妻と娘と三人で、日本に戻る時に

2013年10月22日 | 随想

 

昨日は亡き母の44回忌。その日にドイツを発ち、18才の末娘と妻と三人で
初秋の京都へ。この世で過ごした時間は20年程、僕の方が長くなった。
日本に向かう飛行機の中、地表から10kmも離れた零下40度の星空の中、
僕達は点のような小さな存在。僕はここ数年の仕事のこと、それに伴う
経済的不安のことなどを、老後の漠然としたことも含めて、妻と二人、
話したりしていた。

大陸を越えて続く夜の闇。人々は自らの儚い生命に気がつかないように
それぞれの時間を追いやっている。

夜が明けるまではまだ数時間ある。いつの間にか寝入った妻の横顔を見つめ、
亡き母、亡き人を思う。
僕達はまだまだ若い。それでも、明日が、来年がないこともあるだろう。

関空から列車で京都へ。途切れなく延々と続く戦後日本の発展と社会崩壊の
様相。もう戻れる道はない。 

子供達と何度も足を運んだ日本の昔の街、京都。
御所の秋。大きな風の中で静かに揺れる銀杏の大木達。
北山から東山に、千切れたような綿雲、霞雲。日本に戻ってきたと思う。