキーニの深い味や芳香を生かし
きってはいないように感じました。



自宅に戻るときには「これなら僕でも出来る、もっと美味しく出来る、
明日はキノコの日だ!」と心に決めて、ルクセンブルクから持ち帰った
モーゼルのやや甘口の白ワインを一杯ひっかけて、すぐ床に入りました。

朝が来ました。人生五十年、初めて採ったポルキーニを竹ざるに乗せて、
まず記念写真を撮りました。が、その間も「どんな風に料理しようか」と
頭の中にいろいろなアイデアが巡ります。

 



いよいよ料理に入ります。



その結果が以下の写真です。



①ポルキーニのきのこそば
 いやぁ、美味しかったです。信州の大久保さんの薄口醤油との
 出汁とも相性抜群。「でも、信州で食べた大概のきのこそばよりは、
 僕の今日のポルキーニそばのほうが一段美味しいなぁ。」と自画自賛。



②ポルキーニの天ぷら
 揚げ物にすると、ポルキーニの味の広がりや香りを衣の中に
 閉じ込めてしまうようで、これはリピートのレシピにはならないな
 と感じました。



③ポルキーニの炊き込みご飯 
 土鍋で炊き上げた後、約10分間ほどの蒸し時間の間に、一番状態の
 良かった、生のままの小ぶりのポルキーニの軸と笠を薄くそぎ切りにし、
 パスタの上にパルメザンチーズを散らすかのように、たっぷりとのせました。
 蓋をあけると実に芳香高く、口にすると、上品で深みのある味でした。



④ポルキーニとチェリートマトのパスタ
 これもなかなか美味しかったのですが、パスタがマカロニ状のもの
 だったのが多少残念でした。妻が選んだパスタなのですが、食べる
 際にポルキーニの旨味と絡み合わせることがやや難しく、これは
 やはり、きしめん状のタリアリーニで行きたかったな、と思いました。
 けれども十分に美味しい一皿でしたし、夫婦円満も考え、小声の感想
 に留めました。



⑤ポルキーニの和風ソテー
 白醤油を使ったのですが、にんにく醤油をほんのすこし入れるつもり
 がちょっと入りすぎ、ポルキーニとの味のバランスが壊れたように思います。
 妻とスタッフのOさんは「美味しい、美味しい」と言ってくれましたが、
 「昨日のイタリアの古典的レシピのほうが、見栄えはずっと美しかったな。」
 と、ひとり頭を下げる気持ちでした。



⑥ポルキーニのストック
 椎茸やエリンギでもよくやる、我が家の定番「キノコのストック」
 をポルキーニに応用しました。とても良い味となりました。
 水出しした、天然真昆布の昆布水に、塩・酒・白醤油・薄口醤油で
 淡い味を付け、中火から弱火でキノコが柔らかくなるまで温度を
 入れます。時々灰汁を取りながら、キノコの旨味が十分に広がり
 解き放れるのを待てば、仕上がりです。これさえあれば、本当に
 いろいろな料理に使い回しが出来て、便利なレシピです。
 定番の椎茸もしっかりした味のストックとなりますが、それを上回る
 深み、椎茸にはない上品な味や香り、さすがポルキーニと思いました。



野生のポルキーニは大小様々、相撲取りの手を優に超えるような大きな
サイズのものも見かけますが、マルクトや野菜売り場にはそのような
サイズのものはなかなか出回りません。  



日本の秋は松茸、ヨーロッパの秋はポルキーニと言っても
良いのかもしれません。






 


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