高橋 義夫 著 「狼奉行」を読みました。
羽州(うしゅう)上山藩の若き武士・祝靱負(いわい ゆきえ)はお家騒動の余波で山代官の下役に配される。
雪深い山奥で、藩の中央とは離れつつも、藩の政争に巻き込まれてしまう祝靱負。
その祝靱負も、みつや古沢十兵衛ら土地に根付いた者と生活していくうちに、次第に心が変化していく。
家格に合わぬ役目に力を尽す寡黙な若者に襲いかかる自然の脅威。
狼の来襲、かせぎ病(狂犬病)の流行…。
風雪は人を磨き、いつしか青年は大きく成長を遂げていた―
雪深い羽州の山奥、狼奉行と呼ばれた若き武士祝靱負の清冽な生きざまが、在地の役人や村役人などの地についた生態と共に描かれた作品。
祝靱負の心の変化の過程に読み応えがある。
厳しい自然の中で生活する人間の逞しさも読みどころ。
自然と人間ってやっぱり関係が深いのだと思います。
第106回直木賞受賞作品
ほかに「厦門心中」「小姓町の噂」を収める。