これはとてもいい本だ。
城山三郎といえば経済小説の重鎮で
坦々とした抑揚のない文章が
わかりやすくも没個性的で苦手としていた。
しかしこの本は死別した妻との思い出を
生前の城山が描きためた随筆のようなものを娘さんがまとめた
随筆集のようなものであり
城山の作品の中でも異色である。
内容は死んだ妻へのラブレターの一言に尽きるのだが、
読んでいるこっちが恥ずかしくなるくらいだ。
あんなこともあったなぁ
こんなこともあったなぁ
とページはすすみ、
さすがに書けないことは書いていなのだろうけど、
最初の一文字から最後の「。」まで妻への思いがあふれている優しい一冊。
いい歳のとり方をしているなぁ
と思う。